著者
高村(山田) 由起子 尾崎 泰助
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.488-492, 2017-06-10 (Released:2019-09-26)
参考文献数
18

グラフェンのケイ素版といえるケイ素の蜂の巣格子であるシリセンは,1994年の論文1)でその存在が理論的に予言されていたものの,実験的な合成報告があったのは最近である.黒鉛からの機械的剥離により得られるグラフェンと異なり,炭素と同じ14族元素の蜂の巣格子であるシリセンやゲルマネン,スタネンなどは母材となる層状物質が存在しないため,実験的な合成報告は単結晶基板上へのエピタキシャル成長によるものがほとんどであり,結晶構造と電子状態への基板の影響が無視できない.加えて,同定の決め手となる評価方法が存在せず,複数の相補的な分析法を併用する必要があり,なおかつ,得られた実験結果,特に電子状態の解釈を行うには,第一原理電子状態計算が不可欠であるなど,1つの研究室ではなかなか歯が立たない.本稿では,シリセンのような未知の2次元材料の研究を行うにあたって,実験と計算の協奏(競争?)がいかに重要であるかを,我々のこれまでの共同研究の成果を交えて論じてみたい.
著者
伊藤 不二夫 伊藤 全哉 中村 周 柴山 元英 倉石 慶太 河合 将紀 山田 実 星 尚人 吉松 弘喜 三浦 恭志
出版者
一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
雑誌
Journal of Spine Research (ISSN:18847137)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1.2, pp.22-31, 2021-01-20 (Released:2021-01-20)
参考文献数
10

はじめに:脊椎後方除圧術として観血法,顕微鏡下除圧術,内視鏡下除圧術,経皮的内視鏡下除圧術等を行ってきたが,今回導入した片側進入双穴内視鏡Unilateral Biportal Endoscopy(UBE)の臨床経験を報告する.対象と方法:脊柱管狭窄症56例,椎間孔狭窄症3例,ヘルニア5例の計64例を手術した.傍棘突起部で椎間板レベルの1 cm頭側に4 mm径の内視鏡ポータルを作成する.それより2 cm尾側の8 mm径作業用ポータルから,ラジオ波,4 mmダイアモンドバー,直・弯曲ケリソン,剥離子,鉗子等を使用する.結果:手術時間は初期2時間が,20例以降1時間に短縮した.下肢症状・腰痛VASは有意に減少した.Macnab評価の満足率は83%であった.術後血腫はなかった.硬膜損傷は2例にあり,fibrin patch法で修復した.結語:持続水灌流の鮮明視野下で,レンズ先端は組織に近接し毛細血管も拡大され,止血が丁寧にできるため,術後血腫が少ない.外筒は使用せず器具の作業範囲に制限がなく,骨掘削量が少なくて済む.
著者
倉 昂輝有吉 正則山田 大豪
雑誌
第56回日本作業療法学会
巻号頁・発行日
2022-08-29

【はじめに】近年,わが国の発達障害児の支援において,家族支援が重要視されている.このような背景から作業療法(以下,OT)においても家族中心のケアに基づき保護者への支援が実践されている.OTで実践される家族支援の1つにホームプログラム(以下,HP)があり,発達障害領域の作業療法介入に関するシステマティックレビューにおいて,そのエビデンスが示されている(Novak I,2019).しかし,わが国のHPの研究は症例報告が主であり,HPを経験した当事者の視点を報告したものはない.さらに,母親らを対象としたこれまでの研究は,子育てに対する葛藤や困難さに焦点が当てられてきた.そのため家庭内という外部からみえにくい環境の中で母親らが子育てをどのように展開しているのかは不明な点も多く,それらの要因と関連する専門家のサポートも明らかにされていないのが現状である.【目的】本研究の目的は,発達障害児を養育する母親のHPを通じた子育てにおける思いや経験,行動にかかわる諸要因を当事者の視点から明らかにすることである.【方法】研究参加者は,個別の外来OTと並行して目標に基づくHPを実施した母親とした.外来OTは隔週の頻度で1回あたり40分間,全12回,約6ヶ月間,HPは外来OT3回目から10回目まで行った.HPは先行研究で提唱されている5フェーズを参考に実施した(Novak I,2006).データ収集は,母親らを対象に半構造化面接によるインタビューを実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.サンプリング方法は便宜的サンプリングから理論的サンプリングに移行した.本研究は兵庫医療大学倫理審査委員会の承認(第19028号)を得て実施した.また,研究参加者には書面による同意を得ており,COI関係にある企業等はない.【結果】10人目のデータ分析において新たな概念が生成されなかったため,サンプリングを終了した.分析によって25個の概念,9個のサブカテゴリー,4個のカテゴリーを生成した.以下,概念を〈〉,サブカテゴリーを《》,カテゴリーを【】として示す.発達障害児を養育する母親らは,身体的負担の増加や心理的苦痛,強いストレス,社会的孤立を抱えて子育てを行なっていることが明らかにされた.このような子育て環境に対応するための重要な要因として《否定的感情との折り合い》,《忙殺される日々との折り合い》,《社会的通念との折り合い》の3つのサブカテゴリーから成るコアカテゴリーを生成した.これは母親自身が見つけた問題解消法であり《子育て視点の拡大》の変化<をもたらす働きがあると見出された.この変化は〈わが子と見つけた目標〉と〈できることからスタート〉する《実現可能な一歩》という具体的な支援手段を母親らにもたらし,友人や夫,祖父母などに対して,どのような子育ての支援を求めるかの判断を明確にしていた.【考察】《否定的感情との折り合い》,《忙殺される日々との折り合い》,《社会的通念との折り合い》という問題解消法は,【複雑な子育て環境に対する適応】を促す上で核となる概念であり,子育てにおける視点の拡大に発展する.この視点の拡大が現状に則した目標と活動に対する方略を子どもと見つけることにつながると考える.さらに母親らは友人や祖父母,夫との子育てにおける相互的な関わりのなかで,周囲の人々の役割特性を捉え,臨機応変に依頼するという方略を見つけていたと考える.OTにおける家庭への支援は,母親の子育ての状況や周囲との相互作用を評価し,個々の家庭の営みにかかわる文脈に適した子育て方略を母親自身によって見出せるようにサポートすることが重要である.
著者
山田信夫編
出版者
巌南堂書店
巻号頁・発行日
1983
著者
布目潮渢 山田信夫編
出版者
法律文化社
巻号頁・発行日
1995
著者
北本 英里子 山田 悟史 神長 伸幸
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.27, no.66, pp.1104-1109, 2021-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
12
被引用文献数
2

The impression of space and perception of distance may be different in real space, 3D space on the flat display (DP space), and 3D space on the immersive head-mounted display (HMD space). In this study, the mean value and standard deviation were calculated and verified based on the data obtained from the experiment. The difference between DP space and HMD space for the real space is described. The results showed differences of the perceived distance and, in psychological evaluations, differences of the openness and the presence of the object.
著者
山田 悟史 北本 英里子 神長 伸幸 及川 清昭
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
vol.24, no.58, pp.1303-1307, 2018-10-20 (Released:2018-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
3

In real space, 3D space seen on the display (DP space), and space seen on the immersive head head-mounted display (HMD space), the impressions of space and perceptions of distance are different. In this study, the t-test was carried out based on data obtained from experiments to clarify the difference of DP space and HMD space from real space. The results show that there is a significant difference between the DP space and the HMD space, and it became clear that the DP space gives a perception close to the real space.
著者
浜口 毅 山田 正仁
出版者
日本神経感染症学会
雑誌
NEUROINFECTION (ISSN:13482718)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.65, 2020 (Released:2020-05-13)
参考文献数
33

【要旨】Creutzfeld-Jakob 病(Creutzfeldt-Jakob disease、以下 CJD)に代表されるプリオン病は、脳における海綿状変化と異常プリオンタンパク質蓄積を特徴とする神経変性疾患である。ウシ海綿状脳症からヒトへ伝播したと考えられる変異型 CJD やヒト乾燥屍体硬膜移植や成長ホルモン療法、脳外科手術等によって伝播したと考えられる医原性 CJD のように、プリオン病は同種間あるいは異種間で伝播しうる。一方、Alzheimer 病(Alzheimer's disease、以下 AD)の病理学的特徴の一つであるアミロイドβタンパク質(amyloid β protein、以下 Aβ)の脳への沈着も、プリオン病の異常プリオンタンパク質と同様に個体間を伝播することを示す動物実験結果が近年多数報告され、さらに、硬膜移植後 CJD や成長ホルモン製剤関連 CJD といった医原性CJD 剖検脳の検討から Aβ病理変化がヒトにおいても個体間を伝播した可能性が報告されている。脳血管へのアミロイド沈着症である脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloid angiopathy、以下 CAA)は、脳血管へ Aβが沈着する孤発性 CAA(Aβ-CAA)が、高齢者や AD 患者でしばしば認められるが、若年での報告はきわめて少ない。しかし、近年、若年発症の CAA 関連脳出血の症例が複数報告され、それらの症例は脳外科手術歴を有していたことから、脳外科手術での Aβ-CAA が個体間伝播した可能性が指摘されている。 これらの症例にはヒト乾燥屍体硬膜移植がはっきりしない症例も含まれており、ヒト乾燥屍体硬膜移植だけでなく脳外科手術器具によって Aβ-CAA が個体間伝播した可能性も疑われている。
著者
石元 優々 高見 正成 平 一裕 中田 朋紀 山田 宏 上田 健太郎 加藤 正哉
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.751-755, 2022-08-31 (Released:2022-08-31)
参考文献数
10

コロナ時代を迎え初めての夏に,飲酒後河川に飛び込み頸髄損傷を発症した2症例を経験した。近年プールには監視員がおり,飛び込みも禁止されているためプールでの飛び込み損傷は減少していると思われるが,海や河川ではその限りではない。コロナ禍で人々の行動に変化がもたらされ,外傷について発生率やまたその原因に変化が起きている。河川への飛び込み損傷は頸髄損傷の原因としてまれであり,その疫学的実態を知ることは困難である。河川への飛び込みによる頸髄損傷の手術は,当科では過去10年間行っていなかったものの,2020年夏季に続けて2例経験した。頸髄損傷は回復が困難であり一生不自由を強いる不幸な外傷であるが,飛び込みによる頸髄損傷の危険性について周知されているとはいい難い。人々の行動が変容した本時代に改めて本事故について啓発が必要であると考える。