- 著者
-
岩田 英紘
恒川 佳未結
新田 憲司
水嶋 祥栄
長田 裕之
村瀬 陽太
瀬古 周子
- 出版者
- 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
- 雑誌
- 医学検査 (ISSN:09158669)
- 巻号頁・発行日
- vol.70, no.4, pp.724-732, 2021-10-25 (Released:2021-10-25)
- 参考文献数
- 10
〈目的〉「ゲノム診療用病理組織検体取扱い規程」において推奨されているホルマリン固定時間を超過した検体は,核酸品質の低下が懸念されている。今回,臨床現場で固定時間が超過する検体を想定し,良好な核酸品質保持のための固定条件を検討した。また,病理組織診断に与える影響についても検討した。〈方法〉未固定の肺,甲状腺,卵巣を用い,「1,3,7日間室温固定」「3,7日間冷蔵固定」「1日間室温固定後にALへ置換し2,6日間保存」「1日間室温固定後にALへ完全置換し2,6日間保存」「1日間室温固定後に2,6日間冷蔵保存」の11の条件で固定を行った。ΔCT値による核酸断片化の評価およびHE染色,IHCの染色性を評価した。〈結果〉「3,7日間室温固定」検体では,推奨QC値を下回る検体が認められたが,それ以外の条件においては,「1日間室温固定」と同等のQC値であった。最もQC値が高い固定条件は,「3日間冷蔵固定」であった。HE染色およびIHCともに,すべての固定条件において,染色結果に問題はなかった。〈考察〉金曜日や長期休暇前に提出された生検検体は,冷蔵固定もしくは一晩室温固定後のAL置換により,良好な核酸品質が保持できることが示された。臨床現場での業務効率を考慮すると,検体提出直後から冷蔵固定することが,最善の固定条件であると考えられる。