著者
江上 周作 渡邊 勝太郎 川村 隆浩 Shusaku Egami Katsutaro Watanabe Takahiro Kawamura
雑誌
人工知能学会研究会資料
巻号頁・発行日
vol.47, no.13, pp.1-10, 2019-03-10

従来の科学技術マップ(サイエンスマップ,Map of Science)は論文間の引用関係に基づくものが多く,競争的資金によるプロジェクト等の引用が蓄積されない文書同士の関係や,論文とプロジェクトの関係を同一画面で可視化分析することは困難である.そこで,我々はこれまで論文やプロジェクトの内容類似度に基づく科学技術マップを開発してきた.開発したマップは論文やプロジェクトの時系列変化,統計情報,特徴語表示などの基本的な機能に加えて,ユーザの求める様々な視点からの分析に向けた動的レイアウト生成機能や,より高度な分析に向けたSPARQL検索結果の可視化連動機能などを提供する.本稿では,開発した科学技術マップの様々な機能や,これらの機能を実現するバックエンドとしてのナレッジグラフの構築,システムの構成,インタラクティブな操作の実現に向けたクラスタリング手法について述べ,分析結果の例について紹介する.
著者
川村 隆浩 江上 周作 長野 伸一 大向 一輝 森田 武史 山本 泰智 古崎 晃司
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
JSAI大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.1F101, 2018

<p>本論では,2018年に国内で初開催するナレッジグラフを対象とした推論チャレンジについて述べる.近年,深層学習をきっかけに人工知能(AI)技術への関心が高まっている.今後,AI技術は幅広く普及し,さまざまな社会システムに埋め込まれるようになるだろう.しかし,安全・安心に社会の中でAIを活用していくためには,AIによるシステムの動作を正しく解釈,検証し,品質を保証する技術が必要となる.そこで,本会セマンティクWebとオントロジー(SWO)研究会では,解釈可能性なAIに関する最先端技術の共有と研究開発の促進を図るため,推論に関するチャレンジを開催する.具体的には,広く知られたシャーロックの推理小説をナレッジグラフ化し,そこから犯人を推理(推論)する技術を広く一般から募集する.本チャレンジは2018年度人工知能学会全国大会開催当日より約半年間の日程でスタートする.是非,チャレンジへの参加をご検討されたい.</p>
著者
川村 隆一 村上 多喜雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.619-639, 1998-08-25
参考文献数
30
被引用文献数
10

赤外輝度温度、850hPa高度、風、気温、比湿データに調和解析を適用し、季節変化の長周期成分(第1から第3調和関数までの和)をLモード、残りの調和関数で表現される短周期成分をSモードと定義した。初夏の期間、Lモードはカムチャッカ半島-オホーツク海上のリッジと、中国北部(大陸の熱的低気圧の中心)から日本、さらに東方へ延びるトラフのブロッキング型循環パターンを示す。オホーツク海上の局所的なLモード高気圧セルの発達により、アリューシャン諸島付近から北日本へかけての下層東風偏差が強まる。この東風偏差と大陸の熱的低気圧の南東縁に沿った南西風偏差によって、日本付近で水蒸気収束を伴う強い低気圧性シアーが形成される。初夏にみられる東アジアと西部北太平洋との間の東西温度勾配の強化と関連した、Lモード下層トラフの発達は梅雨システムの形成に必要である。大陸スケールの熱的低気圧の発達に起因する、中国東岸に沿うLモード南西風は、モンスーン西風と中緯度偏西風をつなぐブリッジとなり、結果として南シナ海から中部北太平洋へ延びる対流圏下層の西風ダクトを生み出す。6月中旬の梅雨オンセット期には、対流起源のSモードonset cycloneが南シナ海上で発達し、ほぼ同時にSモードonset anticycloneがonset cycloneの北東側に組織化される。下層西風ダクト周辺のSモード擾乱の増幅が熱帯から日本南部へ、湿潤で温暖な空気の北向き移流をもたらしている。7月中旬までに、アジア大陸の熱的低気圧はそのピークに達し、関連して東南アジアの夏季モンスーンも最盛期が訪れる。7月下旬の梅雨明け頃は、大陸の熱的低気圧は地表面冷却により衰退し始めるが、Lモード太平洋高気圧は依然として北へ発達し、8月初めに最盛期を迎える。海陸間の東西温度勾配の弱化に伴い、日本付近のLモード下層トラフが消失し、一方では西太平洋モンスーン(WNPM)トラフが発達する。また、梅雨オンセットと同様に梅雨明け時にもSモード擾乱の発達がみられる。このように、大陸-海洋の熱的コントラストに関係する、Lモード循環の季節進行が、下層西風ダクト内および周辺のSモード擾乱の活動を強く規制している。そのメカニズムとして、西風ダクトがSモード擾乱の順圧ロスビー波の分散に対するwave guideとして働いている可能性や、水平シアーをもったLモード平均流の存在が、二つのモード間の順圧相互作用を通してSモード擾乱の発達と持続に重要な働きをしている可能性があげられる。いずれにしても、Lモード循環とSモード擾乱の複合効果が、梅雨オンセットや梅雨明けのようなローカルな気候学的イベントを非常に急速かつ劇的な変化にしていることに変わりはない。
著者
間瀬 久雄 辻 洋 絹川 博之 川村 隆雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第46回, no.人工知能及び認知科学, pp.127-128, 1993-03-01

プログラム開発の効率向上の一方法である,かな漢字プログラミングの研究を進めている.これまでに,単語分かち書きのカナ文字列で記述可能なCOBOLプログラミング用簡易言語CORALを開発した.CORALは大型計算機VOSシリーズ上で稼動している.我々は,開発効率をさらに向上させるべく,より可続性に優れた非単語分かち書きかな漢字文による記述を検討し,形態素解析によってかな漢字プログラムを既存のCORALに変換するプリコンパイラのプロトタイプを開発した.これによりデバッグ効率が向上するほか,プログラムを仕様書として利用できる.なお,本プロトタイプにおけるかな漢字プログラムの構文は,従来のCORALの構文をほぼ継承している.本稿では,本プロトタイプの構成および機能について述べ,また,テストプログラムを用いた評価結果について考察する.
著者
植田 宏昭 安成 哲三 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.795-809, 1995-08-25
参考文献数
15
被引用文献数
13

西太平洋上の大規模対流活動と風の場の季節変化を、静止気象衛星の赤外黒体輻射温度(T_<BB>)とヨーロッパ中期予報センター(ECMWF)全球客観解析データを用いて、1980年から89年の10年間にわたり解析した。特に、本研究では西太平洋上20゜N,150゜E付近の大規模対流活動が、7月下旬に急激に北上することを記載する。活発化した対流活動はそこに強い低気圧性循環を作り出し、その低気圧の南側に西風、北側に東風を引き起こす。この強い低気圧性循環は西部熱帯西太平洋上に忽然と出現する。しかし、同時期の110゜E以西のモンスーン西風気流は加速しておらず、この急激な変化はアジアモンスーンシステムとは切り離されていることを示唆している。更に対流活発域の北側には高気圧性循環が生じ、それは日本付近の梅雨明けに対応している。また大規模対流活動の急激な北上は熱帯性低気圧活動に関連していることが明かになった。中緯度では、7月下旬の大規模対流活動の急激な北上前後のジオポテンシャル高度パターンから、鉛直方向に等価順圧構造になっている事が分かり、20゜N,140゜E(西太平洋)付近の対流活発域から、北方の60゜N,180゜E(べーリング海)に向かってロスビー波が北東方向に伝播していることが示された。この他20゜N,150゜Eの海面水温(SST)は、急激な対流活発化の約20日前の7月上旬に、29℃を越える高温に達していることを示した。この北東方向に拡大する温かいSST領域は、7月下旬の対流活発化と密接に関係していることが推察される。この結果より、SSTの上昇は対流活動の急激な北上に対して十分条件ではないが、重要な必要条件の一つであると考えられる。
著者
川村 隆浩 山下 泰弘 松邑 勝治
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
pp.2016_028, (Released:2016-06-30)
参考文献数
26
被引用文献数
1

現在,論文数や被引用数といった研究業績の量に基準を設けて研究者を判断することがしばしば行われている.しかし,基準の設定は分野によって異なる上,経験則に頼らざるを得ない.また,単純な合計では年長者が有利になり易い等の問題が指摘されている.そこで,本論では業績の量に加えて時系列的変化からも特徴を見つけ出し,それに基づいて研究者を分類することを試みる.具体的には,大規模な文献データセットからビブリオメトリクスの時系列パターン群を抽出し,機械学習手法によって研究者を “優秀” かそうでないか分類するモデルを構築する.実験では,JST と Scopus のデータセットを用いて 2 分野計 114 名の研究者を対象に,F 値 80%以上の精度で分類できることを確認した.今後は,対象人数の増加や別分野での検証を進め,“優秀” な人財発見に役立てたい.
著者
芦川 将之 川村 隆浩 大須賀 昭彦
出版者
The Japanese Society for Artificial Intelligence
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.503-515, 2014
被引用文献数
2

Open Crowdsourcing platforms like Amazon Mechanical Turk provide an attractive solution for process of high volume tasks with low costs. However problems of quality control is still of major interest. In this paper, we design a private crowdsourcing system, where we can devise methods for the quality control. For the quality control, we introduce four worker selection methods, each of which we call preprocessing filtering, real-time filtering, post processing filtering, and guess processing filtering. These methods include a novel approach, which utilizes a collaborative filtering technique in addition to a basic approach of initial training or gold standard data. For an use case, we have built a very large dictionary, which is necessary for Large Vocabulary Continuous Speech Recognition and Text-to-Speech. We show how the system yields high quality results for some difficult tasks of word extraction, part-of-speech tagging, and pronunciation prediction to build a large dictionary.
著者
冨田 宏 木下 健 山口 一 林 昌奎 川村 隆文 早稲田 卓爾
出版者
独立行政法人海上技術安全研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

海洋において突然出現する巨大波浪(Freak/Rogue Wave)は大型船舶や海洋構造物の重大損傷、中小船舶の喪失を引き起こす極めて危険な現象として近来世界的にその発生機構の解明や発生頻度の推定に関する研究が注目されている。本課題研究においては先ずフリーク波がどのような波として実海域に出現するのかについて既存のデータや海員等の実体験をもとにフリーク波の特異性について共同研究者ならびに関係者によって組織されたフリーク波研究会において引き続き定期的に議論を行い、共通認識を深めた。さらに当該期間中造船学会におけるオーガナイズドセッションをはじめ、フリーク波や関連現象に興味を有する数学、数理物理学、海洋学、船舶・海洋工学、土木工学等諸分野の研究者に呼びかけ、九州大学応用力学研究所においてシンポジウム「海洋巨大波の実態と成因の解明」を2回にわたって開催レ、異分野間の交流を深め研究の進捗に多大な刺激を与えた。得られた成果の一部は海外研究集会においても発表された。さらに、韓国におけるフリーク波研究プロジェクトグループ(MOERI)との交流の一環として、釜山で開催されたフリーク波の国際シンポジウムに参加し、研究代表者が招待講演を行った。それらの議論を踏まえて、2次元的な長い峰を持つ場合についてはうねり等に適用出来ると言われている非線形波動理論、就中、非線形シュレディンガー方程式を基礎とした理論的研究をさらに詳細に行い、そこでプラズマ物理学において現れるホモクリニックな解としてのBreatherと呼ばれる現象に着目し、これを水面波に応用することによってフリーク波の有力なモデルが得られることを明らかにした。この結果は船舶試験水槽における物理実験ならびに81E法を用いた数値シミュレーションによっても確認され、曳航模型船に対する波浪荷重の推定実験の入力データとして提供された。また当該方程式の差分法による数値計算を実行することによって、周期境界条件の下ではこの種のブリーク解が繰り返し現れFPUの回帰現象を示すことを確かめた。この結果からフリーク解が(1Dについては)KdVソリトンに類似の基本解であることが明らかとなった。より一般の方向性(2D)を有する巨大波についてはこの現象の発現が稀であることから十分多数の観測データを取得することが困難であるため、発生確率を正確に決定するには至らなかった。実用的に重要なこの課題を克服するためには実海域における人工衛星リモートセンシングから確認する必要があるためそれを可能とするデータ解析アルゴリズムの開発を引き続き行っている。さらに散乱データに大きな影響を与える要素である海上風とそれによる表面誘起流れの様子を子細に調べるためにCFD手法に基づく海面での大気一海洋相互作用シミュレーション計算を引き続き行っている。方向性を有する波列の研究は新しい科研費研究課題として取り組まれる予定である。この種のシミュレーションが本格化すれば100年来の海洋学の未解決な大課題である風波の発生機構にも解決を与えることが可能であると期待される。
著者
糟谷 司 川村 隆一
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.917-925, 2012-10-31

1997年から2009年までの期間について全国規模でGPS可降水量を算出し,その季節変化の気候学的な特徴について調べた.冬期から春期への季節進行と共に可降水量は全国的に増加していくが,西日本では5月末の少雨期の直前に可降水量の増加が停滞し,その後約20mm程度の可降水量の急増に伴って6月中旬に梅雨入り(オンセット)を迎える.オンセット時の最大増加率は1mm/dayを超え,増加率の極大後約10日後に降水量が最大値を示す.また,盛夏期の可降水量の上限値は50mm程度である.秋期に可降水量が急激に減少する時期は西日本では2回,東日本では1回で,特に9月中旬の減少傾向は全国規模である,可降水量の夏期前後の季節変化にみられる非対称性は西日本で特徴的であるが,北海道では8月初めを極大とする対称性が際立っており,可降水量の季節変化に地域的な特徴が見出された.