著者
長谷川 克 渡辺 守
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.105-114, 2008-09-25
被引用文献数
1

翅に色彩2型を生じるモンキチョウの雌に対する雄の配偶者選択を,雌が未交尾の場合と既交尾の場合に分けて調べた.この選択実験において,雄とモンシロチョウの雌も本種雌の2型とともに呈示し,それらに対する行動も記録した.処女雌を呈示したとき,雄は飛来時に黄翅型を選好し,どちらの翅型に対しても同様にしつこく求愛した.一方,既交尾雌を呈示したときの飛来時の選好性には偏りが見られず,飛来後の雄は白翅型雌に対してしつこく求愛した.本種雄は雌の交尾経験の有無によって,配偶者選択を変化させていることが示唆される.雌の翅のみを呈示した場合,雌の交尾拒否行動を模した翅モデルは効果的に雄の求愛行動を減少させたが,この場合においても雄は黄翅型雌の翅を選び,求愛のしつこさは2型で変わらなかった.このことは,翅の表面という視覚的な刺激のみでは2型間への雄の好みを変更させられないことを意味している.呈示した雄やモンシロチョウの雌は飛来時,あるいは初期の行動段階において雌と区別されており,これらの個体の存在が雄の配偶者選択に影響している可能性は低い.
著者
入江 萩子 渡辺 守
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.68-75, 2009 (Released:2019-09-28)
参考文献数
32
被引用文献数
1

For high school students, evolution of animal behavior seems to be the most difficult concept to understand due to unavailable examples off ered by text books. In the present study, we developed teaching materials for the evolution of animal behavior and proposed the methodology. In the Japanese sulfur butterfl y Colias erate, polyandrous alba females are the dominant morph in the female population, though mated females do not easily re-accept males courting. The wings of mated alba captured in the field were closed by glue, and they were tethered in the grassland where males were searching for mates. We observed 1,830 entries of males into the imaginary hemisphere of 1 m radius around each female. A half of the males noticed and visited our females. Due to the closed wings, every female was unable to show the mate refusal posture, so the males continued their courtship behavior. However, the duration of hovering around the females was short in the morning, and most males left the females without touching them. Because newly emerged females promptly accept copulation with males in the early morning, males might prefer virgin females to mated ones. On the other hand, males that visited the females around noon prolonged the duration of hovering and tried to copulate persistently. The adaptive significance on the behavioral sequence was easily observed due to the closing femalesʼ wings. Manipulation of the butterfl y wings in the field observation was discussed in the viewpoint of the teaching materials for high school education on evolutionary biology.
著者
長沼 誠 藤井 俊光 長堀 正和 渡辺 守
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.108, no.3, pp.388-400, 2011 (Released:2011-03-07)
参考文献数
91

クローン病の治療には栄養療法と薬物療法があるが,抗体製剤の登場によりクローン病の治療法や治療目標,長期予後などが大きく変わってきている.6-MP,AZAを中心とした免疫調節薬は抗体製剤が登場する前より難治例を中心に使用されており,特にステロイド依存例のステロイド減量や寛解維持に有用な薬剤である.長期予後の観点からみて6-MP,AZAは腸管粘膜治癒効果,術後の再燃防止効果を有するが,抗体製剤と比べその効果は限定的である.免疫調節薬を早期に使用することにより長期予後が改善される可能性も考えられるが,骨髄抑制,感染症,さらには最近注目されているリンパ腫発生の可能性を考慮し,有用性と副作用のバランスを考えながら使用することが大切である.
著者
渥美 茂明 笠原 恵 市石 博 伊藤 政夫 片山 豪 木村 進 繁戸 克彦 庄島 圭介 白石 直樹 武村 政春 西野 秀昭 福井 智紀 真山 茂樹 向 平和 渡辺 守
出版者
一般社団法人 日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.8-22, 2018 (Released:2019-04-11)
参考文献数
9

平成21年3月に改訂された高等学校学習指導要領で設けられた科目「生物基礎」と「生物」では,科目の大枠を単元構成で,取り上げるべき内容は最低限の例示で示された(文部科学省 2009).その結果,教科書間にページ数や内容の差が生じ,教育現場に混乱をもたらした.日本生物教育学会が設置した生物教育用語検討委員会を引き継ぎ,2015年4月に日本学術振興会の科学研究費による「新学習指導要領に対応した生物教育用語の選定と標準化に関する研究」が組織され,本研究を行った.各社の教科書から,太字で表示された語句,索引語,見出し語,および明らかに生物の用語と見なせる語を用語として抽出した.教科書の単元ごとに用語が出現する代表的な1文,ないし1文節とともに出現ページと出現場所(本文か囲み記事か脚注かなど)の別をデータベースに記録した.用語の使用状況をデータベースにもとづいて分析するとともに,単元ごとの「用語」一覧にもとづいて「用語」の重要度を評価した.生物基礎では1226語(延べ1360語)を収集した.「生物」では1957語(延べ2643語)の「用語」を収集した.「生物基礎」でも「生物」でも1つの単元にしか出現しない「用語」が大半を占めていた.1つの単元で1社の教科書にのみ出現する「用語」も存在し,特に第一学習社の「生物基礎」(初版)では827語中144語が同じ単元で他社の教科書に出現しない「用語」であった.「用語」の重要度は,評価者の属性による差違が際立った.「生物基礎」と「生物」のいずれにおいても,大学教員が多くの「用語」に高校教員よりも高い評価を与える傾向が見られた.特に,「生物」の5つの単元(窒素代謝,バイオテクノロジー,減数分裂と受精,遺伝子と染色体,動物の発生)では大学教員が高校教員よりも高い評価を与える用語が存在した一方,その逆となった「用語」が存在しなかった.これは生物教育用語を選定しようとするとき,選定者の属性によって結果が異なることを示している.さらに,「用語」の表記に多くのゆらぎが見つかった.それらは漢字制限に起因するゆらぎ,略語や同義語,あるいは,視点の違いを反映した表記のゆらぎであった.表記のゆらぎを解消するための「用語」の一覧を作成し提案した.
著者
渡辺 守邦
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要 = The Bulletin of The National Institute of Japanese Literature (ISSN:03873447)
巻号頁・発行日
no.15, pp.135-165, 1989-03-25

むかし、祖母の語った安倍の童子の咄は、歳月のベールに隔てられて、記憶もおぼろげである。それゆえであろうか、かすかな太棹の三味の音を伴って甦ってくる。この一話の世上への伝搬に『蘆屋道満大内鑑』のはたした功績の大きかったことは疑いないが、それだけではなかった。江戸時代を通じて、演劇とは双子の関係にあった小説の分野にあっても取り上げられ、数々の作品の刊行をみている。また、明治の御代にいたるまで盛んに行われた、仏教講釈の演目の内にも含まれていた、という。暦数書の注釈に発した清明伝承が、さまざまなジャンルに文芸化されたありさまと、作品相互の間の関りについて調べてみることは、われわれの持つ清明像の依ってきたる所以を明らかにすることにもなるはずである。 A memory of a story of Abe-no-doji (childhood name of Abe no Seimei) which my grandmother told me long time ago is vague separated by a veil of time. That may be why it is associated in my memory with the faint sounds of Futozao (broad-neck) shamisen. There is no doubt about the great achievements that “Ashiya Doman Oouchikagami”(蘆屋道満大内鑑)produced as for propagation of this story to a public, however this was not all. It was taken up for the field of novels which had a twin-like relation with field of the Dramatic Arts, many works were published. In addition, it is said to be included on the program of a Buddhism lecture carried out actively up to the reign of the Emperor Meiji. To investigate the state that a legend of Seimei which had its beginnings in explanatory notes of the Rekisusho (the number of years book) was changed into literary arts in various genres and to try to investigate about the mutual relation with each work should be going to clarify the reason of the image of Seimei that we have.
著者
田口 正男 渡辺 守 Taguchi Masao Watanabe Mamoru
出版者
三重大学教育学部
雑誌
三重大学教育学部研究紀要. 自然科学 (ISSN:03899225)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.25-32, 1995-03-15

水田において、1985年9月と1987年10月にナツアカネのペアー形成と交尾、産卵の行動観察、1989年9月に胸部体温の測定を行なった。水田に飛来した雄は縄張り行動を示さず、雌を発見すると急速に接近して連結態となった。連結態が形成されると雄はただちに移精を行ない、その直後ペアーは交尾態となった。交尾は9時半から13時頃まで観察された(平均交尾時間、323.5±24.2秒)。産卵は交尾終了後、直ちに連結で飛翔したまま開始された(連結打空産卵:平均産卵時間、461.3±19.2秒)。産卵時間とその間に行なわれる雌の腹部の打空回数には正の相関があった。連結打空産卵中の平均胸部体温は、雄で33.9±0.2℃、雌で32.8±0.2℃となり、雄の方が有意に高かった。輻射温度と胸部体温と輻射温度の温度差との関係の回帰直線の傾きについては、連結打空産卵中の雄と雌との間に有意な差は認められなかったが、連結打空産卵中の雄と単独飛翔中の雄との間には有意な差が認められた。これらの結果より、連結打空産卵における雄の役割と連結産卵の意義を考察した。
著者
長沼 誠 玄 世鋒 渡辺 守
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.845-854, 2010 (Released:2010-06-07)
参考文献数
35

抗TNFa抗体製剤の登場と小腸内視鏡の登場は近年のクローン病における治療戦略を大きく変えた.抗TNFa抗体製剤によりこれまでクローン病の治療目標が「症状を改善させる」ことから「粘膜治癒させる」ことになってきた.小腸内視鏡の開発と実用化はこれまで確認することができなかった小腸病変を直視下に観察することを可能にし,大腸病変だけでなく小腸病変の治療効果を確認することが可能となっている.本稿では小腸病変の診断法および治療法について現状と近未来的な展望について概説する.
著者
岡本 隆一 渡辺 守
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.522-527, 2016 (Released:2016-12-31)
参考文献数
36
被引用文献数
3 9

腸上皮は個体の内外を分け隔てる物理的な境界として存在するだけでなく,腸内細菌等が存在する体外の環境と免疫担当細胞等が存在する体内の環境を仲立ちし,機能的に調和を保つ重要な役割を担っている.このような腸上皮が炎症性疾患の発症・病態の形成に果たす役割の重要性が臨床・病態研究の両面において注目されている.例えば粘液を産生する機能を有する腸上皮細胞である杯細胞は潰瘍性大腸炎において「消失」することが知られているが,同細胞が粘液産生機能だけでなく多彩な免疫調節機能を有し,疾患の発症・進展を規定する重要な機能を内在していることが明らかとなっている.更に小腸に局在する腸上皮細胞であるパネート細胞は抗菌活性を有するペプチドを産生する機能が知られているが,複数のクローン病疾患感受性遺伝子により同細胞の機能・細胞死が制御されている可能性が示されている.従ってクローン病における「パネート細胞機能異常」は特定の病型において疾患発症・再燃の要因の一つとなっているものと考えられている.本稿では腸上皮の機能と炎症性腸疾患の病態に関する近年の知見について,概説したい.
著者
加納 嘉人 草野 史彦 酒井 義法 田沢 潤一 渡辺 守 永山 和宜 池邊 佐和子 鎌田 和明 今西 暁 伊藤 祐子 大木 史郎 望月 奈穂子 相馬 友子
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.58-59, 2008

症例は拘置所収容中の42歳男性。重症筋無力症に対して胸腺摘出後ステロイドを内服中であった。吐下血を主訴に救急搬送され、内視鏡では胃内にふりかけ・菓子の袋など大量の異物があり、胃角部に噴出性出血を伴う潰瘍を認めた。止血処置後異物は把持鉗子を用い経口的に30個全てを回収した。内視鏡的に摘出した数として異例であり出血性胃潰瘍の合併もあり類似症例の初期対応、特に関係者からの問診上示唆に富むと考えられ報告する。
著者
大島 茂 渡辺 守
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.81-85, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
10

腸管は,栄養の消化吸収を行っていると同時に,外来異物に対する生体防御の最前線でもある.腸内細菌は1×1014個にも及び,腸管免疫系の発達に作用するだけでなく,Th17細胞の分化を誘導したり,制御性T細胞の数および機能を高めたりすることで,腸管の生体防御における恒常性を維持している.腸内細菌の構成異常は免疫異常につながり,各種疾患発症に関わっているのみならず,腸管免疫系を介し腫瘍形成にも関与している.
著者
入江 萩子 渡辺 守
出版者
日本生物教育学会
雑誌
生物教育 (ISSN:0287119X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.68-75, 2009-03-31
参考文献数
32
被引用文献数
1