著者
窪田 安打
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.1, pp.25-44, 1999-01
参考文献数
69
被引用文献数
4 5

長野県諏訪湖南西に分布する塩嶺累層をもたらした安山岩質の火山活動は, 時間とともに漸次珪長質から, より苦鉄質に変化(主要斑晶組成が普通角閃石→斜方輝石, 単斜輝石→かんらん石)するステージの4回の繰り返しからなり, 各ステージ末期を中心に, 火山活動の休止が認められる.4ステージ全体をとおして, 後期になるほど噴出物に占める珪長質な安山岩の相対的割合が増大し, 噴出物量が減少する傾向が認められる.また本調査地域では, 塩嶺累層の堆積盆地は, 北西へ傾斜し, 北西縁をアンティセティックな縦走性成長断層に境された3つの傾動盆地-小野, 上野-天神および松倉堆積盆地-が並列している.これらの堆積盆地は, 塩嶺累層堆積期間を通じて, 基盤岩の北西への傾動沈降と3つの主要縦走断層群のアンティセティックな変位が, 相補的に進行したことを物語っている.
著者
赤石 和幸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.XXIII-XXIV, 1999 (Released:2010-11-26)
参考文献数
1

平安時代の十和田火山最新噴火では, 北日本の広い範囲に十和田aテフラが降り, 続いて毛馬内火砕流が発生した(町田, 1981). 火砕流は泥流化して米代川沿いに流下し, 途中で堰止湖を作って大洪水を引き起こし, 流域を火山泥流堆積物で覆い尽くした. 1999年7月29日に秋田県大館市道目木の圃場整備工事現場でこの堆積物を調査中, 大洪水による災害を生々しく物語る古代の埋没家屋を発見した. この遺跡は米代川流域で現存する古代の庶民の埋没家屋としては唯一の例であり, 当時の庶民の生活を知る上で貴重であるだけでなく, 火山泥流の特性と大洪水による被害の実態を知る上でも重要な手がかりとなり, 今後の災害予測にも役立つものと期待される.
著者
冨吉 将平 高須 晃
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.540-543, 2009
被引用文献数
1 3

This is the first report of lawsonite in pelitic schists from the Kebara Formation, a tectonometamorphic unit exposed between the Sambagawa metamorphic belt and the Chichibu belt in western Kii Peninsula. Lawsonite and pumpellyite have previously been reported from basic schists in the Kebara Formation, suggesting high-P/T metamorphic conditions. The pelitic schists consist mainly of quartz, albite and chlorite along with minor carbonaceous matter and rare phengite, lawsonite, calcite and titanite. The mineral assemblage of the lawsonite-bearing pelitic schists is chlorite+phengite +lawsonite+albite+quartz. This assemblage is basically the same as that reported for lawsonite-bearing pelitic schists from the chlorite zone in the Sambagawa metamorphic belt, i.e. in the Ise area in eastern Kii Peninsula and in the Besshi nappe complex exposed along the Asemigawa River in central Shikoku. These various lawsonite-bearing pelitic schists probably experienced similar high-P/T metamorphic conditions suggesting that the entire Kebara Formation experienced similar high-P/T metamorphism to that of the chlorite zone in the Sambagawa belt.
著者
南部 暁生 稲垣 静枝 小澤 伸介 鈴木 由香 井龍 康文
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.11, pp.617-634, 2003-11-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
54
被引用文献数
2 5 3

北大東島の礁性堆積物は,大東層と海軍棒層からなる.大東層は3つのユニットに区分される.ユニット1は主にframestoneよりなり,中央盆地に分布する.ユニット2はユニット1を不整合に覆い,2つのサブユニットから構成される.下位のサブユニット2aは,島外縁の環状丘陵地の主体をなし,主にframestoneよりなる礁芯相と,中央盆地縁辺部の急崖に露出しmdstoneの卓越する背礁相からなる.上位のサブユニット2bは,島の最高所付近に露出するframestoneとpackstoneからなる.ユニット3は東海岸に点在し,斜交層理の発達したoackstoneよりなり,下位層を不整合に覆う.海軍棒層は東海岸の標高10m以下に分布し,framestoneからなる.ユニット1は卓礁の堆積物である.サブユニット2a堆積時には,厚い環礁堆積物が形成されたが,その後,礁は著しく減退した.ユニット3堆積時,島の東部に浅瀬や造礁サンゴのパッチが広かった.海軍棒層は小規模な裾礁の堆積物である.
著者
横山 祐典 阿瀬 貴博 村澤 晃 松崎 浩之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.693-700, 2005 (Released:2006-03-01)
参考文献数
53
被引用文献数
5 6

宇宙線との相互作用によって地球表層で岩石中に生成される核種(TCN)は, 加速器質量分析計(AMS)の発達によって, 地球表層プロセスの研究に急速に広く用いられるようになってきた. TCN研究では半減期の違う複数の核種を組み合わせることによって, 侵食速度, 埋没履歴などを求めることが可能である. 現在はTCNのうち, 10Beや26Alの測定がAMSにより活発に行われてきている. 現在のところTCNの絶対量の誤差は約10%と大きいが, それでもこれらの測定結果を使って, テクトニクスや気候変動についての新しい知見が得られるようになった. チベットにおいての研究例も増え始めており, 今後サンプリング地点を増やし測定を活発に行うことによって, インドのユーラシア衝突によって引き起こされているチベット地域のテクトニクスの詳細や気候変動を細かく明らかにすることができる.
著者
西脇 仁 奥平 敬元
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.3, pp.141-155, 2005 (Released:2005-07-01)
参考文献数
62
被引用文献数
3 2 5

領家変成帯中の近畿中央部飛鳥地域に分布する苦鉄質岩は,領家古期 花崗岩類に対して層状に産している.苦鉄質岩のほとんどは,コアもリムもほぼ均一な化学組成を示す半自形~他形の斜長石と角閃石からなる.また,斜長石-角閃石温度計を用いて平衡温度を計算するとおよそ500-600℃となることから,これらの苦鉄質岩は角閃岩相の変成作用を被った変成岩であると考えられる.一部の苦鉄質岩に認められる面構造とマグマ期-亜マグマ期に形成された花崗岩類の片麻状構造が斜交関係にあることから,両者は同じ変形作用を被っておらず,苦鉄質岩の面構造は,少なくとも花崗岩類との接触以前に形成されたと判断される.これらのことから,苦鉄質岩は花崗岩質マグマの定置以前に角閃岩相の変成作用を被った後,花崗岩質マグマに捕獲されたと結論づけられる.
著者
内村 公大 大木 公彦 古澤 明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.95-112, 2007-03-15
被引用文献数
1 2

鹿児島県八重山地域の地質層序を明らかにするために詳細な地質調査を行い,点在する鮮新統湖成層(郡山層)の対比を試みた.その結果,この地域に12の地層単元が識別され,郡山層は下位より厚地泥岩部層,峠砂岩部層,湯屋泥岩部層,花尾凝灰角礫岩部層に分けられた.また,郡山層堆積時に貫入した安山岩類(茄子田安山岩類)が識別され,湯屋泥岩部層中に2枚の火砕流(草木段火砕流・宮脇火砕流)が認められた.宮脇火砕流からは2.5Ma前後のK-Ar年代測定値が得られた.一方,八重山地域に分布する郡山層の珪藻化石群集として,湯屋泥岩部層最下部からStephanodiscus astraea群集,湯屋泥岩部層下部ではCyclotella michiganiana群集,宮脇火砕流を挟在する湯屋泥岩部層上部ではAulacoseira ambigua群集が認められた.火砕流と珪藻化石群集の対比から八重山地域に点在する郡山層はほぼ同時代に堆積した湖成層であることが明らかになった.
著者
田村 糸子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.157-162, 2008-04-15
被引用文献数
9 4

高等学校において地学教育の機会が減少の一途をたどっている.その要因の一つは,2003年度より施行された現行の学習指導要領である.「情報」・「総合的な学習の時間」・理科の3つの総合的な選択必修科目の導入による,理科の時間数減少の中で,受験に関係の少ない地学が最も削減の影響を受けたと予想される.「地学I」の全高等学校在学者数に対する履修率は3%で,理科の7つの選択必修科目の中で最も少ない.また,地学の教員が減少していることも大きな要因の一つである.高等学校生徒数の減少に伴い教員数も削減され,地学教員退職後の補充がほとんどされてない.地学が軽んじられているのは,高等学校の教育が,進路重視,入試最優先という実情にあると考えられる.今後,教育本来の目的を取り戻し,広い視点から高等学校教育を見つめ直す必要がある.
著者
吉川 周作 山崎 秀夫 井上 淳 三田村 宗樹 長岡 信治 兵頭 政幸 平岡 義博 内山 高 内山 美恵子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.535-538, 2001-08-15
参考文献数
20
被引用文献数
1

The explosion of a plutonium atomic bomb over Nagasaki city took place on 9 August 1945. After the explosion, a cloud formed, which passed over the Nishiyama district, where 'black rain' fell. Thus, the Nishiyama reservoir, located approximately 3 km from the hypocenter, received the heaviest radioactive fallout from the Nagasaki atomic bomb. Sediment samples were collected from the bottom of the Nishiyama reservoir in 1999 and analyzed for their ^<137>Cs, ^<241>Am and charcoal concentrations. The stratigraphic distribution of ^<137>Cs and charcoal clearly indicate that the 'black rain' horizon is recognized in the Nishiyama reservoir sediments. The 'black rain' horizon contains anthropogenic radionuclides (^<137>Cs and ^<241>Am) and charcoal in high concentrations.
著者
福田 理
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.95, no.11, pp.877-878, 1989-11-15
著者
志賀 武彦
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.38, no.453, pp.308-310, 1931-06-20

大分驗大野郡小野市村木浦鑛山の通稱「だつがたを」より産する含水砒酸鐵鑛物については先に地質學雜誌上に報告され或は毒鐵鑛或は葱臭石等と論ぜられたが、其の分析結果並びに其の屈折率等より或は含水砒酸鐵の成分を有する新鑛物ならんと假定されて現在に至つた。今囘伊藤助教授の指示により目下編纂中の日本鑛物誌第三版のために、先年工學博士高壯吉氏より好意ある提供をうけ福地、牧野兩學士の手元に保管中であつた標本、並びに其後集められた當鑛物學教室所藏の標本について測角及び分析を行つて見た。測角は V., Goldschmidt の複圓式測角器を用ひρ及び〓を測定した。其の結果は第一表の如くなり、其の形態のみから見る時には斜方完面像に屬する。ρの基準面としては底面の(001)を、〓の其れとしては假定の(100)を〓=90°00' の面とした實測値並びに其の實測値よりの計算値を示した。尚表中のnの欄は實測に用ひた面の數を表はす。表中の計算値は先づ(011)及び(120)の面より軸率の 0.,865:1:0.,972 を知り之より公式により計算したものである。其形は第一圖に示す如く錐面式の晶癖を有し、錐面上には主に晶帯 [011] の方向に無數の條線を有する。時には (011), (201)等の面上にも上記の條線に相應せる條線を見得ることがある。之等條線は各個々の微斜面の堺を表はし測角の際に於ては之等が或は散點せる、或は連續せるリボン状の反射像を與へる。之等微斜面の分布は大體晶帯 [011] 上、(111) より (211)間に、又時には晶帯 [101] 上、(111) 附近になつてゐる。結晶に (100) の面の現はれてゐるものと之を有せざるものとの二種あつて、 (100) の面を有するものにあつては常に (211) の面を有し、且つ晶帯 [011] 上に分布する結晶面群が (100) の面の現はれざるものよりも著しい。以上を綜合して球面投影圖に示したのが第二圖である。又此の鑛物の分析結果は第二表に示した。表中の計算値は葱臭石の分子式FeAsO_4・2H_2Oより計算せるもので良い一致を與へた。尚この結晶水は山本理學士の好意により熱天秤を用ひて測定することが出來た。その實驗によれば水は約攝氏二百二十度より二百五十度の間に其の全部が放出される。其の結果は結晶水の量15.,84 となり分析結果と又よく一致した。試料の異れるため先の分析表のものゝ結晶水は差を取つてゐる。以上の結果及び其の他の一般性質即ち比重、硬度、劈開等より見て木浦鑛山産の含水砒酸鐵鑛物は葱臭石であると決定して差支へないと思ふ。尚この研究の結果は近く他に詳しく報告されるであらう。
著者
松本 唯一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.58, no.682, pp.266-267, 1952-07-25
著者
河部 壮一郎 岡本 隆
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.12, pp.769-781, 2012-12-15 (Released:2013-04-26)
参考文献数
38
被引用文献数
1 7

北海道北西部羽幌川支流右ノ沢地域(羽幌ドーム)に分布する上部白亜系蝦夷層群は,下位より上部羽幌川層と流矢層に対比される.前者はサントニアン階に,後者は下部カンパニアン階に対比されると考えられる.また本地域と,より沖合であったとされる逆川地域でのアンモナイト類の産出状況を比較した結果,ハミトイド型アンモナイト類は,異常巻きアンモナイト類の中でもより浅海棲であったことが示唆された.