著者
吉村 元 松本 理器 池田 昭夫 幸原 伸夫
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.47-52, 2019-02-01 (Released:2019-03-08)
参考文献数
19

意識障害患者の診療において脳波は非常に有用な臨床検査である。一方で, 誤って解釈すると診断や治療に大きな影響を及ぼしうる。本稿では, 特に高齢者を対象に, 意識障害患者における脳波の有用性と注意点を, ①客観的な脳機能評価, ②非けいれん性てんかん重積状態 (NCSE) の診断, ③三相波の解釈の3点に関して概説する。すなわち, 高齢者は詳細な神経学的診察が難しいことも多く, 脳波は意識障害時の経時的な客観的脳機能評価に有用である。また, 高齢者はNCSEの頻度が高いが, その診断には脳波が必須であり, 近年ザルツブルグ基準が診断基準としてよく用いられている。最後に, 三相波は従来代謝性脳症と関連する波形と考えられてきたが, 近年ictal-interictal continuumとしての意味合いもあることが分かり, その解釈には注意を要する。神経救急・集中治療の分野で脳波が益々有効かつ適切に活用されることが期待される。
著者
人見 健文 池田 昭夫
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.365-370, 2014-12-01 (Released:2016-02-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

脳波記録に携わる技師は, 電極配置法, モンタージュ, 電極のタイプ, インピーダンス, フィルターの原理を理解した上で, 脳波計の設定や電極装着を行う必要がある。検査開始後は, 正常および異常の脳波, 賦活時の脳波変化などに注意しつつ脳波記録を行う。さらに近年普及したデジタル脳波計の特徴を生かして, Density modulated spectral array (DSA) の活用, あるいはモニター上で脳波記録中の表示に適切なモンタージュの切り換えを行い, リアルタイムでより適切な脳波活動の評価を行うことがのぞまれる。また検査技師も脳波の判読の過程と結果を積極的に活用して脳波判読医と互いの情報意識の共有を行う。判読者の立場も理解した上で脳波記録を行うことで, 総合的な脳波検査と判読の質的維持と向上がもたらされる。臨床発作時あるいは脳波上発作パターンが出現した場合には, 適宜医師および他の検査技師に連絡し対処する役割も求められる。
著者
池田 昭夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1348-1357, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
10

「てんかん」(epilepsy)とは,慢性の脳の疾患で,大脳の神経細胞が過剰に興奮するために,てんかん発作が反復性に起こる.発作は突然に起こり,普通とは異なる身体症状や意識,運動および感覚の変化が生じる.反復性の発作(てんかん発作)を唯一の症状あるいは主徴とし,これに種々の臨床症状および検査所見を伴う状態である.病歴上,発作,例えば全身けいれん発作,意識減損発作,意識はあるが身体部位の突発的な症状(=視覚,触覚,聴覚,嗅覚,情動,失語,自律神経症状など),脱力転倒が,1~2分間(短いと数秒間)出現し,いつも同じ症状である.意識減損時は数分間程度のもうろう状態などから回復し,ほぼ元に戻る.
著者
下竹 昭寛 松本 理器 人見 健文 池田 昭夫
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.40-46, 2019-02-01 (Released:2019-03-08)
参考文献数
21

意識障害の患者において代謝性脳症は比較的よく遭遇する病態であり, 脳波はその診断と病勢の把握に有用である。代謝性脳症の脳波所見は, 意識障害の程度と関係して, 基礎律動・後頭部優位律動の徐波化や消失, 間欠的律動性または持続性高振幅の全般性デルタ活動, 三相波 (Triphasic wave) を呈する場合もある。三相波は, 陰–陽–陰の三相性からなる特徴的な波形で, 肝性脳症を含む代謝性脳症で認めることが多い。中毒の脳波所見の中に両側同期性の全般性周期性放電 (Generalized Periodic Discharges (GPDs) ) を呈するものがある。薬物関連では, 炭酸リチウム, テオフィリンなどが挙げられ, セフェピム脳症によるものも知られる。三相波/GPDsにおいては, 非けいれん性てんかん重積 (NCSE) の可能性についても常に念頭に置く必要がある。代謝性・中毒性脳症の脳波は原因検索に必ずしも特異的な所見を示すわけではないが, 特徴的な脳波所見を示す場合があり, また非侵襲的に早期から病態の客観的な評価が可能であり, 積極的に活用すべきである。
著者
石田 光晴 小田島 恵美 池田 昭七 武田 武雄
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.20-26, 2001-01-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
14
被引用文献数
11 6

本学で飼育されたニホンジカ肉および市販牛肉のコレステロール含量と脂肪酸組成を比較した.ニホンジカ(ホンシュウシカ)は去勢雄4頭,平均26ヵ月齢であった.筋肉脂質試料として,肩肉(上腕二頭筋),もも肉(大腿三頭筋),ロース(胸最長筋)を必要量採取した.また,市販の和牛,国産牛および輸入牛肉ロースを4個体ずつ購入した.各食肉の全脂質を抽出し,コレステロールおよび中性脂質と極性脂質の脂肪酸組成を測定した.鹿肉の全脂質割合は1.50~2.67%,牛肉ロースは3.34~18.63%であった.鹿肉のコレステロール含量は100gあたり31.85~35.15mg,牛肉ロースでは39.20~72.75mgであった.全脂質とコレステロール含量の鹿肉の部位による差はなかった.鹿肉ロースと牛肉ロースを比較すると,牛肉の方が脂肪含量と共にコレステロール含量も高く,和牛はいずれも2倍以上高く有意差(P<0.01)が認められた.中性脂質の主な脂肪酸組成は鹿肉,牛肉ともパルミチン酸,パルミトオレイン酸,ステアリン酸およびオレイン酸であった.鹿肉と牛肉を比較すると,鹿肉ではパルミチン酸とパルミトオレイン酸が高く(P<0.01),オレイン酸が低かった(P<0.01).極性脂質脂肪酸では,鹿肉,牛肉共にパルミチン酸,ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸およびアラキドン酸が主であった.鹿肉のパルミチン酸とオレイン酸は牛肉よりも低かった(P<0.01).中性脂質と極性脂質を構成する脂肪酸の重量比(N/P比)は,鹿肉が3.51~4.69,牛肉は22.38~153.72と,鹿肉に含まれる極性脂質の割合が明らかに高い(P<0.01)ことが認められた.鹿肉のP/S比は0.22~0.27,牛肉では0.03~0.06, n-6/n-3比は,鹿肉1.88~4.28,牛肉12.05~56.91となり,いずれも有意差(P<0.01)が認められた.すなわち,鹿肉中のn-3系脂肪酸の割合が牛肉よりも非常に高いことが示された.
著者
細川 恭子 宇佐美 清英 梶川 駿介 下竹 昭寛 立岡 良久 池田 昭夫 髙橋 良輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.530-536, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

18歳男性,右利き.17歳より,視野全体に長く一本の斜線が入り,その上下で視野がずれて見える,両視野の眼前の光景が波状に見える,視野全体に大きな数個の斑状暗点が出現するなど多彩な視覚症状が生じ,その後に体外離脱体験(out-of-body experience,以下OBEと略記)として,“自分の姿を左後ろから見ている状態”が生じた.症状は1時間持続し頭痛が後続した.頭部MRIで両側後頭葉の軽度萎縮を認めた.本症例は多彩な視覚症状とOBEを呈し,部分てんかん発作との鑑別を要したが,症状が多彩で持続が長いことから前兆のある片頭痛と診断し,少量のバルプロ酸が著効した.OBEを伴う片頭痛は稀に存在する.
著者
甲田 雅一 福原 淳子 竹内 美香 大川原 正文 松崎 廣子 遠井 初子 古畑 紀子 丸山 美樹 佐々木 希実 沢辺 悦子 池田 昭 鈴木 ツル 佐藤 仁美 高橋 一郎 木村 冨美子 野村 久子 小野 恵美
出版者
公益財団法人 日本感染症医薬品協会
雑誌
The Japanese Journal of Antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.458-468, 1999

<I>Pseudomonas aeruginosa</I>に対する各種抗生物質の抗菌力は分離施設の使用抗生物質の種類や量により影響されることが多く, ある施設で有効とされる抗生物質が他の施設でも有効とは限らない。真に抗菌力に優れる抗生物質とはMICが低く, 薬剤耐性が進行し難い薬剤であり, そのような抗生物質こそ, どの施設からの分離菌に対しても有効と言えるであろう。著者らは薬剤耐性が進行し易い抗生物質ではMICの施設間差が大きいと考え, 6施設から分離した<I>P.aeruginosa</I>に対する各種抗生物質のMICとMICの施設間差を調査し, その結果をスコア化して, 総合的に抗菌力を評価する試みを行った。その結果, 真に<I>P.aeruginosa</I>に対する抗菌力に優れる抗生物質はimipenem, cefozopran, ceftazidime, cefsulodin, amikacinなどであると考えられた。本報告で提案した解析方法は, 入院患者の細菌感染症に対する優れた抗生物質の評価のための一方法になり得ると考える。
著者
齋藤 和幸 大井 和起 稲葉 彰 小林 正樹 池田 昭夫 和田 義明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.18-23, 2021 (Released:2021-01-29)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

症例は49歳男性.2005年に気管支喘息重積発作による心肺停止状態となった.覚醒後に動作時のミオクローヌスが出現し,Lance-Adams症候群(LAS)と診断された.発症11年後にペランパネルを開始しミオクローヌスは著明に減少し,3年以上持続してactivities of daily lifeが改善した.近年進行性ミオクローヌスてんかん症候群にペランパネルが有効な報告があり,本例のようにLASのミオクローヌスに対してもペランパネルによる治療の余地がある.
著者
中谷 光良 月野 光博 髙橋 良輔 池田 昭夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.504-507, 2016
被引用文献数
1

<p>81歳女性で高血圧,サルコイドーシス,慢性腎不全で透析中の患者.右胸背部に出現した皮疹に対し帯状疱疹と診断され,バラシクロビルの内服が開始された.3日後より見当識障害,歩行障害が出現し救急搬送された.意識障害,および下肢優位の左右対称の安静時ミオクローヌスを認めた.脳波検査で周期性同期性放電(periodic synchronous discharges; PSDs)を認め,経過と所見よりバラシクロビルによる薬剤性脳症と診断した.保存的加療により意識レベルは改善し,脳波所見も軽快した.バラシクロビルはPSDsと薬剤性脳症をきたし,特に高齢者および腎機能障害患者では注意を要する.</p>
著者
人見 健文 陳 和夫 池田 昭夫 松本 理器 澤本 伸克 井内 盛遠
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

【背景】良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん(BAFME)は、全身のてんかんと大脳皮質由来のふるえが主症状の疾患である。てんかんやふるえにおける睡眠・覚醒時の大脳皮質の興奮性変化は十分に分かっていない。【目的】BAFMEにおける睡眠覚醒の変化にともなう大脳皮質の興奮性変化を明らかにする。【方法】BAFME患者の脳波記録を解析し、てんかん性放電の睡眠・覚醒時の変化を検討した。【結果】時間当たりのてんかん性放電は軽睡眠・徐波睡眠・REM睡眠時では覚醒時に比べ減少した。【結論】BAFMEは、皮質興奮性の覚醒睡眠時の変容に関してBAFMEは進行性ミオクローヌスてんかんの一部と類似の挙動を示した。
著者
日野谷 重晴 池田 昭夫 寺崎 富久長
出版者
社団法人日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.27, no.292, pp.81-86, 1978
被引用文献数
1

The fracture surfaces of ferritic-perlitic steel caused by hydrogen induced cracking (HIC) and sulfide stress cracking (SSC) under the wet H<sub>2</sub>S environment were investigated by a scanning electron microscope. It was clarified that HIC and SSC were caused by hydrogen embrittlement. The cracks of HIC initiated around the nonmetallic inclusions (MnS) and they grew in a step-wise manner by connecting each other. On the other hand, the process of SSC took place as follows; the separated small cracks of HIC were connected by the cracks perpendicular to the stress axis. The fracture due to hydrogen embrittlement exhibited some characteristic fracture patterns, such as a river like pattern, flat pattern and so on. It was supposed that these fracture patterns were formed depending on the crystallographic orientation of grains. The striation type pattern was observed on the river like pattern as well as on the flat pattern. This striation type pattern seemed to correspond to the discontinuous propagation of hydrogen embrittlement cracking. In order to determine the sharp of the river like pattern, the stereo-matching technique was applied and it was found that this pattern could be classified into three types.
著者
池田 昭夫 松本 理器 長峯 隆 菊池 隆幸 小林 勝弘 國枝 武治 宇佐美 清英
出版者
京都大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

難治てんかん患者の脳内脳波記録への数理モデルの適用や、手術病理標本の解析、動物実験などを通じ、てんかん焦点の脳波バイオマーカーとしてのActive ictal DC shiftsの存在を確立し、てんかん発作における、 神経細胞, 能動的グリア, 受動的グリアの3成分、特に前2者の重要性を明らかにした。また、てんかん発作前状態ではred slow(低周波数帯域活動と高周波律動の共起)がactive DC電位の領域に一致することを明らかにした。一方で、頭皮上脳波での記録の実証により、Active ictal DC shifts、Red slowのバイオマーカーとしての汎用性を明らかにした。
著者
池田 昭
出版者
東京大学文学部宗教学研究室
雑誌
東京大学宗教学年報.別冊
巻号頁・発行日
vol.8, pp.8-9, 1991-03-31