著者
木村 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.737-740, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
7

The Japanese Society of Neurology, founded in 1960, suffered an initial set back internationally primarily because of the language barrier. It gained a quick, and justifiable recognition after the 12th World Congress of Neurology held in Kyoto (1981), and now enjoys an indisputable reputation in the field of neuroscience. Clinical neurophysiology lead the world from the inception with the early formation of study group in 1951 as the predecessor of the current Japanese Society of Clinical Neurophysiology. In both fields, however, clinical training has fallen behind research achievements with limited resources and a shortage of teaching staff. On the occasion of 50th anniversary of our society, we must seek the sovereignty of neurology as an independent discipline as advocated by the World Federation of Neurology. We must also participate in global affairs with confidence despite a perceived language barrier to promote neurology world wide.
著者
木村 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.792-797, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

日本神経学会は1960年に設立されましたが,当時神経学を学べる施設は,東大,新潟大,九大などに限られていました.僕は,のちに京大総長を務められた平沢興先生の錐体外路系に関する解剖講義に憧れてこの道を志し,インターン修了後すぐ渡米しましたが,1)神経系が人体のもっとも重要な,人間が人間たるゆえんである脳の機能を主要な対象としていること,2)複雑難解にもかかわらず理路整然とした学問で,解剖学の知識に基づいて病巣の局在が可能であること,3)新しい領域で,将来への展望が明るいことなどにも強く魅かれました.半世紀近くを経た今も思いは同じですが,これに加えて分子生物学をはじめとする神経科学分野の目覚しい発展により,病態の確立のみならず以前は対症療法に甘んじていた多くの疾患にも新しい治療法が続々と開発され,4)患者の治る神経内科,が神経学の新たな魅力となり,これは僕達のスローガンでもあります.神経学の国内外の進歩にともない,この分野を目指す若い先生方への期待は日増しに大きくなってきました.わが国の神経学は僕がアイオワ滞在中に飛躍的な発展を遂げ,これに貢献された多くの先達が新しい世代に求めるところは,先生方の個人的な経験を踏まえ,千差万別かと思います.この機会に日米で神経学を学んだ者の一人として,僕の次世代への期待を纏めますと,1)国際的な視野で仕事をする,2)診断に役立つ新しい技術を開発する,3)臨床に直結する基礎研究を展開する,そしてそのすべてを集結して4)患者の治る神経内科をめざすことです.いずれも実現可能な目標ですが,いうはやすく,おこなうは難しの部類です.とくに,実力に見合った国際的な評価を確立するのはわれわれがもっとも不得手とするところで,僕自身の体験でも,海外の学会活動で欧米の学者と互角にわたり合うのはかなり難しく,常に意識的な努力が必要と実感しています.国際学会での論争で,実力は伯仲しているのにいつもこちらに分が悪いのは,主に発表態度の差によるものと考えられます.我が国は儒教の影響もあり,古くから「知るを知らざるとなすは尚なり」の考えが根強く,10を知って1を語るのが良いとされます.その逆にアメリカ人は,幼稚園での「Show And Tell」を手始めに,中学校で習う「Five Paragraph Essay」で鍛え上げられ,1を知って10を語る輩が多いようです.また,日本人は完璧主義ですから,とちっても平気な欧米人とはちがいアドリブの発表が苦手です.英語でも上手く話せなければ,我は黙して語らずと達観している人もありますが,外国語ですからBrokenでも当たり前です.僕の国際性の定義は,1)実力をつけて,あとは対等と自信をもつ,2)知ってることはどんどんいう,3)失敗しても愛嬌と思って気にしない,4)英語は意味がわかればよいので,あえて流暢に喋ろうとしない,ことです.若い先生方がこれからの国際舞台でますます活躍されることを願って止みません.
著者
滑川 将気 荻根沢 真也 木村 暁夫 下畑 享良 小宅 睦郎 藤田 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001713, (Released:2022-04-26)
参考文献数
15

症例は,61歳男性.2年前と6か月前に全身けいれん発作を起こし,5ヶ月前からの歩行障害が悪化して入院した.認知機能低下,下肢痙性と体幹失調,自律神経障害を認めた.髄液細胞増多があり,MRIで大脳半卵円中心の点状造影効果を伴う白質病変と長大な頸髄病変を認めた.ステロイドパルス療法で軽快したが2ヶ月後に再燃し,新たに頸髄側索の病変を認めた.髄液の抗glial fibrillary acidic protein(GFAP)α抗体が陽性で,自己免疫性GFAPアストロサイトパチー(GFAP-A)と診断した.GFAP-Aは,亜急性で予後良好の経過が多いとされるが,慢性難治性の経過をたどった.
著者
小野寺 理
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.750-752, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

神経細胞の機能を維持するために,神経細胞の内部環境を維持する品質管理機構が重要である.とくに蛋白質と核酸の品質管理機構と神経変性疾患との関係が注目されている.代表的な優性遺伝性脊髄小脳変性症であるポリグルタミン病では,蛋白質の品質管理機構の異常が推察されている.一方,劣性遺伝性脊髄小脳変性症では核酸品質管理機構の異常が推察されている.神経細胞のDNAは活性酸素などにより常に障害をうけ損傷している.損傷部の3'末断端はリン酸基,ホスホグリコール酸基または不飽和アルデヒド基となっており,修復のためには,水酸基に置換(エンド・プロセッシング)される必要がある.われわれは劣性遺伝性脊髄小脳失調症の原因遺伝子アプラタキシンの生理機能を検討し,この蛋白質がin vitroにおいて3'末断端のリン酸基およびホスホグリコール酸基を除去し水酸基とする活性を持ち,これにより損傷部のエンド・プロセッシングに関与していることを示した.このことから,本症の病態機序としてDNA損傷の蓄積の関与を示唆し,脊髄小脳変性症での核酸品質管理機構の重要性を示した.
著者
荒川 いつみ 小栗 卓也 中村 友紀 櫻井 圭太 湯浅 浩之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.22-26, 2022 (Released:2022-01-28)
参考文献数
11
被引用文献数
1

73歳女性.夜間睡眠中の大声の寝言や日中覚醒時の異常言動,会話中に急に反応が乏しくなるエピソードが月単位で相次いで出現.他院にてレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies,以下DLBと略記)と診断されるも,これらの頻度が徐々に増加したため,当院にて精査入院.終夜睡眠ポリグラフィの“筋活動の低下を伴わないレム睡眠”および18F-FDG PETの辺縁系糖代謝亢進より,レム睡眠行動異常症を合併した辺縁系脳炎と診断.ステロイドパルス療法2コース実施後,症状は徐々に軽減した.本例は後に血清抗voltage-gated potassium channel(VGKC)複合体/leucine-rich glioma-inactivated protein 1(LGI1)抗体陽性が判明した.本抗体関連辺縁系脳炎は臨床像がDLBに重なることがあり,診断に際し注意が必要である.
著者
木村 淳
出版者
Societas Neurologica Japonica
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.792-797, 2008-11-01
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

日本神経学会は1960年に設立されましたが,当時神経学を学べる施設は,東大,新潟大,九大などに限られていました.僕は,のちに京大総長を務められた平沢興先生の錐体外路系に関する解剖講義に憧れてこの道を志し,インターン修了後すぐ渡米しましたが,1)神経系が人体のもっとも重要な,人間が人間たるゆえんである脳の機能を主要な対象としていること,2)複雑難解にもかかわらず理路整然とした学問で,解剖学の知識に基づいて病巣の局在が可能であること,3)新しい領域で,将来への展望が明るいことなどにも強く魅かれました.半世紀近くを経た今も思いは同じですが,これに加えて分子生物学をはじめとする神経科学分野の目覚しい発展により,病態の確立のみならず以前は対症療法に甘んじていた多くの疾患にも新しい治療法が続々と開発され,4)患者の治る神経内科,が神経学の新たな魅力となり,これは僕達のスローガンでもあります.神経学の国内外の進歩にともない,この分野を目指す若い先生方への期待は日増しに大きくなってきました.わが国の神経学は僕がアイオワ滞在中に飛躍的な発展を遂げ,これに貢献された多くの先達が新しい世代に求めるところは,先生方の個人的な経験を踏まえ,千差万別かと思います.この機会に日米で神経学を学んだ者の一人として,僕の次世代への期待を纏めますと,1)国際的な視野で仕事をする,2)診断に役立つ新しい技術を開発する,3)臨床に直結する基礎研究を展開する,そしてそのすべてを集結して4)患者の治る神経内科をめざすことです.いずれも実現可能な目標ですが,いうはやすく,おこなうは難しの部類です.とくに,実力に見合った国際的な評価を確立するのはわれわれがもっとも不得手とするところで,僕自身の体験でも,海外の学会活動で欧米の学者と互角にわたり合うのはかなり難しく,常に意識的な努力が必要と実感しています.国際学会での論争で,実力は伯仲しているのにいつもこちらに分が悪いのは,主に発表態度の差によるものと考えられます.我が国は儒教の影響もあり,古くから「知るを知らざるとなすは尚なり」の考えが根強く,10を知って1を語るのが良いとされます.その逆にアメリカ人は,幼稚園での「Show And Tell」を手始めに,中学校で習う「Five Paragraph Essay」で鍛え上げられ,1を知って10を語る輩が多いようです.また,日本人は完璧主義ですから,とちっても平気な欧米人とはちがいアドリブの発表が苦手です.英語でも上手く話せなければ,我は黙して語らずと達観している人もありますが,外国語ですからBrokenでも当たり前です.僕の国際性の定義は,1)実力をつけて,あとは対等と自信をもつ,2)知ってることはどんどんいう,3)失敗しても愛嬌と思って気にしない,4)英語は意味がわかればよいので,あえて流暢に喋ろうとしない,ことです.若い先生方がこれからの国際舞台でますます活躍されることを願って止みません.<br>
著者
隅蔵 大幸 奥野 龍禎 高橋 正紀 荒木 克哉 北川 一夫 望月 秀樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.224-228, 2013-03-01 (Released:2013-03-23)
参考文献数
25
被引用文献数
2 1

症例は76歳男性である.71歳より耳の奥でカチカチ鳴る音を自覚した.75歳から進行性の歩行障害が出現した.睡眠時も持続する約2 Hzの律動的な口蓋振戦と体幹失調をみとめ,脳MRIでは下オリーブ核のT2異常高信号と肥大,軽度の小脳萎縮をみとめた.近年,孤発性の変性疾患としてprogressive ataxia and palatal tremor(PAPT)という症候群が報告されている.診断にあたっては,多系統萎縮症,脊髄小脳変性症,成人型アレキサンダー病などの鑑別を要するが,本例では否定的でありPAPTに該当すると考えられた.本例の口蓋振戦は症候性と考えられたが,耳クリック音で発症した点が特異であった.
著者
新里 和弘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.663-667, 2020 (Released:2020-10-24)
参考文献数
11
被引用文献数
1

いわゆる心因性の身体症状を呈する高齢患者において,症状の加齢に伴う変化に関して老年精神医学の立場から考察した.近年心因性の身体症状の診断基準はその変更がなされ,より心身症の定義に近づいている.高齢期は身体各臓器の老化現象が進み,脳もその例外ではない.脳機能が全般的に低下していく中で,もとからある精神疾患の症状はその程度が緩和されていくことを臨床的知見からしめした.さらに認知症も加わればその緩和のスピードは早くなる.超高齢化が進むわが国においては,加齢に伴うポジティブな面に着目して対応すべき必要性を述べた.
著者
細川 恭子 宇佐美 清英 梶川 駿介 下竹 昭寛 立岡 良久 池田 昭夫 髙橋 良輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.530-536, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
16
被引用文献数
1

18歳男性,右利き.17歳より,視野全体に長く一本の斜線が入り,その上下で視野がずれて見える,両視野の眼前の光景が波状に見える,視野全体に大きな数個の斑状暗点が出現するなど多彩な視覚症状が生じ,その後に体外離脱体験(out-of-body experience,以下OBEと略記)として,“自分の姿を左後ろから見ている状態”が生じた.症状は1時間持続し頭痛が後続した.頭部MRIで両側後頭葉の軽度萎縮を認めた.本症例は多彩な視覚症状とOBEを呈し,部分てんかん発作との鑑別を要したが,症状が多彩で持続が長いことから前兆のある片頭痛と診断し,少量のバルプロ酸が著効した.OBEを伴う片頭痛は稀に存在する.
著者
野本 信篤 紺野 晋吾 村田 眞由美 中空 浩志 根本 博 藤岡 俊樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.415-417, 2010 (Released:2010-06-24)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

症例は48歳男性である.微熱,食欲低下が1週間続いた後に,頸部の激痛と右側上肢の脱力をみとめた.第3病日に両上肢の脱力,激痛が出現した.肝逸脱酵素の急激な上昇をともなった.右上肢は完全麻痺,左側上肢はMMT3で,深部反射は消失し,神経痛性筋萎縮症と診断した.髄液細胞数2/mm3,蛋白105mg/dl と蛋白細胞解離をみとめ,IgMおよびIgG抗GT1a抗体が陽性であった.抗GT1a抗体は咽頭頸部上腕型のGuillain-Barré症候群との関与が指摘されており,腕神経叢の障害を呈した本症例の臨床所見と一致した.抗GT1a抗体は一次的に病態と関わった可能性と二次的変化である可能性の両者が考えられた.
著者
大草 貴史 庄司 紘史 小栗 修一 中野 輝明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.429-433, 2020 (Released:2020-06-06)
参考文献数
13

関節リウマチの59歳女性で,脳造影MRIにおいて脳軟膜を中心に増強を認め,リウマチ性髄膜炎が疑われクリプトコッカス髄膜炎を合併した症例である.2ヵ月後再発し,抗cyclic citrullinated peptide抗体,クリプトコッカス抗原価などの変動からリウマチ性髄膜炎主体と診断した.リウマチ性髄膜炎にはステロイドパルス4回にとどめ,methotrexateを継続し,クリプトコッカス髄膜炎に対してはliposomal-amphotericin Bおよびfluconazoleを継続し,両髄膜炎の再発はみていない.
著者
鈴木 圭輔
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001490, (Released:2020-08-08)
参考文献数
59
被引用文献数
4

新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019; COVID-19)の大流行に伴い,その対策や感染拡大防止に加え我々の社会的状況も激変しつつある.近年COVID-19に伴う神経症状は稀ではなく,頭痛は主な神経症状として注目されつつある.COVID-19に伴う頭痛の頻度は21臨床研究,8メタアナリシスにより5.6%~70.3%に認めた.一方COVID-19に罹患していない医療従事者などにおける頭痛は11.1%~81.0%にみられた.頭痛の詳細を記載した報告は少なかったが,本稿ではCOVID-19と頭痛の関連においてその頻度,特徴や病態について議論したい.
著者
池田 宗平 藥師寺 祐介 江里口 誠 藤井 由佳 石束 光司 原 英夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.499-504, 2018 (Released:2018-08-31)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

症例は51歳男性である.49歳時の脳梗塞発症1年半後に進行性の認知機能低下,易怒性,幻覚を契機に前医精神科病院へ医療保護入院となった.精神症状以外に小脳性運動失調をみとめ,当科へ転院した.頭部MRIで両側側頭極皮質下にT2高信号域をみとめ,髄液での炎症所見より辺縁系脳炎と考えた.その原因としては梅毒反応が血清と髄液で陽性であることを確認しえたことから神経梅毒と判断した.ペニシリンG大量療法を施行し,精神症状と小脳性運動失調,髄液所見,画像所見はいずれも改善した.若年者において,脳梗塞発症,または慢性進行性の精神症状,小脳性運動失調をきたす原因疾患の一つとして神経梅毒を鑑別にあげておく必要がある.
著者
齊ノ内 信 中村 道三 増田 裕一 大谷 良
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001489, (Released:2020-12-15)
参考文献数
20

症例は86歳女性.調理中に突然出現した複視を主訴に来院した.両眼性複視,両側眼球内転障害と輻湊障害,両側側方注視時に外転眼のみに粗大な単眼性眼振を認めた.入院翌日のMRIで中脳下部背側に拡散低下域を認めた.入院1日半後に尿閉,尿意の消失に気付かれた.脳梗塞を念頭に抗血小板薬で治療を行い,発症2ヶ月後には眼球運動は正常になり,複視も消失.尿閉も消失した.眼球運動障害については動眼神経の内転筋亜核から両側medial longitudinal fasciculusにかけての病変を想定している.尿閉については排尿中枢の一つである中脳水道周囲灰白質への障害が原因と考えている.中脳の微小な梗塞で尿閉を呈する例は稀であるため報告する.
著者
荻野 美恵子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1026-1028, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
5
被引用文献数
8 7

In March 2009 we sent out the questionnaire to the 4,478 board certified neurologist to ask about the palliative care in ALS. 1,495 anonymous responses (33%) have been returned. 21% of the respondents prescribe morphine, which shows a drastic increase from the 14% in the 2007 survey. However, 77% of them had only less than 5 patients, 47% of them studied and trained themselves. It illustrates that most of the neurologists are not well experienced with morphine, and that they are isolated in practice. However, 47% of the respondents answer that they would prescribe morphine whether or not the national insurance pays. As for the withdrawal of the permanent ventilation, 21% of the respondents were asked by their patients to turn off the ventilation. While 24% of the respondents believe that the withdrawal right not should be promoted, 46% believe that such right should be granted if the decision made by the patient and/or his/her family members can explicitly be recognized. The result illustrates that the physicians are also divided. It may be the time to lay the foundation for the Japanese ALS physicians to discuss openly and candidly together to deal with the wants and wishes of their patients.
著者
端詰 勝敬
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.866-868, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
9

Chronic headache is caused by several reasons, such as medication over use, psychological stress, depression, anxiety and psychiatric disease. It is often difficult to treat medication over use headache. So it is important to manage the psychological factor before abuse. There are the relationships in migraine and psychiatric disease, especially major depression and panic disorder. In the treatment for chronic headache, it is necessary to assess the personal profile. The Hospital Anxiety and Depression Scale is useful for assess depression and anxiety in patients with painful symptoms.
著者
間中 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1299-1302, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1 1

We use two oriental medical techniques in headache management. One is topological microstimulation, and the other is acupuncture point BL10 (Tianzhu) block. 1. Topological microstimulation The topological microstimulation apparatus delivers programmed fluctuating electrical signals to electrodes placed on the distal portion of the limbs, where meridians are concentrated. Topological microstimulation adjusts "qi-blood-fluid" circulating through meridians. "Qi-blood-fluid" is a virtual concept of oriental medicine that means 3 elements (qi, blood, and colorless body fluid). Topological microstimulation induces natural healing power through the bio-homeostatic function, and reduces chronic intractable pain. 2. Acupuncture point BL10 (Tianzhu) block Tianzhu as a meridian point is located at the intersection of the superior nuchal line of the occipital bone and lateral border of the trapezius. This site is located in the superficial layer of the trunk of the greater occipital nerve. Tianzhu block has therapeutic effects on the trigeminocervical complex. As a result, various types of headache are relieved. Tianzhu block was performed in 50 patients in our clinic, and marked effects were observed in 6 patients, moderate effects in 22, slight effects in 19, and no effects in 3. According to the type of headache, this block was effective in 47% of patients with tension-type headache, 38% of those with migraine, 50% of those with chronic daily headache, and 71% of those with neck and/or shoulder pain. Conclusion Various somatic and mental stresses induce headache and functional somatic syndrome, i.e., Tianzhu syndrome. Acupuncture is useful and can be actively recommended for the management of intractable headache such as complicated headache due to Tianzhu syndrome.
著者
有田 秀穂
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1279-1280, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
2
被引用文献数
4 5

To gain insight into the neurophysiological mechanisms involved in Zen meditation, we evaluated the effects of abdominal (Tanden) breathing in novices. We investigated hemodynamic changes in the prefrontal cortex (PFC), an ttention-related brain region, using 24-channel near-infrared spectroscopy during a 20-munite session of Tanden breathing in 15 healthy volunteers. We found that the level of oxygenated hemoglobin in the anterior PFC was significantly increased during Tanden breathing, accompanied by a reduction in feeling of negative mood compared to before the meditation session. Electroencephalography (EEG) revealed increased alpha band activity and decreased theta band activity during Tanden breathing. EEG changes were correlated with a significant increase in whole blood serotonin (5-HT) levels. These results suggest that activation of the anterior PFC and 5-HT system may be responsible for the improvement of negative mood and EEG signal changes observed during Tanden breathing.
著者
竹島 慎一 音成 秀一郎 姫野 隆洋 原 直之 吉本 武史 高松 和弘 高尾 信一 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.791-797, 2014-10-01 (Released:2014-10-24)
参考文献数
30
被引用文献数
5 2

10年間で成人無菌性髄膜炎,男性203例,女性157例を経験した.毎年夏~秋に,数回の小流行をみとめた.2012年流行期の21例中17例(81%)で起因ウイルスを同定した.試料の同定率は,便71%,髄液67%,咽頭拭い液42%,血清5%であった.すべてエンテロウイルスで,エコーウイルス(E)9型9例,E6型4例,コクサキーA9型1例,3例はエンテロウイルス属まで同定できた.E9型とE6型の臨床的差異はなかった.10年間でムンプス髄膜炎14例,水痘・帯状疱疹ウイルス髄膜炎8例,単純ヘルペスウイルス髄膜炎5例をみとめたが,散発的発症であった.流行性のものはエンテロウイルスが主であり良好な経過であった.