著者
四柳 宏 田中 靖人 齋藤 昭彦 梅村 武司 伊藤 清顕 柘植 雅貴 高橋 祥一 中西 裕之 吉田 香奈子 世古口 悟 高橋 秀明 林 和彦 田尻 仁 小松 陽樹 菅内 文中 田尻 和人 上田 佳秀 奥瀬 千晃 八橋 弘 溝上 雅史
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.117-130, 2012 (Released:2012-03-07)
参考文献数
69
被引用文献数
3 3

B型肝炎ワクチンは諸外国では乳児期に全員が接種を受けるユニバーサルワクチンである.しかしながら我が国では任意接種(セレクティブワクチネーション)となっており,母児感染防止の場合のみワクチン接種が健康保険でカバーされている. こうしたセレクティブワクチネーションのみでは我が国のB型肝炎を制圧することは困難である. 本稿では平成23年6月2日に第47回日本肝臓学会(小池和彦会長)において行われたワークショップ「B型肝炎universal vaccinationへ向けて」の内容を紹介しながら,ユニバーサルワクチネーションに関してまとめてみたい.

6 0 0 0 OA 骨格筋の構造

著者
齋藤 昭彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.49-53, 2003 (Released:2003-05-01)
参考文献数
2
被引用文献数
3 4

骨格筋の生体における機能を理解する上では,骨格筋のマクロおよびミクロ構造に関する基礎的な知識が必要である。また,それらの骨格筋を構成する各構造が生体においてどのように機能しているかに関して整理することが有用である。本稿ではまず最初に骨格筋の構造を復習したのち,骨格筋の構築学的要素がどのように筋の機能や特性を決定しているかについて述べる。
著者
園田 博文 中村 孝二 齋藤 昭子 横山 優子
出版者
山形大学
雑誌
山形大學紀要. 教育科學 (ISSN:05134668)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.57-81(415-439), 2009-02-15

要旨 本稿は、散在地域の典型例とも言える山形県を例として、詳細な実態調査を行い、現状を示し、課題や問題点を指摘したものである。まず、JSL児童生徒(JSLとは、Japanese as a Second Languageの略で「第二言語としての日本語」を指す)の定義を明確にした上で、散在地域における小学校、中学校、高等学校の現状を示し、課題を提示した。関連して、ボランティア団体の行動についても考察を行った。今回の実態調査では、文部科学省が行っている調査だけからは見えてこない面を指摘することが出来、問題の所在が明らかになった。今後、より正確な実態の把握に努め、分析を進めてしいく。本研究を拠り所として、各方面において、実際に問題を解決していく取り組みがなされることを望む次第である。
著者
齋藤 昭彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-6, 2007 (Released:2007-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
8 5

四肢が機能するためにはその土台となる体幹の動的安定性が求められる。体幹の動的安定性は他動組織,自動組織,神経系組織の統合的作用により維持されている。本稿では,体幹の動的安定性に極めて重要であるとされている体幹深部のローカル筋の機能に注目し,その評価方法およびトレーニング方法について述べる。
著者
日置 幸介 齋藤 昭則
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

地震や火山噴火に伴う電離圏擾乱はドップラー観測などによって以前から知られていたが、我が国の稠密GPS観測網であるGEONETによって電離圏全電子数(TEC)として手軽かつ高時間空間分解能で観測できるようになり、多くの知見が得られた。その一つが2003年9月26日の十勝沖地震に伴う電離圏擾乱で、震源から上方に伝搬してきた音波が、電子の運動と地球磁場の相互作用であるローレンツ力を受けて生じる擾乱伝搬の方位依存性が明らかになった。また正確な伝搬速度が初めて求められ、この擾乱が地表を伝わるレーリー波や大気の内部重力波ではなく、音波によるものであることが明快に示された。これらの知見を基礎に、スマトラ地震による電離圏擾乱から震源過程を推定するという世界初の試みを行った。その結果地震計では捕らえられないゆっくりしたすべりがアンダマン諸島下の断層で生じたことを見出した。その論文は米国の専門誌JGRで出版された。また2004年9月1日の浅間山の噴火に伴う電離圏擾乱が確認された。これは火山噴火に伴う電離圏擾乱の初めてのGPSによる観測である。アメリカの炭坑でエネルギー既知の発破を行った際に生じた電離圏擾乱が過去に報告されているが、それとの比較により2004年浅間山噴火のエネルギーを推定することができた。この研究は米国の速報誌GRLに掲載された。さらに太陽面爆発現象に伴って生じる電離圏全電子数の突発的上昇のGPSによる観測結果をまとめたものを測地学会誌で報告した。今年度は、2006年1月に種子島から打ち上げられたH-IIAロケットの排気ガスの影響による電離圏の局地的消失現象をGEONETで観測した結果およびそのモデルをEPS誌に発表した。電離圏の穴は電波天文学に応用可能であるだけでなく、GPS-TEC法による穴の探査は地球に衝突する彗星の発見にも応用できる将来性のある技術である。また地震学会の広報誌である「なゐふる」に地震時電離圏擾乱の解説文を掲載して、その普及に努めた。
著者
齋藤 昭彦
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.85-90, 2005 (Released:2005-06-30)
参考文献数
1

老人保健施設や地域で活躍する理学療法士が増えるなかで,理学療法士には直接的に対処できない医学的問題を抱える患者に遭遇する機会が増加している。諸外国ではすでに理学療法士による独立診療が行われている。このような状況の中で,リスクを把握し,回避するために骨関節系疾患と同一症状を呈するほかの医学的疾患とを鑑別する能力が求められている。患者の病歴,主観的訴え,客観的所見が筋骨格系以外の問題の存在を示唆し,医学的フォローアップが必要であることを同定する能力を理学療法鑑別診断という。理学療法士は患者の訴えを包括的にとらえ,理学療法の禁忌となる症状や理学療法士の知識の範囲を超える病態を示唆する症状がみられる場合には医師に報告しなければならない。本稿では整形外科領域でのリスクを回避するための理学療法鑑別診断について記載する。
著者
下島 裕美 三浦 雅文 門馬 博 齋藤 昭彦 蒲生 忍
出版者
杏林医学会
雑誌
杏林医学会雑誌 (ISSN:03685829)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.3-10, 2015 (Released:2015-03-30)
参考文献数
22

医療チームは,医師,看護師,臨床検査技師,理学療法士,作業療法士,臨床工学士,放射線技師,薬剤師,介護士,社会福祉士など多様な職種から構成される。更には患者とその家族もまた自身の治療プロセスの決定に参加する権利を持っている。多様な価値観をもった人々が一つのチームとして一人の患者の治療にあたるためには,自分の視点と他者の視点の共通点・相違点を認識した上で,患者にとって最善の意思決定を俯瞰的な視点で追及する姿勢が必要であろう。この俯瞰的な視点の教育には,心理学におけるメタ認知と呼ばれる概念が有効であると考えられる。そこで本論文では,医療倫理における意思決定を促進する方法である4ボックス法(4 box method, 四分割法)をメタ認知という視点から考察する。個人レベルと集団レベルにおけるメタ認知教育の効果と,熟達化におけるメタ認知教育の効果を提案する。
著者
齋藤 昭子 巣内 秀太郎
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.101-112, 2022 (Released:2022-10-06)
参考文献数
38

HIV感染に対するMen who have sex with men (MSM)の脆弱性は、広く知られるようになったが、社会的立場の弱さから必要なサービスへのアクセスが制限されている。そこで、青年海外協力隊(当時)2名で、MSMを対象とした性感染症予防のためのコンドーム使用を促進するワークショップを立案した。ヘルスビリーフモデルを参考に、コンドーム使用のメリット(感染予防)がデメリットを上回れるよう、性感染症の脅威やコンドーム使用の有効性を認識し、正しい使用方法の習得を促す内容とした。肛門性交などMSMの性行動を考慮した内容にし、ファシリテータはMSMの自助グループのメンバーが担った。  ケニア共和国キリフィ郡で2013年11月から2014年2月にかけて、2時間の1回完結型のワークショップを全13回実施した。会場は、MSM自助グループの活動拠点である公立病院を使用した。スノ—ボールサンプリング法でリクルートし、合計170名が参加した。介入前後で実施した自記式の質問紙調査の結果(有効回答数139)、参加者の平均年齢は26.6歳(SD±6.69)、性自認は男性133名、女性6名で、性指向はゲイ33名、バイセクシャル90名、その他15名、未回答が1名だった。ワークショップの実施前後で、対象者の自尊心、安全な性行為への意思と知識の各平均点が、それぞれ0.83点(p=0.0123)、0.75点(p=0.0006)、0.33点(p=0.0024)上昇した。参加者の感想からは、単に研修内容が身になった、知識を得たというものばかりでなく、MSM向けに用意されたワークショップであることを理解し、「私たち」のコミュニティにとって利益のあるものと受け取った参加者も確認できた。  今回の介入では、170名と多くのMSM参加者を得ることができ、参加者の自尊心・安全な性行為の意思・知識を高めることができた。本介入で多くの参加者を得るために行った工夫は、1)MSMにとって安心安全な環境づくりをすること、2)ピアファシリテータの協力を得ること、3)MSM同士で声を掛け合うスノーボールサンプリング法で参加者をリクルートすること、4)参加日程の選択肢を多く作ること、そして5)MSMの特徴的な性行動(肛門性交など)を踏まえた内容にすること、である。本介入で得られた知見が、他地域においても参加者獲得の一助になると考える。
著者
津川 卓也 齋藤 昭則 大塚 雄一 西岡 未知 中田 裕之 齋藤 享
出版者
独立行政法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

国内外のGPS受信機網データから、電離圏全電子数や電離圏擾乱指数、GPSロック損失率等の2次元マップを作成し、データベース化した。これらのデータを用い、伝搬性電離圏擾乱やプラズマバブル等の電離圏擾乱の統計的性質を明らかにすると共に、衛星測位への影響について調べた。日本上空については、全電子数リアルタイム2次元観測を開始し、東北地方太平洋沖地震後に津波波源から波紋状に拡がる電離圏変動の詳細を世界で始めて捉えた。
著者
村上 幸士 齋藤 昭彦 永井 康一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AcOF2028, 2011

【目的】近年、スポーツ現場や医療現場において、体幹の安定化を目的とした体幹深部筋群のトレーニングやそのメカニズムを解明するための研究が注目されている。また、リアルタイムに深部組織を、非侵襲的に確認できる超音波診断装置を使用した腹横筋の収縮を筋厚としてとらえる研究も行われている。その一方、腹横筋の収縮に伴う筋膜の変化や腰痛との関連性を比較する研究は少ない。本研究では、腹横筋の収縮による胸腰筋膜の変化を腰痛の有無にて比較することを目的として、腹横筋の筋厚変化と筋・筋膜移行部の変化を同一画像にて検証した。<BR>【方法】研究に対して、同意を得られた男性51名(22.9±4.0歳)を対象とした。まず、腰痛評価表にて、腰痛に対する問診・アンケートを行い、腰痛にて受診経験のある群(以下、A群)、ときどき腰痛を認めるが受診経験のない群(以下、B群)、腰痛を経験したことのない群(以下、C群)に分類した。<BR>次に、超音波診断装置(東芝社製NEMIO SSA-550A)での測定は、臍レベルに統一し、腹部周囲にマーキングを行い、画像での確認をもとに最終的なプローブ(7.5MHz、リニア形PLM-703AT)位置を決定した。測定肢位は腹臥位とし、安静時は腹横筋の先端(筋・筋膜移行部)を画像右端に合わせ、収縮時に変化する腹横筋をイメージングし、動画画像としてDVDに記録した。この時、腹横筋の収縮は、口頭指示および超音波画像による視覚的フィードバックにて行った。なお、すべての測定は左右行い、くじ引きにて順不同に実施した。<BR>記録した動画画像より画像編集ソフトWin DVDを用いて、静止画像を抽出し、画像解析ソフトImage Jを用いて、安静時および腹横筋収縮時の筋厚および画像左端と腹横筋先端との距離を測定し、変化量を算出した。これらの変化量に対し、一元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を用い、各群を比較した。統計処理はSPSS version 10.0J for Windowsを用い、有意水準を5%とした。<BR>【説明と同意】得られたデータは研究責任者が責任を持って管理し、倫理的な配慮や研究内容・目的・方法および注意事項などを記載した研究同意書を作成した。この研究同意書を元に、個別に研究責任者が被験者に対し説明を行い、被験者が十分に研究に対し理解した上で必ず同意を求め、直筆での署名を得た。<BR>【結果】腰痛に対する問診の結果、被験者51名は、A群20名、B群17名、C群14名に分類された。左側、右側ともに、筋厚の変化量は有意差を認めなかった。一方、腹横筋先端の移動距離の変化量は、左側:A群2.0±1.6mm、B群5.1±2.3mm、C群5.1±1.7mm、右側:A群2.5±2.3mm、B群5.2±2.2mm、C群6.0±1.9mmであり、両側ともにA群に対し有意差を認め、いずれも低値を示した。<BR>【考察】腹横筋は、深部(中心部)に位置し脊椎分節を安定させるローカル筋システムに分類され、後方では胸腰筋膜に、前方では腹部筋膜に停止し、その筋膜系を介して腰椎骨盤の安定性に影響を与える。また、胸腰筋膜の中層の線維は腰椎横突起に収束し、椎骨の動きは筋膜の長さの変化に関係し、筋・筋膜移行部を外側方向に引く(緊張増加)ことで前額面上の運動をコントロールする。この胸腰筋膜の緊張には腹横筋の収縮が関与する。<BR>本研究の結果、B群およびC群では腹横筋の収縮(筋厚増加)に伴い筋・筋膜移行部の移動距離も大きくなり、胸腰筋膜は側方に引かれた。しかし、A群では、腹横筋の収縮(筋厚増加)に伴う筋・筋膜移行部の外側方向への動きが低下していた。この要因として筋膜自体の可動性の低下が考えられる。つまり、腰痛にて受診経験のある群では、腹横筋の収縮がみられても、胸腰筋膜を外側へ引くことができず、筋膜を介した脊椎の分節的安定性を得ることができない可能性が示唆された。今後は、腹横筋のトレーニングを効果的に行う目的でも、腰部(腰胸筋膜)へのアプローチが必要と考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】最近では、超音波診断装置での測定が有用である腹横筋の筋厚測定などの体幹深部筋に関する研究が注目されている。しかし、胸腰筋膜を介して脊椎の分節的安定性に作用する腹横筋の収縮による筋厚増加を、胸腰筋膜の変化と同一画像にて比較する研究はあまり行われていない。さらに、腹横筋と筋膜の関係や腰痛との関連性を検討した研究は少ない。<BR>よって、同一画像にて測定した腹横筋の収縮による胸腰筋膜の変化と腰痛との関連性を明らかにすることは、腰痛の1つの影響因子や病態の把握がより明らかになると考えられる。今後、超音波診断装置にて腹横筋の筋厚を測定する時に、加えて、腹横筋の先端の移動距離まで測定を行い、胸腰筋膜の動きも分析することは,腰痛の影響因子や脊椎の分節的安定性を考える上で有用である。以上を本研究にて明らかにできた。<BR>
著者
村上 幸士 齋藤 昭彦 永井 康一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AcOF2028, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】近年、スポーツ現場や医療現場において、体幹の安定化を目的とした体幹深部筋群のトレーニングやそのメカニズムを解明するための研究が注目されている。また、リアルタイムに深部組織を、非侵襲的に確認できる超音波診断装置を使用した腹横筋の収縮を筋厚としてとらえる研究も行われている。その一方、腹横筋の収縮に伴う筋膜の変化や腰痛との関連性を比較する研究は少ない。本研究では、腹横筋の収縮による胸腰筋膜の変化を腰痛の有無にて比較することを目的として、腹横筋の筋厚変化と筋・筋膜移行部の変化を同一画像にて検証した。【方法】研究に対して、同意を得られた男性51名(22.9±4.0歳)を対象とした。まず、腰痛評価表にて、腰痛に対する問診・アンケートを行い、腰痛にて受診経験のある群(以下、A群)、ときどき腰痛を認めるが受診経験のない群(以下、B群)、腰痛を経験したことのない群(以下、C群)に分類した。次に、超音波診断装置(東芝社製NEMIO SSA-550A)での測定は、臍レベルに統一し、腹部周囲にマーキングを行い、画像での確認をもとに最終的なプローブ(7.5MHz、リニア形PLM-703AT)位置を決定した。測定肢位は腹臥位とし、安静時は腹横筋の先端(筋・筋膜移行部)を画像右端に合わせ、収縮時に変化する腹横筋をイメージングし、動画画像としてDVDに記録した。この時、腹横筋の収縮は、口頭指示および超音波画像による視覚的フィードバックにて行った。なお、すべての測定は左右行い、くじ引きにて順不同に実施した。記録した動画画像より画像編集ソフトWin DVDを用いて、静止画像を抽出し、画像解析ソフトImage Jを用いて、安静時および腹横筋収縮時の筋厚および画像左端と腹横筋先端との距離を測定し、変化量を算出した。これらの変化量に対し、一元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を用い、各群を比較した。統計処理はSPSS version 10.0J for Windowsを用い、有意水準を5%とした。【説明と同意】得られたデータは研究責任者が責任を持って管理し、倫理的な配慮や研究内容・目的・方法および注意事項などを記載した研究同意書を作成した。この研究同意書を元に、個別に研究責任者が被験者に対し説明を行い、被験者が十分に研究に対し理解した上で必ず同意を求め、直筆での署名を得た。【結果】腰痛に対する問診の結果、被験者51名は、A群20名、B群17名、C群14名に分類された。左側、右側ともに、筋厚の変化量は有意差を認めなかった。一方、腹横筋先端の移動距離の変化量は、左側:A群2.0±1.6mm、B群5.1±2.3mm、C群5.1±1.7mm、右側:A群2.5±2.3mm、B群5.2±2.2mm、C群6.0±1.9mmであり、両側ともにA群に対し有意差を認め、いずれも低値を示した。【考察】腹横筋は、深部(中心部)に位置し脊椎分節を安定させるローカル筋システムに分類され、後方では胸腰筋膜に、前方では腹部筋膜に停止し、その筋膜系を介して腰椎骨盤の安定性に影響を与える。また、胸腰筋膜の中層の線維は腰椎横突起に収束し、椎骨の動きは筋膜の長さの変化に関係し、筋・筋膜移行部を外側方向に引く(緊張増加)ことで前額面上の運動をコントロールする。この胸腰筋膜の緊張には腹横筋の収縮が関与する。本研究の結果、B群およびC群では腹横筋の収縮(筋厚増加)に伴い筋・筋膜移行部の移動距離も大きくなり、胸腰筋膜は側方に引かれた。しかし、A群では、腹横筋の収縮(筋厚増加)に伴う筋・筋膜移行部の外側方向への動きが低下していた。この要因として筋膜自体の可動性の低下が考えられる。つまり、腰痛にて受診経験のある群では、腹横筋の収縮がみられても、胸腰筋膜を外側へ引くことができず、筋膜を介した脊椎の分節的安定性を得ることができない可能性が示唆された。今後は、腹横筋のトレーニングを効果的に行う目的でも、腰部(腰胸筋膜)へのアプローチが必要と考える。【理学療法学研究としての意義】最近では、超音波診断装置での測定が有用である腹横筋の筋厚測定などの体幹深部筋に関する研究が注目されている。しかし、胸腰筋膜を介して脊椎の分節的安定性に作用する腹横筋の収縮による筋厚増加を、胸腰筋膜の変化と同一画像にて比較する研究はあまり行われていない。さらに、腹横筋と筋膜の関係や腰痛との関連性を検討した研究は少ない。よって、同一画像にて測定した腹横筋の収縮による胸腰筋膜の変化と腰痛との関連性を明らかにすることは、腰痛の1つの影響因子や病態の把握がより明らかになると考えられる。今後、超音波診断装置にて腹横筋の筋厚を測定する時に、加えて、腹横筋の先端の移動距離まで測定を行い、胸腰筋膜の動きも分析することは,腰痛の影響因子や脊椎の分節的安定性を考える上で有用である。以上を本研究にて明らかにできた。
著者
齋藤 昭
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.57, pp.9-14, 1988-05-10 (Released:2010-05-07)
参考文献数
8

当初与えられた副題は「その現代的なあり方を求めて」であった。〈現代的〉という場合当然グローバルな視野が要請されるが、ここではすぐれてわが国の教育現実を課題とする。そのため副題を右のように変更し、以下の諸点からその状況との対応で〈人間像〉について考察するものとする。
著者
齋藤 昭彦
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.117-123, 2000 (Released:2007-03-29)
参考文献数
13

神経系は全身に分布し,物理的,電気的,化学的手段によって情報を伝達している。神経系は四肢,体幹に分布するため,身体運動に対して柔軟に適応するメカニズムを有している。このようなメカニズムは外傷等により障害され,痛みや可動域障害などの原因となる。従来の理学療法では神経系は主として検査・評価対象であったが,神経系モビライゼーションでは病態に応じた積極的なアプローチが行われる。本論では,神経系機能障害の病態について概説し,神経系の機能障害に対する検査,治療について記載する。