著者
山本 健太 市原 真優 和田 崇
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100046, 2015 (Released:2015-04-13)

【背景】演劇の消費は,劇場などの空間でなされる.そのため,演劇活動は,劇場が多く立地する大都市を中心に展開してきた.他方で,近年になり,一部の中堅,若手演劇人の中から,地方還流の動きも出てきている. 【調査概要】このような状況に鑑み,本発表では,地方における小劇場演劇の実態を担い手と観客の双方から示し,地方における演劇文化の発展可能性について検討する.調査対象は,広島市で活動する劇団と,協力の得られた劇団Aの2014年8月公演の観客(144人[回収率66.7%])である.調査方法は劇団主宰者へのインタビュー,観客へのアンケートである.東京などの大都市と異なり,地方都市では活動している劇団は必ずしも多くない.広島市の場合,活動が確認できた劇団は31団体である.このうち11団体の関係者からインタビューの協力を得られた.調査協力を得られた劇団Aは,広島市南区民文化センターの「演劇マネジメント活性化事業」による演劇若手人材育成ワークショップであり,当該センターの公設劇団と位置付けられている.【劇団員】劇団員はいずれも広島県内に定住し,本職を有しており,演劇活動は趣味である.演劇で生計を立てておらず,団員の上京意思は高くない.広島市内で活動を続けること,主宰者と演劇することに意義を見出している.主宰者も,団員選考にあたっては,長期にわたって共に作品を作り上げていける人物であることを重視している. 【活動場所】演劇活動の場は,稽古場所と公演場所に区分できる.広島においては,それらの大半が公共施設である.市内には,公演場所となるホールを有する施設は18ある.これらのうち,一部の施設では,客席数が500を超えており規模が大きく,あまり利用されていない.稽古場は,青少年センター,公民館,男女共同参画社会推進センターなどに限定される.これらはいずれも低料金であることから選択されている.しかし,夜間の利用時間に制限があり,劇団の需要を十分に満たしているとは言えない.【情報の発信】公演情報の発信手段として,チラシ,フリーペーパー,SNSなどが挙げられた.また,新聞やラジオなどを通じた広報もしている.ただし,これらの広報手段は,後述するように観客の情報源とは必ずしも一致しない. チケット販売経路では,手売りが一般的である.手売りの購入者は劇団関係者の親族や友人,知人などの「身内的な客」であることが推察される.そのほか,インターネットやプレイガイドでの販売も挙げられた.ただし,対象となった劇団の客層は「顔なじみ客」が多く,手売りで購入する場合が多い.インタビュー調査でも,手売り以外の窓口は,劇団の主要客層とのミスマッチから,十分に機能していないと指摘された.【観劇者の特徴】女性の比率が高い.対象劇団の特性から,学生の比率が高い.大半が市内在住である.東京や大阪での調査結果と比較すると,演劇経験者の比率が高い.【情報の受信】観客の96%が公演の情報源として劇団関係者との会話やメールを挙げている.他方で,インターネット経由の情報を指摘したものは16%にとどまった.チケット購入経路でも,65%が役者,スタッフからと回答しており,彼らが「身内的な観客」であることを示唆している. 【まとめ】地方における演劇活動は場所,時間ともに非常に限定される.公演は,「身内的な観客」によって支えられている.それら以外の客層をいかに育て,取り込んでいくかが重要である.担い手と観客の仲介役としての劇場の役割が期待される.
著者
荒牧 憲隆 山本 健太郎 平 瑞樹 林 泰弘 根上 武仁
出版者
公益社団法人 地盤工学会
雑誌
地盤工学ジャーナル (ISSN:18806341)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.309-322, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
28

宮崎県と鹿児島県の県境,霧島山中央部に位置する新燃岳において,2011年1月19日から始まった52年ぶりの噴火は,新燃岳火口から南東方向に大量の火山灰を降らせた。発生した火山灰の量は,4,000万~8,000万tと推定されており,宮崎県南部周辺の広範囲で降灰が確認されている。この突発的な火山災害により,斜面等に降り積もった火山灰堆積地盤での降雨や火山性地震による安定問題や処分された火山灰のリサイクル方法が重要な課題となってくる。本研究は,上記のことを鑑み,新燃岳より噴出した火山灰を用いて,新燃岳火山灰質土の物理・力学性質を実験的に検討し明らかにすることを目的としている。その結果として,噴火直後の火山灰質土の物理・力学特性は,砂質土と概ね類似した傾向を示し,リサイクル材として有用な材料であることが示された。しかし,火山灰質土特有の性質も包含しており,凍結融解の繰返しにより火山灰質土が細粒化していくことが認められ,物理的な風化の影響により材料特性が経時的に変化していくことが予想される結果となった。
著者
山本 健児
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.334-351, 1981
被引用文献数
2 1
著者
丸山 加名 近藤 悠希 山門 慎一郎 加治屋 忠一 山本 健 古川 綾 石塚 洋一 岩元 正義 山本 美智子 入江 徹美
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.99-108, 2021-08-31 (Released:2021-09-25)
参考文献数
12

Objectives: It is important for patients to make correct use of drug information (DI) to promote the proper use of medicines. Many patients use the Internet to find DI, but awareness about the websites of public institutions that provide DI is low. This study aimed to identify the actual use of the Internet for DI and associated problems to inform development of a comprehensive DI website for patients.Method: Patients with diabetes were set as a model case for patients who take medicines and need DI. A questionnaire survey was conducted among patients with diabetes who visited community pharmacies in Kagoshima City from March 2019 to October 2019. The survey covered Internet use, DI needs, methods of sourcing DI, and problems obtaining DI via the Internet.Results: There were 349 valid respondents (median age 64 years), of which 52.1% used the Internet at least once a week. Around half of the Internet users searched for DI on the Internet. More than half of these respondents chose a DI acquisition site because it “appeared at the top of search results” and was “easy to understand.” However, around half of these respondents felt that “there is too much information on the internet and I don’t know what is correct.”Conclusion: This study suggests that older patients with a long history of diabetes use the Internet to obtain DI. However, patients face various problems accessing DI via the Internet. It may be necessary to construct a comprehensive website that is easy to use and enhance public health literacy to support the proper use of medicines by patients.
著者
山本 健太
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.65, 2010

本発表の目的はアニメーション産業労働者の日行動に着目し,労働者の生産活動の実態を明らかにすることである.これまでのコンテンツ産業研究では,労働者個人の感性やネットワークの重要性を指摘しながらも,現場で働く末端労働者の日々の生産活動をとりあげたものはみられない.そこで本発表では,アニメーション制作企業の協力のもと,生産部門および制作部門の末端労働者である「作画」労働者5人および「制作」労働者5人を対象として,就業実態に関するアンケート調査および,2009年12月15日午前0時から18日午前0時までの活動パス調査を実施した.また期間中,ある「制作」労働者に合計12時間程度同行し,行動を記録した.加えて,対象となった労働者10人に聞き取り調査をした.<br> 調査協力企業の概要は以下の通りである.1986年設立,資本金1,000万円,従業員数33人である.アニメーションの生産については,下請け生産のほか,元請け生産もする.自社内に有する職種部門をみると,経営部門(3人),制作部門(9人),作画部門(10人),演出部門(8人),仕上げ部門(4人)である.これらから,当該企業は典型的な元請け企業であるといってよい.<br> 「作画」労働者の活動パスをみると,初日には,回答者全員が帰宅し,24時間ほど休息をとっている.その後の調査期間中は,いずれの労働者も帰宅していない.制作企業からの外出先と所要時間をみると,ある労働者が3日目21時からおよそ2時間,同僚と食事に出かけているのを除けば,最寄りの大型スーパーへ食事の買出しに30分程度,1回から2回外出するのみである.そのほかの活動では,仮眠や仕事待ち,アニメーション鑑賞,同僚との雑談等がみられ,制作企業内での待機時間が長い.調査期間3日間を通して,ルーチン活動はみられず,不規則な就業をしている.<br> 「制作」労働者の活動パスをみると,自宅が徒歩30圏内にある労働者(3人)については,3日間のうち2から3回帰宅している.それ以外の労働者では,3日間を通じて帰宅しないか,帰宅しても1回のみ4時間程度の滞在に過ぎない.最も活動的な時間帯は19時から3時である.就業時間中は取引先制作企業やフリーのクリエイター間の半製品運搬のため,外出を繰り返す.半製品の運搬については,自社と取引先との単純な往復のほか,1度のトリップで複数の取引先を周回する場合もある.トリップの所要時間は30分から1時間程度の短時間のものが多い.また,労働者毎に取引する企業,クリエイターがある程度決まっている.<br> 密着調査した労働者の2009年12月15日19時から21時における接触記録をみると,間接接触では5箇所計6回の電話をしている.1回の通話時間は1分から5分である.また,多くの場合,1回の電話で1つの話題に限られる.話題は6回の電話のうち,作業進度の作業4回,日程指示3回である.電話をするのとは別に,フリーランサーからの電話への応答,中国子会社へのファクシミリによる納期指示をしている.<br> また,対面接触の回数についてみると,5人計4回している.内容は,「制作」労働者への仕事指示,上司への日程報告のほか,「仕上げ」労働者および作画監督との品質確認作業である.これらの対面接触の1回あたりの所要時間は2分から15分と,電話での接触と比較して長い.単純な作業指示のほか,品質確認作業については,作画監督や仕上げ部門労働者に意見を求めるなど,活発な意見交換がなされていた.<br> 以上の結果から,分業関係について次のような構造が示唆される.「作画」労働者は制作企業に常駐し,「制作」労働者が運搬してくる半製品を受け取り次第,生産する.「制作」労働者はそのようにして生産された半製品を回収し,次の取引先へと運搬する.また,「制作」労働者は現場労働者との短時間での情報共有や意見交換を頻繁にすることで,プロジェクトを進行していく.労働者がこのような生産活動を維持するためには,労働者の多様な働き方を受容する制作企業の存在とともに,各部門労働者が近接し,同時間帯に活動することが求められよう.
著者
野崎 由美 三森 徹 中嶌 圭 岩尾 憲明 山本 健夫 西山 真由美 中澤 正樹 小松 則夫 桐戸 敬太
出版者
山梨大学医学会
雑誌
山梨医科学雑誌 = 山梨医科学雑誌 (ISSN:13485091)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-28, 2013

症例は67歳,女性。発熱と頸部リンパ節腫脹を認め,他院に入院した。入院後,肝機能障害の増悪と血小板減少の進行,さらに末梢血中への異常細胞の出現を認めた。頸部リンパ節生検後にステロイドパルス療法を開始したが,意識障害と呼吸状態の悪化を認め,当院に転院した。転院時,pH7.238,乳酸値15.9 mmol/? と高度の乳酸アシドーシスを認めた。転院後の第3病日に右脳内出血を併発し,第9病日に永眠された。経過中,リンパ節生検結果よりびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断した。重篤な乳酸アシドーシスを伴った原因としては,腫瘍細胞からの乳酸産生の亢進や,剖検により確認された腫瘍細胞の肝浸潤による肝機能障害からの代謝の遅延などが想定された。悪性リンパ腫の経過中に乳酸アシドーシスを合併した症例の報告例は極めて少なく,予後不良であるが,その要因および治療に関して文献的な考察を加えて報告する。
著者
山本 健兒
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.14, 2011

1.はじめに本報告の目的は,1990年代初め以降,長期的衰退傾向にあるわが国陶磁器地場産業の中で,有数の産地である有田においてどのような取り組みがなされてきたかを描き,その取り組みが結果としてより小規模な産地の自己主張を,したがって有田焼産地の分解傾向を明らかにすることにある.そのための主たる研究方法は,産地にある各種組合の理事長または専務理事,有力企業の経営者またはマネージャ,公的機関の陶磁器産業支援担当者への詳細インタビューである.これは2008年9月以降,特に2009年8月から2010年7月にかけて行った.その数は,12企業,8つの産地組合(卸団地,工業,商工,直売,波佐見,大川内,三川内,大有田),2つの公設試,1つの教育機関,佐賀県庁を含む4つの自治体である.2.有田産地の地理的構成有田焼産地は佐賀県有田町よりも広い範囲の分業関係から構成されている.これは例えば下平尾(1973)を初めとする成長時代の有田焼産地に関する諸研究から明らかである.これら先行研究に基づいてその概要を描けば次のようになる.豊臣秀吉の朝鮮侵略を契機として,九州北西部の諸大名は陶工たちを朝鮮半島から連れてきて,陶磁器業を各領内に移植した.その結果,日本の産業近代化以前に,佐賀県有田町に相当する範囲だけでなく,長崎県波佐見町,佐世保市三川内地区にも陶磁器産地が形成された.佐賀県内でも伊万里市大川内地区、武雄市山内町や嬉野市吉田地区に小産地が形成されていた.これらの産地はもともと独自の産地名をもつ製品を生産していたが,第二次世界大戦以降の有田焼の隆盛に伴って,その製造販売に関わる分業関係に組み込まれるようになった.特に生地成形は波佐見町の零細企業が担当し,これを各産地の窯元が焼成するという分業が発達したし,絵付けに特化する零細企業も有田町や波佐見町に多数立地した.旅館や割烹に有田焼を販売する商社は有田町に多数存在するようになったが,デパートなどに卸す比較的大規模な商社は波佐見町で発達した.また近代化以降,すべての小産地で製造される陶磁器の原料は天草陶石となったが,これを陶土に加工するのは主として塩田町(現嬉野市)の業者である.したがって,有田焼産地は実態として佐賀県と長崎県にまたがって形成されるようになった.3.衰退時代のイノベーション形成の試み有田焼生産が1990年代初め以降衰退しつつある理由は,陶磁器への需要低下にある.これをもたらした原因として外国からの安価な陶磁器の輸入もあるが,それ以上に日本人の生活スタイルの変化と旅館や割烹などの低迷による業務用和食器需要の減退が影響している.しかし,日本国内の他の陶磁器産地に比べて有田焼産地には,衰退傾向に対して相対的に踏みとどまる側面もある.それにはイノベーションが寄与している.そのイノベーションには,個別窯元企業あるいは産地問屋をプロモータとする新製品開発もあるが,新製品考案の知的交流の仕組みとこれに関連する流通経路の革新も,産地の維持に貢献している.産地の各種組合の弱体化の一方で,有田焼産地の中にあるより小規模な産地単位でツーリズムと結合しようとする動きもまた,従来の流通経路を破壊し革新するという意味でイノベーションの一つに数えられる.有田町では陶磁器産業で「肥前は一つ」という運動が成長時代末期に展開した.また衰退時代には有田町だけでの産地ブランド運動が起こるというように紆余曲折があったが,現在は有田焼という名称とは別に,伊万里市大川内地区の鍋島焼,長崎県波佐見町の波佐見焼,佐世保市三川内地区の三川内焼を前面に出す動きが顕著になりつつある.大川内では1960年代の洪水被災の後、1980年前後から開始された長期にわたる景観整備と結びついて,ツーリズムと結合させる産地振興が進んだ.波佐見町では,産地ブランドというよりもむしろ,独自の企業ブランドを確立した窯元による東京の消費者との直接的結びつきや,東京に本拠を置くプレミアム商品等開発企業との提携で従来の有田焼や波佐見焼のイメージとは全く異なる新商品開発生産に従事する企業などが,いずれも波佐見町中尾地区の景観と結びついてツーリズムの振興につながっている.三川内でも,産地組合が従来の機能を停止してツーリズムへと走りつつある.4.おわりに上に見た有田焼産地でのイノベーションのための試みは,各小産地の商品を小産地名で再生・復権あるいは普及させようとする動きへとつながっている.したがってかつての有田焼産地は,幕藩時代に形成された小産地へと分解する傾向にあるといえる.今後,有田焼産地は縮小を余儀なくされるであろうが,各小産地でのイノベーションへの努力によって,小産地は,あるいは企業単独でのブランドを確立した企業は存続する可能性が高い.
著者
廣瀬 正幸 棚村 壽三 山本 健 光田 恵
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-7, 2016 (Released:2018-01-10)
参考文献数
8

食品を用いた官能評価のパネルを選定するための味の識別試験の呈味物質濃度に関しては、約40年前から研究がなされているが、約40年前から食の多様化による変化によって、若者の味覚が変化している可能性がある。そこで、本研究では、既往の研究濃度を参考に、三点識別試験法を用いて大学生の味の識別能について検討を行った。得られた知見は以下のとおりである。1)味の検知率は、甘味が47.9%、塩味が98.6%、酸味が47.9%、苦味が49.3%、うま味が91.8%であった。味の認知率は、甘味が39.7%、塩味が68.5%、酸味が34.2%、苦味が35.6%、うま味が60.3%であった。2)既往の配偶法と今回の三点識別試験法の認知率を比較すると、塩味とうま味はほぼ同じ値であったが、甘味や酸味、苦味は三点識別試験法の方が約20~30%程度低い値であった。