著者
鈴木 克明
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.13-27, 1995-12-01 (Released:2017-07-18)
被引用文献数
3

本論では、状況的学習観に基づく算数の問題解決領域の授業を支援するためのバンダービル大学における教材開発研究「ジャスパープロジェクト」を詳細に取り上げ、教室学習文脈へのリアリティ付与について、その可能性と課題を考察した。ジャスパー教材群の中心をなす6つの冒険物語と7つの教材設計原則(ビデオ提示、物語形式、生成的学習、情報埋め込み設計、複雑な問題、類似冒険のペア化、教科間の連結)を紹介し、評価研究のあらましを述べた。3つのジャスパー教材の利用形態(積み上げ式直接教授法、構造的問題解決法、生成援助法)とそれを支える授業観を吟味し、プロジェクト推進者の推奨する「生成援助型」の授業における教師の役割変化について言及した。最後に、授業設計モデルと状況的学習観からのジャスパー批評をまとめ、教室学習文脈のリアリティについて吟味した。
著者
三井 一希 戸田 真志 松葉 龍一 鈴木 克明
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.46010, (Released:2022-12-19)
参考文献数
26

本研究では,情報端末を活用した授業の設計を支援することを目指したシステムの開発を行い,その操作性と有用性(ユーザにとって有用と捉えられるか)を検証した.システムの設計にあたっては,先行研究から現状の問題点を抽出するとともに,ユーザーニーズの調査を行って5つの機能要件を定めた.そして,機能要件を満たすシステムをスマートフォン等で動作するアプリケーションとして開発した.開発したシステムを16名の教師が評価したところ,操作性については問題点が見られなかった.また,有用性については,特徴的な機能であるSAMRモデルに基づき授業事例を段階的に示すことを含め,機能要件に定めた項目について概ね良好な評価を得た.一方で,書き込み機能や実践のアップロード機能といったユーザ参加型の機能には,抵抗を示す教師が一定数いることが示された.
著者
加藤 泰久 喜多 敏博 中野 裕司 鈴木 克明
出版者
教育システム情報学会
雑誌
教育システム情報学会誌 (ISSN:13414135)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.200-211, 2013-07-01 (Released:2018-04-25)
参考文献数
26
被引用文献数
1

This paper describes an evaluation to verify the reliability, sensitivity, and effectiveness of the checklist. An improvement of the checklist is also described. The checklist, based on flow theory, was developed as a support tool for teachers and courseware designers to redesign learning materials and environments from the view point of motivational design. After the literature review of the applied research on flow theory to the educational field, it is found that there are few practical tools proposed. This paper focuses on the formative evaluation of the flow-theory-based checklist, which has been already proposed, and the verification of its reliability, sensitivity, and effectiveness. To carry out the whole evaluation experiment, the e-learning materials were developed and the preliminary experiment, the expert review, and the evaluation experiment were performed. As a result, the checklist is found to be practical enough and the future tasks are clarified.
著者
鈴木 克明 根本 淳子
出版者
教育システム情報学会
雑誌
教育システム情報学会誌 (ISSN:13414135)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.168-176, 2011-04-30 (Released:2018-07-27)
参考文献数
19
被引用文献数
5

This paper provides an overview of research trends around three First Principles regarding the design of instruction. Merrill’s First Principles of Instruction proposes five common principles based on constructivist theories of instructional design. Reigeluth adopted them as foundational principles in his work, together with situational principles to propose a scheme of common knowledge base. Keller has proposed First Principles of Motivation to Learn, consisting of five ground rules based on commonly used ARCS Model with a newly added factor of “Volition.” It reflects current research focus on self-regulated learning. Parrish’s Aesthetics Principle of Instructional Design tries to advocate aesthetic consideration to design not only learning materials, but also experiences of learning.
著者
谷塚 光典 東原 義訓 喜多 敏博 戸田 真志 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.235-248, 2015-12-25 (Released:2015-12-28)
参考文献数
26
被引用文献数
2

自己評価機能と学生間の相互コメント機能を有する教職eポートフォリオ・システムを開発した.そして,開発した教職eポートフォリオ活用の効果を明らかにするために,教育実習を終えた大学生を対象にアンケート調査を行った.その結果,教育実習生は,教職eポートフォリオを活用して自己評価することを通して,教育実習を客観的に振り返ることができることを感じたり,自己課題を明確にしたりしていた.また,教育実習生間の相互コメントを通して,教育実習を改めて振り返り,教育実習生間で相互コメントすることの意義を実感していることがわかった.そして,教職eポートフォリオの効果について尋ねたところ,自分の受けた教育の振り返り,目指すべき教師像の明確化,自らの資質・力量の現状理解等には効果がある一方で,これからの教職課程の見通しを持つことには寄与していないことが明らかになった.
著者
高橋 暁子 市川 尚 阿部 昭博 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.25-28, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
6
被引用文献数
1

本研究では,自己管理学習スキルのうち,とくに学習内容の選択の支援を目的に,課題分析図を見ながら学習項目の選択ができるeラーニングシステムを開発した.学習項目を選択するインタフェースとして課題分析図を用いることで,学習者が習得状況を直感的に把握し,構造の上下関係に基づいて学習項目の選択を行うことを目指した.事前テストと事後テスト機能においては,課題分析図の構造による出題制御を行った.形成的評価の結果,習得状況を直感的に把握することに関して有用性が示唆されたものの,実際に構造の上下関係に基づいて学習項目を選択するかは学習者によって異なることがわかった.
著者
根本 淳子 柴田 喜幸 鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.259-268, 2011
被引用文献数
1

本論文は,教育実践において学習デザインの定期的な改善サイクルを実現することでよりよい教育実践を生み出すことの重要性に焦点を当てたデザインベース研究のアプローチによる実践研究の報告である.国内では新しい学習デザインであるストーリー中心型カリキュラム(SCC)を採用した実践を取り上げ,SCC応用の可能性の手がかりを探りつつ,より深い学びを目指した実践に取り組んだ結果から得られた知見を整理した.学習デザインの定期的な改善サイクルを通じ,実践者のリフレクションを促すだけではなく,学習者の内容理解を深めていくことについて確認した.その結果,学習者個人と学習共同体双方への影響を確認することができた.本実践は,本論文の対象である2008年度と2009年度の実践を踏まえ,現在三回目のサイクルの最終段階にある.更なる検証を通じ新しい学習アプローチがより広く使われていくために,知見をデザイン原理として整理し,SCC実践に関する学習者の声を収集し整理していくことが課題となる.
著者
渡邊 浩之 鈴木 克明 戸田 真志 合田 美子
出版者
日本リメディアル教育学会
雑誌
リメディアル教育研究 (ISSN:18810470)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.161-172, 2014-11-30

The role of student tutors is to support new students, as well as other students who are having trouble with learning, so as these students can teach themselves. In Japan, however, there are but a few case examples that verify the quality of these tutors. Therefore, for the purpose of this research an examination of established peer support learning guidelines and other guidelines applied by North American universities was conducted in order to manifest new guidelines. In order to establish the guidelines, elements required of tutoring were extracted from various tutor handbooks, guidelines, and manuals used by twenty-six institutions and universities in Japan and the United States. These extrapolated elements were then integrated to complete the guidelines. Furthermore, the guidelines were revised through a two-step formative evaluation. Finally, the guidelines were tested in order to evaluate their effectiveness in improving the quality of tutors. To conclude this paper, future topics for consideration are discussed.
著者
鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.43-55, 1998-06-20
被引用文献数
5

CAI教材自作課題用に,解答に応じた練習カードの除去や再出題などの制御をHyperCardに付加するドリル教材作成支援ツールを開発した.評価実験1では,KELLERのARCSモデルとGAGNEの9教授事象を参照したアンケートを用いて,HyperCardの標準リンク構造のみの教材と,支援ツール内蔵教材の特徴を大学生に評価させた.その結果,ツールが練習支援の側面を強化しているとの印象を与えていたことがわかった.次に,改善提案とドリル構造の研究結果とを取り入れて「正解消去型ドリル」の機能を改善・拡充し,操作性を向上させた.評価実験2では,ツールとしての使い勝手を調べるために,改善後のツールを大学生に試用させ,任意の画像情報と音声情報を含む教材を自作させた.10人中9人がツール初回利用時で新しいドリルを約30分で自作・試用することができ,ツールとしての使い勝手がおおむね確保されたことがわかった.
著者
鈴木 克明 市川 尚 向後 千春 清水 克彦
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では、教材や授業の動機づけの側面を評価して問題点を見つけ出し、授業や教材の改善作業を支援するためのツール群を開発した。J・M・ケラーが提唱するARCS動機づけモデルに基づいて、ARCSモデルの枠組みである注意・関連性・自信・満足感の4要因それぞれ4項目ずつ、合計16項目からなる「ARCS評価シート」を設計した。それを複数の大学における学生による授業評価で試用し、因子分析などの手法により信頼性と妥当性を検討するデータを収集して改良し、「ARCS評価シート」最終版を提案した。さらに、「ARCS評価シート」をWeb上で実施し、データの回収及び統計的処理を自動的に行う機能を備えた「Web版ARCS評価シート」を開発し、大学における学生による授業評価の実践場面で操作性と実用性を確認した。また、様々な領域で提案されている動機づけに関する教授方略を収集し、ARCSの4要因をもとに分類・整理した「ARCS改善方略ガイドブック」をブックレット形式にまとめた。その内容を「ARCS評価シート」での診断結果と連動させて動的に提示する「Web版ARCS改善方略ガイドブック」を開発し、その簡便性などを調査した。「ARCS評価シート」で得点が低かった項目についての改善方略を選択して表示し、問題点に特化した改善方略を組み合わせて授業の再設計を支援する機能を備えていることが好意的に評価された。以上の成果をWeb上に公開し、教材や授業のデザインに関係する実践者の参考に供した。
著者
鈴木 克明
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-14, 1989-05-20
被引用文献数
6

本稿は,これまでに発表された多数のモデルや理論的裏付けを整理して,米国の授業設計研究の動向をまとめ,以下の諸点について概観し,考察を試みたものである. (1)現存するモデルの多くは,設計手順は共通であるが理論的根拠や利用効果に相違が見られる.(2)授業設計モデルを支えるべき教授理論には,REIGELUTHの業績等により,統合化への動きが見られる.(3)記述的対処方的理論,授業設計と開発,マイクロ対マクロ設計,成果としての魅力,スキーマ等の概念が整理されている.(4)モデルヘの体系化を踏まえた多岐に渡る質の高い教授方略の効果研究が求められている.(5)モデル構築にはGAGNEの9状況(事象)・5分類の枠組や折衷主義に基づくモデルの強化が提唱され,学習集団の影響や動機づけ等へのシステム的な研究も見られる.(6)モデルの理論武装に並行して,モデル使用能力の養成や使い勝手の向上等の技法研究も進められている.