著者
眞嶋 良全
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

高校までの教育,科学技術概念の基礎的理解,日常的なメディアへの接触頻度,認知判断傾向等の個人差変数が,疑似科学的信念の強度に与える影響について,変数間の関係性を統計的に分析する共分散構造分析を用いて検討した。その結果,正しい科学的知識(科学リテラシー)の獲得は疑似科学的な信念を弱める一方で,認知的な安定性を求める傾向が拙速な判断に関与している可能性が指摘された。
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.272-281, 2019-06-01 (Released:2019-12-01)
参考文献数
37

Crowdsourcing is a newer labor portal where anonymous workers earn small amount of money for completing Web-based tasks. Recent research investigating human behavior often recruit workers through these platforms to ask them to participate in online survey and experiment. To make it short, the advantage of crowdsourcing is that it enables researchers to collect empirical data at relatively lower economical, human,and temporal costs. However, it is also known that some professional survey takers who repeatedly participated in academic survey tasks are likely to show satisficing —behavior in which workers do not pay attention adequately to research materials. In addition, internet-based research practice has other concerns specific to ethical consideration in online data collection, including presenting proper post-survey debriefing and maintaining ethical level of compensation. Present article outlined a state of the art of internet-based research in the domain of social sciences, indicated both strong and weak point of the online study, and suggested possible future direction in cognitive studies with crowdsourcing.
著者
眞嶋 良全 中村 紘子
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
pp.40.24, (Released:2022-04-12)
参考文献数
36

With the expansion of psychological studies conducted online, researchers show greater interest in the quality of the data collected from online studies. Factors that may compromise the data quality include lack of control of environmental variables, nonnaïveté due to repeated participation, and reduced attention to the study materials. In this study, we examined the possibility that type of device and the presentation format of study materials may compromise the quality of responses. An online study with a total of 1,005 crowd-workers (PC=485, mobile=520) revealed that mobile devices were associated with less attentive responses. Results also showed that mobile devices tended to elicit relatively inconsistent responses to psychological scales, specifically when combined with the multiple presentation formats, in which all items of the scale were presented at once. The results suggest that the importance of considering the type of device and the format of information presentation in the future studies conducted online. Future research in this domain should further address factors that may lower the quality of data, such as demographics.
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.22-38, 2012 (Released:2013-12-27)
参考文献数
103
被引用文献数
3

現代は科学技術が高度に発達し,科学技術の成果が広く応用されることで社会の発展が進むと同時に,科学技術の高度かつ専門的な細分化に伴って,特定の領域の専門家以外の公衆(他分野の科学者も含む)の理解が追いつかなくなっている.さらには,従来のように科学が真理の探究のみを目標としていた時代と異なり,価値判断や政策的意思決定などをも含む,科学だけでは解決できないが,一方で科学とは切り離せないような問題,あるいは“科学に問うことはできるが,科学だけでは答えられない”(トランスサイエンス)問題が生じている(小林, 2007; Weinberg, 1972).このような状況の中で,科学と社会とを繋ぐ科学技術コミュニケーションの重要性が指摘されるだけでなく,学校教育,あるいは生涯教育としての科学リテラシーの重要性も認識されるようになっている.リテラシーは,元来,言語による読み書き能力を指す言葉であるが,近年は,情報一般の活用力を指す情報リテラシー,健康や医療の面での情報活用力とそれに基づいた意思決定の能力を指すヘルスリテラシー,科学の成果とその方法論を理解し,批判的に評価する能力を指す科学リテラシーなどさまざまな能力を指す言葉として用いられている.科学リテラシーをどのように定義するか,あるいはどこからどこまでを科学リテラシーの範囲とするかについては未だに議論があるが1),いずれの定義においても,科学の諸分野における基本概念や科学の方法論を理解することと,科学的な主張を批判的に評価するためのスキルを獲得することが重視されている(川本・中山・西條, 2008; National Research Council,1996; OECD, 2007a).
著者
中村 紘子 眞嶋 良全
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-47, 2019-09-30 (Released:2019-12-10)
参考文献数
42
被引用文献数
2

In this study, we examined the fidelity of online cognitive–behavioral experiments conducted with Japanese crowd workers. Four cognitive tasks (flanker task, mental rotation task, levels-of-processing task, and mood induction task involving the recall of autobiographical memories) were performed by Japanese crowd workers in a web-based setting and by students in a lab-based setting. We found that all task-specific effects were replicated, except mood induction did not affect perceived social support in both crowd workers and students. The present results validate the fidelity of conducting online experiments with Japanese crowd workers.
著者
眞嶋 良全
出版者
北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は,個人の疑似科学信奉の説明変数としての,論理・確率的推論能力,認知スタイル,および科学リテラシーの予測力を検証した。その結果,論理・確率的推論能力は信念の程度に対して説明力を持っていなかったが,認知スタイル,特に二重過程思考と関連した思考傾向が信念の強度に対して説明力を持っていることが示された。これらの結果から,誤帰属仮説は妥当な説明モデルであるとは言えず,むしろこれらの非合理的な信念は分析的思考と関連した「非形式的推論」の産物であることが示された。
著者
中村 紘子 松尾 朗子 眞嶋 良全
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.95.22217, (Released:2024-02-10)
参考文献数
43

Anthropomorphism is the attribution of human-like mental states to nonhuman entities. The purpose of this study was to develop a Japanese version of the Individual Differences in Anthropomorphism Questionnaire (IDAQ-J) and to examine its factor structure, reliability, and validity through three studies. Factor analysis revealed that the IDAQ-J has three first-order factors (anthropomorphizing natural entities, technological devices, and nonhuman animals) and one second-order factor (general anthropomorphism). The IDAQ-J showed high internal consistency and moderate test-retest reliability. In terms of validity, the IDAQ-J showed moderate positive correlations with anthropomorphism of nature and machines, and predicted low negative emotions about interacting with robots and teleological beliefs. On the other hand, the IDAQ-J showed weak relationships with anthropomorphism of nonhuman animals, attitudes toward nature conservation, and fear of robots. Further research is needed to interpret the validity of the IDAQ-J.
著者
眞嶋 良全 鈴木 紘子
出版者
北星学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

偽ニュースは,社会に与える影響が極めて大きいにも関わらず,その受容と伝達の背景にある認知過程の検討が十分に行われていない。本研究では,1) 実証的信念との関連が指摘されている,認知的内省性,パターン錯覚,擬人観等の個人の認知特性が,同様に偽ニュースの受容と関連するかどうか,2) 文化伝達の領域で提唱されている最小反直観性(MCI) 説が偽ニュースの受容と伝達に対しても適用可能か,同様に信念の文化伝達への関与が指摘されている,3) 権威に対する信頼,議論に対する適切な理解,主張者の信念-行動間の一致が偽ニュースの伝達にも関与するかどうかという3つの観点から検討を行う。
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.69, 2015 (Released:2015-10-21)

迷信的信念に関する先行研究の多くは,超常信奉が思考スタイルによって予測可能であることを示している。本研究は,これら先行研究で見られた信念と認知能力・スタイルの間の関連性が,疑似科学的信念,特に通俗的心理学神話においても観察されるかどうかを検討した。103名の学部学生が,認知スタイル・能力,科学リテラシーおよび通俗的心理学神話への信奉の程度を測定する質問に回答した。重回帰分析の結果,通俗的心理学神話への信奉は,分析的思考スタイルのみによって予測されることが示され,直観的思考スタイル,認知能力,科学リテラシーは予測力を持たないことが示された。この結果は先行研究に沿っているものの,分析的思考傾向が強い者ほど信念も強いという,先行研究とは逆のパターンが観察された。この違いは,先行研究との参加者集団の違い,特に文化に依拠した思考スタイルの違いから生じた可能性がある。
著者
山 祐嗣 山 愛美 橋本 博文 鈴木 紘子 眞嶋 良全
出版者
大阪市立大学
雑誌
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(B))
巻号頁・発行日
2021-10-07

宗教的推論は、直感的システムと熟慮的システムを仮定する二重過程理論では前者によって行われると想定されてきた。しかし、日本人においては熟慮的システムと結びついていることが示されている。本研究では、この違いを、東洋人は、カルマを熟慮的に受け入れている(カルマ仮説)、あるいは熟慮的思考と直感的迷信を弁証法的に受け入れている (弁証法的共存仮説) 可能性と想定する。日・仏・英において、認知的負荷によって熟慮的システムを抑制する実験、熟慮的思考を測定する質問紙と宗教的信念の質問紙の相関を検討する実験、熟慮的な判断と直感的な宗教的モラル推論の弁証的共存を測定する実験を実施し、両仮説を検証する。
著者
中村 紘子 眞嶋 良全
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第18回大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2021-03-15 (Released:2021-03-15)

目的論とは,「水が存在するのは,地球で生命を生き残らせるためである」というように,自然現象が何らかの目的を持って存在するという考えである。目的論的信念は成人でもみられ (Kelemen & Rosset, 2009), 自然科学者であっても認知負荷がかかると目的論的信念を正しいと判断しやすくなるなど (Kelemen et al., 2013), 対象が目的や意図を持つという目的論的信念は直観的であり, 人のデフォルトの説明機序である可能性が指摘されている。本研究では日本人参加者を対象に,目的論的信念と認知的直観性・熟慮性との関係を検討した。その結果,認知負荷のある状態では目的論的信念を正しいと判断しやすく, また,認知的熟慮性は目的論的信念と負の傾向に関係にあることが明らかとなった。日本人においても,自然現象を理解する際に, 直観的過程では目的論的信念に従った解釈をしやすい可能性が示された。
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 = Cognitive studies : bulletin of the Japanese Cognitive Science Society (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.22-38, 2012-03-01
参考文献数
104

現代は科学技術が高度に発達し,科学技術の成果が広く応用されることで社会の発展が進むと同時に,科学技術の高度かつ専門的な細分化に伴って,特定の領域の専門家以外の公衆(他分野の科学者も含む)の理解が追いつかなくなっている.さらには,従来のように科学が真理の探究のみを目標としていた時代と異なり,価値判断や政策的意思決定などをも含む,科学だけでは解決できないが,一方で科学とは切り離せないような問題,あるいは"科学に問うことはできるが,科学だけでは答えられない"(トランスサイエンス)問題が生じている(小林, 2007; Weinberg, 1972).このような状況の中で,科学と社会とを繋ぐ科学技術コミュニケーションの重要性が指摘されるだけでなく,学校教育,あるいは生涯教育としての科学リテラシーの重要性も認識されるようになっている.リテラシーは,元来,言語による読み書き能力を指す言葉であるが,近年は,情報一般の活用力を指す情報リテラシー,健康や医療の面での情報活用力とそれに基づいた意思決定の能力を指すヘルスリテラシー,科学の成果とその方法論を理解し,批判的に評価する能力を指す科学リテラシーなどさまざまな能力を指す言葉として用いられている.科学リテラシーをどのように定義するか,あるいはどこからどこまでを科学リテラシーの範囲とするかについては未だに議論があるが1),いずれの定義においても,科学の諸分野における基本概念や科学の方法論を理解することと,科学的な主張を批判的に評価するためのスキルを獲得することが重視されている(川本・中山・西條, 2008; National Research Council,1996; OECD, 2007a).
著者
眞嶋 良全
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

超常現象や疑似科学等の実証的根拠を欠いた事物の信奉 (empirically suspect beliefs; ESB) に関する先行研究では,ESB は分析的で熟慮的な内省的思考により抑制されること,分析的認知スタイルの持ち主はESBを持ちにくいことが指摘されてきた。しかしながら,日本人参加者を用いた先行研究では,直観的認知スタイルの方が信念をより良く説明すること,さらに分析的認知スタイルは,むしろESBを高めることが示されている。本研究では,日本および西洋文化圏の参加者を対象に,論理的推論やニュメラシー等の認知能力指標,直観および分析的認知スタイル,その他の人格・思考特性がESBをどの程度予測するかを検討した。その結果,認知能力および分析的スタイルではなく,直観的スタイルが信念とより強く関連していることが示された。また,ESBに対する媒介変数の影響は文化によって異なることが示された。