著者
大村 嘉人 河地 正伸 太田良 和弘 杉山 恵一
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.47-54, 2008-01-10 (Released:2011-12-05)
参考文献数
33
被引用文献数
2

地衣類ウメノキゴケの大気汚染に対する指標性は, 1970年代前半のSO2汚染が深刻だった時代に見出された。しかし, 1980年頃までに都市部でSO2汚染が大幅に改善され, 相対的に自動車排出ガス由来の大気汚染が問題化したことに対して, ウメノキゴケがどのような動態を示してきたのかついては, 詳しいことが分かっていない。筆者らは, 静岡市清水区の56地点の墓地において19721978, 1994, 2003年にウメノキゴケの分布調査を実施し, 本種の分布変化と大気汚染との関係について調べ, 次のことを明らかにした。1) ウメノキゴケは1972年以降のSO2汚染の改善に伴って, 6年以内に分布が回復してきた。2) 東名高速道路および国道1号線が交差する地域付近において, ウメノキゴケが1978年に消滅し始め, 1994, 2003年と国道1号線に沿って空白域が拡大していた。この空白域に近い大気測定局ではNO, NO2, NOx濃度が高くなっていたことから, ウメノキゴケの消滅と自動車排出ガスや交通渋滞による大気環境の変化との関連が指摘された。しかし, 調査地域内のウメノキゴケの分布とNO, NO2, NOxとの関連あるいはSO2, SPM, Oxとの関連は見出されなかった。3) ウメノキゴケの分布変化から, 2003年の調査地域は, 国道1号線沿いの空白域のほかに, 清水区役所周辺の移行帯, 郊外の通常帯に区分された。これらは大気汚染や乾燥化などの大気環境の違いを反映していることが考えられる。ウメノキゴケの分布変化は, SO2汚染とその改善, 道路開通や交通量の増加に伴う大気環境の変化を反映していることから, 都市部における大気汚染の監視には, 本種による長期モニタリングを取り入れることが重要であると考える。
著者
西東 力 片山 晴喜 杉山 恵太郎
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.50, pp.147-150, 2003-11-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
9

Of 35 species of ornamental plants and vegetables tested, 30 species were attacked by the banded greenhouse thrips, Hercinothrips femoralis, under laboratory conditions. Of these, dumb cane (Dieffenbachia sp.), beach lily (Crinum asiaticum var. japonica), turmeric (Curcuma longa), plantain lily (Hosta sp.), prairie gentian (Eustoma grandiflorum), common cockscomb (Celosia argentea), pink (Dianthus hybridus), brazilian skyflower (Duranta repens), sultan snapweed (Impatiens wallerana), cucumber (Cucumis sativus), egg plant (Solanum melongena), kidney bean (Phaseolus vulgaris) were most susceptible to damage by the thrips. Malathion 50EC, acephate 50WP and 5G, etofenprox 20EC, spinosad 25SG, emamectin-benzoate 1EC, methidathion 40EC and nitenpyram 10G gave 100% control of the thrips in a glasshouse test.
著者
佐藤 寛 高橋 史 杉山 恵一 境 泉洋 嶋田 洋徳
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.33-44, 2007-03-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、攻撃行動をパーソナリティ変数としてではなく、観察可能な行動として測定する尺度である攻撃行動尺度を作成し、信頼性と妥当性を検討することであった。まず、研究1では大学生372名を対象に調査を実施し、攻撃行動尺度の作成と内的整合性の検討を行った。その結果、「身体的・物理的攻撃」「言語的攻撃」「間接的攻撃」の3因子17項目からなる攻撃行動尺度が作成された。また、攻撃行動尺度はある程度の内的整合性があることが示された。次に、研究IIにおいて、大学生406名を対象に、攻撃行動尺度とAnger Expression Scaleを用いた調査を実施し、攻撃行動尺度の妥当性を検討した。分析の結果、攻撃行動尺度は適切な交差妥当性と構成概念妥当性を有していることが示唆された。最後に、本研究の限界と今後の課題に関する議論が述べられた。
著者
鈴木 信也 村山 悠佳 杉山 恵理花 関山 正夫 佐藤 均
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.129, no.7, pp.829-842, 2009
被引用文献数
8 3

We established dose estimation formulae for renal-excretion drugs using the glomerular filtration rate (GFR), tubular secretion clearance (Sc), and unbound fraction of drug in plasma (fp) as a renal function index of physiological development in neonates and infants not more than 2 years of age. A dose ratio of (D<sub>C</sub>/D<sub>A</sub>)=clearance ratio of (CL<sub>C</sub>/CL<sub>A</sub>)≅(fp<sub>C</sub>·GFR<sub>C</sub>)/(fp<sub>A</sub>·GFR<sub>A</sub>) for neonates and infants/adults was applied to drugs with fp·GFR>Sc, while D<sub>C</sub>/D<sub>A</sub>=CL<sub>C</sub>/CL<sub>A</sub>≅(β·BSA<sub>C</sub>+fp<sub>C</sub>·GFR<sub>C</sub>)/(β·BSA<sub>A</sub>+fp<sub>A</sub>·GFR<sub>A</sub>) was applied to drugs with Sc>fp·GFR using the coefficient of each drug (β) and body surface area (BSA). Validity of the estimation formulae was investigated in drugs with fp·GFR>Sc such as vancomycin (VCM), arbekacin (ABK), fosfomycin (FOM) and norfloxacin (NFLX), and in drugs with Sc>fp·GFR such as digoxin (DGX) and amoxicillin (AMPC). First, we compared the clearance ratio (CL<sub>C</sub>/ CL<sub>A</sub>) of VCM, ABK, and DGX estimated by our method with those calculated using the Japanese population clear- ance values and those estimated allometrically (BSA<sub>C</sub>/BSA<sub>A</sub>). Next, we compared the established doses of all drugs investigated with the doses for neonates and infants calculated from the conventional dose estimation methods for children and our estimation formulae, and evaluated our method. As a result, favorable consistency was observed in the CL ratio for all drugs, and the doses of VCM, FOM, NFLX and AMPC calculated from our estimation formulae approximated the established doses. In conclusion, the validity of the dose estimation method using pharmacokinetic factors related to physiological development (i.e., GFR, fp, Sc) for renal-excretion drugs in neonates and infants was demonstrated.<br>
著者
杉山 恵子 泉谷 明 武井 勉 大嶋 隆 祖父江 鎮雄
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.758-764, 1986-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
23

コーンスターチを酵素処理することにより得られるT G シロップ( 主成分: イソマルトース31.4%,パノース20.8%,イソマルトトリオース11.4%)の齲蝕誘発能を,供試菌としてS. mutans MT8148R(血清型c),6715(同g)株を用い,in vitroおよびラット実験齲蝕系で検討した。TGシロップはS. mutansの基質になり得たが,スクロース存在下で認められるS. mutans 菌体のガラス管壁への付着は,TGシロップの濃度の増加とともに抑制された。また,S. mutans より得られた粗GTaseはスクロースから多量の非水溶性グルカンを合成するが,TGシロップの添加により著明に抑制された。実験齲蝕におけるTGシロップ投与群の齲蝕スコアは,スクロース投与群の約1/3~1/5の程度で有意に低かったが,小麦粉投与群よりは有意に高い値を示した。以上の結果は,TGシロップが低齲蝕原性の代用甘味料として利用できる可能性の高いことを示している。
著者
永尾 美智瑠 中野 裕佳子 田島 正教 杉山 恵理花 稲田 睦 佐藤 均
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

背景・目的:近年、カンナビジオール(CBD)の臨床的な有用性が注目されている。CBDはシトクロムP450(主にCYP3A4及びCYP2C19)で代謝されるとともに、CYP阻害作用を有することが報告されているが、in vivo研究はほとんど行われていない。本研究ではCBD動態の用量依存性について検討するとともに、CYP3Aを介した薬物間相互作用の可能性についてin vivo条件下で検討した。方法:CBD製剤として,当部門で開発したCBDナノエマルション製剤(CBD-NE)を用いた。一晩絶食させたWistar系雄性ラットにCBD-NE(5, 10, 25, 50 mg/kg)を経口投与し、経時的に採血した。得られた血漿は固相抽出後、LC-MS/MSにて血漿中CBD濃度を測定し、薬物動態パラメータを算出した。CYP3A阻害剤としてケトコナゾール(KCZ)を、CYP3A基質としては13C-エリスロマイシン(呼気試験)を用いて、CYP3Aを介した薬物間相互作用の検討を行った。結果:CBD投与量とAUCの関係は有意な上昇型の非線形性を示し、特にCBD 10 mg/kgを超える投与量において顕著であった。KCZ併用により、CBD 10 mg/kgではAUC及びCmaxの有意な上昇がみられたが、CBD 50 mg/kgでは変化がなかった。 13C-エリスロマイシン呼気試験の結果では、CBD 10, 50 mg/kgにおいてCBDによるCYP3A阻害作用が認められ、1 mg/kgでは認められなかった。考察:今回比較的速やかな吸収性を示すCBD-NEを用いた検討により、経口投与後のCBD動態の非線形性が明らかとなった。CBD高用量においてCYP3A阻害剤KCZ併用による影響がみられなかったことからも、自己代謝阻害による代謝飽和による非線形性と考えられた。またCYP3A阻害作用がみられたCBD 10~50 mg/kgにおけるCmaxは既報におけるCBDのCYP3Aに対するKi値と良く対応していた。今回の検討によりCBD高用量でのCYP3A阻害作用がin vivo条件下においても示された。過去に報告されている臨床報告も併せて考慮すると、10 mg/kg以上のCBD投与量では薬物間相互作用に注意する必要性が示唆された。
著者
高橋 健 小林 成禎 広瀬 洋 杉山 恵一 高井 國之 川口 雅裕 白鳥 義宗 野田 俊之 冨田 栄一
出版者
Japan Society for Health Care Management
雑誌
日本医療マネジメント学会雑誌 (ISSN:18812503)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.443-447, 2007

岐阜地域は、岐阜市と近隣医師会が地域診療を担当し、中核となる病院が複数設置された人口約80万人の医療圏である。この医療圏において各々の病院で一疾患に対し、異なる様式の地域連携クリティカルパスが運用されると、複数病院と連携しているかかりつけ医には不都合である。このため、岐阜地域の既存の連携体制を基に、2006年8月、各病院と岐阜市医師会の連携を担当する医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、事務職を中心とした岐阜医療連携実務者協議会を設置し、統一地域連携クリティカルパスを作成し運用する試みを行った。<BR>連携ネットワーク構築を先行した展開において、協議会が各病院の専門医の意向を確認し、地域連携クリティカルパスの作成対象疾患をウイルス性慢性肝炎と心筋梗塞とした。続いて、両疾患の専門医と、院内クリティカルパスの専門グループの参加を得て、両疾患地域連携クリティカルパスのワーキンググループを立ち上げ、統一規格の基で地域連携クリティカルパスを作成し、2007年5月、「岐阜地域医師会連携パス」として岐阜地域のかかりつけ医に向けて広く公開した。<BR>「岐阜地域医師会連携パス」の目的は、対象疾患の安定維持と異常所見の早期発見、役割を分けた地域完結型医療の確実な実施、ならびに質の保持された地域における医療の均一化とした。地域連携クリティカルパスの評価と改定は、各ワーキンググループが行い、連携部門は運用の支援・モニターと、ネットワークの維持・安定を担当することとした。
著者
杉山 恵子 Keiko SUGIYAMA
雑誌
恵泉女学園大学紀要 = Keisen University Bulletin
巻号頁・発行日
vol.27, pp.29-55, 2015-02

American architect, H.H.Richardson designed the Glessner House(1885-1887) in Chicago for the industrialist, John J. Glessner. First, I will argue that the house was important in terms of its collaboration with the architect and client for making an ideal residence. Then, I will present how space in the House was actually negotiated between wife and husband, and boundaries were drawn between master and servants. The introduction of the Arts and Crafts Movement played a crucial role for the wife to use these spaces for her public purposes. Finally, I will show that during the 1930s and the 40s, Frances Glassner Lee, the daughter, made crime scene doll houses for police detective training. Her anger towerds domestic violence, and her strong desire to eradicate it, are represented inthe dolls as victims. Her construction of the doll houses, thus, was for from the ideals of her father. Examining the Glassner House presents a key for a deeper understanding of dynamism of social class and gender at the turn of century.
著者
板垣 信哉 杉山 恵 久保田 佳克
出版者
全国英語教育学会
雑誌
ARELE : annual review of English language education in Japan (ISSN:13448560)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.31-40, 2003-03

This paper reports the results of analyses of learner metatalk about Japanese language, English language, and English grammar while attempting to perform two types of "output-oriented" grammar exercises. Subjects were asked to write down their "retrospective reports" on how they performed the exercises. The data was then analyzed on the basis of the theoretical framework of the Output Hypothesis (Swain, 1985, 1998). It was found that the type and amount of metatalk were largely dependent on the type of grammar exercises and the English proficiency level of subjects. The results are also discussed in reference to grammar teaching as well as the three language learning functions of output; "noticing," "hypothesis-testing," and "metatalk."