著者
斎藤 博久
出版者
日本小児アレルギー学会
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.729-736, 2005-12-31 (Released:2010-08-05)
参考文献数
34

遺伝子が転写されるためには転写因子の存在のほか, 転写因子と結合する部位がクロマチンとして結合可能な立体構造をとる必要がある. このクロマチンの構造はエピジェネティックなメカニズムつまりDNAメチル化とヒストン修飾により調節されている. 従来, 遺伝子解析研究といえばDNA配列の個人差を研究する遺伝子配列解析と組織や細胞のmRNAを定量する遺伝子発現解析の2通りの研究手法が主流であった. エピジェネティック研究はこの2つの研究手法の中間に位置づけられる研究分野である. 従来の遺伝子解析手法では得られなかったアレルギー性炎症や組織リモデリングに関わる機序解明が期待できる.
著者
内島 豊 小林 信幸 諏訪多 順二 中目 康彦 吉田 謙一郎 斎藤 博
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.447-451, 1989-03

1987年1月より同年12月までに尿道炎あるいは前立腺炎で受診した55症例についてC. trachomatisに対する抗原および抗体価をそれぞれクラミジアザイム(EIA法)とIFA法で測定した.1)未治療の非淋菌性尿道炎症例において抗原の陽性率は44.4%であり,既治療の非淋菌性尿道炎症例での陽性率は20%であった.2)未治療の非淋菌性尿道炎症例においてIgG抗体価の陽性率は59.3%であり,既治療の非淋菌性尿道炎症例のIgG抗体価の陽性率は61.5%であった.3)非淋菌性尿道炎症例での陽性一致率は66.7%であり,陰性一致率は54.2%であった.4)未治療の前立腺炎症例では抗原の陽性率は9.1%であり,抗体価の陽性率は53.8%であった.5) IgG抗体価は治療と相関しない傾向があった.6) IgG抗体価は,治療開始後3ヵ月を経過しても正常化しなかった
著者
杉山 卓弥 小幡 拓弥 斎藤 博昭 保木 邦仁 伊藤 毅志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.2048-2054, 2010-11-15
被引用文献数
1

コンピュータ将棋において,複数のプレイヤの意見から1つの指し手を選択する合議アルゴリズムが注目されている.多数決による合議では,単純な手法であるにもかかわらず,単体のプレイヤに比べてパフォーマンスが向上することが報告されている.本研究では,各プレイヤの指し手に加えて,局面の優劣評価の値も利用する新しい合議法について報告する.正規乱数を用いて局面評価値を修正し生成された複数プレイヤから,最大の評価値を付けたプレイヤを選択する楽観的合議法を提案し,その有効性と仕組みについて議論する.The consultation algorithm, which selects a move based on decisions made by multiple players, recently attracted considerable attention in the computer Shogi community. It was reported that the consultation algorithm based on majority voting improved the strength of a computer Shogi program despite the simplicity of the algorithm. In this paper, we present a new consultation approach which utilizes not only the actual moves provided by the players but also the evaluation values of the moves. The proposed approach, optimistic consultation, selects a player that scores the highest evaluation value among the multiple players. Here, the multiple players are prepared by adding normal random noise to the original evaluation function. The performance and the mechanism of the algorithm are analyzed.
著者
斎藤 博
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.40, no.449, pp.249-250, 1991-02-15
著者
斎藤 博 向井 茂 寺西 鎮男 谷川 好男 藤原 一宏 浪川 幸彦 内藤 久資 齋藤 博
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.Alexeev,Sankaran教授を招いて1997年5月に名古屋大学においてモジュライ多様体の研究集会を開催し、アーベル曲面のモジュライに対する結果を発表するとともに一般次元主偏極の場合のトーリックコンパクト化について議論した.また、6月の数理解析研究所でもう一度会って、理解を深めることができた.この方面では(1、5)型と(1、4)型の場合に標準レベル付偏極アーベル曲面のモジュライ空間と対応する正多面体多様体の間の双有理写像を具体的に構成した.対数多様体の概念を使うと見通し良くなることと可積分系との関係がこの研究で得られた新しい知見である.2.夏からは研究計画3)の幾何学的不変式論に本格的に取組み1997年12月にはMumfordのものとは違ってlinearizationの取り方によらない商多様体の構成を発見した.これについては具体的な例でその有効性を検証中である.また、幾何学的不変式論の基礎を検証し、不変式環の有限生成性や簡約代数群の線型簡約性の証明を簡素化することができた.3.1996年度より続いている3次超曲面の周期写像の研究では幾何学的不変式論で得られるモジュライ空間と対称空間の数論的商を比較し、モジュライ空間としてふさわしいコンパクト化の候補を見つけた.これは本来問題としていたK3曲面のモジュライ空間のコンパクト化についても示唆を与えている.次数の低い場合に安定K3曲面の候補を色々実験している.
著者
齋藤 秀司 小林 亮一 松本 耕二 藤原 一宏 金銅 誠之 佐藤 周友 斎藤 博 向井 茂 石井 志保子 黒川 信重 藤田 隆夫 中山 能力 辻 元
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

当該研究は(I)高次元類体論および(II)代数的サイクルの研究のふたつの大きな流れからなる。(I)高次元類体論は高木-Artinにより確立された古典的類体論の高次元化とその応用を目指している。この理論の目指すところは数論的多様体のアーベル被覆を代数的K理論を用いて統制することで、幾何学的類体論とも言える。整数環上有限型スキームにたいする高次元類体論は当該研究以前に加藤和也氏との一連の共同研究により完全な形で完成することに成功した。高次元類体論はその後もρ進Hodge理論などの数論幾何学の様々な理論を取り入れつつ展開し、世界的なレベルで研究が続けられている。当該研究の高次元類体論における成果として、整数論においてよく知られた基本的定理であるAlbert-Brauer-Hasse-Noetherの定理の高次元化に関する結果がある。(II)主要な目標は"代数的サイクルを周期積分により統制する"という問題に取り組むことである。この問題の起源は19世紀の一変数複素関数論の金字塔ともいえるAbelの定理である。当該研究の目指すところはAbelの定理の高次元化である。これは"高次元多様体X上の余次元γの代数的サイクルたちのなす群を有理同値で割った群、Chow群CH^γ(X)の構造をHodge理論的に解明する"問題であると言える。この問題への第一歩として、Griffithsは1960年代後半Abel-Jacobi写像を周期積分を用いて定義し、CH^γ(X)を複素トーラスにより統制しようと試みた。しかし1968年MumfordがCH^γ(X)はγ【greater than or equal】2の場合に一般には複素トーラスといった既知の幾何学的構造により統制不可能なほど巨大な構造をもっており、とくにAbel-Jacobi写像の核は自明でないことを示した。このような状況にたいし当該研究はBloch-Beilinsonによる混合モチーフの哲学的指導原理に従い、GriffithsのAbel-Jacobi写像を一般化する高次Abel-Jacobi写像の理論を構成し、GriffithsのAbel-Jacobi写像では捉えきれない様々な代数的サイクルをこれを使って捉えることに成功した。この結果により高次Abel-Jacobi写像がAbelの定理の高次元化の問題にたいする重要なステップであることが示された。当該研究はさらに発展しつつあり、Blochの高次Chow群、Beilinson予想、対数的トレリ問題、などの様様な問題への応用を得ることにも成功している。
著者
斎藤 博
出版者
埼玉医科大学
雑誌
埼玉医科大学進学課程紀要 (ISSN:0287377X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.77-84, 1998-03-31

私はラファエロの「アテネの学堂」には, 医師ヒポクラテスが描かれていると推測した。ラファエロは「アテネの学堂」の最上段には神の世界を, 上, 下段に人間の世界として, 左には知の世界を, 右には術の世界を描いた。そして, ギリシア哲学者中, 「神に等しい者」に適う人物を, 上段の人物中に描いた。特に, プラトンとアリストテレスを高く評価し, 中央の王道に二人を配置し, 彼等の頭上には神への道が開かれていた, と表現したのではなかろうか?なお, ラファエロはヒポクラテスを, 技術の守護神アテネの下の上段右に「神に等しい者」として置き, その下段右隅には, 人間である術者, 画家ラファエロ自分自身を署名者として置いて, 「アテネの学堂」を完成させた, と解釈出来ないか?
著者
斎藤 博幸 田中 将史
出版者
徳島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

血中や脳内での細胞外脂質輸送を制御しているアポリポタンパク質の遺伝子変異や多型は、脂質異常症やアミロイドーシスなどの疾患発症を引き起こす。その構造的機序解明を目的として、ヘリックス型アポリポタンパク質であるアポA-I及びアポE変異体の高次構造、安定性、脂質結合性並びにタンパク質凝集性などを調査した結果、変異によるN末ヘリックスバンドル並びにC末ヘリックス構造の破壊が疾患発症の構造的基盤であることが示唆された。
著者
富樫 賢一 江部 達夫 佐藤 和弘 斎藤 博之
出版者
日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.3-9, 1998-02

原発性肺癌に対する外科治療の安全性をより向上させるためにはどうすべきかを,術後死亡(手術死亡十病院死亡)例を分析することにより検討した.対象は1979年より1996年までに手術を施行した1032例である.手術死亡(術後1ヵ月以内の死亡)は10例(1.0%),病院死亡は9例(0.9%)で,術後死亡率は約2%であった.高齢者ほど,また,手術侵襲が大きいほど術後死亡率は高い傾向にあった.手術死亡10例の原因は,心破裂1例,消化管出血1例,脳出血1例,脳梗塞1例,肺炎1例,気管支痩1例,ARDS2例,突然死2例であった.病院死亡9例の原因は腎不全1例以外すべて呼吸器系の合併症であり,気管支痩3例,ARDS2例,その他の呼吸不全3例であった.これらの死因は必ずしも予側や予防が可能とは思われなかったが,厳密な手術適応の決定と術後管理における迅速な対応が肝要と思われた.