著者
小澤 智生 糸魚川 淳二
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1992

本研究の目的は,保存状態が極めて良い化石資料からDNAの抽出を試み,抽出されたDNAを基質としてPCRによって特定の遺伝子領域を増幅した後,塩基配列の決定を行い,近縁の現存種の遺伝子情報と比較し,生物の系統進化を明らかにすることにある.研究計画に示された内容について研究期間中に以下の成果を得た.1.化石骨などの化石資料からのDNAの抽出法,化石化の過程で低分子化したDNAを基質としてかつ生体高分子の続成過程で生じた多くの阻害物質を克服してPCR反応を効率的に進行させる方法といった実験手法の問題につき基礎研究を行い手法を確立した.2.ロシア科学アカデミーに所蔵されているシベリアの永久凍土産の5万3000年より10000年前のマンモス化石および現存種のアフリカゾウ・アジアゾウよりミトコンドリアDNAを抽出し,チトクロームb遺伝子領域307塩基対をはじめとした二三の遺伝子の領域の配列決定を行い,ゾウ亜科の分子系統樹を構築した.その結果,これまでの形態に基づく系統関係の通説と異なりマンモスはアフリカゾウにより近縁であることが明らかになった.また,分子時計によれば両者の分岐年代は約700万年前と推定される.なお,今回の4万3000年前のマンモス化石からのDNAの塩基配列決定は,コハク中の昆中化石を除き,現在のところ動物化石では最も古いDNAの抽出および塩基配列決定例である.3.化石記録の豊富な海生腹足類キサゴ類を対象に,現生種のミトコンドリアDNAのいくつかの遺伝子領域の塩基配列データに基づき分子系統樹を作成し,化石記録と形態に基づく系統樹と比較検討した計果,形態にもとづく系統樹は生態型を反映したものであり真の系統関係を反映していないことが判明した.また,キサゴ類の種分化は海洋気候の温暖期より寒冷期に集中して生じていることが判明した.
著者
小澤 智
出版者
社団法人 日本流体力学会
雑誌
日本流体力学会誌「ながれ」 (ISSN:02863154)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.346-353, 2002-08-25 (Released:2011-08-16)
参考文献数
29
被引用文献数
3
著者
小倉 憂也 小澤 智子 野島 康弘 菊野 理津子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.391-398, 2015 (Released:2016-01-26)
参考文献数
25
被引用文献数
4 2

本研究では,ペルオキソ一硫酸水素カリウムを主成分とする環境除菌・洗浄剤(RST)の有効性について,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA),多剤耐性緑膿菌(MDRP),ノロウイルス代替のネコカリシウイルス(FCV)およびC型肝炎ウイルス代替のウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV)を対象として評価した.懸濁試験において,1%RSTは,0.03%ウシ血清アルブミンを負荷物質とした試験条件では1分間の作用時間で,MRSA,MDRPに対して4 log10以上の殺菌効果を示し,またFCVに対し4 log10以上のウイルス不活化効果を示した.1分間作用の懸濁試験による評価において有効塩素濃度が同じ次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)よりもRSTはウイルス不活化効果が高かった.浸漬試験においてはキャリアに付着させたBVDVに対して0.1%NaOClは0.9 log10の,また1%RSTでは3.3 log10の減少であった.また,試験薬含浸ワイプによる拭き取り試験では,1%RST含浸ワイプは,FCVに対し4.5 log10以上の除去効果を示した.これらの結果からRSTは,病院環境における日常の衛生管理において,選択肢の一つになり得る製剤であることが示唆された.
著者
加藤 昌弘 村松 輝昭 植田 裕樹 山口 正人 小澤 智樹
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.312-317, 1992
被引用文献数
14

メタノールとヘキサン, シクロヘキサン, およびヘプタンからなる3種2成分系溶液の溶解度曲線と298.15Kにおける液密度を測定した。得られた液液平衡と液密度挙動を状態方程式で相関した。<br><b>Table 1</b>に実験で用いた試薬の物性値を示す。<b>Table 2</b>に298.15Kにおける液密度の実験値を示す。ここで, 括弧内の数値は2液相分離しているときの上相と下相の密度を示す。密度はデジタル密度計で測定した。液密度挙動を Fig. 1に示す。液密度曲線での屈曲点から相互溶解度を決定した。298.15Kにおける密度測定から得られた相互溶解度を<b>Table 3</b>に示す。<br>溶解度の測定は, まずガラスアンプルに望む組成の溶液を仕込み, ガラス上部を溶かして密封した。このアンプルを恒温水槽に人れ, 試料アンプルを振りながら液相の状態を観察した。温度を変化させ, 2液相状態と均一液相状態との境界温度を測定して, その組成での溶解度温度とした。得られた溶解度温度の実験値を<b>Table 4</b>および<b>Figs. 2~4</b>に示す。<br>得られた液液平衡と液密度データを, Eqs. (1)~(5) に示す状態方程式で相関した。今回は, 係数<i>a</i>と<i>b</i>の温度依存性をEqs. (6)~(10) に示すように持たせ, 298.15Kにおける密度と蒸気圧を満足させた。<b>Table 5</b>に各純物質に対する補正係数の数値を示す。<br>状態方程式を混合流体に適用するために, Eq. (11) で示す Huron-Vidal 型の混合則を導人した。ここで関数Fには, Eq. (12) に示す3定数 Wilson タイプ, およびEq. (13) に示すNRTLタイプを用いた。また, パラメーター<i>b</i>およびθについては Eqs. (15)~(17) に示す混合則を用いた。3定数 Wilson タイプのパラメーターとNRTLタイプのパラメーターはEqs. (18) および (19) に示す温度の関数として整理した。<b>Table 6</b>に, 液液平衡と液密度の実験値を同時に状態方程式で相関して得られたパラメーターの数値および液密度の相関精度を示す。<b>Fig. 1</b>の実線は, 状態方程式による液密度の計算結果を示す。<b>Figs. 2~4</b>に溶解度曲線の計算結果を示す。ここで,実線はNRTLタイプ, 破線は Wilson タイプを示す。
著者
小澤 智生 西中川 駿
出版者
名古屋大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
2000

縄文・弥生時代の考古学的遺跡から産するいわゆる古代豚とされる獣骨が,野生のニホンイノシシなのか家畜豚であるかを遺伝学的に特定するための基礎データを得るため,ユーラシア大陸及び東アジア・東南アジアの島嶼域に棲息するイノシシ属(Sus)の野生種及び家畜豚のミトコンドリアDNAシトクロームbの全塩基配列およびミトコンドリアDNAのD-loop領域の一部の配列決定を行い,野生イノシシおよび家畜豚の遺伝学的特性を明らかにした.これらの基礎研究をふまえ,考古学的遺跡産の試料として,縄文時代晩期の佐賀県菜畑遺跡産(4試料),弥生時代の大分県下郡遺跡産(3試料),愛知県朝日貝塚産(3試料)の典型的な古代豚とされる骨を選び抽出された古代DNAをPCRで増幅しミトコンドリアDNA調節遺伝子領域255塩基対の配列を決定し,アジア・日本のイノシシ及び豚の配列と比較を行った.その結果,10試料中の9試料の配列はニホンイノシシ集団に固有に認められる配列であり,残りの1試料の配列はニホンイノシシ集団と東南アジアの一部の豚に認められる配列であることを確認した.この事実は縄文時代晩期から弥生時代の日本の稲作文化において,大陸産の家畜豚が飼われていなかったことを示唆している.本研究では,さらに縄文時代の遺跡産試料,琉球列島の貝塚時代の試料についても,予察的ながら形態ならびに分子考古学的検討を行ったがすべてが野生イノシシであり家畜豚である事実は得られなかった.一方,遺跡出土骨の形態学的研究の基礎試料を得るため,日本各地のニホンイノシシ集団の頭骨の形態計測学的研究を行い,野生集団の形態学的特性を主として主因子分析の立場から明らかにした.次に,縄文・弥生遺跡出土ノイノシシならびに古代豚とされる頭蓋の比較形態学的計測を行い,現生ニホンイノシシのデータと比較した.その結果,遺跡出土の試料は,いずれもニホンイノシシの形態変異の範疇に入り,ニホンイノシシと区別する事が出来なかった.これらの一連の事実から,考古学者の一部が主張するいわゆる古代豚というものの存在は否定される結果となった.
著者
元木 悟 上杉 壽和 小澤 智美
出版者
長野県野菜花き試験場
雑誌
長野県野菜花き試験場報告 (ISSN:02861321)
巻号頁・発行日
no.12, pp.19-29, 2006-03
被引用文献数
1 4

長野県におけるアスパラガスの作型は,露地栽培,ハウス半促成栽培,伏せ込み促成栽培が分化しており,伏せ込み促成栽培を除き,春だけ収穫する普通栽培,夏から秋の収穫を加えた2季どり栽培,春から秋まで連続して収穫する長期どり栽培が普及している.しかし,長期どり栽培は,立茎方法や収穫期間が従来の2季どり栽培とは異なるため,これに適応した立茎方法と,適正な立茎数を明確にする必要がある.そこで,本試験では,寒冷地のアスパラガスの露地長期どり栽培,ハウス半促成長期どり栽培において,立茎方法および立茎数が収量に及ぼす影響について検討した.1.長期どり栽培では,2季どり栽培より2~3週間早く春どりを打ち切り,2季どり栽培の株養成期間も連続して収穫を続けることで増収した.2.長期どり栽培の立茎方法には,一斉立茎,順次立茎があり,いずれの立茎方法でも収量に差がなかった.3.長期どり栽培の株養成量やGI'は,2季どり栽培より多く,翌春の春どりが増収した.4.長期どり栽培の適正な立茎数は,株当たり5~6本であった.
著者
小澤 智宏 米村 俊昭
出版者
名古屋工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

生体内で血管弛緩、免疫などに関与している一酸化窒素(NO)は、作用に応じた適量が決まっているが、いったんその濃度が変化すると動脈硬化や敗血症など重篤な病気を引き起こす。本研究では生体内NO濃度に着目し、これをセンシング可能なシステムの構築を目指した。強い電子供与により正味の正電荷が減少した金属イオンは、外部からのさらなる電子供与に対して抵抗する。これを利用して金属イオンとの反応性が高いもの(NOなど)のみが反応する分子の構築に成功した。これらを電極表面に修飾してデバイスの構築を試みたところ、金属イオンと電極表面との直接的な相互作用により、本来の分子の性質を電極上で再現することができなかった。
著者
黒田 登美雄 小澤 智生
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.328-342, 1996-06-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
29
被引用文献数
9 15

Paleoclimatic and vegetational changes during the Pleistocene and Holocene in the Ryukyu Islands were inferred from pollen assemblages. Pollen analyses of some early Pleistocene to Holocene sections in the Ryukyu Islands show several drastic vegetational changes with climatically meaningful variations.A mixed pollen assemblage containing the warm and cool temperate trees such as Cryptomeria, Abies and Tsuga, and the tropical-subtropical trees including Dacrydium, Liquidambar, , Lagerstroemia and Sapium occurred in the upper Pliocene to lower Pleistocene Shinzato Formation and the basal part of the lower Pleistocene Kunigami gravel formation. These pollen assemblages strongly support that there were high mountains over 1, 000 to 1, 500 m above the sea-level in the Ryukyu Islands in the late Pliocene to early Pleistocene. The warm and cool temperate forests in the mountainous areas were disappeared possibly by the subsidence of the basement rocks of the Islands in relation with the opening of the Okinawa Trough. Invasion of evergreen broad-leaved trees to the Ryukyu Islands in the early Pleistocene was indicated by the first occurrence of evergreen broad-leaved tree pollen in the lower Pleistocene Kunigami Gravel Formation.The pollen assemblages in the last Glacial period (ca. 22, 000 y.B.P) are dominated by the coniferous trees such as Pinus and Podocarpus, indicating that an arid climate was prevalent in the Ryukyu Islands. This evidence is consistent with the wide development of ancient dunes and paleosoil of aeolian sand origin in the islands during the last Glacial period. The pollen sequence of the uppermost Pleistocene to Holocene reveals the change of vegetation and climate from the pine forests of the late Glacial period to the climax forests of evergreen broad-leaved trees of the Climatic Optimum. It is suggested that the climatic condition in subtropical Ryukyu Islands around 20, 000 years B.P. was not so much cool but arid than the climate of the present day.
著者
久住 勉 小澤 智生 遠藤 一佳
出版者
日本古生物学会
雑誌
化石 (ISSN:00229202)
巻号頁・発行日
no.57, pp.37-44, 1994-11-30

The inarticulate brachiopod Lingula has been regarded as a typical "living fossil" because of its extreme morphologic conservation signified by its longest geological history among known living animal genera. To make clear the mechanisms of the evolutionary conservatism, an investigation of genetic structures of two Japanese populations of Lingula anatina (Ariake Bay population in Kyushu, southern Japan and Mutsu Bay population in northeastern Japan) has been conducted, along with morphometric investigations of the shells. An electrophoretic survey of enzyme variations demonstrated that both populations of Lingula anatina retained a high level of genetic variability comparable with that of other marine animals. In contrast, the genetic distance between the two populations from localities up to 1500km apart is within the value that characterize conspecific populations. The genetic distances between the Japanese populations and the Queensland populations in Australia studied by Hammond and Poiner (1983) are also within the values usually recorded among the populations of a species. The strategy employed by Lingula to prolong pelagic larval existence may play an important role in maintaining a homogeneous population over this long geographic range. The panmixia among the populations of Lingula anatina sustained by the special dispersal mechanism may be one of the genetic mechanisms that keeps the species stable for a long time.
著者
富田 光博 畔柳 功芳 大竹 孝平 小澤 智 末広 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.710, pp.55-60, 2004-03-08

送信機はガード系列により保護された包装拡散系列を用いてスペクトル拡散したシンボルを送信し、受信機はコア系列部分のシンボルをデコリレータ、またはMMSEを弔いて復調するCDMA方式において収容局数を減らすことなく性能の向上が図れる順次検出形受信機を提案する。この方式は相関分離方程式を解くことにより得られる全ユーザの軟出力の中で、最も尤度の高いユーザのみを判定し、その成分を受信シンボルから除く手法を用いる。この処理を順次繰り返すことにより全ユーザを検出する。計算機シミュレーションにより、順次検出方式の誤り率が従来方式に比べ著しく低減し得ることを明らかにしている。