著者
平野 真理
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.343-354, 2012
被引用文献数
4

本研究の目的は, 「生得的にストレスを感じやすい」というリスクを, レジリエンスによって後天的に補うことができるかを検討することであった。18歳以上の男女433名を対象に質問紙調査を行い, 心理的敏感さと, 資質的レジリエンス要因(持って生まれた気質の影響を受けやすい要因)・獲得的レジリエンス要因(後天的に身につけやすい要因)の関係を検討した。分散分析の結果, 心理的敏感さの高い人々は資質的レジリエンス要因が低い傾向が示されたが, 獲得的レジリエンス要因については敏感さとは関係なく高めていける可能性が示唆された。次に, 心理的敏感さから心理的適応感への負の影響に対する各レジリエンス要因の緩衝効果を検討したところ, 資質的レジリエンス要因では緩衝効果が見られたものの, 獲得的レジリエンス要因では主効果のみが示され, 敏感さというリスクを後天的に補える可能性は示されなかった。また心理的敏感さの程度によって, 心理的適応感の向上に効果的なレジリエンスが異なることも示唆され, 個人の持つ気質に合わせたレジリエンスを引き出すことが重要であることが示唆された。
著者
大森 平野 玲子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.3-9, 2007-02-10

動脈硬化を発症および進展させる要因として, 低比重リポタンパク (LDL) が質的変化を受けた酸化LDLの関与が指摘されている。著者らは<i>in vitro</i> においてLDL酸化過程でビタミンCのほか, カテキン類にもビタミンEラジカル再生力が備わっていること, 野菜や豆類における検討から, ポリフェノールは食品のLDL酸化抑制効果と高い関連性をもつことを明らかにした。また, 健常人を対象とした試験から, カカオならびに緑茶は効果的な抗動脈硬化作用食品であることを確認した。次に, 冠動脈造影を施行した症例を対象に, 動脈硬化性疾患の予防に効果的な食品の調査を行った結果, 緑茶の飲用習慣をもつ人はもたない人に比べ, 心筋梗塞の発症頻度が低いことを明らかにし, さらに冠動脈疾患に繋がりやすい遺伝子多型をもつ場合, 緑茶の飲用習慣によって心筋梗塞を予防できる可能性を示した。以上の結果は, 動脈硬化性疾患を予防する上で, 抗酸化物質を有する食品摂取の重要性を示唆するものと考えられる。
著者
北原 理作 笠井 文考 遠藤 明 高木 恵一 平野 浩司 相馬 幸作 増子 孝義
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.987-991, 2013-10

北原ら(2013)は67巻9号において,海外における忌避材の評価について紹介した。一方,農業被害,林業被害,衝突事故などの被害額が60億円以上に達しているエゾシカにおいては,被害対策としての忌避材の効果が十分検証されていない。ここでは市販の忌避材のうち,海外でも利用されているハイイロオオカミの尿(原液100%)(以下忌避材と記す)について検証した結果を紹介する。調査は,北海道東部に位置する美幌町の公共牧場周辺に多数生息し自由に牧草地を出入りしている野生の個体群と,東京農業大学オホーツクキャンパスで飼育している6頭の個体を対象とした。2012年8月~9月に公共牧場で野外試験を実施した後,11月に飼育舎内で追加試験を行った。対象とした野生個体群は,有害駆除の対象にはなっていないが,狩猟期には捕獲対象となるため非常に警戒心が強い。一方飼育個体は,警戒心が低く人馴れしており対照的である。評価の方法は,海外の事例ではオオカミやコヨーテの尿を,直接餌に散布して効果を調べているものも多いが(北原ら2013),本忌避材が接近を妨げる目的で市販されているため,餌場である牧草地(飼育個体については給餌場)に対する接近や特定の出入り口からの侵入阻止に効果があるか否かに限定して調べた。忌避材を設置した場所を自動センサーカメラ(以下カメラと記す)で24時間昼夜問わず監視し,カメラのみを設置する対照区と,忌避材とカメラを設置する試験区を林縁に設定し,林内から牧草地への侵入および忌避材設置場所付近における牧草採食の有無を記録した。北海道ではおよそ100年前にエゾオオカミは絶滅したが,メーカーによる忌避材の原理は,シカの天敵であるオオカミの尿の臭いに対しては,絶滅した今日でも先天的に忌避反応を示すという説明である。
著者
平野 孝典
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
シンポジウム: スポーツ・アンド・ヒューマン・ダイナミクス講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, pp.B-8, 2019

<p>Archery has many competitors around the world, but new materials are used for the parts of bows as technology develops in recent years. Due to the diversification of new materials, there are increasing number of unexplained areas of archery performance. One of them is the arrow feather (Vain). Vain is roughly divided into rotary and non-rotary types. Currently, the rotary type is mainly the drag type, but if a lift type rotary vane can be developed, the rotational force can be obtained with a low drag, so it is considered that a vane with better performance can be achieved. If we can clarify the characteristics and common points of Vain that lead to higher scores, we can expect to develop new vanes. In wind tunnel experiments, using a jig with an arrow model, measurement and analysis were performed on the rotational performance and convergence performance of the arrow model at a uniform flow velocity of 20 m/s (1/3 of the actual arrow speed). To evaluate the performance of Vane, the rotational performance was evaluated by the number of revolutions for each of the non-converging motion (at rest) and the converging motion (vibration), and the convergence performance was evaluated by the time until convergence of vibration. In the performance evaluation of off-the-shelf products, it became clear that rotary vanes can be further classified into those with top pitches and those that do not, and those with many users worldwide do not have top pitches.</p>
著者
石橋 秀巳 鍵 裕之 阿部 なつ江 平野 直人
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

本研究では、プチスポットに産する玄武岩質ガラスについてFe-K端&mu;-XANESによるFeの価数状態分析を行い、プチスポットマグマの酸素フュガシティ(fO<sub>2</sub>)を見積もった。分析は、高エネルギー加速器研究機構Photon FactoryのBL4Aの装置を用いて行った。分析試料は、東北地方三陸沖約800kmの太平洋プレート上に位置するプチスポットSite-Bでドレッジされたスコリア中に含まれる急冷ガラスである。今回、スコリア6試料について分析を行ったが、いずれもFe<sup>3+</sup>/Fe<sub>total</sub>~0.37の値を示した。この値は、ガラス-オリビン間のみかけのFe/Mg分配係数から求めたFe<sup>3+</sup>/Fe<sub>total</sub>比とほぼ一致する。この値から見積もったfO<sub>2</sub>条件は、QMF+2.3程とMORBより酸化的で、むしろ島弧マグマの条件に近い。この結果に微量元素組成を加え、プチスポットマグマの形成過程について議論する。
著者
片山 夕香 吉池 信男 政安 静子 平野 孝則 佐藤 明子 稲山 貴代
出版者
公益社団法人 日本栄養士会
雑誌
日本栄養士会雑誌 (ISSN:00136492)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.482-491, 2011 (Released:2011-12-13)
参考文献数
12

本研究は、身体障害者施設成人入所者の栄養アセスメントに活用できる、性・年齢階級別のパーセンタイル値を含む身体計測値の基準データを提示することを目的とした。調査時点で正式登録のあった全国の身体障害者入所全施設(470 施設)に対し、年齢階級(30 歳代から50 歳代)、性、原疾患、日常生活自立度、身長、調査時点の体重、1 年前の体重、5 年前の体重のカルテ調査を依頼した。最終的に49 施設から1 , 217 名分の回答が得られ、調査内容に欠損のない1 , 059 名(男性597 名、女性462 名)を解析対象とした。日常生活自立度は、男性、女性ともに生活自立は10% に満たず、準寝たきりが約30%、寝たきりが約60% を占めた。調査時点での身長、体重データから、男性では過体重(BMI≧25 kg/m2)12%、低体重(BMI
著者
白柳 洋俊 平野 勝也 和田 裕一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.90-99, 2013 (Released:2013-12-20)
参考文献数
15

街並の雰囲気という表現に代表されるように,我々は明示的な指摘は難しいものの,何処か感じる街並の魅力をおよそ無意識ともいえるよう感覚的に捉えている.認知科学に基づけば,この街並の雰囲気の捕捉は,自動的処理により形成された街並イメージの認知と解釈できる.そこで,本研究では商業地街路を対象に,自動的処理による商業地街路の認知の存在を感情プライミングパラダイムに基づき検証した.その結果,特に商業地街路の心理的距離は自動的処理により認知されることを明らかにするとともに,その認知は店頭に陳列される実物商品の量に依拠しており,商品の量が多いほどポジティブな感情価として処理される傾向があることを示した.
著者
草柳 浩子 福地 麻貴子 尾高 大輔 飯村 直子 中林 雅子 西田 志穗 平野 美幸 岩崎 美和 佐藤 朝美 平井 るり 江本 リナ 筒井 真優美
出版者
一般社団法人日本小児看護学会
雑誌
日本小児看護学会誌 (ISSN:13449923)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.44-51, 2005-09-05
被引用文献数
5

本研究の目的は、看護師の語りから、子どもの家族や医療職者を動かし子どものケアに影響を与えた看護師の技を明らかにすることである。エピソード・インタビューの方法を参考に、研究者らが作成した「子どもや家族へ行った看護場面を振り返るインタビューガイド」に基づく半構成的面接を、看護師12名に行った。その結果、5つのテーマが得られた。1.子どもが混乱している場面で、子どもの力を引き出すためのモデルを自ら示し子どものケアへ影響を与える。2.子どもが治療を拒否する場面で、子どもとの関係性を作ることから始め、カンファレンスを企画し子どもの反応の捉え方や関わり方を共有することでスタッフの子どもへのケアに影響を与える。3.気になる家族がいる場面で、「気になること」をスタッフと非公式に確認した後、家族を巻き込む看護を展開し子どものケアに影響を与える。4.通常の慣例では上手くいかないと判断した場面で、自らが考えた関わりを家族やスタッフを巻き込みながらその場で展開し、子どものケアに影響を与える。5.病棟変革を行う場面で、管理者が自分の信念をもとにスタッフ全体を巻き込みながら病棟のシステムを変化させることで、子どものケアに影響を与える。以上から、認知能力が発達途上であったり、自分のことを的確に表現できなかったりという発達の特徴を持つ子どもへの最善の利益を考えた看護が、家族や医療職者を動かしながら行われるためには、看護師の持つ看護観や倫理観とスタッフ間でのコミュニケーションが重要であることが再認識された。
著者
田中 恭子 會田 千重 平野 誠
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.19-24, 2006-01-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
12
被引用文献数
1

いわゆる動く重症心身障害児 (者) 病棟における, 強度行動障害を有する例の医学的背景と薬物療法の現状について調査した. 状態像としては「走れる」, かつ最重度の精神遅滞がある青年で, 自閉症の合併例が多かった.薬物療法では抗精神病薬や抗てんかん薬の使用が多かった. 行動障害が重度なほど多剤併用になりやすく, 自閉症合併例では有意に薬剤使用量が多かった. 薬剤使用量が多い行動障害は粗暴性であった. 非定型抗精神病薬などの新薬の使用が約15%の症例でみられた.有効な薬物治療の構築のためには, 標的症状に照準を合わせた前方視的な効果判定と評価が必要であり, 対象者の生活の質に注意すべきと考えられる.
著者
平野 勉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.485-488, 2017-07-30 (Released:2017-07-30)
参考文献数
6
著者
中川 源洋 中嶋 謙一 平野 和弘
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.5, no.s1, pp.s33-s36, 2021 (Released:2021-04-20)
参考文献数
5

RGB-Depth(深度)カメラシステムは、カラー情報とカメラからの距離情報を同時に取得する技術である。本システムを用いれば、舞踊などの無形文化財や美術展の空間そのものを3次元データとして記録することができる。従来技術では、再現できる鑑賞視点に制限があったり、立体物の表示に制限があるといった課題があった。本技術は、少ない視点から撮影しそのデータをツールに入力することだけで3次元データを作成するものである。取得した3Dデータは自由視点で映像再現するので、実際の展覧会場で作品鑑賞に近い体験の提供が可能となる。また取得データは空間のもつ情報をすべて包含していることから、作品そのものの映像情報だけではなく、作品の展示順番や作品同士の距離など情報を含み、展覧会場のアーカイブに適している。本発表では、山形ビエンナーレ2020での展覧会場の3次元データ化実験事例を中心に3次元データの活用可能性に関して報告する。