著者
髙橋 徹也 近江 晃樹 豊島 拓 齋藤 博樹 桐林 伸幸 金子 一善 菅原 重生 久保田 功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.734-740, 2014 (Released:2015-07-12)
参考文献数
8

患者は30歳代女性. 神経性食思不振症に伴うるい痩のため, 当院精神科に栄養管理目的に入院中であった. 入院後, 血圧の低下と肺野のうっ血を認めたため当科紹介となった. BNP値が3045pg/mLと上昇し, 低リン血症をはじめとした高度な電解質異常を認めた. 心電図では陰性T波が出現し, 心エコーではたこつぼ心筋症様の左室壁運動異常を認めた. うっ血性心不全として少量のカテコラミンおよび利尿薬を投与し, 致死性不整脈に注意しながら全身管理に努めた. また, 電解質を補正しながら緩徐に投与カロリーの増量を行った. その後, 電解質は補正され, 左室壁運動および心不全の改善を認めた. 低栄養状態にある患者の精神的ストレスや低血糖・疼痛による身体的ストレス, 低リン血症などの電解質異常が, たこつぼ心筋症とRefeeding症候群に伴う心不全の発症に関与している可能性が示唆された.
著者
米谷 民雄 齋藤 博士
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.279-291, 2009
被引用文献数
4

1989年秋に米国で好酸球増多筋痛症候群(EMS)と呼ばれる事例が多数発生した。それが昭和電工が製造したL-トリプトファン(以後、トリプトファン)製品を多量摂取していた人に多発していることが明らかにされ、原因究明のための研究が主に日本と米国で開始された。わが国においては1990年に原因究明委員会が設置され、また、厚生科学研究班が組織された。この厚生(労働)科学研究の後半期は、今後の同様な食品中毒の発生を防止し、国民の安全な食生活に寄与することを目的として、文献調査が主に実施された。しかし、2004年度の研究課題「必須アミノ酸製品等による健康影響に関する調査研究」を最後にこの研究事業も終了し、2005年度には食品等試験検査費による調査として単年度のみ継続されたが、ついに2006年3月末をもって、16年間にわたり継続された研究事業が完全に終了となった。一方、米国で多発したEMSの症状が1981年にスペインで発生したアニリンで変性したナタネ油による有毒油症候群(TOS)に類似しており、また、EMSの原因物質候補として発見された化合物がTOSの原因物質とも関連するように思われたため、後半期の厚生(労働)科学研究の文献調査においては、EMSとTOSの両方にまたがる文献調査が行われた。筆者らは1998年から最後の8年間の研究を担当し、幕引きの場に立ちあったことから、このEMSとTOSについて、事件発生の概要と原因究明研究のあらましについて説明させていただくことにした。
著者
中島 孝則 岩田 政則 縄田 修一 齋藤 博 中村 有貴 小林 靖奈 山元 俊憲 松田 佳和 木村 正幸
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.702-707, 2012-11-10 (Released:2013-11-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1 3

We tried to optimize the formulation for the hospital preparation of mianserin hydrochloride (MS) suppositories. MS as the raw material for the preparation was obtained from Tetramide tablets (MS-T), which were ground. The physicopharmaceutical properties of MS suppositories with bases of Witepsol H15 (H15), Witepsol W35 (W35) and Witepsol S55 (S55) were compared to choose the optimal base for the suppositories. The preparation strength correlated negatively among the three bases. The heat of fusion of MS-H15 suppositories was significantly low relative to MS-W35 and MS-S55 suppositories. The average drug release rate of MS-H15 suppositories exhibited the highest level on moment analysis. Comprehensive evaluation of the properties of MS suppositories, including the heat of fusion due to the solubility of the preparation and the drug release rate indicated that H15 was the optimal base for MS suppositories. Additionally, we examined the optimal mixing rate of ground MS-T and H15. The preparation strength positively correlated with an increased mixing rate of ground MS-T. The mean dissolution time (MDT) of suppositories was reduced with an increased mixing rate of ground MS-T. These results suggested that 0.10 g ground MS-T combined with 0.8 g H15 as the base was the optimal formulation for the hospital preparation of MS suppositories.
著者
小峯 健一 浅井 健一 板垣 昌志 小峯 優美子 黒石 智誠 阿部 省吾 阿部 榮 齋藤 博水 熊谷 勝男
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.169-176, 1999-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1

健康な乳牛の泌乳期から乾乳,分娩期に及ぶ各ステージの乳房総計68例から乳汁を採取し,それぞれの体細胞数(SCC)とこれらの細胞が中心的に産生する生理活性タンパク分子である,ラクトフェリン(Lf),αl酸性糖タンパク(α1AG),フィブロネクチン(FN)の各濃度を測定した.さらには乳腺内リンパ球の産生するIgG1とIgG2を中心とした,免疫グロブリン(Ig)サブクラスの濃度を測定し,それぞれの変動を追跡した.その結果,SCCは泌乳期の間は低値を示したが,乾乳導入後いち早く増加した.このSCCの上昇に伴って,最も早期にLfの産生が起こり,これに続いて,αlAGやFN値も上昇し,いずれも乾乳期中期までには最高値に達した.一方,乳汁中のIg濃度は,泌乳期を通じて乾乳初期まで低値を示していたが,乾乳中期に移行するに及びIgG1を主とした濃度の急速な増加を示し,初乳分泌期である乾乳後期には極めて高値のG1/G2比(60-7)と共に,最高濃度を示した.以上の成績は,乾乳導入に伴う乳腺分泌液へのSCの集積と,それに続く生理活性タンパク分子の急速な産生は,泌乳期乳腺上皮細胞の退行と新しい乳腺組織の増殖分化を営むために必須で,また,次回分娩に備えたIgG1を主体とした乳腺内での初乳形成を促進する生理的変化であることを示唆した.
著者
深堀 晋 王 利明 笠井 章次 吉川 大太郎 唐崎 秀則 河野 透 齋藤 博哉 長嶋 和郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.66-71, 2018 (Released:2018-08-01)
参考文献数
8

われわれは平成26年1月~平成29年5月までに,病理診断によって4例の分節性動脈中膜融解症(segmental arterial mediolysis:以下SAM)を経験した.年齢は60歳から88歳までで,すべて男性であった.全例に緊急手術を行い,摘出検体より中膜の空胞変性など特徴的な所見からSAMと診断した.3例は生存し,1例のみ術後第36病日に肝梗塞によって死亡したが,死因とSAMとの関連性は不明であった.今回,自験例4例と国内で渉猟しえたSAMの報告107例とを合わせ,疫学や発症部位などの特徴を報告する.
著者
齋藤 博
出版者
スピノザ協会
雑誌
スピノザーナ : スピノザ協会年報 (ISSN:1345160X)
巻号頁・発行日
no.11, pp.145-150, 2010
著者
須貝 勝 平田 藍 齋藤 博子 大橋 恭彦 山田 彰 安孫子 修 井上 元保 平山 美麻 間宮 加奈 谷口 暁代 瀬尾 大樹 吉田 哲平 鶴見 太朗 永松 康太 和田 優子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】近年,膝蓋骨脱臼に対して内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)再建術が導入されており,概ね良好な結果が得られている。一方,術後リハビリテーションプロトコールについては様々な報告が行なわれており,一定の見解を得ていない。当院では,術後早期より再建靭帯に強度が得られるなどの理由から,人工靱帯を用いたMPFL再建術を行ない,術後早期より膝関節可動域運動等の理学療法を実施している。今回,当院におけるMPFL再建術後の膝関節可動域の完全屈曲獲得日数,ならびに膝蓋骨脱臼再発の有無の調査を行なった。その結果を踏まえた上で,早期膝関節可動域運動実施の妥当性及び安全性について検討したので報告する。【方法】対象は2006年12月~2012年6月までに当院にて人工靭帯(LK-15)を用いMPFL再建術を施行した反復性膝蓋骨脱臼患者のうち,経過を追うことができた17例22膝(平均年齢25.75(±9.92)歳,男性1名1膝,女性16名21膝)である。術中,膝屈曲60°にて再建靱帯を固定し,膝屈曲伸展全可動域にてlength patternを確認している。方法は,術後膝完全屈曲獲得日,術後1年後のCrosby&Install grading system,術前及び術後1年後のapprehension test,ならびに単純X線画像から膝屈曲30°のCongruence angle(正常値-6±11°)を測定し,膝蓋骨脱臼再発有無の調査を行なった。術後リハビリテーションプロトコールは,術後1日目よりQuad setting等の大腿四頭筋エクササイズ開始,3日目より膝屈曲45°からCPM開始し1日5°毎に屈曲角度を拡大する。5日目よりニーブレース装着下での部分荷重歩行及びセラピストによる膝関節可動域運動を開始,12日目よりパテラブレースでの全荷重歩行許可,2週目以降より症状に応じて階段昇降,自転車エルゴメーター,スクワット開始,8週目よりジョギング許可,16週でフルスポーツ許可となっている。【倫理的配慮,説明と同意】対象患者には治療,研究を目的に検査結果を使用することを事前に説明し,本研究の発表にあたり同意を得た。【結果】術後膝完全屈曲獲得日は平均80.9(±62.57)日であった。術後1年後のCrosby&Install grading systemは,Excellent,16膝(72.72%),Good,5膝(22.73%),Fair to poor,1膝(4.55%)であった。Fair to poorの1膝は術後感染による腫脹,疼痛の残存を認めていた。apprehension testは術前では全例陽性であったが,術後1年後では全例陰性となった。膝屈曲30°のCongruence angleは,術前では,平均22.61(±21.50)°であったが,術後1年後では平均-1.70(±17.40)°と正常化した。【考察】当院におけるMPFL再建術後の膝屈曲関節可動域獲得は良好であり,膝蓋骨脱臼再発も認めなかった。生体内の正常MPFLにおいては,膝屈曲60°までが膝蓋骨のstabilizerとして機能しており,MPFLは膝屈曲60°付近で最も緊張し膝蓋骨の制動効果が高いといわれている。また,MPFL再建術後においても,膝屈曲60°以上では再建靭帯にストレスはかからず,膝深屈曲位での5mm程度の緩みはむしろ生理的であり望ましいといわれている。したがって,膝屈曲60°までは再建靭帯へのストレスを考慮する必要があるが,膝屈曲60°以上の関節可動域運動は早期より実施可能であると考えた。本研究の結果,人工靱帯を用いたMPFL再建靱帯後における早期膝関節可動域運動実施の妥当性及び安全性が示唆された。膝蓋骨脱臼の病態は複雑かつ多様であるため,MPFL再建術後の理学療法を実施していく上では,軟部組織や骨形態などの先天的解剖学的因子に加え,内側広筋の筋収縮力や下肢のアライメントなどの膝関節に関わる安定化機構も考慮する必要がある。今回,人工靭帯を用いたMPFL再建術での調査報告であったが,今後,自家腱を用いた場合についても検証していきたい。【理学療法学研究としての意義】MPFL再建術後の理学療法は,膝蓋骨制動機能及び膝蓋骨脱臼の病態を理解した上で,再建靱帯へのストレスを考慮して実施する必要がある。本研究は,MPFL再建術後早期からの膝関節可動域運動実施の妥当性及び安全性を示唆するものである。
著者
齋藤 博子 神保 隆行 須貝 勝 高橋 香保里 大橋 恭彦 山田 彰 井上 元保
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.354, 2006

<B><はじめに></B>近年、反復性膝蓋骨脱臼の要因として内側膝蓋大腿靭帯(以下MPFL)の重要性が指摘され、人工靭帯あるいは自家腱を用いた再建術が行なわれている。今回、自家腱を用いたMPFL再建術後の症例について、当院で実施している理学療法プログラムを中心に紹介する。<BR><B><症例紹介></B>17歳女性。高校では卓球部に所属。14歳で卓球の試合中に初回左膝蓋骨脱臼をきたし、その後3年間で計3回の脱臼歴あり。最終脱臼後に当院整形外科受診。術前理学療法を1ヶ月間(2回/週)行った後、左膝MPFL再建術を施行した。<BR><B><術前評価></B>関節可動域(以下ROM)制限なし。膝蓋骨異常可動性およびapprehension testは高度陽性で、kujala score56点。extension lag15°、BIODEX SYSTEM3を用いた筋力測定は60°/sec・180°/sec・300°/secの3スピードにて測定したがほとんど筋出力は得られず、それぞれ健側に対しての欠損率は膝伸展で97%、屈曲では99%であった。左大腿部は著明な筋萎縮がみられ、周径は5cm以上の左右差があった。歩行については左膝関節の円滑な動きが損なわれている印象が得られた。<BR><B><理学療法プログラム></B>手術翌日からSLR・セッティング等の大腿四頭筋訓練、2日目からCPMでのROM訓練、3・4日目からニーブレース装着下での部分荷重歩行、5日目から端座位での膝伸展、セラピストによるROM訓練、6日目からパテラブレースでの全荷重歩行、10日目から階段昇降、2週目から自転車エルゴメーター、4週目からスクワット、8週目からジョギング開始、16週でフルスポーツ許可とした。<BR><B><術後評価></B>術後9週時点において、膝蓋骨異常可動性およびapprehension testは陰性で、kujala score75点。膝ROM制限なし。extension lag5°BIODEX SYSTEM3による筋力測定での健側に対する欠損率は膝伸展68%、屈曲33%であった。大腿周径の左右差は3cm以内と改善、歩行は術前と比較して、いくぶん改善傾向がみられた。<BR><B><考察></B>近年、機能解剖学的および生体力学的研究から、MPFLは膝蓋骨内側支持機構の第1制御因子であることが証明されている。当院では、膝蓋骨内側支持機構の第1制御機構であるMPFLは第一に再建するべきであり、その上で種々の先天的解剖学的因子の有無に応じて付加的手術を行うかを決定するのが合理的であると考えて、MPFL再建術を行っている。膝蓋大腿関節は屈曲角度が大きくなるにつれて骨形態により安定するため、特に膝伸展位から屈曲90°範囲でのMPFLの機能が重要であるとされている。よってMPFL再建術後のROM訓練では、屈曲90°までを慎重に行うことが重要と考えられる。<BR> MPFLの膝蓋骨側約1/3は内側広筋遠位部の後面に癒合している。手術時にはこの部分の剥離を行ううえ、術前からの筋萎縮が強い症例が多い。また、術後膝蓋骨が内側へ矯正されることで内側広筋の筋収縮の感覚が得られ難い。そのため今回の症例のように術後の筋力回復、extension lagの改善が困難であることが多いと考えられる。以上よりMPFL再建術後の理学療法に関して最も重要となる点は、慎重なROM訓練と膝筋力の獲得であるといえる。
著者
齋藤 博行 秋場 善憲 早坂 崇
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会東北支部会報 (ISSN:09117067)
巻号頁・発行日
no.51, pp.3-4, 2008-12-20

水稲の省力低コスト化を図るため、機械移植栽培の株間を30cmに広げた尺角植えの疎植栽培は、慣行栽培よりも育苗箱使用が10箱程度で半分であり、種子量、培土量、肥料、農薬等の資材経費の半減になるほか、育苗施設や育苗管理労力も削減可能である。これにより、余剰労力の他部門への活用や水田経営規模拡大が見込める。なによりも、田植え時の育苗箱運搬や苗補給労力も大幅に削減されることより、高齢な補助者にとっては大幅な労働軽減になる。暖地における穂数型品種の疎植栽培については、品質向上・増収効果が確認されているが、東北地域の寒冷地である山形県の奨励品種である「はえぬき」は偏穂重型品種であることから初期茎数確保が遅れた場合の減収への不安があった。本報告は、平成16年から19年までの4ヵ年にわたる株間30cmの疎植栽培を農家圃場で調査を実施し、生育の特徴及び収量性について取りまとめたものである。
著者
斎藤 博 向井 茂 寺西 鎮男 谷川 好男 藤原 一宏 浪川 幸彦 内藤 久資 齋藤 博
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1.Alexeev,Sankaran教授を招いて1997年5月に名古屋大学においてモジュライ多様体の研究集会を開催し、アーベル曲面のモジュライに対する結果を発表するとともに一般次元主偏極の場合のトーリックコンパクト化について議論した.また、6月の数理解析研究所でもう一度会って、理解を深めることができた.この方面では(1、5)型と(1、4)型の場合に標準レベル付偏極アーベル曲面のモジュライ空間と対応する正多面体多様体の間の双有理写像を具体的に構成した.対数多様体の概念を使うと見通し良くなることと可積分系との関係がこの研究で得られた新しい知見である.2.夏からは研究計画3)の幾何学的不変式論に本格的に取組み1997年12月にはMumfordのものとは違ってlinearizationの取り方によらない商多様体の構成を発見した.これについては具体的な例でその有効性を検証中である.また、幾何学的不変式論の基礎を検証し、不変式環の有限生成性や簡約代数群の線型簡約性の証明を簡素化することができた.3.1996年度より続いている3次超曲面の周期写像の研究では幾何学的不変式論で得られるモジュライ空間と対称空間の数論的商を比較し、モジュライ空間としてふさわしいコンパクト化の候補を見つけた.これは本来問題としていたK3曲面のモジュライ空間のコンパクト化についても示唆を与えている.次数の低い場合に安定K3曲面の候補を色々実験している.