著者
歌川 史哲 指田 勝男 上松 佐知子 髙津 翔平
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.11, pp.969-976, 2017-11-15 (Released:2018-02-23)
参考文献数
15
被引用文献数
1

The Neogene Chikura Group, which is widely exposed in the southeastern part of Minamiboso City, Chiba Prefecture, Japan, is made up of a thick sequence of marine sedimentary rocks deposited in a middle to upper bathyal environment. The group comprises (in ascending order) the Shirahama, Shiramazu, Mera and Hata formations. The upper Pliocene Shirahama Formation is composed mainly of red-brown volcaniclastic sandstone and the Nojimazaki Conglomerate Member. This member comprises volcaniclastic conglomerate with granules to boulders of basalt and andesite, and is characterized by pebbles of andesite, basalt, granodiorite, gabbro, sandstone, siltstone, greenish tuff, and chert. We obtained Anisian and Ladinian (Middle Triassic) radiolarians from chert pebbles, and Bajocian to Callovian (Middle Jurassic) radiolarians from a siliceous siltstone pebble. These Mesozoic pebbles were probably derived from a Mesozoic accretionary complex (present-day Kanto District) in the northwestern part of Boso Peninsula.
著者
鈴木 舜一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.5, pp.256-261, 2008-05-15 (Released:2009-03-22)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

In the middle of the 8th century, a prospecting party under the Provincial Government of Michinoku discovered a gold placer at Nonodake Hill, the Province of Michinoku, Northeast Japan. The placer was worked by corvee labor. It was the earliest gold mining in Japan. K. Kudaranokonikishi, Governor of Michinoku, offered 33.75 kg of gold to the Emperor Shomu in 749. The people of the northern parts of Michinoku were saddled with 9.4 g of gold in poll tax from 752. The gold was used for gilding of the great bronze statue of Buddha at Nara, which was under construction. The statue, 15.8 m in height, was completed in 757. A total of 150 kg or more of gold was gilded the statue and others. In 760, the Japanese Government minted the first gold coin in Japan, which was named Kaikishoho. The working was interrupted because of a rebellion by the natives against the Government in 774, and was reopened after 38 years’ disturbances of war. The gold diggings decreased in production from the early part of the 9th century. The placer gold had been almost exhausted in the 15th century. A very small quantity of gold is still obtained from the remains of the diggings.
著者
安藤 寿男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.84-97, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
95
被引用文献数
7 8

関東平野東端には下部白亜系銚子層群,最上部白亜系那珂湊層群,古第三系大洗層が孤立して分布し,東北日本,西南日本の地帯構造を考える上で重要な情報をもたらす.3つの地層群の研究の現状をまとめた上で,それらの地質学的意義を考察した.東北日本の蝦夷堆積盆の北上および常磐亜堆積盆における上部アプチアン以上の白亜系~古第三系には,時代・層序・堆積相の上で3地層群に比較可能な地層は見られない.銚子層群は層序分布から関東山地北部の西南日本外帯秩父帯の山中白亜系の東方延長と見なされる.那珂湊層群は西南日本内帯南縁の和泉層群との共通性が高い.大洗層は礫の放射年代,植物化石などから白亜系ではなく古第三系の可能性が高い.那珂湊層群と大洗層は棚倉構造線の南方延長の破砕帯に含まれた古期岩類の断層隆起地塊をなしており,西南日本の要素と見なされる.大洗層は,関東山地北部の寄居層および神農原層とに対比できる可能性がある.
著者
久野 久
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.63, no.744, pp.523-526, 1957-09-25 (Released:2008-04-11)
参考文献数
6
被引用文献数
4 4
著者
山路 敦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.31-40, 2017-01-15 (Released:2017-04-18)
参考文献数
21
被引用文献数
2
著者
永田 紘樹 小松 俊文 シュリージン ボリス 石田 直人 佐藤 正
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.59-69, 2015-02-15 (Released:2015-05-19)
参考文献数
74
被引用文献数
2 2

島根県西部に分布する下部ジュラ系樋口層群の調査を行い,樋口層群を新たに下位より尾路地谷層と樋口谷層に区分した.尾路地谷層は,礫岩,砂岩,泥岩からなり,二枚貝化石のOxytoma sp.や“Pleuromya” sp.を産出する.樋口谷層は,軟体動物化石を含む暗灰色泥岩を主体とする.樋口谷層からは,6属6種の二枚貝化石,Kolymonectes staeschei,Palmoxytoma cygnipes,Ryderia texturata,Pseudomytiloides matsumotoi,Oxytoma sp., “Pleuromya” sp.が産出する.本層群の二枚貝化石群は,ロシアやカナダ北部に分布する下部ジュラ系から産する北方系のフォーナであるK. staescheiやP. cygnipesを含み,典型的なテチス系の種を含まない特徴がある.
著者
佐野 晋一 伊庭 靖弘 伊左治 鎭司 浅井 秀彦 ジューバ オクサナS.
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.121, no.2, pp.71-79, 2015-02-15 (Released:2015-05-19)
参考文献数
72
被引用文献数
3 6

日本の最下部白亜系産ベレムナイトを検討し,岐阜県荘川地域手取層群御手洗層からシリンドロチューティス科Cylindroteuthis aff. knoxvillensis Andersonの,そして宮城県気仙沼地域磯草層および福島県南相馬地域相馬中村層群小山田層からメソヒボリテス科Hibolithes spp.の産出を,それぞれ初めて確認することができた.ベレムナイト古生物地理において,シリンドロチューティス科はボレアル系,メソヒボリテス科はテチス系と考えられており,現在の緯度ではより北に位置する南部北上地域にテチス系動物群が,一方,手取地域にボレアル系動物群が存在することは,当時の古地理や海流系を復元する上で注目される.また,上記の3層から発見されるアンモノイドはテチス海地域から太平洋域に広く分布する属からなり,ボレアル系の要素は知られていないことから,当時の手取地域がテチス区とボレアル区の境界付近に位置していた可能性がある.
著者
佐野 貴司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.4, pp.207-223, 2017-04-15 (Released:2017-07-25)
参考文献数
126
被引用文献数
1

21世紀に入ってから,2つの海洋LIPs(オントンジャワとシャツキー海台)で基盤溶岩を採取する掘削が行われた.基盤溶岩は大陸洪水玄武岩の塊状層状溶岩流と類似していた.元来,両LIPsはプルーム頭部がプレート境界に衝突して生産されたと考えていたが,40Ar-39Ar年代は熱プルームモデルから想定されるよりも長期間の活動を示した.岩石学的に見積もられたマントルの温度(ポテンシャル温度)も熱プルームモデルから期待される温度(>400°C)よりは低温であった.両LIPs溶岩には様々に肥沃化した微量元素および同位体組成が認められ,これはプルームに起源を持つことを示していが,明瞭な下部マントルの特徴(例えば,高3He/4He比)は確認できなかった.また両LIPsの形成後の沈降量は熱プルームモデルから推定される値に比べると少ないことが分かった.単純な熱プルームモデルでは,両LIPsのマグマ成因を説明できなく,まだ沢山の課題が残っていることが分かった.
著者
原山 智 高橋 正明 宿輪 隆太 板谷 徹丸 八木 公史
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.Supplement, pp.S63-S81, 2010 (Released:2012-01-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2 7

飛騨山脈の北半部中央を南から北へ流下する黒部川の流域はいまだ踏査の行われていない地域が残る地質学的秘境の状態にある.近年に至っても様々な発見が相次いできており,その代表的な例が第四紀黒部川花崗岩の発見である.黒部川花崗岩は黒部川右岸中流域の祖母谷温泉から黒部ダム- 扇沢にかけてバソリスとして露出している.黒部川流域は日本国内ではもっとも多数の花崗岩貫入時期が確認される地域であり,ジュラ紀(190 Ma 前後),白亜紀前期末(100 Ma 前後),白亜紀後期初頭(90 Ma),白亜紀後期末(70 Ma前後),古第三紀初頭(65-60 Ma),鮮新世初頭(5 Ma),鮮新世(3 Ma),第四紀更新世前期(2-1 Ma)の貫入ユニットが確認できる.この流域には源頭部から黒部川扇状地に至るまで多数の温泉や地熱地帯が知られており,祖母谷,黒薙地域には80℃を超える高温泉がある.また黒部峡谷鉄道の終点,欅平から名剣温泉にかけてはマイロナイト化した花崗岩類中に熱変成した結晶片岩類が捕獲され,その帰属が議論されてきた.本見学旅行では,飛騨山脈の形成という視点で黒薙・鐘釣・祖母谷の温泉と,欅平-祖母谷温泉間の鮮新世-更新世の花崗岩および剪断帯を取り上げ,観察する.
著者
沢田 順弘 門脇 和也 藤代 祥子 今井 雅浩 兵頭 政幸
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.Supplement, pp.S51-S70, 2009 (Released:2012-01-26)
参考文献数
77
被引用文献数
2

山陰地方には主として玄武岩とデイサイトからなる第四紀火山が分布する.本見学旅行では,山陰中部の対照的な第四紀火山であるデイサイトからなる大山と,玄武岩からなる大根島-江島を見学する.大山は中国地方の最高峰,剣ヶ峰(1729 m)を主峰とする.火山活動は中期更新世(約100万年前)から始まり,1万7千年ほど前に終息している.一方,大根島-江島火山は宍道地溝帯中軸部において,19万年前に陸上で噴火した火山である.大山はデイサイト溶岩円頂丘や側火山,それらの周辺の火砕流や土石流堆積物,崩壊ないし崖錐堆積物,降下火山灰からなる.大根島は著しく粘性の低い玄武岩溶岩を主とする.給源の一つであるスコリア丘,天然記念物である溶岩トンネル,様々な形態の溶岩,火山地形,大山や三瓶山起源の広域テフラが観察できる.また,火山島の地下に普遍的に存在する淡水レンズを実感できる.
著者
池原 研 板木 拓也
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 = THE JOURNAL OF THE GEOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.11, pp.633-642, 2005-11-15
被引用文献数
1

冬季モンスーンはシベリア高気圧と周囲の低気圧との間の大気循環による現象である.東アジアではシベリア高気圧とアリューシャン低気圧や赤道・オーストラリア低気圧との間の風で特徴付けられ,日本列島周辺では北西季節風が卓越する.この低温で乾燥した北西風は,ロシア極東沿岸日本海の表層水を冷却し,沿岸付近では海氷を形成させる.冷却され,海氷形成時に排出された高塩分水が加わって重くなった表層水は沈み込んで日本海固有水と呼ばれる深層水を形成する.最近の海洋観測結果から,深層水の形成は海氷が形成される極端に寒い冬に起こっているので,海氷と深層水の形成は冬季モンスーンの指標となると考えられる.本稿では,過去16万年間の海氷の発達度合いを示す漂流岩屑の量と冷たくて酸素に富んだ深層水の指標となる放散虫<i>Cycladophora davisiana</i>の産出量を検討した.その結果,酸素同位体ステージ3-5においては,両者とも千年規模の変化を示し,東アジア冬季モンスーンがこの時期に千年規模で変動していたことを示唆する.両者が高い値を示す時期には冬季モンスーンが強かった可能性が高い.同時期の日本海堆積物にはやはり千年規模での変動をもつ夏季モンスーンの記録が暗色層として残されているので,これとの対応関係を見ることで,1本のコアから夏季・冬季モンスーンの強弱の歴史と両者の関係を解明できる可能性がある.<br>
著者
鈴木 茂之 松原 尚志 松浦 浩久 檀原 徹 岩野 英樹
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.115, no.Supplement, pp.S139-S151, 2009 (Released:2012-01-26)
参考文献数
35
被引用文献数
1 4

吉備層群(いわゆる「山砂利層」)は,ほとんど中~大礫サイズの亜円礫からなる,谷埋め成の地層である.時代決定に有効な化石は得られず,更新統とされていたが,稀に挟まれる凝灰岩層を対象とするフィッション・トラック年代測定によって,地層の定義や対比が行えるようになってきた.いくつかの堆積期があることが分かってきたが,岩相では区別しがたく,地層区分は高密度の踏査による地層の追跡が必要である.各層の基底は,地層を構成する礫を運んだ当時の河の谷地形を示す.この復元された古地形は,底からの比高が150m以上に達する深い谷地形である.これは一般的な沈降を続ける堆積盆に形成された地形より,むしろ後背地側の地形である.すなわち吉備層群には,一般的な沈降する堆積盆の地層に対する区分や定義の方法とは異なる,新しい取り組みが必要であり,堆積の要因についても考えなくてはならない.これらは案内者一同を悩ませ続けている課題であり,見学旅行を通じて議論をいただきたい.
著者
成田 敦史 矢部 淳 松本 みどり 植村 和彦
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.3, pp.131-145, 2017-03-15 (Released:2017-06-15)
参考文献数
35
被引用文献数
2

北海道北部の下川町上名寄に分布する中部~上部中新統パンケ層から33分類群より構成される大型植物化石群(上名寄植物群)を得た.パンケ層の堆積相解析と植物化石の組成,産状を基に上名寄植物群の示す古植生を復元した.上名寄植物群の示す古植生は,カツラ属やAcer subcarpinifolium(カエデ属),トウヒ属が優占する河畔植生,トクサ属やタケ亜科単子葉類,トウヒ属,ヤナギ属が優占する後背湿地植生,カツラ属やヤナギ属,フジキ属が優占する湖岸植生,湖周辺ではあるがブナ属優占の山地斜面のブナ林が強調された植生の4タイプの植生を認めた.上名寄植物群の組成的特徴は後期中新世~鮮新世前期の三徳型植物群と言える.堆積相と化石の産状から,上名寄植物群の主要構成種は,それらの近似現生種と同じ生育環境と考えられる.したがって,生態的に現在の植生に対比可能な群集が少なくとも北海道においては,中期中新世後期~後期中新世に成立していたことを示している.
著者
宇野 康司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.967-981, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
110
被引用文献数
1

西南日本に分布する三畳紀・ジュラ紀層状チャートのこれまでに蓄積された古地磁気データについて,その微弱な初生磁化からどの程度の精度で過去のプレート運動や堆積場の古緯度が読み解かれるかを議論し,また,チャートが記録する二次磁化についての情報を整理した.これまでに報告されているチャートの初生磁化方向の極性判断を行い古緯度を求めた結果,三畳紀中期には赤道付近で堆積していたことが示された.チャートはその後,南中国ブロックの東縁に付加した可能性が高い.西南日本のチャートは複数の二次磁化成分を記録しており,磁化の獲得機構による分類では粘性残留磁化,熱粘性残留磁化,および化学残留磁化の三種類が存在している.このうち熱粘性残留磁化と化学残留磁化はそれぞれ,西南日本の600km離れた二つの地域間における類似性がみられ,広域的な二次磁化であることが示唆される.
著者
上松 佐知子 鎌田 祥仁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.951-965, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
179
被引用文献数
2

本論文では放散虫とコノドント化石に関する過去25年間の研究成果を振り返る.放散虫生層序学分野では,中期古生代から中生代までの多くのデータが蓄積されると共に,化石帯の分解能が大きく向上した.コノドント化石は90年代以降,特にペルム系と三畳系の各階境界を定義する国際的な示準化石として重要性が増している.今後は放散虫とコノドント生層序の相互較正,更に生層序と年代測定学的尺度との対比を積極的に行っていく必要がある.生物学的研究については,放散虫の系統解析や生体飼育に関して我が国から多くの研究が発信され,知見が蓄積された.また付加体地域からは三畳紀コノドントの良質な標本が多数報告され,コノドントの古生物学的研究に貢献している.今後はこれらの研究を更に発展させると共に,微化石研究の一般への普及および次世代を担う若手研究者を育成していくことが重要である.