著者
浦 正広 山田 雅之 遠藤 守 宮崎 慎也 安田 孝美
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.143-150, 2009 (Released:2010-01-13)
参考文献数
9

バルーンアートは,バルーンにより動物などの形状を制作するアート技法である.1本,もしくは,複数本のバルーンをひねることにより,様々な形状が生成できる.バルーンアートの造形はシンプルであるが,想定された完成形状から制作手順を推測することは容易ではない.そこで,本研究では,バルーンアートのための構造解析手法と難易度評価手法を提案する.1本のバルーンにより制作されるバルーンアートの完成形状をグラフで表現すると一筆書きができることから,グラフからオイラー経路を求め,その経路に基づき制作手順を導出する.また,1つのバルーンアートに対し,一般に複数の制作手順が存在するため,制作過程におけるバルーンの変形操作の難しさを定量的に評価し,導出される制作手順の難易度を比較する.実際のバルーンアート作品に提案手法を適用することで,その有効性を確認する.
著者
岩瀬 亮 鈴木 茂樹 中 貴俊 山田 雅之 遠藤 守 宮崎 慎也
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.37-43, 2007 (Released:2008-07-30)
参考文献数
13

知恵の輪を解く際の難易度は,輪を外す手順の組み合わせの複雑さや,輪が移動可能な経路全体の構造の複雑さが主に関連していると考えられる.本論文ではこれら複雑さを表す量を仮定し,知恵の輪の難易度との関連性を明らかにすることにより,知恵の輪の難易度を定量的に評価する方法を提案する.これを実現するためには,知恵の輪の解を計算機処理により求めるためのアルゴリズムや,探索空間の構造化を実装する必要がある.本研究ではまず,実在する知恵の輪を対象としてこれを実現した.次に,シミュレーションで得られた諸量と実際に人が感じる難易度との関連性を被験者実験を通じて評価し,それらの諸量の知恵の輪の難易度としての妥当性を検証した.
著者
渡場 康弘 酒井 晃二 小山田 耕二 金澤 正憲
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.11-17, 2006-03-20 (Released:2008-04-11)
参考文献数
11
被引用文献数
2

特異点グラフと文字認識技術を利用して, ボリュームデータ間の類似性を視覚的に比較できる手法を提案する. 特異点グラフは, ボリュームデータの特徴を三次元空間における曲線という単純な図形で表現したものである. そこで, 特異点グラフを比較するために, 二次元空間で曲線を比較する手法である文字認識技術を利用した通過ボクセル判定法を考えた. この手法は, 文字画像を各ピクセルの値で比較する手法を拡張したもので, ボクセル単位でグラフの通過状況を比較する手法である. そして, ボクセルごとの判定結果に従ってボクセルの色を決めることによって, その類似状況を可視化することが可能である. しかし, この手法にはいくつかの問題点がある. そこで, グラフが細かい線分で構成されていることから, 文字認識技術の1つである方向線素特徴ベクトルを利用して, 通過ボクセル判定法の問題を解決した.
著者
水野 一徳 山田 雅一 福井 幸男 西原 清一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.23-32, 2006-06-20 (Released:2008-04-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

近年の計算機性能の向上に伴い, 道路交通における様々な現象を再現しようとする試みが盛んに行なわれている. 本論文では, マルチエージェントを用いて道路交通問題をモデル化し, 交通流を微視的にシミュレートする方法について述べる. 本モデルは, 道路交通を構成する要素 (車両, 交差点, 道路, 信号) をエージェントとして表現しこれらの相互作用によって交通流を再現するものである. 本論文では特に, 実際の交通流を動的かつ直接的に形成する車両エージェントについて詳しく述べる. 車両エージェントは, 行動決定, 個性という2つの知識ベースを持ち, これらに基づいて各単位時間の行動を決定する. また, 決定された行動の候補は, 3つの単位運転操作 (アクセル, ブレーキ, ハンドル) の繰り返し組み合わせることにより達成される. 交通流を3次元的に可視化してシミュレートすることにより, 車両エージェントの相互作用によって渋滞等の現象が発生していることを示す.
著者
海渡 麻美 渡邉 絵美 中 貴俊 山田 雅之 遠藤 守 宮崎 慎也 長谷川 純一
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.54-67, 2005 (Released:2008-07-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本論文では,変位情報を用いて制作したVRアプリケーションとして,紙相撲をテーマとした対戦型の実装例を2件提案する.はじめに,プレイヤの跳ぶ行為を入力データとし,ディスプレイ上に表示される紙力士の動きに影響を及ぼすシステムを提案する.つづいて,このシステムに対する評価実験の結果を反映させ,プレイヤが水を揺らす行為を入力データとし,水に浮かぶスクリーンに表示される紙力士の動きに影響を及ぼすシステムを提案する.両システムとも,距離を測るセンサを用いて,プレイヤが入力装置に与える動作を変位情報として取得し,システム内のインタラクション処理に利用している. この直感的かつ堅牢なインタラクションモデルを用いることで,新たな体感型VRアプリケーションを実現することができた.
著者
山田 雅之 鈴木 茂樹 ラフマット ブディアルト 遠藤 守 宮崎 慎也
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.149-158, 2004 (Released:2008-07-30)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

本論文ではコミックを携帯電話端末上で閲覧できるシステムについて述べる.表示画面のピクセル数が十分でない携帯電話端末でコミックを提供するためには,コミックをコマ毎に分割して表示したり,台詞のテキストを抜き出して拡大表示したりする工夫が必要である.そのためは,コミックからのコマフレームの抽出,整列,ならびにフレーム画像内の台詞の抽出,整列等の処理が必要であり,本文では特にそれらの処理を実行するためのアルゴリズムを提案する.また, 実際にコミックのデータをWebサイトからダウンロードし, 携帯電話上でコミックを再構成するプログラムを実装し,携帯電話の画面に実際に表示される画像のクオリティやコンテンツとしてのコストパフォーマンスについて検証する.
著者
伊藤 貴之 小山田 耕二
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-7, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
16

デジタルコンテンツ技術の歴史は、必ずしも計算機とともに歩んでいるとは限らない。しかし昨今の計算機基盤技術の発展が、デジタルコンテンツ技術に大きな影響を与えている事例は数々ある。このことから、デジタルコンテンツ技術のさらなる普及と発展のためには、デジタルコンテンツ制作者も計算機基盤技術に精通しておいて損はない、と考えられる。本論文では非常に多種にわたる計算機基盤技術の中から、XML、電子透かし、Webサービス、グリッドコンピューティングを題材にして、これらの技術の概要を述べるとともに、今後のデジタルコンテンツ技術との関連性について議論する。
著者
鈴木 茂樹 山田 雅之 宮崎 慎也 長谷川 純一 安田 孝美 横井 茂樹
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.8-14, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
5

運動計算を比較的高速に行える弾性プリミティブ(弾性要素)モデルで構成される仮想弾性物体とのリアルタイムインタラクションを実現する.一般的なボクセルデータ形式の入力形状に対して,大きさの異なる多面体形状の弾性要素を効率良く組み合わせることにより,高速処理に有利な少ない要素数で自由形状の弾性物体モデルを構築する.弾性物体とのインタラクションのための入力デバイスとしてジョイスティックデバイスを用いることにより,フォースフィードバックを伴ったインタラクションが可能である.弾性物体とマニピュレータとの衝突処理においては,幾何学形状をなすマニピュレータと弾性物体の間の物理法則にもとづく衝突処理モデルにより,適切なフィードバックフォースを実現している.
著者
山田 亜希子 栗原 亜由希 杉山 智美 浅里 仁 井上 美津子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.487-494, 2015-11-25 (Released:2017-03-16)
参考文献数
24
被引用文献数
6

家庭における子どもの歯科保健に対する保護者の意識とその実態について把握し,今後の保健指導に活用することを目的として,幼稚園に通う3 歳~6 歳の園児の保護者を対象に,子どもの歯科保健に対する意識調査を行い,以下の結果を得た。1 .齲蝕予防において歯磨き以外に気をつけていることは,父母ともに「定期検診」が最も多く,その重要性は広く認識されていたが,父親では「なし」も多かった。2 .母親の95.2%,父親の56.8%が仕上げ磨きを行っており,全体からは少数であるものの母親が働いている場合,父親が仕上げ磨きを行っている割合は高かった。また,父親の多くは「なんとなく」仕上げ磨きを行っていた。3 .子どもの口腔内への興味は,父母ともに「むし歯」が最も多く,次いで「歯並びや咬み合わせ」であった。4 .参加している育児項目において「仕上げ磨き」は父母ともに頻度の高いものであった。今回,子どもの歯科保健に対する幼稚園児の保護者の意識を,父母別々にその違いについて把握できたことは,今後の口腔衛生指導につながる意義のあるものであった。育児の主体が母親から両親へと移行してきているなか,父親の子どもの口腔内への関心は,母親に比べ低かった。今後,父親にも積極的に子どもの定期検診に来てもらい,仕上げ磨きに参加してもらえるよう,かかりつけ歯科医院での検診方法や口腔衛生指導も,提案していく必要が示唆された。
著者
山田 佳奈
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.93-122, 2018-12-28 (Released:2021-11-24)
参考文献数
28

作物遺伝資源をめぐるイシューは、世界的に取り上げられるようになって久しい。しかも、このイシューは知的財産権や新品種の育成者権、「農業者の権利」をはじめ、先住民族の権利や、全ての人間が持つとされる「食への権利」といった多様な権利を含みこみつつ、議論が展開されてきた。特に戦後の国際社会では、グローバル化の進展に伴い、知的財産や環境分野など国を超えたルール化の必要に迫られてきた経緯があり、作物遺伝資源についても各領域相互の調整が要請されてきた。果たして、複雑さを増し続けるこの現代的イシューには、何が進行しているのだろうか。 本稿では、こうした問題意識から、現状をより包括的に捉える視角として、国際政治学等において議論されてきた「レジーム・コンプレックス」概念を手がかりに、作物遺伝資源の取り扱いに関わる国際的な諸制度の変遷をまず整理した。その際には先行研究で示された四つの基本レジームに則りながら、知的財産・貿易・環境・食と農に関わる領域の制度変化を概観し、この中で立ち現れる「権利」の諸相から、特に「人権」規範の浸透を確認するとともに、「作物遺伝資源レジーム・コンプレックス」の再定位の試みとして、より根本的な「権利レジーム」を提示した。さらに、現代の作物遺伝資源イシューにおける権利主体の布置状況の描写を試み、現代において進行してきた事態として、「権利主体化」の進行を指摘した。