著者
杉浦 仁美 坂田 桐子 清水 裕士
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.101-111, 2015 (Released:2015-03-26)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究の目的は,地位格差のある集団間状況において,集団間葛藤が生起する過程を明らかにすることである。そのため,内集団バイアスに着目し,集団間の相対的地位と集団間の関係性,集団内での個人の地位が,内集団,外集団メンバーの評価に及ぼす影響について検討した。大学生120名に対して,集団間地位と集団内地位を操作した実験を行った。その結果,高地位集団では,高地位者よりも低地位者のほうが,外集団メンバーの能力を低く評価することが明らかとなった。逆に,低地位集団では,低地位者よりも高地位者のほうが,外集団の能力を低く評価していた。また,この交互作用は,集団間の関係を非協同的であると認識する者においてのみ見られた。これらの結果から,集団内地位と集団間地位の高さが異なり,個人間比較と集団間比較のジレンマが生じる状況では,補償的に外集団を卑下する戦略が用いられる可能性が示唆された。
著者
清水 裕士 小杉 考司
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.132-148, 2010

本論文の目的は,「人々が対人行動の適切性をいかにして判断しているのか」について,一つの仮説を提案することである。本論文では,人々が対人行動の適切性をある原則に基づいた演繹によって判断しているものと捉え,演算の依拠する原理として,パレート原理を採用する。次に,Kelley & Thibaut(1978)の相互依存性理論に基づいて,パレート解を満たす葛藤解決方略を導出した。さらに,これらの理論的帰結が社会現象においてどのように位置づけられるのかを,Luhmann(1984)のコミュニケーション・メディア論に照合しながら考察した。ここから,葛藤解決方略は,利他的方略・互恵方略・役割方略・受容方略という四つに分類されること,また,方略の選択は他者との関係性に依存することが示された。そして,このような「行動の適切性判断のための論理体系」をソシオロジックとして定式化し,社会的コンピテンス論や社会関係資本論などへの適用について議論した。<br>
著者
王 瑋 坂田 桐子 清水 裕士
出版者
産業・組織心理学会
雑誌
産業・組織心理学研究 (ISSN:09170391)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.103-112, 2016 (Released:2019-08-05)

We tested the relationship between transformational leadership and stress responses by using a twodimensional stressor framework. Results of a cross-sectional questionnaire (N = 318) showed that transformational leadership had a direct negative effect on stress responses. Meanwhile, transformational leadership had a positive relationship with challenge stressors, and a negative relationship with hindrance stressors. The positive relationship with challenge stressors had a positive effect on promoting work satisfaction, and gave meaning to the work of followers, however it also had a positive relationship with stress responses, which is a point that is usually ignored.
著者
清水 裕士 大坊 郁夫
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.295-304, 2007-03-20 (Released:2017-02-08)
被引用文献数
3

This study had two main purposes. The first was to clarify the relationship between structure of interaction and stability of romantic relationships, and the second was to compare the effect of the total intimacy level of a couple with the individual levels of intimacy using a pairwise correlation analysis in order to determine a couple's interdependency. Questionnaires were completed by 59 couples (college students in romantic relationships). The feature of interaction structure was measured by the frequency, strength, and diversity of interactions, while the stability of a relationship was measured by satisfaction, commitment, and prospects of a continued relationship. The pairwise correlation analysis separated the correlation of the couple level from the individual level. The results indicated that the stability of relationships was affected by the degree of diversity of interaction at the couple level, and by the strength of interaction at the individual level. Finally, we discussed the function of relationship stability, showing the degree of diversity and strength of interaction.
著者
湯川 隆子 清水 裕士 廣岡 秀一
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.36, pp.131-150, 2008-03

本研究の目的は、大学生におけるジェンダー特性語の認知がここ20年でどのように変わったかを検討することである。1970年代と1990年代に男女各1000人の大学生を対象に、50語のジェンダー特性語について同一の分類テストと連想テストを実施した。主な結果は以下のようであった。(1)男性あるいは女性の典型的ジェンダー特性語として分類された特性語の数は、1970年代より1990年代のほうが少なくなっていた。(2)ジェンダー特性語に対する連想反応語は、1970年代でのほうが1990年代よりも典型的なステレオタイプを表すと見られる内容が多かった。(3)近年の日本の大学生においては、ジェンダー特性語に対し、ジェンダー・ステレオタイプに沿って反応する傾向が減少してきている。
著者
清水 裕士 大坊 郁夫
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.78, no.6, pp.575-582, 2008-02-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
23
被引用文献数
6 4

A hierarchical data analysis was conducted using data from couples to examine how self-reports of interactions between partners in romantic relationships predict the quality of the relationships. Whereas the social exchange theory has elucidated the quality of relationships from the individual level of subjectivity, this study focused on the structure of interactions between the partners (i. e., the frequency, strength, and diversity) through a process of inter-subjectivity at the couple level. A multilevel covariance structure analysis of 194 university students involved in romantic relationships revealed that the quality of relationships was mainly related to the strength and the diversity of interactions at the couple level, rather than the strength of interactions at the individual level. These results indicate that the inter-subjective process in romantic relationships may primarily explain the quality of relationships.
著者
三浦 麻子 小林 哲郎 清水 裕士
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は,様々な社会的行動・態度の個人差を説明する新たな価値観概念として「常民性」―民主主義やキリスト教といった現代欧米社会に深く根ざす思想の呪縛を受けない,システム正当化,生活保守主義,個人幸福志向などが複合した概念―を探究し,妥当性と信頼性の高い測定尺度を開発することである.(a)質的面接調査,(b)Web調査,(c)尺度開発の3プロジェクトが遂行される.一般的な質問紙調査ではリーチできない層を対象とする丹念な質的データ収集にもとづいて概念の精緻化を試みる点,尺度開発に統計モデリングを活用する点に学術的独自性と創造性がある.
著者
石盛 真徳 藤澤 隆史 小杉 考司 清水 裕士 渡邊 太 藤澤 等
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.159-168, 2008-10-05
被引用文献数
1

本研究では、ソシオン理論の家族システム論に基づいて、家族成員間関係から家族システムの機能を把握するアプローチと家族システムの全体的機能に関して直接的に取り扱う研究アプローチとが融合し得るか、について検討を行った。具体的には、家族成員間の感情コミュニケーションにおける思いやりと家族全体システムの機能との関連性が調査された。その結果は、家族システムへのアプローチとして、家族成員間関係に基づくアプローチと全体的機能へのアプローチを重ね合わせて検討することの有効性を示していた。また家族構成や家族成員のジェンダーといった家族システムの内的構造変数に、社会階層意識といった外的構造変数も加えて、家族成員間関係と全体的機能との関連性を分析することによって、家族援助の実践的取り組みに対するより役立つ基礎データが提供可能となることも示された。本研究のデータは、ソシオン理論の家族システム理論に基づいて要請される完全な二相三元非対称データではなく、4人家族の子供のみを調査協力者として収集された部分的なデータであったので、今後は完全な二相三元非対称データに基づいた検討が必要とされる。
著者
村山 綾 清水 裕士 大坊 郁夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.146, pp.7-12, 2006-07-03
被引用文献数
2

集団の相互依存性を検討する際に有用な多段共分散構造分析を用いて,3人集団における会話満足度に影響を及ぼす要因について検討した.大学生72名が3人集団で会話実験に参加し,お互いを知り合えるように会話を進める親密条件,時間内に1つの結論を提出するよう支持される討論条件のいずれかに割り当てられた.分析の結果,非言語表出性の高い個人ほど会話満足度が高くなることが明らかになった.また,集団内でうなずきの量が多いほど会話満足度が高くなる一方で,討論条件において集団内での笑顔の量が多いほど満足度が低くなることが示された.会話条件に関しては,親密条件よりも討論条件で会話満足度が低かった.個人レベルの指標と集団レベルの指標を1つのモデルに組み込む利点について議論を行った.