著者
金村 米博 市村 幸一 正札 智子 山崎 麻美 渋井 壮一郎 新井 一 西川 亮
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.436-444, 2015
被引用文献数
1

 近年, 髄芽腫の分子遺伝学的診断および国際コンセンサス4分子亜群分類 (WNT, SHH, Group 3, Group 4) は, 腫瘍特性解析, 腫瘍分類, 臨床的リスク評価, 新規治療法開発に大きなブレークスルーを引き起こしている. 国内では, 日本小児分子脳腫瘍グループ (JPMNG) が組織され, 全国から試料を収集し, 国際的コンセンサスに基づく小児脳腫瘍の遺伝子診断実施体制の構築が開始されている. 髄芽腫の分子遺伝学的診断は, 今後の診療および研究において, 重要かつ不可欠な手法になると思われ, 本邦のJPMNG研究は, 現在いまだに完治が困難な髄芽腫の診療水準のさらなる向上と予後改善に大きく貢献し得ると考える.
著者
新井 一司 久野 春子 鈴木 創 遠竹 行俊 大喜多 敏一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.184-191, 2002-06-20 (Released:2011-11-08)
参考文献数
21

モミの衰退木の調査方法を確立し, 東京におけるモミの衰退分布を明らかにするために, 1992年から1993年にかけて山間部を対象に衰退度の評価を107地点, 618個体について行った。調査方法は, 小枝の枯損, 枝葉の密度, 樹形と樹勢の4項目の値を合計した衰退度合計指数が評価基準として有効であった。小枝の枯損と枝葉の密度における衰退度階級2以上の明らかな衰退がみられた個体の割合は, 各々45.2%, 45.6%であった。モミの衰退は, 地形的要因である傾斜や起伏の状態とは関係がみられなかった。一方, 広域的な広がりである緯度, 経度との間には相関関係がみられ, 山間部の南東の地域ほど, 衰退が激しく, 北西部で衰退の程度が弱まる傾向がみられたが, 北西部の一部の谷地形では, 被害がみられた。海抜高は, 250m以下の低い地域ほど衰退が激しく, 高い高度で健全な傾向を示すものの, 750m以上という高い地域でも57.9%の地点に弱いながらも衰退現象がみられた。
著者
今津 浩喜 笠原 正男 城野 健児 竹下 健也 丹羽 基博 村上 正基 南 圭介 見元 裕司 田代 和弘 黒田 誠 溝口 良順 堀部 良宗 新井 一史 菅沼 正司 船曵 孝彦
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1499-1505, 1992
被引用文献数
1

手術及び剖検にて得られた十二指腸癌症例中良好なDNA histogram の得られた12症例についてそのDNA ploidy pattern, proliferation index (PI) 及び proliferating cell nuclear antigen (PCNA) との相関を検討した. 12症例中75% (9症例) がDNA aneuploidy を示し, また, (91.6%) 11症例がPCNA染色陽性であつた. 組織型とDNA ploidy pattern, PI, PCNA score 及びPCNA陽性率との間に, また, DNA ploidy pattern とPCNA score 及びPCNA陽性率との間には特に相関がなかつたが, PIとPCNA score との間に相関傾向が, PIとPCNA陽性率との間に有意の相関が (P<0.05) 認められた. PCNAの陽性率の判定には方法論上いくつかの問題点も含まれているが腫瘍細胞の増殖率の判定においては, 少なくとも関連性があるものと考えられた.
著者
新井 一寛
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.471-488, 2007

<p>This article elucidates the initial formation process of a Sufi order through a certain saint's relation with his devotees. This saint is a descendant of Prophet Muhammad. His devotees think that he has knowledge of Islam, special power by which he can even kill people, and personal magnetism. I consider that the community that is formed around the saint is one in which devotees share the original Islamic view of the world, and which represents the initial state of Sufi orders before systematization. Before the 19th century, when the institutionalization and systematization of Sufi orders by the state started, there were religious groups centering on a certain charismatic person in Egypt. </p>
著者
新井 一寛
出版者
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
雑誌
アジア・アフリカ地域研究 = Asian and African area studies (ISSN:13462466)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.471-488, 2007-03

This article elucidates the initial formation process of a Sufi order through a certain saint's relation with his devotees. This saint is a descendant of Prophet Muhammad. His devotees think that he has knowledge of Islam, special power by which he can even kill people, and personal magnetism. I consider that the community that is formed around the saint is one in which devotees share the original Islamic view of the world, and which represents the initial state of Sufi orders before systematization. Before the 19th century, when the institutionalization and systematization of Sufi orders by the state started, there were religious groups centering on a certain charismatic person in Egypt.
著者
横川 京児 河村 正敏 新井 一成 塩川 章 太田 秀一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.419-428, 1991-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
28
被引用文献数
1

大腸癌の予後を左右する重要な因子に血行性転移があげられる.特に肝転移は予後に大きく関与しており, 静脈侵襲の程度を観察することにより, 肝転移の危険性を予測することが十分可能であると考えられる.今回著者らは, 進行大腸癌治癒切除症例における静脈侵襲状況をVictria blue-H・E染色を用い観察し, 静脈侵襲の有無, 侵襲程度, 侵襲部位および侵襲静脈径を検索し, これらの肝転移への関与, ならびにその臨床病理学的意義を検討した.対象は, 教室における過去8年間 (1981.1~1988.12) の初発大腸進行癌切除症例378例中単発大腸癌治癒切除症例220例である.静脈侵襲陽性は141例 (64.1%) であり, これらの静脈侵襲頻度をv1; 1~2個, v2; 3~6個, v3; 7個以上, に分け, また, 侵襲静脈径を各症例の最も太い静脈径によりS・M・L群に分類し検討した.侵襲頻度別にみるとv1: 80例 (56.7%) , v2: 48例 (34.0%) , v3: 13例 (9.3%) , 侵襲径ではS群: 18例 (12.8%) , M群: 95例 (67.4%) , L群: 28例 (19.9%) であり, 両者の問に相関関係がみられ, 侵襲頻度が多いものほど, 侵襲径の大きい群に属した.v (+) 例では中分化癌, a2+Sが有意に高率であった.静脈侵襲頻度, 侵襲静脈径と占居部位, 組織型, 深達度およびリンパ節転移との問に相関をみられなかったが, リンパ管侵襲のうち1y3とに相関関係を認めた.予後の検討では, v (-) , v (+) 症例の5生率はそれぞれ84.2%, 58.6%と有意差がみられ, 静脈侵襲頻度が高い症例ほど, また静脈侵襲径が太いほど予後不良であった.肝再発は17例 (7.7%) にみられ, うち16例がv (+) であった.静脈侵襲頻度別にみると, v0: 1.2%, v1: 5.0%, v2: 12.5%, v3: 46.2%, 侵襲静脈径別では, S群: 5.6%, M群: 7.4%, L群: 28.6%, また, 漿膜下層静脈侵襲の有無で比較すると, ssv (+) : 16.3%, ssv (-) : 3.6%であり, 静脈侵襲頻度の高いもの, 侵襲静脈径の太いもの, ssv (+) で有意に肝再発がみられた (p<0.05) .また, 占居部位, 組織型, リンパ管侵襲およびリンパ節転移では相関関係がみられず, 深達度のみに肝再発との相関関係を認めた.以上, 大腸癌における静脈侵襲状況は術後肝再発を予測するうえできわめて重要であり, これらの危険因子の大きい症例では治癒切除症例であっても厳重な経過観察が必要であると考えられた.
著者
新井 一
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.12-14, 2009-01-20

日本専門医制評価・認定機構は,専門医の質を担保することを目的に各学会に専門医制度の改革を求めている.脳神経外科学会についてもその例外ではなく,研修施設基準,研修指導体制,資格更新基準をより厳密なもの改める必要がある.さらに,将来的な脳神経外科専門医の適正人数について学会としてどのように考えているのか,方向性を示すように求められている.
著者
小林 美也子 新井 一仁 石川 晴夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.258-267, 1998
参考文献数
39
被引用文献数
11

本研究の目的は, 抜歯・非抜歯の診断や頭蓋下顎機能障害との関連において注目され, 歯科矯正診断における重要な指標のひとつであるSpeeの彎曲の深さについて三次元的に分析し, 日本人正常咬合者の咬合の形態的特徴を一層明らかにすることである.教室で開発した非接触三次元形状計測システムを用いて, 本学の学生および教職員約3, 500名の中から選択した正常咬合者30名(男女各15名, 平均年齢23.2歳, 標準偏差3.5歳)の矯正用診断模型について計測を行った.水平基準平面は切歯点と左右側の第一および第二大臼歯の遠心頬側咬頭頂を通過する咬合平面とし, 両咬合平面に対する切縁中央と咬頭頂の垂直的な距離をSpeeの彎曲の深さおよびSpeeの彎曲に最も適合した球を算出し, 平均値と標準偏差を求めた.Speeの彎曲が最も深かったのは第二大臼歯を後方基準点とした基準平面に対する第一大臼歯の近心頬側咬頭頂で平均1.28mm, 標準偏差0.60mmであった.また球の半径は72.4mmから3498.9mmの範囲, 中央値は158.2mmであった.以上のことから, 本研究で選択した日本人正常咬合者のSpeeの彎曲の深さは, 以前の報告よりも平坦であること, Speeの彎曲は第二大臼歯で個人差が最も大きいこと, 左右側差は認められないこと, 第二大臼歯近心頬側咬頭頂においては, 女性は男性に比較して統計学的に有意に深いこと(p<0.01), ならびにSpeeの彎曲に最も適合した球の半径には大きい個人差が認められることなどの特徴が明らかとなった.
著者
菅野 秀宣 中島 円 荻野 郁子 新井 一
出版者
日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.16-25, 2008-06-30

目的:海馬歯状回において神経細胞新生が継続していることは動物実験のみならずヒトでの研究でも報告されている。今回、われわれはヒト側頭葉てんかん患者における神経細胞新生と成熟について免疫染色による検討を行った。方法:海馬での神経細胞新生はNeuro D、PSA-NCAM、NeuNの免疫染色により確認した。手術時年齢、海馬硬化の有無、発症から手術までの罹患期間、発作頻度が、新生神経細胞数におよぼす影響を統計学的に解析した。神経細胞の成熟度の指標としてNKCC1、KCC2の免疫染色を追加した。結果:新生神経細胞は、海馬硬化群で有意に少なかった(p=0.0003)。非海馬硬化群での新生細胞の74.0%はNKCC1が陽性であり、36.0%がKCC2に陽性であった。一方、海馬硬化群では各々67.6%と6.3%の陽性率であり、海馬硬化群において有意にKCC2の発現が少なかった(p=0.003)。結論:ヒトてんかん海馬においても神経細胞の新生が継続していることが確かめられた。硬化海馬では非硬化例に比べその数は有意に少なく、かつ未成熟であるといえる。