著者
稲村 友彦 岩崎 一晴 齋藤 仁 中山 大地 泉 岳樹 松山 洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.123-138, 2009-03-31

阿蘇山の特徴的な地形(中央火口丘,阿蘇外輪山および立野火口瀬)が,立野火口瀬の西で起こる局地風「まつぼり風」に及ぼす影響を,メソ気象モデル(RAMS)に現実の地形と仮想的な地形を与えることによって調べ,まつぼり風発生のメカニズムを考察した.まつぼり風は南東の地衡風が吹くときに発生しやすく,発生が確認された1999年4月17〜18日を対象に実験を行ったところ,現実の地形の実験で,立野火口瀬周辺にはおろし風や地峡風が出現した.仮想的な地形の実験との比較により,まつぼり風を発生させる主要な原因は,立野火口瀬南側の外輪山によるおろし風であり,立野火口瀬による地峡風効果と中央火口丘によるおろし風が,強風をさらに強めていることが示唆された.また,下層の東寄りの風と上層の西寄りの風との間,高度1500m付近に現れる東西風速0m/sの層により形成された臨界層が,おろし風の強化に寄与していると考えられた.
著者
牛山 素行 松山 洋
出版者
水文・水資源学会編集出版委員会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.492-498, 1995-09-05 (Released:2009-10-22)
参考文献数
4
被引用文献数
1 6

身近で得られる清涼飲料水のペットボトル,ポリ製ロートなどを用いて軽量・安価な簡易雨量計を作成した.最も一般的に利用されている転倒ます式雨量計との比較観測を行ったところ,降水量10mm以上で観測精度は±10%程度であった.受水部への雨滴飛び出し防止板の取り付けの有無では,取り付けない方が安定した観測値を得た.今回試作した簡易雨量計は10mm以上のまとまった降水量を把握するには十分実用的なものといえる.
著者
松山 洋 泉 岳樹 中山 大地 島村 雄一 長谷川 宏一 尾身 洋
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の主な成果は以下の通りである。(1)葉面積指数をよりよく推定する新植生指標を提案した。(2)常緑針葉樹であるオオシラビソの分布規定要因を定量的に示した。(3)太陽高度の低い時期における衛星画像の地形効果補正法を提案した。(4)集中型モデルであっても融-流出量を精度よく推定できることを示した。(5)北方常緑針葉樹林の生育開始に融雪が影響している可能性を示した。(6)タブレットPCを用いた高速マッピングシステムを構築した。
著者
松山 洋平
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.18-32, 2014-09-30 (Released:2017-10-01)
参考文献数
65

This study considers the increase and decrease in īmān (belief) in Māturīdism and illustrates the structure and concept of īmān within this school. It is commonly understood that, contrary to the majority of Ash‘arītes and ahl al-ḥadīth (people of ḥadīth), who admit the increase and decrease in īmān, a vast majority of Māturīdītes deny this because, according to their theory, work is not a constituent of īmān, and īmān is composed of only taṣdīq (assent) by the heart, or by another perspective, taṣdīq by the heart and iqrār (confession) by the tongue. Even among the Māturīdītes, who deny the increase and decrease in īmān, a changeable aspect related to this concept is perceived, but it is believed that the core structure of īmān is unchangeable. The changeable aspect is referred to as nūr (light), ḍiyā’ (brilliance), or thamara (fruit) of īmān. These changeable aspects of īmān are not components of īmān, even though they originate from īmān. However, a group of Māturīdītes, all of whom are scholars from the Ottoman era, believe that īmān is unchangeable only when it refers to mu’man bi-hi (what should be believed), and it accepts the increase and decrease in īmān when it refers to assent. The author focuses on the following two results of the study. First, those scholars among the Māturīdītes who admit the increase and decrease in īmān are all from the Ottoman era. This perspective could be interpreted as the later Ottoman Māturīdītes' approach to the Ashartes theories on īmān-related issues. Second, the Māturīdītes who admit that there is something changeable, separate these mutable concepts cautiously from the structure of īmān, which are immutable. By doing so, this school succeeds in describing the precise relationship between the concept of īmān and its related concepts.
著者
瓜田 真司 齋藤 仁 中山 大地 泉 岳樹 松山 洋
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.114-114, 2010

本研究では、気象庁が開発した土壌雨量指数を用いて、日本全域を対象に、2001-2008年の土砂災害発生危険性を明らかにした。2001-2008年の土砂災害発生危険性には地域差があり、1年間に何度も危険性を高める雨が降った箇所もあれば、この8年間に一度も土砂災害の危険性が高まらなかった箇所もあった。<BR> 牛山(2005)では、暖候期降水量から推定される極値降水量が観測されていない地域を豪雨空白域として抽出している。その豪雨空白域における土砂災害発生危険性を調べたところ、新潟・山形県境付近、富山県中央部、近畿地方中部と種子島南部は豪雨空白域であり、対象期間(2001-2008年)の土砂災害発生危険性も高まっていなかった。すなわち、これらの箇所では、今後の大雨の際に土砂災害発生危険性が高まる可能性が示唆される。
著者
松山 洋
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.132, no.1, pp.17-31, 2023-02-25 (Released:2023-03-09)
参考文献数
31

Given the lack of studies on the characteristics of precipitation at Haha-jima, Ogasawara (Bonin) Islands, they are investigated using daily precipitation data from AMeDAS Haha-jima (August 30, 2007-December 31, 2020) and the Oki-mura Water Supply Branch of Ogasawara Village (January 1, 1978-December 31, 2017). A regression equation is produced to estimate daily precipitation at AMeDAS using data at Oki-mura for each month; then, they are applied to estimate daily precipitation at AMeDAS from January 1, 1978 to August 29, 2007. The monthly precipitation analysis for the period from January 1978 to December 2020 reveals that precipitation in February at Haha-jima decreased with a 5% significance level. In contrast, precipitation in September at Chichi-jima increased with a 5% significance level. A comparison between the histograms of daily precipitation on both islands in the former (1978-1999) and latter (2000-2020) periods reveals that in February 2000-2020, precipitation of 10-19 mm/day class on both islands decreased, along with a decrease of 20-29 mm/day class at Haha-jima. During the period September 2000-2020, the maximum daily precipitation on both islands surpassed previous records, and precipitation of 70-89 mm/day class increased on both islands. Most of the heavy daily precipitation occurred either during the approach or the passage of a tropical depression or a typhoon.
著者
長井 彩綾 根元 裕樹 松山 洋 藤塚
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2023年度日本地理学会春季学術大会
巻号頁・発行日
pp.256, 2023 (Released:2023-04-06)

2011年に発生した東日本大震災の,地震後の津波は甚大な被害をもたらした.高田ほか(2012)は,東日本大震災の津波による神社の被害調査によって,スサノオノミコトを祀る神社,熊野系,八幡系の神社の多くは津波被害を免れた一方,アマテラスオオミカミを祀る神社や稲荷系の神社の多くが津波被害を受けていたことを明らかにした. 長井ほか(2022)では,先行研究で挙げられた「スサノオノミコトを祀る神社は津波被害を回避できる」という点に着目し,東京都を対象にスサノオノミコトを祀る代表的な神社である氷川神社の鎮座地の地形的特徴を調査した.氷川神社は武蔵一宮であり,埼玉県にも多い神社であることから,本研究では旧武蔵国を対象範囲を広げて氷川神社鎮座地の立地特性を調べた.さらに,神社と洪水浸水想定区域との位置関係を調べることで氷川神社の被災リスクについて考察した.本研究では,埼玉県神社庁ホームページ,『東京都神社名鑑(上・下)』(東京都神社庁1986),神奈川県神社庁ホームページに記載された神社のうち,旧武蔵国に該当する埼玉県、東京都、神奈川県横浜市と川崎市の土地条件図がある範囲に鎮座する2,848社(うち氷川神社195社)を対象として分析を行った(東京都の島しょ部,他社の境内神社を除く). 対象とした神社の鎮座地住所を緯度経度へ変換した後,ArcMapにて,航空写真を用いて社殿の位置へ合わせた.傾斜地に関する分析は,基盤地図情報数値標高モデル5mメッシュを用いて,神社が傾斜地付近に鎮座するか確認した.高低差を調べるために,ArcMapのフォーカル統計機能を用いて半径10メッシュ(50m)の標高の最大値と最小値を算出し,比高を求めた.比高1m未満は平坦地とした.地形分類は,数値地図25000の土地条件図を用いて,神社鎮座地の地形分類を抽出した.神社から河川までの距離は,現在の国土数値情報河川データの他,地形分類のうち,低地の一般面,凹地・浅い谷,頻水地形,水部を河川として神社との距離を算出した.洪水浸水想定区域との位置関係は,国土数値情報の関東地方整備局,埼玉県,東京都,神奈川県のデータを用いて,洪水浸水想定区域と重なる神社があるかを調べた.旧武蔵国の神社は比高の大きい場所に沿って鎮座していたが,氷川神社は,その他の神社と比較すると,鎮座する場所の比高は特別大きいものではなかった.地形分類の分析で,旧武蔵国の神社は,台地・段丘や低地の微高地といった浸水しにくい場所に多く鎮座しており,氷川神社は特に台地・段丘に鎮座するものが多かった.河川までの距離について,旧武蔵国の神社の多くが河川まで100m未満に鎮座しており,氷川神社とその他の神社で平均値の差の検定を行ったところ有意差はなかった.神社と洪水浸水想定区域との位置関係では,荒川沿いの低地や大宮台地より東側の低地で多くの神社が浸水した.氷川神社は,荒川沿いの低地にも多く鎮座する.そこでは,浸水するおそれのある氷川神社がその他の神社よりも多く,浸水深も深い場所にあることが明らかになった.なお,荒川の支流沿いの氷川神社は浸水しにくいことがわかった.
著者
松山 洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.2, pp.109-110, 2020-03-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
3
著者
松山 洋
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.1, pp.40-41, 2020-01-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
5
著者
松山 洋一 藤江 真也 齋藤 彰宏 XU Yushi 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.220, pp.7-12, 2010-10-01
参考文献数
7

通所介護施設において,人同士の会話に介在させ,コミュニケーションを活性化するロボットについて報告する.本研究では,具体的なタスクとして高齢者通所施設で行われている難読ゲームを取り上げる.難読ゲームは,司会者の存在する複数人対話の一形態だと考えることができる.ここでロボットは,複数人会話における制約を満たしながら,会話を活性化させるための行動選択を行う必要がある.本論文では,既に人同士で行われているコミュニケーションを妨害せずに活性化を実現するため,会話における参加者の役割や,参加者間が共有する話題を推定しながら,様々な場面において適した行動を取るフレームワークを提案する.
著者
和田 範雄 泉 岳樹 松山 洋 近藤 純正
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.13-22, 2016-01

測器近傍の障害物の有無が気温に与える影響を定量的に評価するため,放射による観測誤差が最大で0.04℃の高精度な測器による気温観測を行い,空間広さ(「周囲の障害物と測器との距離」と「障害物の高さ」との比)に注目して解析した.観測は,首都大学東京南大沢キャンパスの陸上競技場の芝地上6地点において,2014年8月22日~9月17日に行い,その内1地点では不織布の囲いを設置して,空間広さが小さい状態を人工的に作り出した.その結果,日中は,空間広さが小さくて天気がよいほど気温が高くなり,いわゆる日だまり効果(測器近傍の障害物による風速の減少に伴う地上気温の上昇)の影響が示唆された.一方,夜間は,空間広さが小さい地点ほど気温が低くなった.これは,囲いによる風速減少により上空大気との熱交換が抑制されるとともに,囲いの中に冷気がたまりやすくなることで放射冷却の効果が強められたことが原因と考えられる.また,日中と比べて夜間には地点間の気温差は小さくなったが,これは日中と夜間の正味放射量および風速の違いを反映したものと考えられる.
著者
フローレス 慈英 松山 洋
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.130, no.3, pp.353-368, 2021-06-25 (Released:2021-07-20)
参考文献数
32
被引用文献数
2

Precipitation on the Ogasawara (Bonin) Islands from summer to autumn depends the intensity, frequency and tracks of tropical cyclones (TCs), which are affected by El Niño/La Niña events (EN/LN). This study is the first to investigate the seasonal variability of the ratio of TCs approaching the Ogasawara Islands to the total number of TCs generated, and to calculate the ratio of TC-induced precipitation to total precipitation during EN/LN TCs extracted from within 300 km of Chichi-jima by QGIS, when they are defined as “TCs approaching Chichi-jima”. Using precipitation at Chichi-jima Observation Station, TC-induced precipitation is calculated when a TC is within 500 km of Chichi-jima. From August to November, the ratio of TCs approaching the Ogasawara Islands to the total number of TCs generated over the Western North Pacific is highest in October. For the same period, the number of TCs approaching the Ogasawara Islands per year during EN is more than that during LN. Reflecting the anomaly of sea surface temperature, the genesis position of TCs during LN shifts westward. TC-induced precipitation on Chichi-jima from August to October during EN is larger than that during LN. in particular, in September, TC-induced precipitation during EN is 40 mm more than that during LN. The former accounts for 61% of the total precipitation in September. These phenomena are explained by the fact that the genesis position of TCs shifts eastward or south-eastward during EN, keeping the central pressure of TCs approaching Chichi-jima lower than that during LN. Also, the presence time of a typhoon from its genesis until it enters the 500 km range of Chichi-jima is longer in EN than in LN. Within the 500 km range of Chichi-jima, the central pressure of a TC is lower in EN than in LN. All these contribute to a large volume of TC-induced precipitation on Chichi-jima during EN.