著者
石井 英一 安江 健一 田中 竹延 津久井 朗太 松尾 公一 杉山 和稔 松尾 重明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.5, pp.301-314, 2006 (Released:2006-09-14)
参考文献数
48
被引用文献数
29 24

北海道北部,幌延地域における新第三紀堆積岩分布域において,地表割れ目踏査,ボーリング調査(コア観察・EMI検層・比抵抗検層・水質分析),反射法地震探査,およびAMT探査を実施し,当域に分布する大曲断層の位置,連続性,および水理特性について検討した.その結果,以下のことが示された.(1)大曲断層はダメージゾーンを主体とした幅120 m程度の断層帯であり,その透水性は高い.(2)研究所設置地区近辺における大曲断層帯の三次元分布が明らかとなり,地表部ではover-stepし,地下では収斂する形態をなす.(3)「塩水系」と「淡水系」の2種類の地層水が存在し,顕著な岩相変化を示さない堆積岩においては,電磁探査を用いた調査が,断層帯の位置,連続性,および水理特性などを検討する際に有効である.
著者
Yui Takahashi Yuichi Fukushima Gengo Tanaka Yukio Miyake
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.65-73, 2022-01-15 (Released:2022-05-21)
参考文献数
48

A conodont fauna characterized by Streptognathodus species was recovered from a limestone block (previously called Ōboradani Formation) of the Ōtani (=Ohtani or Otani) Formation belonging to the Hida Gaien belt distributed in the Kuzuryu area, Fukui Prefecture, central Japan. The fauna consists of Streptognathodus corrugatus, S. elegantulus, S. excelsus, S. gracilis, Idiognathodus sp., Gondolella bella, G. cf. elegantula and G. cf. pohli. These streptognathodids have a wide geographic distribution and indicate a middle-late Kasimovian (Late Pennsylvanian) age, which is slightly older than the Gzhelian (latest Pennsylvanian) age infferred from fusulinid fossils in previous studies. Thus, the limestone block of the Ōtani Formation probably contains the Upper Pennsylvanian carbonate succession.
著者
山本 由弦 千代延 俊 神谷 奈々 濱田 洋平 斎藤 実篤
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.41-55, 2017-01-15 (Released:2017-04-18)
参考文献数
44
被引用文献数
2 1

三浦・房総半島では,世界的にも珍しい,ごく若く埋没深度の浅い付加体-被覆層システムが,後生の変成作用を経験しないまま陸上に露出している.本見学旅行では,房総半島に絞って見学する.沈み込み帯のごく浅部(1km程度)から中深部(2-4km)の付加体に発達するin-sequence thrust,付加体を不整合に覆う海溝斜面堆積物,これらを切るout-of-sequence thrust,それに前弧海盆堆積物を見学し,付加型沈み込み帯の基本システムを網羅する.
著者
中澤 努 長 郁夫 坂田 健太郎 中里 裕臣 本郷 美佐緒 納谷 友規 野々垣 進 中山 俊雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.5, pp.367-385, 2019-05-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
68
被引用文献数
7 11

東京都世田谷区の武蔵野台地の下に分布する更新統世田谷層及び東京層の層序と地盤震動特性について検討した.世田谷層はMIS 6に開析された谷地形をMIS 5e前期~中期に埋積した地層であり,内湾成の軟らかい泥層を主体とする.一方,この地域の東京層は,MIS 5e中期?~後期の湾奥で形成された砂層などからなり,世田谷層とは対照的に広範囲に比較的平坦に分布する.常時微動観測により,段丘礫層を伴わず世田谷層が厚く分布する地域では,1Hzにピークをもつ地盤震動特性が示された.首都圏の地盤リスクを考えるとき,世田谷層をはじめとする台地の下のMIS 6開析谷埋積層の分布に注視する必要がある.
著者
後藤 和久 菅原 大助
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.199-214, 2021-04-15 (Released:2021-07-15)
参考文献数
105
被引用文献数
6

過去約25年で津波堆積物の研究は大きく進展し,日本各地の沿岸部の古津波履歴や規模の解明が進められてきた.一方で,2004年インド洋大津波や2011年東北地方太平洋沖地震津波等の最近の津波イベントにより形成された堆積物の調査研究も活発に行われ,堆積学的特徴や堆積過程等が検討されてきた.津波防災計画の立案にも堆積学的研究が活用されるようになった現在では,学術的研究の推進のみならず,いかに迅速に成果を社会に還元するかも重要になっている.次の25年間に我が国のいずれかの地域で巨大津波が発生する可能性は十分に考えられ,地質学的研究成果を踏まえた適切な減災対策が講じられることが望まれる.
著者
藪田 桜子 竹内 誠 斎藤 眞
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.127, no.12, pp.689-700, 2021-12-15 (Released:2022-01-19)
参考文献数
45
被引用文献数
2

中新統北設亜層群最上部の玖老勢層上部には,チャネル構造を呈する複数の礫岩層が分布する.本研究では,玖老勢層礫岩の礫種構成と珪質泥岩礫の放散虫化石による年代を明らかにした.玖老勢層礫岩は,火山岩・凝灰岩・凝灰角礫岩礫を主とし,花崗岩類・石英岩・チャート・珪質泥岩・泥岩・砂岩・マイロナイト礫を伴う.珪質泥岩礫中の放散虫化石は中期ジュラ紀の年代を示す.北設亜層群下部の砕屑物は,主に北設亜層群の基盤岩である領家花崗岩類・変成岩類起源である一方で,北設亜層群最上部玖老勢層ではジュラ系などの古期岩類を含む,より広範囲の地質体から砕屑物が供給されるようになったことが明らかになった.
著者
小澤 一仁 佐藤 侑人 成田 冴理
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.8, pp.575-592, 2018-08-15 (Released:2018-10-10)
参考文献数
177
被引用文献数
1

アルカリ玄武含に普遍的に含まれるスピネルカンラン岩捕獲岩の圧力推定についてレビューを行い,それがどのような理由でいかに困難であるかを共通認識として持てるように,これまで提案されてきた圧力推定方法の問題点をそれぞれの方法について指摘した.さらに,それらの問題をどのようにして解決し,充分な精度を持ったスピネルカンラン岩相の圧力推定方法を確立できるのかについての指針を示した.さらに,その推定値を検証するための方法として,マントル物質がマグマに取り込まれてから急冷するまでの時間スケールと上昇速度を組み合わせた方法を提案し,マグマの上昇に関するこれまでの研究をレビューし,有望な反応過程について考察した.
著者
田沢 純一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.9, pp.503-517, 2004-09-15
被引用文献数
15 46

日本列島の先新第三系は,(1)南部北上テレーン(前期オルドビス紀〜後期デボン紀付加テレーン),(2)秋吉テレーン(中期〜後期ペルム紀付加テレーン),(3)美濃テレーン(前期ジュラ紀〜前期白亜紀付加テレーン),(4)四万十テレーン(後期白亜紀〜新第三紀付加テレーン)の4テレーン,およびジュラ紀末期〜白亜紀初期に秦嶺-大別縫合帯からナップとして加わった(5)飛騨-阿武隈ナップ(変成相中・古生界ナップ)に区分される.これらのテレーンおよびナップは,NE-SW方向に伸び,南東へ向かって若くなる極性をもって配列している.日本列島の骨格は,前期オルドビス紀以降北中国東縁の沈み込み帯における連続的付加によってつくられた.そして,後期ペルム紀〜後期ジュラ紀の右横ずれ運動,ジュラ紀末期〜白亜紀初期の東フェルゲンツの衝上運動,前期白亜紀〜古第三紀(主に前期白亜紀)の右横ずれ運動により,大規模な横ずれ移動と地体群の再配列がなされた.前期白亜紀〜古第三紀の左横ずれ変位は1500-2000kmと考えられる.新第三紀(Miocene)に,"原日本"のリフティングによる日本海形成と西南日本の時計回りおよび東北日本の反時計回りの運動,千島弧の衝突による北海道中央部の西フェルゲンツの衝上,伊豆-小笠原弧の衝突による本州弧中央部の変形などが起き,現在の日本列島が完成した.
著者
宮下 敦 八木 公史 板谷 徹丸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.85-93, 2020-02-15 (Released:2020-06-16)
参考文献数
35
被引用文献数
2 3

東北日本の東縁に沿って分布する母体-松ヶ平帯中の古生代の年代を示す山上変成岩類は,高変成度の山上変成岩Ⅰと低変成度の山上変成岩Ⅱに区分されている.このうち,山上変成岩Ⅰは主に泥質片岩と角閃岩からなる.泥質片岩中のルチルにパラゴナイトが含まれることや変成鉱物の組成領域の検討から,山上変成岩Ⅰは蓮華帯の高変成度岩類と同等の低温高圧型変成作用を受けていると推定される.また,泥質片岩と角閃岩中のフェンジャイトK-Ar年代は322-287Maを示し,蓮華帯変成岩類と一致する.変成作用の特徴とフェンジャイトK-Ar年代から見て,山上変成岩類は西南日本の蓮華帯の高変成度岩類に直接対比できる可能性が高いと考えられる.
著者
内野 隆之 坂野 靖行
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.128, no.1, pp.1-6, 2022-01-10 (Released:2022-02-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

An exotic block of garnet-bearing schist has been found at the boundary between the Early Triassic Takinosawa Unit of the Nedamo Belt and the Early Jurassic Nakatsugawa Complex of the North Kitakami Belt, NE Japan. This is only the second discovery of exotic schists in the Nedamo Belt; the previously identified schists occur at the boundary between the Takinosawa and early Carboniferous Tsunatori units of the Nedamo Belt. The garnet-bearing schist is characterized by a mineral assemblage of garnet + phengite + epidote + albite + quartz + titanite. Phengite with Si of 6.51-6.66 atoms per formula unit (O = 22) and the mineral assemblage suggest that the schist underwent high-P/T metamorphism prior to emplacement into its current position. The schist yields a phengite K-Ar age of ca. 290 Ma (late Paleozoic), suggesting a correlation with high-P/T schist of the Yamagami Metamorphic Rocks from the Motai-Matsugadaira Belt. This finding supports the extension of late Paleozoic high-P/T metamorphic rocks (i.e., the Renge Belt of SW Japan) to NE Japan.
著者
竹村 静夫 菅森 義晃 鈴木 茂之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.Supplement, pp.S123-S137, 2009 (Released:2012-01-26)
参考文献数
47
被引用文献数
2

岡山県東部から兵庫県西南部には舞鶴帯と超丹波帯を構成する地層・岩石が広く分布する.舞鶴帯の主体をなすペルム系舞鶴層群は,その岩相と層序から付加体とみなすことは難しいが,地理的にはペルム紀の付加体と解釈される秋吉帯と超丹波帯の構成岩類に挟まれて分布している.このように中国地方東部から近畿地方北部の西南日本内帯には,ほぼ同年代でかつ性格の異なる地帯が狭い地域内に並列して分布する.この見学コースでは,ともにペルム紀の陸源砕屑岩を主体とする舞鶴層群と超丹波帯の上月層,舞鶴層群を不整合に覆う三畳系福本層群など,舞鶴・超丹波両帯に属する地質体の岩相や地質構造等を観察する.そして,それらが堆積・形成されたテクトニクスの重要性を再確認したい.
著者
太田 彩乃 勘米良 亀齢 磯崎 行雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.853-864, 2000-12-15
被引用文献数
4 7

宮崎県北部, 高千穂町上村のペルム系石灰岩, 岩戸層と三田井層の新露頭において, 岩相層序および生層序を検討した.その結果, 整合に累重する4つの化石帯, すなわち下位よりLepidolina帯および無化石帯(岩戸層), Codonofusiella-Reichelina帯およびPalaeofusulina帯(三田井層)が識別された.前二者は南中国の茅口階に, 後二者はそれぞれ呉家坪階および長興階に対比される.本石灰岩は, 西南日本外帯, 秩父累帯のジュラ紀付加体中に巨大な異地性岩体として産するが, 初生的には海洋中央部に位置していた古海山頂部に形成された浅海成石灰岩体に起源をもつ.このような遠洋浅海成石灰岩中に茅口階から長興階に至る連続セクションが確認されたのは世界で初めてであり, ペルム紀末の大量絶滅事件直前の超海洋パンサラサでの環境変化を解明する上で重要な記録が得られた.
著者
西村 祐二郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.100, no.9, 1994-09-15
著者
後閑 文之助
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.45, no.541, pp.773-776, 1938

As to the fossil elephants, the ancient Japanese naturalists for a long ti-me believed, following the explanation in the Chinese Pents'ao, that they were the skeletons of dragon but later in the Yedo period some scholars grew suspicio-us about its veracity., The questions of dragons had been variously discussed si-nce 1760 till the so-called "skeletons of dragons" found in Japan were proved to be the fossil remains of elephants in 1811.,
著者
磯﨑 行雄 長谷川 遼 益田 晴恵 堤 之恭
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.11, pp.639-644, 2020-11-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

Detrital zircon U-Pb ages were measured for nine non-fossiliferous sandstones from the uppermost Izumi Group, a “Late Cretaceous” forearc clastic sequence in the eastern Izumi Mountains of western Kii Peninsula, SW Japan. Seven out of nine sandstones yielded Paleocene grains. These results confirm that the uppermost Izumi Group was deposited in the Paleogene (Selandian-Thanetian or younger), extending the total depositional duration of the group to ca. 27 myr, almost double the previous estimate. The new age data raise the possibility that a stratigraphic interval across the Cretaceous-Paleogene extinction boundary may be preserved within the group. The occurrence of Paleogene strata further constrains the onset of the low-angle Median Tectonic Line to post-Paleocene.
著者
後藤 和久
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.10, pp.843-855, 2017-10-15 (Released:2018-01-25)
参考文献数
107
被引用文献数
2 2

琉球海溝沿いの古津波研究は約50年にわたり行われてきた.特に,津波石と呼ばれる沿岸巨礫群の研究から,先島諸島では数百年間隔で巨大津波が繰り返したと考えられる.その一方で,奄美・沖縄諸島では少なくとも約2300年もの間,巨大津波が発生した痕跡が見られないことが指摘されている.この結果は地震学的研究によっても支持されており,琉球海溝においては巨大地震・津波発生履歴と規模に大きな地域差があることを示唆していると考えられる.一方,砂礫質津波堆積物の研究は,調査適地が少ないという問題からあまり実施されておらず,中小規模の古津波履歴を把握するためにも,今後の調査研究が望まれる.
著者
鬼頭 昭雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.654-667, 2005-11-15
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

大規模山岳がアジアモンスーンなどの気候形成に果たす役割を調べるために,全球大気海洋結合大循環モデルを用いて,チベット高原を含む全地球の山岳の高度を0(M0)から140%(M14)まで段階的に変える実験を行った.500 hPa面の東西風は,山岳高度が40%以下では一年を通してチベット高原の緯度帯より北の40 &ordm;N付近に位置するが,山岳を60%より高くすると冬季にはチベット高原の南側25 &ordm;N付近にあり春季にチベット高原の北へシフトすることがわかった.山岳高度が60%をしきい値として東アジアの循環場には大きな変化がおき,梅雨降水帯は山岳高度が60%より高い時のみ発現した.地表風の変化については,アラビア海北部では山岳が低い場合には一年を通して北風に支配され,モンスーン南風域には入らない.乾燥気候に区分される面積は山岳上昇とともに減少することもわかった.<br>
著者
尾崎 正紀 松浦 浩久 佐藤 喜男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.73-83, 1996-02-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
52
被引用文献数
11 20
著者
小原 一成
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.9, pp.437-447, 2009 (Released:2010-03-10)
参考文献数
55
被引用文献数
3 1

近年の高密度地震観測網整備に伴い,南海トラフから西南日本に沈み込むフィリピン海プレートの境界付近で,様々なスロー地震が検出されている.巨大地震発生域の深部では,数日間継続するプレート境界固着すべりとしての短期的スロースリップイベント,周期20秒に卓越する深部超低周波地震,2 Hzに卓越する深部低周波微動が,全長約600 kmの帯状領域に沿って複数のセグメントに分かれ,半年あるいは3ヶ月など周期的に発生する.また,南海トラフ陸側の付加体内部では周期約10秒に卓越する浅部超低周波地震が発生している.これらのスロー地震は,浅部では付加体変形過程,深部では沈み込むフィリピン海プレートの海洋地殻あるいは付加体堆積物での脱水分解反応や変成作用と関わっている可能性があり,プレート沈み込み帯における地質体形成や流体循環の現場を反映するものとして注目される.