- 著者
-
平野 悠一郎
- 出版者
- 林業経済学会
- 雑誌
- 林業経済研究 (ISSN:02851598)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.53-64, 2004-03-01 (Released:2017-08-28)
- 参考文献数
- 25
- 被引用文献数
-
5
本稿は,中華入民共和国期の中国において,人間と森林との関係を規定する基本法が,どのような特徴を有しつつ推移してきたのかを明らかにすることを目的としている。1963年に公布された森林保護条例を起源とし,現行の中華人民共和国森林法に至る森林関連の基本法は,国土の森林を維持・拡大するために,基層社会の森林を利用する諸活動を規制・管理するという性格を一貫して有していた。1984年森林法では,緑化を公民の義務とすることが明記され,そのための活動に人々を動員するという性格が強められた。それは,産業振興法としての林業基本法が,森林の公益的機能の重視を含めた包括的な森林・林業基本法へと変容していく,同時期の日本の推移とは明らかに異なるものであった。そのような特徴と推移は,森林の過少状況,森林破壊の加速,社会主義統治といった,中国の森林関連の法令をめぐる社会背景に基づいていた。