著者
根本 彰
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.416-422, 2023-10-01 (Released:2023-10-01)

紙の書物がもつ身体的特性が人の認知と密接に関わり,それが近代において書物が学術,文学,教育における特権的位置づけを獲得してきた。しかしながら,メディア論ではマクルーハン以降,書物メディアに比べてマルチメディアがもつ身体感覚的特性ゆえに影響力が大きいとされてきた。そして21世紀のネット社会においては,書物も含めてすべてのメディアがデジタルネットワークに吸収されようとしている。本稿ではメッセージを運ぶ仕組みであるコンテナとメッセージそのものであるコンテンツに分けて,メディアの変遷を歴史的に考察した。その上で,書物がもつ流通,検索,アーカイブにおける歴史的特性を活かした対応が要請されること,そして,その際に国立国会図書館デジタルコレクションの在り方が一つのモデルとなると述べた。
著者
根本 彰 三浦 太郎 中村 百合子 古賀 崇
出版者
東京大学
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.453-478, 2000-03-15

12 policy statements, in which 4 are during the former, 3 during the middle, 5 during the later Occupation Period (1945-1952) in Japan, are analyzed to investigate the course of library policies at the Education Division of the Civil Information and Education Section (CIE). General Headquarters, Supreme Commander of the Allied Powers (GHQ/SCAP). In result we indicate that the national plan with public libraries made by P. O. Keeney was not taken over by his successors after his dismissal in April 1947,and that important library policies were begun by those except the libraries officers. And we consider that there was a concept of library developments among those of the CIE but there was no single continuing policy with the library.
著者
根本 彰
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-16, 1999-03-30 (Released:2017-05-04)

戦後占領期にアメリカの図書館専門家が何人か来日し, 図書館政策の策定や近代的な図書館運営, 図書館員の養成などに貢献した。本稿は, とくに占領初期の政策決定期に来日してそれぞれの業績を残したカーノフスキー, キーニー, グレアム, バーネットの派遣, 人選やそれらの人々とのやりとりを示す資料の分析を通して, 国際関係特別委員会 (IRB) 東洋委員会委員長ブラウンが中心となったALAの対日図書館政策の考え方を検討する。その結果, 第一次教育使節団派遣の時点では, ブラウンは公共図書館や学校図書館を通じた教育改革に意欲を示していたが, 初代GHQ/SCAPのCIE図書館担当者キーニーが共産主義者の疑いで解任されて以降, 制度改革よりも図書館員養或などのより間接的なものに重点を移すようになった点を明らかにした。これは直接的に占領行政を担当していたGHQ/SCAPが冷戦期の反共産主義に政策転換したことに加えて, キーニーその人とALAとの間にあった確執にも根ざしたものであった。
著者
根本 彰
出版者
日本図書館協会
雑誌
現代の図書館 (ISSN:00166332)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.64-71, 2001-06
被引用文献数
1
著者
安藤 友張 高鷲 忠美 根本 彰
出版者
九州国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

本研究は,文部官僚などが遺した一次資料に基づき,戦後日本における学校図書館法の法案作成過程の要諦を明らかにすることを目的とした。先行研究で使用されなかった新資料に依拠し,国会に上程されるまでの法案の変遷について,主な3つの諸案の特徴を摘出し,それらを比較検討した。法案上程までの過程において,文部省,全国学校図書館協議会,政党間には対立があり,紆余曲折していた。法案の作成過程において,司書教諭の免許制度が任用資格制に変更された背景には,当時の文部省の教員養成政策や高等教育政策が大きく影響していた。さらに,同省は,学校図書館法の立法化に関して,代案として「学校図書館振興法案要綱」を作成していた。
著者
根本 彰 白石 さや 高橋 亜希子
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

探究型学習は学習指導要領上はきわめて重要な位置づけになっているが,現実的にそれを実施する方法はきわめて多様である。本研究では,東京大学教育学部附属中等教育学校で行われている卒業研究に焦点をあてて,探究型学習の進め方について,研究のテーマ設定,研究の方法の選別と実施,研究の執筆と口頭発表の3つのプロセスを解明することを行い,そのなかでとくに,テーマ選定と図書館を利用した研究支援を中心とした。3年間の研究期間中の毎年度終わりに,執筆者への質問紙調査を行い,これらの支援がなかったときと支援が行われたときとを比較して,執筆者に一定の効果があったことを明らかにしている。
著者
川原 亜希世 松﨑 博子 三浦 太郎 根本 彰
出版者
近畿大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

東京大学大学院の図書館情報学研究室には初代教授であった裏田武夫が残した戦後の図書館職員養成教育の成立に関わる資料が残されていたが、劣化が進み、利用及び保存が難しい状況にあった。科研費によってこの資料を保存するための処理と、電子データ化を進め、資料の利用及び分析を可能とした。この資料に含まれていた、初期の司書講習に関する記録を用い、戦後公共図書館員の現職者教育として始まった司書講習について調査を行った。当時5年間で講習によって現職者の再教育と資格付与を行う計画が完了しなかった原因を分析し、今後学校司書資格が設けられた場合必要となる、学校図書館職員の現職者教育に対する提言をまとめた。
著者
松村 多美子 DORIBAL T. SIMMONS D. ZHAODONG L. RAHMAN M.D. KANAKAMANI T OPENA M. HUNG T.B. BUDIHARDJO U NETTAVONGS K MILNE L. DINH D.N. TORRIJOS D.E 竹内 比呂也 谷口 祥一 永田 治樹 常磐 繁 内藤 衛亮 原田 勝 小野 欽司 猪瀬 博 LAHIRI A. YEE J. NEES J.M. DORJBAL T NETTAVORGS K NEES T.M. DORJBAL T. KANAKAMARI T 根本 彰 緑川 信之 山田 尚勇 CHEVAPRAPANA O ISMAIL M.S. SHRESTHA K. WIJASURIYA D
出版者
図書館情報大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

本研究はアジア・太平洋地域諸国が参加し,ユネスコ総合情報計画/ASTINFOの枠組みにおいて実施する国際共同研究である。これらの諸国は情報インフラストラクチャはもとより経済的発展段階,分化・歴史・社会制度などきわめて多様性にとんでいることから,本研究を効果的に進めて行くために研究分担者が集まり全体的な実施計画並びに方法について討議を行う必要があった。そこで平成6年10月11-14日に図書館情報大学において第1回国際ワークショップを開催した。これには海外から,インドネシア,タイ,フィリピン,ベトナム,オーストラリア,ユネスコ地域アドバイザーが参加し,調査研究の全体計画と方法論を討議し,さらに平成6年度の具体的実施計画を策定した。この結果研究方法としては,1)質問紙による調査を各国の研究分担者を中心とするナショナルチームが実施する。2)質問紙調査データ集計処理は日本チームが行う。3)現地調査は日本からの派遣研究者と当該国の研究分担者及びナショナルチームが共同で実施する。4)このため各国に研究分担者を中心とし,関連情報機関を網羅する組織(ナショナルチーム)を設置する。この研究方法はその後の実施を通じてきわめて有効であることが立証され、成果報告の場においても高く評価された。また,質問紙調査の調査項目についても討議を行い本研究を通じて使用する質問紙(英語)を作成した。平成6年度にはベトナム,インドネシア、フィリピン,タイにおいてそれぞれ研究分担者と共同で主要な情報センター,国立図書館,大学・研究所図書館など中心的な役割をもつ情報機関を対象に訪問調査を実施した。また,情報政策に関連する政府機関で関係者と意見交換を行うことができた。ベトナムでは研究分担者を中心にベトナム研究班を設置し,Information Infrastructure and Servies in Vietnam:Stuational Reportを作成し,わが国の派遣研究者を加えてハノイ市で全国セミナーを開催し,国立情報センター,国立図書館,文書館,通信関係者など情報関係者が集まり活発な討議を行った。平成7年度には8月21-25日に図書館情報大学において,第2回国際ワークショップを開催した。これには海外からバングラデシュ,ニュジーランド,フィジ-,フィリピン,ベトナムが参加した。ここでは1年間の研究実績をレビューし,平成7年度の研究計画について最終討論を行った。また,既にを完了したフィリピンからナショナル シチューション リポートの報告があり,フィジ-,バングラデシュ、ニュージランドからはカントリーレポートの発表が行われた。現地調査はバングラデシュ,フィジ-,ニュージーランド,モンゴルについて実施した。バングラデシュではベトナムと同様にナショナル シチュエ-ショナルレポートがほぼ完成しており,全国セミナーを開催して討議を行った。また,アジア・太平洋地域で情報基盤整備が進んでいるシンガポールについて特にInformation2000の情報政策を中心に調査を行った。平成8年度には,10月8-11日に第3回国際ワークショップを開催し,これまでの各国における調査結果の分析に基づく,クロスカントリー アセスメントリポートの発表と討議を行った。また,3年間の研究実績の評価を行い,本研究の成果を広くアジア・太平洋地域に伝えるために平成9年度に国際シンポジウムを開催することが決議された。本研究の成果の主な点は,-新しい調査研究方法の確立-情報インフラストラクチャの実態と今後の対応をまとめたナショナル リポートの刊行(ベトナク,バングラデシュ,フィリピン,フィジ-などユネスコから出版)-各国の調査結果の分析に基づき地域レベルで考察を加えたクロスカントリー アセスメントリポートの刊行-各国における調査研究能力の開発に貢献-主な出版物・Proceedings of International workshop,11-14 Octoer 1994.ULIS,1994 (SISNAP Report 1)・学術情報ネットワークの基盤構造に関する調査研究-アジア・太平洋地域における- 平成6年度 研究報告 ULIS,1995 (SISNAP Report 2)・Proceedings of the 2rd International workshop,21-25 August 1995.ULIS,1995 (SISNAP Report 3)・Proceedings of the 3rd International workshop,8-11 Octoer 1996.ULIS,1996 (SISNAP Report 4)
著者
根本 彰
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.358-364, 2010-09-01

書誌コントロールは,知的コンテンツの流通体制をどのようにつくるのかという問題群である。これがデジタルネットワークへの移行状況のなかで,どのように変化しつつあるのかについて,筆者の旧著をベースにしながら論じた。これまで知的コンテンツは紙を中心とするパッケージに収められて流通し,図書館において物理的に保存されていたが,これがデジタル化することにより不定形となる。こうして「書誌レコードの機能要件(FRBR)」における体現形を対象とする書誌コントロールから,著作と表現形を対象とする書誌コントロールへの移行が必要になることを論じる。
著者
三浦 太郎 根本 彰
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.475-489, 2001

Before the WWII, there were few educational institutions of library science in Japan. During the Allied occupation period, some library training courses were held, ex. at Doshisha and Kyoto Universities, but they were on the lines of the pre-war framework, stressing on how to administrate a library. In 1948,Robert B. Downs suggested to establish a library institution at the University of Tokyo, in vain. Then in 1950,GHQ/SCAP began a program of establishing Japan Library School (JLS) with support of ALA, in order to train professional Japanese librarians. This represents a shift of occupational library policy from reformation as a whole to specification to library training. Robert L. Gitler, the director of JLS, chose Keio University, favoring its westernized philosophy. With financial support of Rockefeller Foundation, JLS went into orbit. There held Americanized library curriculum, laying stress on understanding of library's role in society as well as technical methods. It joined Japanese and American librarianship.