著者
相須 咲希 平野 美千代
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.503-509, 2021-07-15 (Released:2021-07-20)
参考文献数
20

目的 都市部町内会における平常時の防災活動と,リーダーシップをはじめとした町内会役員の特性との関連を明らかにすることを目的とする。方法 A市B区の単位町内会308か所において役職に就く者1,270人を対象とした。郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施し,調査項目は,属性,防災活動に対する役割認識(以下,役割認識),町内会組織の特性,平常時の防災活動,リーダーシップ,チーム志向性で構成した。リーダーシップは,相川らのリーダーシップ尺度より遂行指導を使用した。チーム志向性は,先行研究を基に研究者が作成した項目で構成した。分析は,防災活動を従属変数,対象者の特性(属性,役割認識,リーダーシップ,チーム志向性)を独立変数,組織の特性を調整変数として,各活動についてロジスティック回帰分析を行った。結果 調査票の回収数616人,有効回答数605人(有効回答率47.6%)であった。回答者の属性は,男性534人(88.3%),平均年齢69.0±9.1歳であった。防災活動は,「防災資器材の整備・点検」を実施していると回答したのは464人(76.7%),「地域住民の把握」423人(69.9%),「防災知識の普及」405人(66.9%),「地域の安全点検」334人(55.2%),「防災訓練」316人(52.2%)であった。防災活動と対象者の特性の関連について,「防災資器材の整備・点検」は,活動年数,役割認識,遂行指導と有意な正の関連を,課題解決への意欲と有意な負の関連を示した。「地域住民の把握」は,年齢,遂行指導と有意な正の関連を示した。「防災知識の普及」は,年齢,役割認識,遂行指導と有意な正の関連を示した。「地域の安全点検」は,年齢,役割認識,遂行指導と有意な正の関連を示した。「防災訓練」は,年齢と有意な正の関連を示した。結論 防災訓練を除く平常時の防災活動は,遂行指導と関連していた。目標と戦略を示す遂行指導のようなリーダーシップは,町内会という組織を動かし,防災活動の充実へと寄与する可能性がある。また,平常時から地域の自助を高める活動は,町内会役員が防災は町内会の役割であるという認識を持つことと関連していた。
著者
平野 篤 亀田 倫史 白木 賢太郎 田中 丈士
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、独自技術によって得られた超高純度カーボンナノチューブを用いて、カーボンナノチューブとタンパク質からなる複合体であるタンパク質コロナの形成機構を解き明かすことを目的としている。カーボンナノチューブなどのナノ粒子が環境中から生体内に取り込まれた直後に形成されるタンパク質コロナの構造は、ナノ粒子の生体内動態を決定づける極めて重要な因子であり、ナノ粒子の安全性と深く関わっている。本年度は、昨年度に引き続き、タンパク質コロナ形成におけるカーボンナノチューブの骨格構造や電気的性質の影響を明らかにするとともに、アミノ酸とカーボンナノチューブの相互作用を調べることで、タンパク質とカーボンナノチューブの相互作用を要素還元的に理解することを目指した。分子動力学計算によって得られる相互作用の熱力学的な物性値に対するカーボンナノチューブの曲率依存性を調査した結果、曲率の増加によって相互作用が減少することが明らかになった。また、昨年度、タンパク質とカーボンナノチューブの化学的な相互作用である酸化還元反応が、カーボンナノチューブの原料に残存する夾雑物に由来する金属イオンの影響を受けることを明らかにしており、本年度は、タンパク質以外の生体分子(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドなど)とカーボンナノチューブの間の酸化還元反応における遷移金属イオンの効果を調査することで、酸化還元反応の多角的な理解を目指した。結果として、カーボンナノチューブに含まれる微量の鉄イオンによって引き起こされるタンパク質とカーボンナノチューブの間の酸化還元反応は金属キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)によって十分に抑制される一方、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドとカーボンナノチューブの間の酸化還元反応はEDTAによって抑制されないことが明らかになった。
著者
平野 陽子 古俵 孝明 五十嵐 敏明 松嶋 あづさ 川道 美里 小島 慶之 高橋 翠 松井 友里恵 渡瀬 友貴 山下 慎司 宇野 美雪 上谷 幸男 渡辺 享平 矢野 良一 塚本 仁 中村 敏明 岩崎 博道
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.502-508, 2017-09-10 (Released:2018-09-10)
参考文献数
9
被引用文献数
2

In February 2015, we introduced a drug verification and quantity management system using personal digital assistants and medicine barcodes to prevent dispensing errors. We evaluated the effect of this system by comparing the number of dispensing errors and incident cases for one year before and after the introduction. The time required for dispensing was prolonged from about 28.4 seconds to 37.3 seconds per drug, about 1.3 times. The number of dispensing errors for one year before and after system introduction significantly decreased from 33.8 ± 4.7 per month to 5.8 ± 0.8 per month (P < 0.01). In addition, the number of incidents significantly decreased from 6.0 ± 0.9 per month to 3.2 ± 0.5 per month (P = 0.02). The system seems to be useful as a tool of medical safety measures because it significantly lowers the number of dispensing errors and incidents.
著者
飯田 悟 一ノ瀬 昇 五味 哲夫 染矢 慶太 平野 幸治 小倉 実治 山崎 定彦 櫻井 和俊
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.195-201, 2003
被引用文献数
5

人々の清潔志向を背景に, 腋臭を中心とした体臭のデオドラントニーズは年々高まっている。われわれは, 官能評価および機器分析を用いてヒトの腋臭について研究した結果, 新たな臭気原因成分としてビニルケトン類 (1-octen-3-one, <i>cis</i>-1,5-octadien-3-one) を発見した。これらビニルケトン類のにおい閾値は非常に低く強烈な金属臭を有し, 腋臭に大きく寄与していることが示唆された。これら臭気は, 人体代謝物中の不飽和脂肪酸と鉄が接触して生成する酸化物であることをモデル実験によりつきとめ, におい発生のメカニズムを解明した。また, 植物抽出エキスの抗酸化作用により, ビニルケトン類の生成を抑制する方法を<i>in vitro</i>系にて検討し, 『クワエキス』に優れた生成抑制効果を見出した。
著者
平野 弘
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.354-360, 1977-05-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

Chemical and biochemical aspects of sulfur-containing vitamins, thiamine, lipoic acid and biotin, were outlined. About thiamine, especially the activity-structure relationship in the enzymatic degradation of pyruvate by pyruvate decarboxylase was described making refer to Schellenberger's work.
著者
岐部 智恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.8-10, 2020
被引用文献数
4

<p>This study developed the Japanese version of the Highly Sensitive Child Scale for Childhood (HSCS-C) and tested its validity and reliability. Data were collected from 400 dyads of primary school children (third to sixth grades: <i>M<sub>age</sub></i> = 9.75 years, <i>SD</i> = 1.22; male = 48.5%) and their mothers (<i>M<sub>age</sub></i> = 41.00 years, <i>SD</i> = 5.05). Two factors were found: the first was the conjunction of Ease of Excitation and Low Sensory Threshold, and the second was Aesthetic Sensitivity. A bivariate correlation analysis indicated that children's sensory processing sensitivity, measured with HSCS-C, was associated with self-reported empathy and mother-reported temperaments, with both forms being distinct. The internal consistency was found to be satisfactory.</p>
著者
岐部 智恵子 平野 真理
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.108-118, 2019
被引用文献数
6

<p>本研究の目的は日本語版青年前期用敏感性尺度(HSCS-A)を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。本尺度の原版は感受性反応理論の枠組みに立脚し児童期から青年期の感覚処理感受性を測定するものとして開発されている。本研究では青年前期版作成を目的として中学1年生から高校1年生までの942名(女子44%,男子56%)を対象に研究を行った。探索的因子分析の結果,原版同様の易興奮性(EOE),美的感受性(AES),低感覚閾(LST)から成る3因子構造が見出され,直交する一般性因子を含むbifactorモデルが適していることが示された。さらに,パーソナリティ,情動性尺度との関連から構成概念妥当性を検討し弁別性を示す結果が得られ,内的一貫性も許容範囲であることが確認された。これらの結果から,HSCS-Aは感覚処理感受性を測定するおおむね妥当な尺度であることが示された。</p>
著者
呉 俊剛 黒倉 寿 平野 禮次郎
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.749-754, 1990-05-25 (Released:2008-02-29)
参考文献数
8
被引用文献数
3 6

Crossbreeding between Pseudocentrotus depressus egg and cryopreserved Anthocidaris cras-sispina sperm were performed, in order to obtain several information concerning the influence of maturation of egg and sperm donors on the morphological appearance of parental characters in hybrids. Hybrid larvae were reared up to metamorphosis at 20°C, and Chaetoceros gracilis was used as the food. Skeletal structure of hybrid larvae exhibited intermediate characters, such as incomplete compound basket body structure, structural differences in postoral rod, postero dorsal rod and posterior transverse rod. Utilization of cryopreserved sperm in the experiment, permitted the use of sperm collected during the breeding season of the paternal species. This in turn is thought to have enhanced the probability of producing intermediate characters in the hybrid larva.