著者
佐藤 正志 張 志祥
出版者
摂南大学
雑誌
経営情報研究 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.89-102, 2009-10

「満洲国」において、「満洲産業開発五カ年計画」が動き始めた1937年前後から、星野直樹、東條英機、鮎川義介、松岡洋右および岸信介の「二キ三スケ」と呼ばれた5人の実力者の存在が注目されはじめた。そのなかで、経済産業政策を中心的に担ったのが岸信介である。植民地研究の第一人者である小林英夫は、岸が革新官僚として「満洲国」に渡り、そこでさまざまな統制経済の「実験」を実施し、この「満洲経営」が、戦時統制経済をはじめ、第2次世界大戦後に世界に類例をみない日本の高度経済成長や戦後日本経済のグランドデザインをつくったと指摘しており、戦前と戦後の連続性を主張する最近の論調を代表する。本稿では、岸が「満洲経営」で果たした役割とそれの戦後経済成長との関連性をめぐり、どのような言説が流布され、いかなる主張がなされているのか。また、それをいかに論証しているのか、最近の岸に関する研究動向のみならず一般書や雑誌記事などにおける代表的な言説をレビューし、革新官僚・岸信介による「満洲経営」の経済史的意義を解明する際の課題について考察する。
著者
佐藤 正志
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 = Journal of Business Administration and Information (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.29-48, 2015-02

日本人は原爆(核)被害を受けたにも関わらず、「原子力平和利用」を受容し、世界第3 位の原発大国を作り上げていった。本稿では、最近の「原子力平和利用」に関する研究を整理しつつ、「平和利用」を推進した政治的リーダーのひとりであった岸信介の日米安保改定交渉や「反核外交」、事前協議に関する密約問題などを取りあげ、彼がいかに原子力技術を理解し、核政策を行ったのかを概観し、その思想的背景を考察する。
著者
佐藤 正志
出版者
摂南大学経営学部
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.15-34, 2014-02

革新官僚としての岸信介は、その卓抜した思考能力から戦間期における資本主義の歴史的変化をいち早く認識し、国家の産業政策としては、学生時代に影響を受けた「国家社会主義」思考と親和性の高いドイツの産業合理化運動さらにナチス統制経済に連なる「ファシズム型」資本主義を選択し、その遂行者となった。彼が商工省で策定した「自動車製造事業法」はその国産化政策を推進する法律であり、ドイツの産業合理化における国家統制のあり方に学び、軍部の意向をも反映したものであった。しかし一方で、岸が経営実務能力を高く評価した鮎川義介の「外資・技術力」導入という「国際協調」的な主張にも賛意を示すなど、経済(経営)合理的思想をも持っていた。しかしながら、岸が鮎川を助けて有効な政策手段を講じたり、行動したわけではなかった。岸は、多層的で柔軟な合理的思考をも有し、官僚としての政策立案能力は卓越していたが、現実には国際関係の悪化や軍部の外資排除の意向を前にして、主体的で責任を有した行動を行ったとは言い難いのである。
著者
佐藤 正志
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集 = Journal of Business Administration and Information (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.15-34, 2014-02

革新官僚としての岸信介は、その卓抜した思考能力から戦間期における資本主義の歴史的変化をいち早く認識し、国家の産業政策としては、学生時代に影響を受けた「国家社会主義」思考と親和性の高いドイツの産業合理化運動さらにナチス統制経済に連なる「ファシズム型」資本主義を選択し、その遂行者となった。彼が商工省で策定した「自動車製造事業法」はその国産化政策を推進する法律であり、ドイツの産業合理化における国家統制のあり方に学び、軍部の意向をも反映したものであった。しかし一方で、岸が経営実務能力を高く評価した鮎川義介の「外資・技術力」導入という「国際協調」的な主張にも賛意を示すなど、経済(経営)合理的思想をも持っていた。しかしながら、岸が鮎川を助けて有効な政策手段を講じたり、行動したわけではなかった。岸は、多層的で柔軟な合理的思考をも有し、官僚としての政策立案能力は卓越していたが、現実には国際関係の悪化や軍部の外資排除の意向を前にして、主体的で責任を有した行動を行ったとは言い難いのである。
著者
佐藤 正志 張 志祥 サトウ マサシ チョウ シショウ Masashi SATO Zhixiang Zhang
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.89-102, 2009-10

「満洲国」において、「満洲産業開発五カ年計画」が動き始めた1937年前後から、星野直樹、東條英機、鮎川義介、松岡洋右および岸信介の「二キ三スケ」と呼ばれた5人の実力者の存在が注目されはじめた。そのなかで、経済産業政策を中心的に担ったのが岸信介である。植民地研究の第一人者である小林英夫は、岸が革新官僚として「満洲国」に渡り、そこでさまざまな統制経済の「実験」を実施し、この「満洲経営」が、戦時統制経済をはじめ、第2次世界大戦後に世界に類例をみない日本の高度経済成長や戦後日本経済のグランドデザインをつくったと指摘しており、戦前と戦後の連続性を主張する最近の論調を代表する。本稿では、岸が「満洲経営」で果たした役割とそれの戦後経済成長との関連性をめぐり、どのような言説が流布され、いかなる主張がなされているのか。また、それをいかに論証しているのか、最近の岸に関する研究動向のみならず一般書や雑誌記事などにおける代表的な言説をレビューし、革新官僚・岸信介による「満洲経営」の経済史的意義を解明する際の課題について考察する。
著者
武者 忠彦 箸本 健二 菊池 慶之 久木元 美琴 駒木 伸比古 佐藤 正志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.000278, 2018 (Released:2018-06-27)

中心市街地再生論の転換低未利用不動産の増加を実態とする地方都市中心市街地の空洞化に対しては,商業振興や都市基盤整備の名目で,これまでも夥しい額の公共投資がなされてきたが,その成果はきわめて限定的であった.こうした現状に対して,近年は中心市街地再生をめぐる政策を批判的に検討し,空洞化を是認する論調も強まっているが,政府は2014年に策定した「国土のグランドデザイン2050」において「コンパクト+ネットワーク」モデルを提示しているように,人口減少や財政難,低炭素化を背景としたコンパクトシティの文脈から,中心市街地再生の立場を継続している.もっとも,政府が掲げるコンパクトシティ政策は,土地利用と施設立地の効率化を追求した中心市街地への機能と人口の〈再配置論〉であり,どうすればそのような配置が可能になるのか,そのような配置にして生業や生活が成り立つのか,そこで望ましい社会や経済が形成されるのか,といった議論は各地方都市の「マネジメント」に丸投げされているといってよい.都市マネジメントの可能性:事例報告からの示唆では,地方都市にはどのようなマネジメントの可能性があるのか.これまでの中央主導による補助事業に依存した開発志向型の再生手法が,ほとんど成果を生み出せず,もはや依存すべき財源もないという二重の意味で使えない以上,基礎自治体や民間組織のようなローカルな主体が中心市街地という場所の特性を見極め,未利用不動産を利活用して戦略的に場所の価値を高めることが不可欠となる.その際には,高齢化,人口流出,共働き世帯の増加,公共交通網の縮小など,地方都市固有の文脈をふまえることも必要である.本シンポジウムで報告する未利用不動産の活用事例からは,以下の2つの可能性が示唆される.第1に,PPP/PFIや不動産証券化などの市場原理を導入して介護施設や商業施設を開発した事例のように,「低未利用状態でも中心市街地であれば新たな投資スキームを導入することで価値が見出される」という可能性である(菊池報告,佐藤報告).第2に,都市的環境にありながら相対的に地代の安い未利用不動産では,リノベーションによって新規参入者の経営が成立し,賑わいが生まれ,そこに新しい社会関係が構築されるというように,「中心市街地で低未利用状態だからこそ価値が生まれる」という可能性である(久木元報告,武者報告).とはいえ,これによってすべての地方都市が再生にむけて動き出すわけではない.各都市の立地や人口のポテンシャルを考慮すれば,どこかに〈閾値〉はあるはずであり,選択可能な戦略も異なってくる(箸本報告,駒木報告).未利用不動産の利活用と新しい幸福論本シンポジウムで議論する未利用不動産を切り口とした中心市街地再生論は,同じ再生を目的としながらも,かつてのような国の補助事業に従って計画されたエリア包括的な再生論とは異なる.未利用不動産を利活用を通じて,それぞれの主体が中心市街地という場所の特性をあらためて構想し,商業やオフィスの機能に限らず,居住,福祉,子育てなどの機能を取り込みながら,周辺エリアの価値を高めていく.それは単なる商業振興でもなく,都市基盤整備でもない,個別物件の再生から戦略的に考える都市マネジメントの視点である.こうして再構築される中心市街地での生活風景が,かつての百貨店や商店街が提供した「ハレの場」や郊外における「庭付き一戸建て」に代わる幸福論となり得るのか,コンパクトシティの成否はこの点にかかっているように思われる.
著者
佐藤 正志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.131-150, 2010-03-01 (Released:2012-01-31)
参考文献数
43
被引用文献数
1

地方自治体は現在,行財政運営の効率化の手段の一つとして公共サービス民営化を進めているが,自治体の地域特性に起因して民営化導入は地域差が見られる.特に周辺地域の自治体は専門サービス業者の不足を中心に,民営化導入は困難である点が指摘されてきた.本研究は青森県三戸町の包括業務委託を事例に,周辺地域の自治体の地域特性に応じた民営化後のサービス供給体制の変化とその要因を考察した.三戸町の包括業務委託ではサービス内容の維持と,サービス供給に携わる現業部門従業者の増加が進められた.一方で,包括業務委託の目的の一つである経費削減は進んでいない.三戸町では委託開始後,町と民間企業との間で長期的なサービス運営の協力体制の構築を行う協働的関係が築かれる一方で,町がサービス内容の設定を行い続けている.こうした委託方式や運営が採られた理由として,雇用機会の確保とサービスの持続の二点を町が重視したことが大きい.
著者
佐藤 正志
出版者
摂南大学経営学部
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営学部論集 (ISSN:13402617)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.15-34, 2014-02

革新官僚としての岸信介は、その卓抜した思考能力から戦間期における資本主義の歴史的変化をいち早く認識し、国家の産業政策としては、学生時代に影響を受けた「国家社会主義」思考と親和性の高いドイツの産業合理化運動さらにナチス統制経済に連なる「ファシズム型」資本主義を選択し、その遂行者となった。彼が商工省で策定した「自動車製造事業法」はその国産化政策を推進する法律であり、ドイツの産業合理化における国家統制のあり方に学び、軍部の意向をも反映したものであった。しかし一方で、岸が経営実務能力を高く評価した鮎川義介の「外資・技術力」導入という「国際協調」的な主張にも賛意を示すなど、経済(経営)合理的思想をも持っていた。しかしながら、岸が鮎川を助けて有効な政策手段を講じたり、行動したわけではなかった。岸は、多層的で柔軟な合理的思考をも有し、官僚としての政策立案能力は卓越していたが、現実には国際関係の悪化や軍部の外資排除の意向を前にして、主体的で責任を有した行動を行ったとは言い難いのである。
著者
佐藤 正志
出版者
日本農業史学会
雑誌
農業史研究 (ISSN:13475614)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.17-27, 2007 (Released:2017-03-23)

Indigo production grew in Tokushima Prefecture which was the biggest indigo producing district in the first half of the Meiji period through the development of the fiber industry. However, due to the inflow of Indian indigo and the rise in the price of manure, indigo work farmers became indigence and the number of people who tried to migrate to Hokkaido began increasing. As a result, from 50,000 to 60,000 people migrated from Tokushima Prefecture during Meiji period. Kousansha was established by ABE Okindo and TAKIMOTO Goro brothers in 1881. Kousansha was the company where farmers from Tokushima, who were skillful in indigo cultivation and processing, settled in the form of a group and manufactured blue indigo. In the latter half of Meiji era, ABE Okindo, who is the foundation person of Kousansha became a typical entrepreneur in Hokkaido. The purpose of this research is to explain the role of which indigo industry has made in the process of the emigration to Hokkaido, which was done in the turning point of the history when modernization and industrialization started. The object of the research is the management history of Kousansha. In the research, "the diary", written for field investigations for the reclaimed land selection which ABE went for in 1881, is analyzed to prove the indication of Mr. YUI Tsunehiko that "many-sided cooperation between the entrepreneurs" relations were seen in the industrialization process of Japan. By this analysis, it became obvious that the ABE's success was caused by forming strong connections between Hachisuka Mochiaki, the former lord and entrepreneurs, from the same prefecture as KONDO Renpei, the manager of Mitsubishi Company. He made use of these relationships well.
著者
佐藤 正志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.65-88, 2014 (Released:2014-11-29)
参考文献数
48

本稿では,「企業立地促進法」の基本計画策定過程の検討を通じて,地方分権下の地域産業政策形成において,政府間関係が果たす役割と課題を考察した.全国的な企業立地促進法の計画策定状況と四日市市,北上市の計画形成過程を検討した結果,都道府県が依然として主導的な役割を果たしていたことが明らかになった.一方で市町村は,過去に地域産業政策の策定に携わった経験を持つ自治体は独自に計画を策定していた反面,水平的関係を通じた政策情報の交換はみられず,他の市町村は補完的な役割にとどまり計画内容には大きな影響を及ぼしていなかった.
著者
佐藤 正志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.216-216, 2010 (Released:2010-06-10)

1.はじめに 現在の日本においては,公部門の財政の縮小を狙いとした行財政改革が国の主導によって推進されている.地方行財政改革では NPM(New Public Management)と呼ばれる,効率化策と同時に,参加する主体も民間企業に限定されず,住民やNPOといった非営利組織との協働を図ることによって新たな公共空間の形成を目指す,公民連携の概念の導入が進められている. しかし,国によって進められている公共経営の方針転換が全国の自治体で画一的に導入されるわけではないと考えられる.各自治体は,内在する社会経済構造や,政治構造といった地域特性に応じて公共経営を展開するため,国の政策の受容は地域特性に応じて異なると考えられる. この点を踏まえ,本研究では,国が進めた行財政改革策が地方自治体によってどのように受け入れられているのか,導入状況や連携の構築状況の地域差を把握することによって,地域特性に応じた地方行財政改革の影響を予察する. 対象として,地方行財政改革の中で新たに導入され,行政と非政府組織の間での連携による公共経営を目指した「指定管理者制度」を取り上げる. 2.指定管理者制度の特徴と自治体での導入状況 指定管理者制度は,2003年9月に地方自治法を改正する形で導入された,公の施設管理運営に関する新たな公民連携の手法である.指定管理者制度の特徴として,(1)行政または公的な目的を持つ団体に限定されていた施設管理運営を,民間企業やNPO法人でも可能にした点,(2)民間企業やNPO法人が,サービスや料金を自由に設定できるように変更した点があげられる.すなわち,施設運営において民間企業やNPO法人を導入することで,効率化とサービスの効果の向上を両立させることを目指した策である. 本発表では,日経産業消費研究所が実施した2006年4月1日付調査「自治体における指定管理者制度導入の実態」を用いて,全国の都市および東京特別区715市区での導入動向を確認する.まず,各市区での導入状況および民間企業,NPO法人の選定状況を確認すると,導入状況やNPO法人選定状況では大都市圏に集中する傾向は見られなかった.対して,民間企業では,首都圏を中心にした大都市圏で選定比率が高まる傾向が見られた.この動向を踏まえると,民間企業の選定においては都市圏内での企業の存在が大きく選定に影響を及ぼすと考えられる. 3.自治体別の民間企業・NPOの選定状況と域内外関係 次に,本発表で対象とする都市を,都市圏および人口数別に9に類型化し,各類型の民間企業およびNPOの選定先の状況を確認した.結果として,三大都市圏をはじめとした大都市圏の都市では,近接した地域の企業との取引を行っていることが示される.反面,県庁所在地を中心に,地方都市では,100km以上離れた民間企業を選定する比率が高まることが示される(図1).この背景には,地方都市における専門サービス業者を中心とした民間企業の不在が同一市区外の企業との取引に影響していると考えられる. 他方,NPOの選定状況は,90%以上の選定先が同一市区内である.同一市区外のNPO法人の選定は,特定のNPO法人に限定されており,大半が地域に根ざした活動に対応していることが示される. こうした現況を踏まえるならば,分権化の理念において自律的かつ地域に見合ったサービスへの転換が図ることが望ましいとされる.しかし,実態としては専門分野を中心に域外への民間企業へ依存している点を踏まえると,他律的な公共経営に陥る可能性がある点が示される.