著者
後藤 由也 角南 陽子 菅谷 慶三 中根 俊成 高橋 一司
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001598, (Released:2021-07-17)
参考文献数
30
被引用文献数
2

症例は,経過8年の起立不耐を呈した39歳女性である.Head Up Tilt試験で体位性頻脈症候群(postural tachycardia syndrome,以下POTSと略記)と診断した.抗自律神経節アセチルコリン受容体(ganglionic acetylcholine receptor)抗体が強陽性であり,自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy)の治療に準じて免疫グロブリン大量療法を行ったところ,抗体価の減少とともに起立不耐が改善した.本例はPOTSの病態と治療選択肢のひろがりを考える上で貴重な症例である.
著者
柴田 憲一 向井 達也 中垣 英明 長野 祐久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.486-490, 2021 (Released:2021-07-30)
参考文献数
13

63歳男性.1か月前から発熱があり,左上肢の麻痺で入院した.MRIで右前頭葉,右頭頂葉,両側後頭葉に拡散強調像で高信号があり,急性期脳梗塞と診断した.左後頭葉病変はT2強調像で高信号だった.右中大脳動脈M1に狭窄が疑われた.塞栓症と考えられたが原因不明だった.胸部CTですりガラス影と,polymerase chain reaction(PCR)で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)陽性だった.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による凝固異常が原因の可能性があった.
著者
竹島 多賀夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.990-993, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Chronification of migraine headaches is one of the most urgent issues. Chronic migraine (CM) and medication overuse headache (MOH) are defined in international classification of headache disorders II (ICHD-II). Appendix criteria of CM and MOH were submitted and will take over the original criteria. I described a case of CM and a case of MOH. Here I pointed out some practical issues in diagnosis of CM or MOH. 1) It is not easy to define the association of headache worsening and the beginning of medication overuse in many cases. 2) Some patients cannot discontinue the overused drugs; therefore, the diagnosis of CM nor MOH cannot be completed. 3) Some patients are not released from their headache even after the discontinuation of drug. In these cases, there are two possibilities. As a result of CM, the patient had simply overused the ineffective medications. From another point of view, MOH caused irreversible brain changes and MOH do not disappear after the detoxification. 4) In a practical management, we often prescribe preventive medications simultaneously at the beginning of detoxification. In these cases, it is unclear which one of the detoxification or the preventive medication contributes the improvement of headache. The chronification of migraine is regarded as chronification of acute mechanism of migraine, i.e., inflammation of the trigeminovascular system and sensitization of the brain. Apart from medication overuse, there have been reported some new risk factors for migraine chronification, including frequent headache, female sex, obesity, low income, low education, stress by life events, depression, snoring, sleep disorders, and past history of neck or head injury. Chronification of migraine severely disturbs the quality of patient's life. More attention should be paid and the further and extensive studies are urgently necessary.
著者
宮城 哲哉 奥間 めぐみ 諏訪園 秀吾 城戸 美和子 田代 雄一 石原 聡 中地 亮 末原 雅人
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.165-173, 2016 (Released:2016-03-30)
参考文献数
26

発作性運動誘発性舞踏アテトーシス(paroxysmal kinesigenic choreoathetosis; PKC)は随意運動で突然四肢の異常運動が誘発される稀な発作である.当院経験の特発性PKCは5例で男性4例,発症年齢8~15歳,家族例1例であった.発作性異常運動の性質,正常な発作間欠期の神経所見や各種検査結果,良好な治療反応性は既報と一致した.異常運動の出現部位は一定しなかったが症例毎に出現しやすい部位が存在した.詳細に検討し得た2症例には既報と異なり視覚認知や視覚情報処理機能の異常などの皮質機能障害を認め1例は経時的に顕在化し1例は潜在していた.一般にPKCの転帰は良好とされているが,詳細に経時的な高次脳機能の評価を要する例が存在する可能性が示唆された.
著者
安田 千春 武井 嵩展 魚住 武則 豊田 知子 由比 友顕 足立 弘明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.600-604, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

症例は67歳女性.家族歴なし.2009年より進行性の脊椎側弯が出現し2013年他院で体幹ジストニアの診断でトリヘキシフェニジル内服とボツリヌス注射が行われたが改善はなく,2015年に歩行障害が出現した.同年5月当科での[123I]-イオフルパンシンチグラフィー(以後DATスキャン)で異常をみとめ,6月当科入院時は運動緩慢,筋強剛,右優位の静止時振戦,姿勢反射障害をみとめ頭部MRIで異常なくレボドパで運動症状の改善をみとめたことからパーキンソン病と診断した.本例は体幹ジストニアが先行したパーキソニズムでありDATスキャンが診断の一助となりえた症例である.貴重な症例であり文献的考察を加え報告する.
著者
後藤 由也 角南 陽子 菅谷 慶三 中根 俊成 高橋 一司
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.547-551, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
30
被引用文献数
2

症例は,経過8年の起立不耐を呈した39歳女性である.Head Up Tilt試験で体位性頻脈症候群(postural tachycardia syndrome,以下POTSと略記)と診断した.抗自律神経節アセチルコリン受容体(ganglionic acetylcholine receptor)抗体が強陽性であり,自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy)の治療に準じて免疫グロブリン大量療法を行ったところ,抗体価の減少とともに起立不耐が改善した.本例はPOTSの病態と治療選択肢のひろがりを考える上で貴重な症例である.
著者
井関 真理 中山 博輝 渡邊 睦房 内堀 歩 千葉 厚郎 水谷 真之
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001750, (Released:2022-06-24)
参考文献数
27
被引用文献数
1

症例は43歳女性.コミナティ‍®(BNT162b2,ファイザー社)接種後に異常感覚と筋力低下,嚥下障害,高度の深部感覚障害を自覚し,当科を受診した.腱反射は消失,髄液検査は正常,抗ガングリオシド抗体は陰性で,神経伝導速度検査ではF波の出現率の低下を認めた.ワクチン接種による自己免疫性の末梢神経障害と考え血漿交換を行ったところ,症状は改善したが深部感覚障害は残存した.新型コロナウイルス感染(coronavirus disease 2019,以下COVID-19と略記)後およびCOVID-19ワクチン接種後に末梢神経障害を生じた既報例を本例と比較すると,深部感覚障害がめだつ点が特徴的だった.
著者
吉村 元 今井 幸弘 別府 美奈子 尾原 信行 小林 潤也 葛谷 聡 山上 宏 川本 未知 幸原 伸夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.713-720, 2008 (Released:2008-12-01)
参考文献数
29
被引用文献数
4 7

症例は76歳男性である.インフルエンザA型感染症発症直後に高度の意識障害を呈し,その後急激にDICやショック,多臓器不全も合併した.インフルエンザ脳症(IAE)と診断し,オセルタミビル投与,ステロイドパルス療法を施行するも効果無く,発症から24時間強で死亡した.剖検では大脳に著明な浮腫とアメーバ様グリアのびまん性増加をみとめたが,炎症細胞浸潤は無かった.また,インフルエンザウイルスA・H3香港型が剖検肺から分離され,保存血清中のIL-6は35,800pg/mlと著明高値であった.本症例の臨床経過,検査所見,病理所見は小児IAE典型例と同様であり,成人でも小児と共通した病態機序でIAEをきたしうる.
著者
黒野 裕子 鳥飼 裕子 原 一 岡村 正哉 國本 雅也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001793, (Released:2022-10-26)
参考文献数
14

5年以上経過を追えた抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体陽性で自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy,以下AAGと略記)と診断された3例の経過を報告する.1例目は20代女性で慢性経過の羞明・便秘・無月経を認めたが,血漿交換後,症状は緩解した.感冒を契機に一度再発したが,2度の妊娠による悪化はなかった.2例目は60代男性で急性の起立性低血圧(orthostatic hypotension,以下OHと略記)と精神症状で発症した.再燃を繰り返し治療に難渋したが,経過8年時,特に原因なく状態が安定した.3例目は80代女性で慢性経過のOHで再燃を繰り返した.経過中,OHによる転倒で大腿骨を骨折し歩行困難となった.AAGの長期観察例の報告は少なく,臨床経過を観察する上で貴重と考え報告する.
著者
澤木 優治 山本 裕泰 本村 和也 山本 正彦 古川 研治 斉藤 修
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001706, (Released:2022-08-26)
参考文献数
27

左頭頂葉白質を中心とした脳梗塞により第一言語である日本語と第二言語である英語の混同および音韻性錯語を呈した左利きバイリンガル症例について報告した.症例は日本語および英語のバイリンガルである46歳の左利き女性であった.本症例では発症急性期より理解面は聴覚・視覚のいずれの経路も良好に保たれた一方で,表出面においては日本語発話時に日本語と英語の混同を認めた.拡散テンソル画像の分析から,本例の言語症状の出現には左下頭頂小葉直下の白質線維である上縦束や弓状束の関与が示唆された.
著者
山本 晴子 宮田 茂樹
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.316-320, 2011 (Released:2011-05-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は,血小板減少を特徴とする免疫的機序による症候群で,発症頻度は低いものの,ヘパリン投与に合併して多彩な血栓・塞栓症をひきおこす重篤な疾患である.急性期脳梗塞治療の現場では,様々な血管内治療の開発にともない大量のへパリンが使用される局面が増加しつつあり,HITについての知識が求められている.急性期脳梗塞におけるHIT発症割合に関する報告はきわめて少ない.われわれの施設での後ろ向き調査では,HITの発生割合は0.5%と推測された.さらに多施設共同前向き調査の結果では1.7%であった.HITを発症したばあいの予後は不良であるため,HITがうたがわれたばあいには早急に治療を開始すべきである.
著者
木村 文治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.241-247, 2016 (Released:2016-04-28)
参考文献数
49
被引用文献数
10 12

筋萎縮性側索硬化症における人工呼吸器装着は最も重要な治療手段選択の一つである.事前意思確認を行なった1990~2013年までの自験例190例の調査結果から,発症から診断までの期間,侵襲的・非侵襲的人工呼吸器装着率,年齢による装着率の変化と推移および予後解析を報告した.その中で,1990~2010年までの160例について,侵襲的人工呼吸器装着による延命効果に影響する因子(年齢,配偶者など)を分析すると共に,侵襲的人工呼吸器装着を決定する因子分析を行い,装着年齢,配偶者の存在,残存運動機能の有無,呼吸器装着までの期間と診断時進行度などが関与することを示した.2010年以後の侵襲的・非侵襲的人工呼吸器装着率の経時的分析結果から,非侵襲的人工呼吸器装着率が年々増加する一方,侵襲的人工呼吸器装着率は減少傾向を示した.世界における人工呼吸器装着率の現況を考察した.
著者
此枝 史恵 鈴木 重明 西本 祥仁 星野 晴彦 高木 誠
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.7, pp.373-377, 2017 (Released:2017-07-29)
参考文献数
17
被引用文献数
23

症例は74歳女性.2014年に進行直腸癌を指摘され直腸離断術を受けたが,残存病変に対する化学療法が副作用のため継続困難となり放射線療法のみで経過観察となっていた.2016年4月に他院で通常より低用量のニボルマブが開始された.ニボルマブの最終投与から約2週間の経過で近位筋優位の筋力低下・筋痛,眼瞼下垂,嚥下障害,呼吸苦が出現した.ニボルマブによる筋炎合併重症筋無力症と考え各種免疫療法を行い症状の改善がみられた.ニボルマブ投与開始から短期間のうちに発症し,従来知られているものとは違い急速に呼吸筋障害をきたすなど重症化する傾向があり,コンサルテーションをうける神経内科医には迅速な対応が求められる.
著者
目崎 高広
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.465-470, 2011 (Released:2011-07-21)
参考文献数
38
被引用文献数
3 4

ジストニアは,中枢性の持続的な筋緊張を特徴とする運動異常症の一症候群である.その臨床特徴として,定型性,動作特異性,感覚トリック,オーバーフロー現象,早朝効果,フリップフロップ現象,共収縮,陰性ジストニア(仮称)などがあり,これらを参考に診断する.通常,局所性ジストニアの治療はボツリヌス毒素の筋肉内注射が第一選択である.一次性ジストニアで,より広範な身体部位を侵すばあいには,定位脳手術を考慮する.二次性ジストニアにおける定位脳手術の成績は一般に劣るが,遅発性ジストニアでは効果が高い.内服治療は,有効率が通常低く,一方,副作用の頻度は高いため,特殊な病型以外では補助療法としての位置づけに留まる.
著者
角田 亘
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.181-186, 2020 (Released:2020-03-31)
参考文献数
34
被引用文献数
6 9

脳卒中リハビリテーション(以下,リハ)については,様々な新しいコンセプトや治療的介入が考案されている.その安全性と有用性が確認されている急性期リハは,さらなる普及が待たれる.脳の可塑性を高める非侵襲的脳刺激,脳内神経伝達物質に作用する薬剤,迷走神経刺激は,リハ訓練と併用されるべきである.ロボット・リハの導入により,リハ訓練の効率向上が期待される.脳卒中後片麻痺に対するニューロフィードバックは,運動イメージに対する治療的介入である.再生医療の効果を高めるためには,それに引き続いてリハ訓練も導入されることが望ましい.これらを積極的に導入することで脳卒中患者の機能予後が全般的に改善されるであろう.
著者
橋本 律夫 上地 桃子 湯村 和子 小森 規代 阿部 晶子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.837-845, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
26
被引用文献数
3 7

Card placing test(CPT)は我々が開発した新しい視空間・方向感覚検査である.被験者は3 × 3格子の中央に立ち,周囲の格子に置かれた3種類の図形カードの位置を記憶し,自己身体回転なし(CPT-A)または回転後(CPT-B)にカードを再配置する.自己中心的地誌的見当識障害患者ではCPT-AとCPT-Bのいずれも低得点,道順障害患者ではCPT-A得点は正常範囲でCPT-Bが低得点であった.自己中心的地誌的見当識障害患者では自己中心的空間表象そのものに障害があり,道順障害患者では自己中心的空間表象と自己身体方向変化の情報統合に障害があると考えられた.
著者
清水 久央 原谷 浩司 宮崎 将行 掛樋 善明 長見 周平 片浪 雄一 川端 寛樹 高橋 信行
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.495-498, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
9

症例は38歳男性.ダニ刺咬後2ヶ月経過してから片側顔面神経麻痺を呈した.ベル麻痺としてステロイド,アシクロビルを投与し2週間で症状は消失.ライム病の可能性も考慮しドキシサイクリンなどの内服を2週間行った.2ヶ月後に頭痛,発熱などの髄膜炎症状が出現.髄液検査では単核球優位の細胞数上昇を示した.アシクロビルの投与で症状は軽快したが血清ボレリア抗体が陽性でありライム病による髄膜炎と考えた.セフトリアキソンを点滴静注し以後再発はない.抗菌薬を投与したにもかかわらず髄膜炎に進展する症例はまれである.ライム病は本邦では症例が少なく診断が難しい疾患であるが,治療効果の判断にも注意が必要であると思われ報告した.
著者
上田 明広 小松 研一 髙橋 牧郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.85-91, 2023 (Released:2023-02-25)
参考文献数
35

症例1は80歳女性.アルツハイマー病でドネペジル塩酸塩(donepezil hydrochloride,以下DNPと略記)を増量した2ヶ月後に首下がり症状が出現した.頸部伸筋のミオパチーを思わせる軽度の筋力低下やMRIでのT2高信号,針筋電図での筋原性変化を認めたが,DNP中止2ヶ月後に姿勢異常は消失した.症例2は78歳男性.レビー小体型認知症でレボドパ,プラミペキソール(pramipexole,以下PPXと略記)を服用していた.レボドパ減量4週後にDNPを開始,10日後に右前方への体幹屈曲が生じた.DNP・PPXの中止とレボドパ増量を行い5ヶ月後に姿勢異常はほぼ消失した.コリンエステラーゼ阻害薬の稀な副作用として体幹の姿勢異常が報告されており,注意が必要である.
著者
山川 達志 水田 克巳 黒川 克朗 永沢 光 山田 尚弘 鈴木 恵美子 和田 学
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.485-491, 2017 (Released:2017-09-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1 12

2008,2011,2014,2016年夏季に経験したヒトパレコウイルス3型感染に伴う成人の筋痛症17症例(男性14例,女性3例)について検討した.年齢は21歳から50歳.全例,四肢に強度の筋痛,筋力低下,握力低下を認めた.14例(82%)に発熱,8例(47%)に上気道炎症状,4例(24%)に胃腸炎症状,男性4例(男性の29%)に陰部痛を認めた.血清CKが1例を除き上昇していた.骨格筋MRIは5例中2例に大腿筋に異常信号を認めた.神経伝導検査は9例中5例でF波の誘発が不良だった.7例で同時期に家族内の乳幼児に発熱,感冒様症状があり家族内感染が疑われた.全例1~2週間で軽快した.