著者
樋口 忠彦 大村 吉弘 田邊 義隆 國方 太司 加賀田 哲也 泉 惠美子 衣笠 知子 箱崎 雄子 植松 茂男 三上 明洋
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学語学教育部紀要 (ISSN:13469134)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.123-180, 2007

樋口専攻: 英語教育学, 田邊専攻: 英語教育学, 國方専攻: 英語教育学, 加賀田専攻: 英語教育学, 泉専攻: 英語教育学, 衣笠専攻: 人間形成論 英語圏の伝承唄と伝承唄遊び, 箱﨑専攻: 英語教育学, 植松専攻: 言語習得理論, 三上専攻: 英語教育学, 本論文は、日本児童英語教育学会(JASTEC)関西支部・プロジェクトチーム(代表:樋口忠彦)による研究成果である。当プロジェクトチームは平成17年7月に発足以来30回を越える研究会、小・中学校合計8校で調査を行い、本論文をまとめた。また、本論文は上記研究会での報告、協議内容に基づきメンバー全員で分担して執筆したが、執筆内容は全メンバーの考えが渾然一体となっている関係上、各執筆者の執筆箇所を示していない。なお、全体の内容構成および内容調整、用語の統一は樋口と大村、田邊が行った。
著者
林 倫子 藤原 剛 出村 嘉史 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.187-197, 2009 (Released:2009-06-19)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

現在の京都御苑周辺に歴史上設けられた数多くの園池へは,禁裏御用水が供給されていた.本研究では,広域的な導配水システムとしての禁裏御用水に着目し,その流路構造や付帯施設を歴史的資料を用いて明らかにした.その結果,禁裏御用水の4つの施設面の特徴とマネジメントルールを抽出し,禁裏御用水が水の安定供給に加えて上流の田畑と下流の園池での水の共用にも配慮していたことを示した.更に,各園池への導水経路を検証し,水の引き込み方の特徴として,相国寺開山塔庭園の特殊性と御溝水の自由度の高さを指摘した.
著者
樋口 忠成
出版者
千里地理学会
雑誌
ジオグラフィカ千里 = Geographica Senri
巻号頁・発行日
vol.1, pp.219-234, 2019-03-30

デトロイトは近年人口減少により衰退するラストベルトの最大都市である。デトロイト大都市圏が人口のピークを迎えた1970年から人口は停滞・減少し,その大都市は雇用の喪失とともに人口減少に見舞われた。本稿では,衰退するデトロイト大都市圏で人口分布がどう変化しているかを分析した。デトロイト大都市圏では,中心市の急速な人口減少がみられ,郊外では人口が増加しているものの,それは中心市の人口減少を補うほどではなく,大都市圏の衰退が進んでいることと,主要な郊外都市でも人口減少に見舞われることが多いことがわかった。また1970年頃の人口の大きな動きはデトロイト市内の黒人人口の急増に伴う郊外へのWhite Flightであり,郊外の白人専用居住地域とデトロイト市内の黒人専用住宅地域という人種的分断が地理的分断と重なっていた。現在ではデトロイトからの黒人の郊外化Black Flightに伴い,デトロイト市の空洞化がさらに進行しているものの,白人専用だった郊外住宅地での人種的融合が進行している状況が確認できた。
著者
内山 大 樋口 忠彦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.91-98, 1985-06-25 (Released:2010-06-15)

港町新潟の町づくりが本格化するのは、元和2年 (1616) に堀直寄が長岡藩主になり、その支配を受けるようになってからのことと考えられる。それ故、本論では、これ以降の江戸時代の新潟を取りあげている。そして、そこにみられるいくつかの町づくりおよび町の特徴を取りだして報告している。第一は、白山神社を南の基点とし、日和山を北の基点に位置づけて、町づくりがおこなわれたのではないかということである。第二は、新潟の町割は1ブロック2行の短冊型の町割で、1行の奥行は約25間と推定され、各戸の敷地の間口は4間を基本にしていたと考えられることである。第三は、亨保と天保の地子高の資料により、当時の地価の状態をみると、信濃川から離れるほど低くなっていて、町の経済は信濃川に大きく依存していたことがわかることである。
著者
山口 敬太 水谷 肇 出村 嘉史 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
土木学会
雑誌
景観・デザイン研究論文集 (ISSN:18816045)
巻号頁・発行日
no.1, pp.185-192, 2006-12

For the landscape planning, it is necessary to reveal how people have been appreciated and conserved the landscape. In the early years of the Showa era, the evaluation of the landscape in Sagano had been changing. Guidebooks showed some new objects of sightseeing, and Otsuka and other writers began to describe the beauty of the landscape of Sagano, not in a traditional way. Administration also began to conserve the landscape especially its natural environment with the intension of economic development, as seen in the Ogurayama Park planning. This paper aims to examine that how people appreciated the landscape of Sagano in that times, with the analysis of histrical material as guidebooks and notes for tourists, and administrative documents concerning the landscape conservation in Sagano.
著者
樋口 忠成
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

1) はじめに<br> 2016年のアメリカ大統領選挙は共和党のドナルド・トランプ候補が当選したが、これは投票前の世論調査と異なっていただけでなく、当選者の全国の一般投票総数では民主党のヒラリー・クリントン候補を下回る得票しか得られなかったという異例な結果であった。これは大統領が得票総数で選出されるのではなく、各州に割り当てられた選挙人をより多く獲得する候補が勝利するという間接選挙方式から生じた現象である。またこの選挙結果は、アメリカ社会の分断の象徴とその結果として取り上げられた。<br> この報告の目的は、アメリカ社会の分断が空間的な分断を伴うとすれば、どのような地理的分断が見られるかをこの2016年大統領選挙結果から明らかにすることである。民主党・共和党の得票数・得票率のカウンティ別データを使って、州、カウンテイ、大都市圏・小都市圏と非都市圏、中心市と郊外などの地理的枠組みを使って分析する。<br>2) 州の分断の進行<br>&nbsp; アメリカの大統領選挙では、ほとんどの州で州全体で勝利した候補が州に割り当てられた選挙人を総取りするので、立候補から当選まで基本的に州ごとに選挙戦が戦われる。近年では州の色分けが定着し、民主党が強いブルー(青)ステートと共和党が強いレッド(赤)ステートがほぼ固定化しているが、これまでの大統領選挙結果から分析すると現在の傾向が定着するのが1992年大統領選挙からである。それ以降の選挙結果は相互に高い相関を伴う結果となっており、青と赤の州が固定した結果、選挙ごとに結果が変わる可能性のあるスウィング・ステートと呼ばれる州をどちらの政党が獲得するかに結果が左右される。<br>3) 地域人口規模による分断<br>&nbsp; 全米にある3100あまりのカウンティのうち人口100万以上のものは44あるが、選挙結果ではクリントン候補が敗れたのは3つだけで、残りの41で勝利した。一方人口規模の小さいカウンティではトランプ候補が圧勝している(人口1万以下のカウンティの86%で勝利)。すなわち、大都市と農村地域の投票行動はほぼ真逆となっている。<br>4) 大都市圏の中心市と郊外による分断<br>&nbsp; 地域人口規模による選挙結果の分断からも類推できるように、大都市圏を単位として得票数を分析すると、大規模な大都市圏ほど民主党が強く(人口250万以上の21の大都市圏ではダラス、ヒューストン、フェニックス、タンパ、セントルイスの5大都市圏のみクリントン候補は僅差で敗れた)、人口50万以下の大都市圏になるとトランプ候補が強くなり、小都市圏ではトランプ氏が圧勝している。またそれぞれの大都市圏の中での得票率は、地域によってはっきりと異なっていいて、地理的分断が見られる。たとえばアトランタ大都市圏での大統領候補の得票率の分布をみると、中心市はクリントン氏が圧勝し、また中心市に近い郊外もクリントン氏が強い一方、郊外の外縁部や超郊外的な地域ではトランプ氏が圧勝している。このように大都市圏では中心からの距離による同心円的な分断が顕著であり、社会の分断は地理的分断と密接に関連することが解明できた。
著者
山口 敬太 出村 嘉史 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.14-26, 2010-01
被引用文献数
1

本研究は,近世の嵯峨野を対象として,紀行文中の風景記述の分析を通じて,1) 鑑賞対象,2) 風景鑑賞時に主体に想起されている過去の風景表現やイメージ,3) 主体の態度や行為,得た印象,を把握することで,嵯峨野における風景鑑賞のあり方を明らかにすることを目的としている.具体的には,眺望や神社仏閣のほか,歌枕・四季の名所の風景,物語・故事の風景,遊びなどの様々な風景記述ごとについて,イメージの追体験,視覚的風景の観賞などの風景鑑賞のあり方とその特徴を示した.その結果,近世の嵯峨野において,地形条件等による景観の多様性と,多様な風景のイメージに合致した景観の状態,さらには多様な風景鑑賞のあり方によって,様々な風景が重層的に生まれていたことを示した.
著者
樋口 忠成
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.5-27, 1979-02-28 (Released:2009-04-28)
参考文献数
29
被引用文献数
3

A study of the residential structure of the American city has produced an increasing literature under the technique of factorial ecology. The study of large cities however is not enough compared to that of smaller cities because of the labor dealing vast information when taken a small area like a census tract as a observation unit.The auther investigated the residential structure and its spatial pattern for the Detroit metropolitan area by performing factor analysis upon 1960 and 1970 census data. Change in the structure and pattern is also studied by comparing the extracted factors and factor scores obtained at different points in time.The area studied is the entire Detroit Standard Metropolitan Statistical Area. (Fig. 1) The census tract is employed as a observation unit. After omission and consolidation a total of 762 tracts constitutes the analysis in 1960 and 986 in 1970. 56 variables from population characteristics available in the U.S. census of population were selected for the study. (Table 1) The same variables were chosen in the analysis for both 1960 and 1970. They are classified into 10 major categories: (1) sex and age, (2) family and household, (3) marrige status, (4) race and ethnicity, (5) mobility, (6) labor force, (7) occupation, (8) working status, (9) education and (10) family income.Product-moment correlation coefficients were computed for all variables. These matrixes were then subjected to principal factor method factor analysis. Eight factors were extracted in 1960 and nine in 1970, accounting cumulatively for 83% and 81% of the total variance respectively. Those factors were rotated to orthogonally to simple structure. Varimax rotation was employed. The matrixes of factor loadings are shown in Tables 2 and 3.The 1960 factors were interpreted as follows: (I) Family Life Cycle, (II) Racial Composition, (III) Socio-economic Status, (IV) Women in Labor Force, (V) Eastern European Immigrants, (VI) Youth Predominance, (VII) Sexual Composition and (VIII) Italians. The first three factors accounted cumulatively for more than 60% of the total variance and there was a sizable difference in significance between each of them and each of the rest.The 1970 factors were interpreted as follows: (I) Socio-economic Status, (II) Racial Composition, (III) Family Life Cycle, (IV) Women in Labor Force, (V) Residential Mobility, (VI) Eastern Europian Immigrants, (VIII) Sexual Composition, (IX) Youth Predominance/Italians. The first three factors were also observed as significant and accounted for about 58% of the total variance.In order to test the relationship between 1960 and 1970 factors, correlation coefficients were calculated and are shown in Table 4. Factor I in 1960 has strong correlation to Factor III in 1970, Factor II in 1960 to Factor II in 1970, and Factor III in 1960 to Factor I in 1970. Therefore it was confirmed that the first three factors of both years, which were Socio-economic Status, Racial Composition and Family Life Cycle were the major stable factors that explain the residential differentiation of Detroit. Minor factors of each year do not correspond clearly with each other except the factors of Women in Labor Force and East European Immigrants, which are considered to be the stable minor factors.The spatial patterns of the major three factors were then analysed. Prior to it the entire metropolitan area was devided into seven concentric zones numbered 1 through 7 from the C.B.D. outward and seven sectors numbered 1 through 7 from southwest to northeast, which made 49 cells. (Fig. 2) The spatial patterns of factor score distributions were examined by three steps. First, a series of analysis of variance were undertaken to judge objectively whether the factor score distributions of Socio-economic Status and Family Life Cycle correspond to concentric model or sector model.
著者
出村 嘉史 大住 由布子 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D (ISSN:18806058)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.158-168, 2007 (Released:2007-06-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

本研究は,本居宣長という個人の目を借りて,門前町が形成されて京都の中でも有数の名所巡りの景域を形成しはじめる18世紀中葉の「清水祗園あたり」における,行楽の空間の構造を明らかにするものである.予め同時代の地図資料,絵図資料から領域の敷地及び経路の構成を把握した上で,本居宣長の『在京日記』(1752-1757)の全記述から「清水祗園あたり」における宣長の体験内容を読み解き,行楽の拠点となった場所と,宣長の足取りの特性を分析した.その結果,宣長によって経験された同景域における,細かなループ状の経路が幾つも重なりあい社寺境内と門前の両方を渡り歩く路傍に4種類の行楽の拠点が配置されている構造が見出され,それぞれの拠点における場づくりの性質が示された.
著者
山口 敬太 出村 嘉史 川崎 雅史 樋口 忠彦
出版者
土木学会
雑誌
土木計画学研究・論文集 = Infrastructure planning review (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.307-314, 2007-10

This paper discusses how the landscape assets could have been durable in the reconstruction of Meisho -Scenic Beauty- such as Giouji, Rakushisha, Enrian, in Sagano, Kyoto. The landscape characteristics of such scenic beauty is made by literary works, poetry, etc.. And their images played an important role to reconstruct the Meisho and to inherit their historical landscape assets.
著者
樋口 忠
出版者
一般社団法人 日本内分泌学会
雑誌
日本内分泌学会雑誌 (ISSN:00290661)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.982-995,932, 1964-10-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
49
被引用文献数
2 6

In 1889, Takenaka first described prevalence of goiter in Esashi, the seashore district of Hokkaido. Further studies on pathological and endemic views have been reported by Takeda, Miyamoto, Shimpo and Inoue. According to these data, the prevalence of goiter in the Hidaka District, Rishiri-Rebun Islands and Shakotan Insula was 8.9%, 36.3% and 10.9%, respectively. The goiterous patients in these areas take large amounts of Kombu, a sort of seaweed which is rich in iodine, as a sidedish or as seasoning for the usual diet.Since 1960, systematic investigations of this peculiar goiter have been carried out. In this paper, prevalence and geographical distribution, the nutritional environment, intake and output of iodine, and therapy are reported as the first part of our study. 1. Prevalence and geographical distributionSeven thousand nine hundred and seventy schoolchildren, 7 to 18 years of age, including 4,726 in the Hidaka District, 2,298 in Rishiri Isl. and 946 in Rebun Isl., were investigated. Size of goiter was classified according to Shichijo's criteria, Dieterle's modification.The incidence of goiter was calculated 6.6%, 8.9% and 2.7% in Hidaka District, Rishiri Isl. and Rebun Isl., respectively. In each area, girls were predominant : the ratio of female to male was from 2 : 1 to 10 : 1. Control studies were performed on school children of Sapporo city, and the incidence of goiter was 1.3%.The 2nd degree size of goiter was found in 75.2% among 539 goitrous patients, 3rd degree in 21.5% and over the 4th degree in 3.3%, but in the Hidaka District the enormous goiter, over the 4th degree, was found in 16 cases.The incidence of the goitrous patients with family history of goiter was 4 to 5%.The incidence of goiter reached the peak at 12 to 14 years of age in both sexes.The thyroid gland was diffuse on palpation in 97.4% of 539 cases, and nodular in only 2.6%.2. Clinical findingsAll of the 539 patients revealed clinically euthyroid states : hyperthyroidism or hypothyroidism, hoarsness and dyspnea ; congenital deafness or mutism was not found.3. Histological pictureHistological picture of the thyroid gland of 7 goitrous patients in Hidaka District was examined. The findings of Struma colloides macrofollicularis, that represent a enlargement of follicles and colloid storage without abnormal cell-infiltration, were seen in 6 cases, and Struma colloides microfollicularis or Struma foetalis in the other case.4. Nutrition SurveyIntake of foodstuffs was investigated in 8 families whose occupation was fishing, chiefly seaweed “Kombu” collecting. Five families had a history of goiter and 3 had not. Daily intake of nutriments throughout the four seasons were calculated according to the method of National Nutrition Survey of Welfare Ministry. It was found that most nutritional materials such as protein, carbonhydrate and Vitamin-A, were sufficient. The seaweed, chiefly Kombu, of 16.1 gm. which amounts to three times the average of Hokkaido Nutritional Survey in 1961 was taken. Excessive intake of other foodstuffs containing a goitrogen were not recognized.5. Urinary inorganic iodine excretionFive cases of goitrous patients in Hidaka District were examined for urinary inorganic iodine excretion, that was measured by Gross's method, under the usual diet in this area. These patients excreted up to 23mg. of inorganic iodine per day, whearas control non-goitrous patients on a normal diet at Hokkaido University Hospital excreted 1.5mg. and those on a iodide-restricted diet excreted 150, μmg.6. Response to treatmentFifty cases of goitrous patients in the Hidaka District were administrated desiccated thyroid or L-Triiodothyronine. In 72.5%, a disapperance or decrease in size of goiter was obtained. A more effective response was noted in the 10-to 15-year old or those having a smaller size of goiter.
著者
イサク アグス ブディ プルノモ 樋口 忠彦 玉川 英則
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
no.425, pp.73-85, 1991-07-30

住民に好まれる都市を開発するためには,都市の中のどこが,あるいはどのようなところが愛されているのか,またはよく知られているのかを知る必要がある。このようなことに関連して,チュアン(1974)は,「トポフィリア」(場所愛)という概念を用い,人間の環境に対する愛着を示している。本論文は,この概念を日本の五つの旧城下町という具体的な場において理解しようとする試みである。ただし,アップルヤード(1969)らが行ったように知覚という概念でトポフィリアをとらえるのではなく,環境に対する態度という観点から,ミルグラム(1972)が提起するにとどまった環境認知の根源を実証的に抽出し,都市間比較によりその意味をより明らかにしようとするものである。方法としては,各都市において,下記(2)の5つの項目についてアンケート調査を行い,因子分析により主要2因子を抽出,その因子構造および空間分布特性を分析することにより,各都市のトポフィリアを比較した。本研究の結論は次のようにまとめることができる。(1)本研究で用いた方法は,5つの都市のトポフィリアにかかわる心理学的地図を比較考察するのに有効であった。(2)分析に用いた5つの変数は,因子分析によ・り,2つの因子にまとめられた。すなわち,「頻繁に訪れる場所」と「よく通る道に隣接する場所」の2つの変数に強く関連する直接接触因子,および「美しい場所」と「保護すべき場所」に強く関連する間接接触因子であり,この二元性は,旧城下町のような歴史のある都市の特徴と考えられる。(3)因子構造からみて,5つの都市間の差異は,間接接触的場所(例えば,旧城跡などの歴史的・文化的特色のある空間)が直接接触的場所(例えば,日常買物をする商店街など)の発展によってどのように変容しているか,ということに深くかかわっているということが見いだせた。(4)5つの都市においては,物理的には同じあるいは近接する場所が,心理的には上記の異なる2つの意味を持った場所になっていることが多かった。これも,歴史性のある旧城下町の特徴と考えられる。(5)物理的空間という観点からみると,5つの都市間の差異は,直接接触的場所が,近代的開発に影響を受け分散化される傾向にある度合いに求められることが示された。以上,知覚が,物理的なファクターに影響されやすいのに対して,トポフィリアのような態度は,物理的なファクターに影響されにくいことが分かった。このことより,知覚でなく態度に着目してトポフィリアを研究するという方向性は有効であったといえよう。
著者
樋口 忠彦 川崎 雅史 出村 嘉史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、近代以降市街地の急速な拡大にもかかわらず、自然と市街地とが一体化した良質な景域が形成された京都の山辺の丘陵地形を対象にして、CGを援用した地形・敷地の空間デザイン分析、および文献資料調査、ヒアリング調査などにより、自然環境と密接に関連した景域の敷地計画と景観設計に関する新たな知見を得ることを目的とした。1.複数の丘陵地を利用した住居群・街路網・広域庭園の景観設計京都の神楽岡界隈の景域を対象とした。近代以前の敷地構成、特に吉田神社・真如堂・金戒光明寺境内との接続によって形成された街路網と土地造成を明らかにした。次に近代における吉田山斜面の広大な茶室庭園と計画的住宅群開発や、その周辺に発達した街路網に着目し、大文字山への眺望特性を地形データに基づくCGから分析し、斜面建築と庭園の統合的な敷地造成と広域な景観設計法を評価した。2.「野」の緩傾斜地形に展開する疏水と沿線都市の景観設計浄土寺・鹿ヶ谷の景域および南禅寺周辺の景域を対象とした。測量データに基づくCGを用いて敷地構成の原形を分析し、複数寺院の境内と建設された琵琶湖疏水分線を軸として「哲学の道」と文人が居住した住居地域界隈の、地形断面などに基づき敷地構成および景観特性を明らかにし、広域でまとまる景観形成の手法を評価した。3.山裾の広域傾斜を利用した広域公園の景観設計円山公園の界隈を対象とした。近世における複数の時宗寺院の塔頭群が複合して名所界隈を形成した景域を絵画史料や現地形に基づく再現CGにより解析し、急傾斜地形の眺望性に特化した懸崖建築と一体的造成による回遊庭園の統合的な景観設計を評価した。次に、近代公園の庭園敷地において微地形を考慮した敷地造成と疏水利用による景観の展開を調査し、広域的な景観設計の解明を行った。
著者
呉 禾 岡崎 篤行 樋口 忠彦
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会技術報告集 (ISSN:13419463)
巻号頁・発行日
no.16, pp.277-280, 2002-12-20

Based on two typical cases of the Central Avenue and St. Sophia church regeneration projects, we analyzed the planning circumstances, concept, grounds law, and process of conserved historic environment regeneration projects comparatively. As a result, we make the feature and developing direction of conserved historic environment regeneration projects clear in Harbin city.