著者
永田 栄一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.20-26, 2020 (Released:2020-01-30)
参考文献数
43
被引用文献数
3

片頭痛病態に関する研究は,脳血管が原因で起こるとする血管説,皮質性拡延性抑制現象(cortical spreading depression; CSD)を中心とした神経説が提唱され,その後三叉神経節を中心とした血管や神経原性炎症を起源とする三叉神経血管説が提唱され,現在まで広く受け入れられている.近年,画像検査の進歩により片頭痛発生時期を前兆期より前の予兆期にすでに視床下部での活動性が上昇していることがfunctional MRIやPETなどで明らかとなった.また,光過敏症に関しては内因性網膜神経節細胞(intrinsically photosensitive retinal ganglion cells; ipRGCs)が発症に関与していることも明らかとなった.近年の分子生物学および画像診断の目覚ましい進歩により,過去に提唱されていた病態仮説が次第に明らかとなりつつある.
著者
中根 俊成
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001354, (Released:2019-11-23)
参考文献数
64

自己免疫性自律神経節障害(autoimmune autonomic ganglionopathy; AAG)は自律神経系が免疫異常の標的となる比較的新しい疾患概念である.本症では抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体は病原性自己抗体として病態の鍵となる役割を果たす.本症は広範な自律神経症状以外に自律神経系外の症候(中枢神経系障害,感覚障害,内分泌障害)や併存症(膠原病,腫瘍)を呈することが判ってきた.また,中には消化管運動障害など極部分的な自律神経症状しか呈さないために診断困難である症例が存在する.多くの症例では複合的免疫治療によってコントロール可能となるが,難治例もある.本稿ではAAGとその関連疾患における自己抗体の役割から実臨床に関連する話題までを総説する.
著者
藤盛 寿一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.117-119, 2020 (Released:2020-02-27)
参考文献数
17
被引用文献数
2

近年cell-based assay(CBA)法の導入により,抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白(myelin oligodendrocyte glycoprotein; MOG)抗体が陽性となる炎症性脱髄疾患のスペクトラムが明らかになってきた.この抗MOG抗体関連疾患群の中には視神経脊髄炎関連疾患,視神経炎,脊髄炎,非典型的多発性硬化症,自己免疫性脳炎などが含まれる.このうち抗MOG抗体陽性皮質性脳炎は,痙攣発作を主要症候の一つとし,片側型もしくは両側前頭葉内側型の特徴的な大脳皮質病変を頭部MRI・FLAIR画像にて認める.急性期にはステロイドパルス療法や抗てんかん薬を使用し,慢性期には再発予防目的に免疫抑制薬を用いることを考慮する必要がある.
著者
北村 泰佑 後藤 聖司 髙木 勇人 喜友名 扶弥 吉村 壮平 藤井 健一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.499-503, 2016 (Released:2016-07-28)
参考文献数
25
被引用文献数
3 4

患者は86歳女性である.入院1年前より認知機能低下を指摘され,入院2週間前より食思不振,幻視が出現し,意識障害をきたしたため入院した.四肢に舞踏病様の不随意運動を生じ,頭部MRI拡散強調画像で両側基底核は左右対称性に高信号を呈していた.血液検査ではビタミンB12値は測定下限(50 pg/ml)以下,総ホモシステイン値は著明に上昇,抗内因子抗体と抗胃壁細胞抗体はともに陽性であった.上部消化管内視鏡検査で萎縮性胃炎を認めたため,吸収障害によるビタミンB12欠乏性脳症と診断した.ビタミンB12欠乏症の成人例で,両側基底核病変をきたし,不随意運動を呈することはまれであり,貴重な症例と考え報告する.
著者
深見 祐樹 岡田 弘明 吉田 真理 山口 啓二
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.436-440, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 4

症例は78歳女性である.亜急性に進行する意識障害で入院となった.頭部MRI T2強調画像で皮質,白質に多発する高信号病変を認めた.免疫介在性脳炎を疑い,ステロイドパルス療法施行で一旦改善を認めたが,難治性てんかん重積状態で再入院となった.脳生検では非特異的な血管周囲のリンパ球浸潤を認めた.後日,血清抗gamma aminobutyric acid (GABA)A受容体抗体陽性であったことから,抗GABAA受容体抗体陽性脳炎と診断した.抗GABAA受容体抗体陽性脳炎は極めて稀であるため報告する.
著者
辻 貞俊
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1003-1005, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1 3

片頭痛とてんかんは一過性発作性脳疾患であるため,関連が議論されている.国際頭痛分類第3版では,てんかん発作と関連する頭痛として,片頭痛てんかん,てんかん性片側頭痛,てんかん発作後頭痛があり,関連性は複雑でかつ双方向性であるとしている.ミグラレプシーの多くは後頭葉てんかんの症状といわれている.国際抗てんかん連盟のてんかん分類には頭痛関連てんかんはない.複雑部分発作後に拍動性頭痛発作を呈する症例は,臨床的には前兆のない片頭痛と区別ができないてんかん発作後頭痛であった.片頭痛とてんかんの病態には類似性があり,大脳皮質細胞の過興奮性や遺伝要因などの共通性もあり,今後の研究の進展が期待される.
著者
木多 眞也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1187-1189, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
5

脳脊髄液や脳間質液には,前頭蓋底部の嗅神経に沿って鼻粘膜リンパ管に入り頸部リンパ節にいたる解剖学的吸収路が存在し,脳リンパ排液(brain lymphatic drainage)という概念が成立する.脳灰白質では,脳動脈周囲の血管周囲腔(perivascular space)が機能的にリンパ管に相当し,リンパ流は血流と逆方向に流れていると考えられている.この排液機構は,Aβの蓄積などによる通過障害や動脈硬化による排液駆動力の低下の結果,機能障害を生じ,iNPH,脳小血管病,アルツハイマー病の3疾患の重複病理(comorbidity)を説明しうる機序のひとつであることが推察される.
著者
米田 誠
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1240-1242, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
8
被引用文献数
5 4

Hashimoto's encephalopathy (HE), which is occasionally associated with chronic thyroiditis (Hashimoto's disease), presents with a variety of neurologic and neuropsychiatric features. We investigated the clinical features and treatments in 80 cases of HE with serum anti-NH2-terminal of α-enolase [anti-NAE] autoantibodies, a useful diagnostic marker of this disease. The acute encephalopathy form was the most common clinical phenotype (58%), followed by chronic psychiatric form (17%), cerebellar ataxic form (16%), and other forms such as Creutzfeltd-Jakob disease (CJD)-like form and limbic encephalitis. The common neuropsychiatric features were consciousness disturbance (66%), psychosis (53%) and dementia (38%). Involuntary movements (31%, tremor or myoclonus), seizures (31%) or ataxia (28%) occasionally occurred. Abnormalities on EEG (80%) were common while abnormalities on brain MRI were relatively rare (36%). On the treatments for HE, steroid therapy was most usually applied and successful. Intravenous immunoglobulin therapy or plasma exchange was successfully applied for the treatment of HE in some cases of HE. Taken together, we should be aware of the possibility of HE for early diagnosis and tretmetent of this disease.
著者
伊藤 康男 阿部 達哉 富岳 亮 小森 哲夫 荒木 信夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.103-107, 2010 (Released:2010-03-03)
参考文献数
11
被引用文献数
9 23

症例は19歳女性である.急性の異常行動と変動する意識障害で発症した.入院時妊娠17週で児の発育に問題はなかった.髄液検査で単核球優位の細胞数増多,抗NMDA受容体抗体陽性,頭部MRIで明らかな異常所見なく,非ヘルペス性辺縁系脳炎が考えられた.妊娠26週目より意識障害は徐々に改善し,妊娠37週で自然分娩した.骨盤MRIで卵巣奇形腫をみとめず,分娩後の抗NMDA受容体抗体が陰性化したことより,本症例の発症に妊娠との関連が示唆された.妊娠中に発症した抗NMDA受容体抗体陽性の非ヘルペス性辺縁系脳炎の報告例はまだなく,貴重な症例と考えたので報告する.
著者
石川 正恒
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1184-1186, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
1

髄液は脳室内の脈絡叢で産生され,一方向に流れて,最終的には上矢状洞のクモ膜顆粒から吸収されると考えられてきたが,近年,この髄液が一方向に流れるBulk flow説に対する疑問が出されるようになり,産生・吸収・循環の面から再考を迫られている.髄液産生吸収の主たる部位が脳毛細血管とする説は脳室やくも膜下腔の髄液の由来をあらためて考えなければならない可能性をもたらしているが,新たな視点で髄液をみる機会でもあり,髄液研究の更なる進展が期待される.
著者
久保 真人 饗場 郁子 下畑 享良 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.219-227, 2021 (Released:2021-04-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

医師のバーンアウトの現状と対策を検討するため日本神経学会の全学会員8,402名に対しアンケート調査を行い,15.0%にあたる1,261名から回答を得た.本論文では男性医師と女性医師の比較結果について報告する.勤務・生活状況では既婚者のみに有意な差が認められた.労働時間など勤務状況では男性のほうが厳しい条件で勤務していること,家事分担では女性の負担が重いことが確かめられた.日本版バーンアウト尺度による分析では,全体の得点では性差は認められなかったが,バーンアウトと関連する要因については,男女に共通した要因にくわえて,男性あるいは女性特有の要因が明らかとなった.
著者
中根 俊成 溝口 功一 阿部 康二 熱田 直樹 井口 保之 池田 佳生 梶 龍兒 亀井 聡 北川 一夫 木村 和美 鈴木 正彦 髙嶋 博 寺山 靖夫 西山 和利 古谷 博和 松原 悦朗 村松 慎一 山村 修 武田 篤 伊東 秀文 日本神経学会災害対策委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.643-652, 2020 (Released:2020-10-24)
参考文献数
57

東日本大震災の甚大な被害を踏まえて日本神経学会の災害対策活動はスタートした.2014年,正式に日本神経学会災害対策委員会が発足し,災害支援ネットワーク構築と指揮発動要件設定を行い,模擬訓練を実施した.2016年の熊本地震で我々は平常時の難病患者リスト作成,個別支援計画策定の重要性を認識し,避難所等における難病患者のサポートのあり方を検討した.2017年,我々は災害対策マニュアルを刊行し,難病患者の災害時調整役として各都道府県に神経難病リエゾンを配置することを定めた.神経難病リエゾンの役割は「被災地の情報収集・発信」,「医療支援調整」,「保健活動」であり,平常時と災害時の活動が期待される.
著者
内山 真一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.832-834, 2010 (Released:2011-03-28)
参考文献数
10
被引用文献数
6 6

We compared the efficacy and safety of cilostazol and aspirin in 2,672 Japanese patients with non-cardioembolic ischemic stroke. The patients were randomized to be allocated either on cilostazol (200mg/day) group or aspirin (81mg/day) group, and were followed up for one to five years (average 29 months). The primary endpoint was any stroke, and safety endpoint was hemorrhagic stroke or hemorrhage requiring hospitalization. Annual incidence of stroke was significantly lower in the cilostazol group (2.76%) than in the aspirin group (3.71%) (relative risk reduction [RRR] 25.7%, p=0.0357) and annual incidence of hemorrhagic stroke or hemorrhage requiring hospitalization was 0.77% in the cilostazol group and 1.77% in the aspirin group (RRR 54.2%, p=0.0004). The sub-analyses between subtypes of ischemic stroke showed that annual incidence of hemorrhagic stroke was much lower in the cilostazol group (0.36%) than in the aspirin group (1.20%) among patients with lacunar stroke (p=0.003). The results suggest that cilostazol has a favorable risk-benefit profile alternative to aspirin for secondary stroke prevention in patients with non-cardioembolic ischemic stroke, particularly in patients with lacunar stroke, who are at high risk of hemorrhagic stroke.
著者
下畑 享良 久保 真人 饗場 郁子 服部 信孝 吉田 一人 海野 佳子 横山 和正 小川 崇 加世田 ゆみ子 小池 亮子 清水 優子 坪井 義夫 道勇 学 三澤 園子 宮地 隆史 戸田 達史 武田 篤 日本神経学会キャリア形成促進委員会
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.89-102, 2021 (Released:2021-02-23)
参考文献数
24
被引用文献数
2 1

医師のバーンアウトに関連する要因を明らかにし,今後の対策に活かすため,2019年10月,日本神経学会はバーンアウトに関するアンケートを脳神経内科医に対して行った.学会員8,402名の15.0%にあたる1,261名から回答を得た.日本版バーンアウト尺度の下位尺度の平均は,情緒的消耗感2.86/5点,脱人格化2.21/5点,個人的達成感の低下3.17/5点であった.また本邦の脳神経内科医のバーンアウトは,労働時間や患者数といった労働負荷ではなく,自身の仕事を有意義と感じられないことやケアと直接関係のない作業などと強く関連していた.これらを改善する対策を,個人,病院,学会,国家レベルで行う必要がある.
著者
上田 優樹 木村 亮之 藤森 浩司 勇内山 大介 田口 丈士 赫 寛雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.676-679, 2023 (Released:2023-10-25)
参考文献数
9

症例は40歳女性.月経時に出現する右下腿と足背の異常感覚,右腰殿部と大腿部の疼痛が出現し,他院で腰椎椎間板ヘルニアと診断された.発症13ヶ月後から右下垂足が出現し,当院を受診した.右坐骨神経領域の筋力低下と感覚障害に加え,神経伝導検査における右浅腓骨神経と腓腹神経の感覚神経活動電位の振幅低下から,骨盤内の病変が示唆された.骨盤部MRIで右卵巣から坐骨神経にかけて異常信号を認め,子宮内膜症による坐骨神経障害と診断した.ホルモン治療を開始して症状は軽快したが,下垂足が残存した.女性で月経時に悪化・出現する坐骨神経痛や下肢の感覚・運動障害では,子宮内膜症の可能性を考慮する必要がある.
著者
今野 卓哉 梅田 能生 梅田 麻衣子 河内 泉 小宅 睦郎 藤田 信也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.330-333, 2011 (Released:2011-05-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1 6

症例は49歳女性である.スピルリナ(サプリメント含有成分)を摂取した数日後に顔面から両上肢・体幹へと拡大する浮腫性紅斑が出現した.2カ月後にスピルリナを中止した後も皮疹は増悪し,5カ月後に筋力低下と筋原性酵素の上昇をみとめ,当科に入院した.筋生検では,多数の壊死線維と好酸球の浸潤をみとめ,免疫染色では血管周囲にCD20陽性B細胞の集簇をみとめた.副腎皮質ステロイドとシクロフォスファミドを併用し,症状は改善した.スピルリナはtumor necrosis factor(TNF)-αの産生を促進するなどの免疫刺激作用を有し,これにより皮膚症状をともなった炎症性筋疾患の発症がうながされた可能性があると考えられた.
著者
鈴木 匡子
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2+3, pp.83-89, 2009 (Released:2009-03-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

大脳の機能を知るためには,高次脳機能の系統的な診察が欠かせない.高次脳機能は背景症状と局所症状に分けて考えると理解しやすい.背景症状として,全般性注意障害,見当識障害,情動変化など全体像をとらえたうえで,個々の局所症状の診察に入る.局所症状としては,言語,計算,行為など主に左半球が司っている機能と,視空間機能,方向性注意など主に右半球が司っている機能について検討する.記憶は両半球が関わるが,障害側や部位により質的特徴がことなる.高次脳機能障害を的確に把握することは,大脳の機能低下の範囲や経時的変化を知るのに役立つ.さらに,ヒトでしか検討できない言語など複雑な機能の神経基盤を探る手がかりになる.
著者
西村 優佑 今井 啓輔 濱中 正嗣 山﨑 英一 中ノ内 恒如 木村 雅喜
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.9, pp.620-626, 2020 (Released:2020-09-29)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は血液透析中の72歳男性.後頭部の頭痛を急性発症し,同部に血管雑音が聴取された.頭部MRIで頭蓋内出血はなく,頭部MRAで左横静脈洞-S状静脈洞(transvers-sigmoid; T-S)にかけて異常信号をみとめた.入院後も頭痛は持続し,血管造影にて左T-S周囲のシャントはなかったが,左上肢内シャント部造影にて左腕頭静脈(brachiocephalic vein; BCV)・内頸静脈の閉塞と左T-Sへの頭蓋内静脈逆流をみとめた.内シャント肢側の左BCV閉塞に起因する頭蓋内圧亢進による頭痛と診断し同閉塞部位を血管拡張術で再開通した.術直後から頭蓋内静脈逆流は低減し頭痛も消失した.透析患者に急性発症する頭痛の原因としてBCV閉塞による頭蓋内静脈逆流も念頭に置くべきである.
著者
荒木 淑郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.731-736, 2009 (Released:2009-12-28)
参考文献数
5
被引用文献数
1

The Japanese Society of Neurology was founded in 1960. The Department of Neurology was established at The Kyushu University Faculty of Medicine in 1963, and then The Japanese Neurology has advanced.
著者
福元 恵 山城 亘央 小林 史和 長坂 高村 瀧山 嘉久
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.239-242, 2013-03-01 (Released:2013-03-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

症例は49歳男性である.数日の経過で進行する四肢脱力により歩行できなくなったため,当院に緊急搬送された.脱力発作の既往歴や家族歴はなかった.血清カリウムが1.9mEq/lと低下しており,低カリウム血性ミオパチーと診断した.経口的にカリウム補充をおこなったところ,血清カリウム値,症状ともにすみやかに改善し,治療中止後も再発はなかった.カリウム代謝に関連した内分泌学的異常はみとめず,患者は,去痰目的に市販の総合感冒薬を10年間連日服用し,肥満解消目的に,症状出現2週間程前より緑茶抽出物健康飲料を大量摂取していたことから,これらにふくまれるカフェインの大量摂取が低カリウム血症の原因であると考えられた.