著者
林 広樹 笠原 敬司 木村 尚紀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.1, pp.2-13, 2006 (Released:2006-05-01)
参考文献数
78
被引用文献数
15 12

関東平野の地下に分布する先新第三系の地体構造に制約を与えるため,新第三系を貫通した深層ボーリング,および反射法地震探査のデータを収集した.収集したデータはボーリング49坑井,反射法地震探査31測線である.坑井ではコアまたはカッティングス試料により岩相を観察し,地体構造区分上の帰属を足尾帯,筑波花崗岩・変成岩類,領家帯,三波川帯,秩父帯,四万十帯およびこれらを覆う中生界の堆積岩類に区分した.また,坑井におけるVSP法またはPS検層データによって基盤岩の物性を調べたところ,より年代の古い地質体ほど大きなP波速度を示すことが明らかになった.この性質を用いて,反射法地震探査による地下構造断面を地体構造の観点から解釈し,関東平野地下における地体構造区分分布図を作成した.
著者
石田 直人
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.3, pp.83-94, 2007 (Released:2007-10-16)
参考文献数
33
被引用文献数
3 2

九州西部,五木北部地域の黒瀬川帯に分布する整然相砕屑岩類において,上部三畳系の上位を覆う下部ジュラ系が見出された.研究地域の上部三畳系は二枚貝化石によりCarnian階とされており,坂本地域の松求麻層に対比される.三畳系の上位を覆うジュラ系は,放散虫化石に基づくとHettangian階を含む可能性が高い.本研究ではこの下部ジュラ系を平沢津谷層と命名した.平沢津谷層は下部の粗粒砂岩厚層を主とする部分と上部の黒色泥岩を主とする部分から構成される.松求麻層と平沢津谷層の境界には上部三畳系Norian階およびRhaetian階の欠如が認められ,また境界を介して上下の地層の姿勢には差がないことから,三畳系-ジュラ系境界の関係は平行不整合と判断される.
著者
前田 晴良 上田 直人 西村 智弘 田中 源吾 野村 真一 松岡 廣繁
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.11, pp.741-747, 2012-11-15 (Released:2013-04-04)
参考文献数
44
被引用文献数
1 2

高知県佐川地域に分布する七良谷層の模式層序周辺の泥質砂岩中から,最上部ジュラ系を示す2種類のアンモノイド化石を発見した.そのうちAspidoceras属は,テチス海地域の最上部ジュラ系から多産し,Hybonoticeras属は同地域のキンメリッジアン−チトニアン階境界付近を示準するタクサである.これらの化石の産出により,七良谷層は最上部ジュラ系(キンメリッジアン−チトニアン階)に対比される可能性が高い.この結論は放散虫化石層序とおおむね調和的である.これまで七良谷層は,上部ジュラ系−下部白亜系鳥巣層群の層序的下位にあたる地層と考えられてきた.しかし七良谷層から産出したアンモノイドの示す時代は,鳥巣層群産アンモノイドのレンジと明らかに重複し,アンモノイド化石からは両岩相層序ユニットの時代差は識別できない.したがって,今後,七良谷層と鳥巣層群の層序関係を再検討する必要がある.
著者
関口 春子 浅野 公之 岩田 知孝
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.10, pp.715-730, 2019-10-15 (Released:2020-01-10)
参考文献数
48

将来の地震の地震動予測をより高精度にするため,既往の知見と既往の物理探査・地震観測データを融合して奈良盆地の堆積層の3次元速度構造モデルを構築した.奈良盆地は,大都市圏に比べ地下構造の探査情報が少ないが,盆地を埋積する堆積層には大阪盆地のそれと共通性があると考えられるため,大阪盆地の3次元速度構造のモデル化で培われた知見や技術を利用して奈良盆地の3次元モデルを構築した.重力異常から推定された基盤岩深度と盆地中央部のボーリングで得られた大阪層群の海成粘土等の情報を組み合わせて3次元の堆積年代構造のモデルを作り,これを経験式で地震波速度と密度に変換した.奈良盆地にはPS検層による直接的な速度構造情報は無いが,微動観測からの情報を用いることにより,地震動応答の面でもモデルの拘束や検証を行った.また,実小地震の波形モデリングと強震観測記録の比較から,地震動再現能力を確認した.
著者
平野 直人 阿部 なつ江 町田 嗣樹 山本 順司
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.1, pp.1-12, 2010 (Released:2010-05-29)
参考文献数
94
被引用文献数
8 6

太平洋プレートが沈み込む手前で活動するプチスポット火山は,プレート屈曲に起因し,各火山活動は単発に終わる特徴があり,様々な海域で活動している.つまりプレート屈曲場であればどこでも同様の火山が存在し得る.そのような沈み込む手前のプレート上のプチスポット火山体は,沈み込むプレート本体の海洋地殻や,海山等の古い火山体よりも選択的に陸側に付加されていることが容易に想像できる.プチスポット火山の検討により,このような地質学の新展開に加え,海洋リソスフェアの理解に関する新展開も期待される.プチスポット溶岩がもたらす捕獲岩や火道角礫岩は,これまで我々が手に入れることの出来なかった古い海洋プレートの断片として貴重な情報をもたらす.これら岩石に地質圧力計を適用し,近い将来行われる若いプレート上での21世紀モホール計画の成果と合わせ,四次元的に海洋プレートが理解されることが大いに期待される.
著者
柏木 健司 瀬之口 祥孝 阿部 勇治 吉田 勝次
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.118, no.8, pp.521-526, 2012-08-15 (Released:2012-12-19)
参考文献数
10
被引用文献数
1

This paper describes Saru-ana Cave, located along Kurobe Gorge in the Kanetsuri area, eastern Toyama Prefecture, central Japan. Saru-ana Cave (total passage length, ca. 120 m; relative height, ca. 40 m) opens onto a steeply inclined cliff face, 75 m above the bed of the Kurobe River. The cave consists of horizontal to inclined rooms and vertical shafts. Speleothems in the cave, although not abundant, include cave corals, flowstones, soda straws, stalactites, and a stalagmite. Fossil specimens of six Japanese Macaque individuals (Macaca fuscata) were collected from the cave for paleontological investigation.
著者
榎並 正樹 平島 崇男
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.9, pp.661-675, 2017-09-15 (Released:2017-12-25)
参考文献数
177
被引用文献数
1

本論文は,主に1990年代以降に印刷公表された研究成果をもとに,沈み込み帯や大陸衝突帯深部で起こっているダイナミクスや物質相互作用を記録した高圧-超高圧変成岩の研究を概観している.そして,その内容は,世界の超高圧変成帯のうち特に日本の研究者が岩石学的分野の研究において重要な貢献をした地域と,三波川変成帯や蓮華帯をはじめとする日本の高圧変成地域のエクロジャイトおよびそれに関連する岩相に焦点を当てたものである.
著者
土谷 信高 西岡 芳晴 小岩 修平 大槻 奈緒子
出版者
The Geological Society of Japan
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, pp.S159-S179, 2008

花崗岩質大陸地殻の形成機構を明らかにすることは,地球の進化過程の解明に通じる重要な研究課題である.本案内書では,北上山地の前期白亜紀アダカイト質累帯深成岩体と古第三紀浄土ヶ浜流紋岩類の主要な岩体について,岩石学的特徴とその成因について述べた.これらのアダカイト類の岩石化学的多様性の成因には,スラブメルトとマントルおよび下部地殻との反応の程度の差が主要な役割を果たしていたと考えられ,スラブメルトの発生から上昇・定置に至る現象の解明に重要な位置を占めると考えられる.
著者
岡村 行信
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.11, pp.582-591, 2010 (Released:2011-03-02)
参考文献数
67
被引用文献数
8 14

日本海東縁で発生した大地震の震源域と地質構造とを比較すると,大部分の震源域は幅15~20 kmの非対称な背斜構造に重なる.傾斜30~45°前後の逆断層が厚さ10~15 kmの上部地殻を切ると,その幅が10~20 kmになることから,日本海東縁に広く分布する同じような幅を持った背斜構造は震源断層を含む逆断層全体の上盤の変形によって形成された可能性が高い.2004年中越地震の震源域では褶曲構造を断層関連褶曲であると仮定して推定した断層形状が,震源断層とよく一致することが示されたが,同じような関係が日本海東縁の他の背斜構造にも適用できるかどうか検討する必要がある.地質構造から震源断層の位置を推定することができれば,将来発生する地震による地震動の推定精度を向上させることができ,地震災害の軽減に貢献できる.
著者
酒井 佑輔 堤 之恭 楠橋 直 薗田 哲平 堀江 憲路 松岡 篤
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.3, pp.255-260, 2019-03-15 (Released:2019-06-07)
参考文献数
28
被引用文献数
7

The Tetori Group in the Shiramine area (Ishikawa Prefecture, central Japan) is subdivided into the Gomijima, Kuwajima, Akaiwa, and Kitadani formations (from bottom to top). A variety of animal and plant fossils have been reported from the Kuwajima, Akaiwa, and Kitadani formations, but the depositional ages are still poorly constrained. We obtained the first reliable zircon U-Pb age from the Akaiwa Formation of the Tetori Group in the Shiramine area using laser ablation inductively coupled plasma mass spectrometry. The dated sample was taken from the lower part of the Akaiwa Formation along the Osugidani River (Shiramine area), and its U-Pb age is 121.2±1.1 Ma (95% confidence interval).
著者
植木 忠正 丹羽 正和
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.1061-1066, 2017-12-15 (Released:2018-03-28)
参考文献数
5

The conventional point-counting method for modal analysis of rocks is time-consuming and depends on the user to correctly identify minerals. We introduce an alternative method using a scanning X-ray analytical microscope in conjunction with image processing and analyzing software. This method is simple and less reliant on the skill and subjectivity of the user. By using this method for thin sections or polished slabs of granitic rocks, we provide clear images showing the distribution of minerals to enable objective modal analyses to be performed quickly and efficiently.
著者
山北 聡 大藤 茂
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.11, pp.585-590, 2007-11-15 (Released:2008-11-08)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

Folds in accretionary complexes, especially those in the Mino-Tanba Belt, are often called not “syncline” or “anticline” but “synform” or “antiform” evenly. However, this usage is not correct, since it cannot distinguish an inverted fold from a normal one. They are structurally quite different and distinguished from each other as a syformal anticline and a syncline or as an antiformal syncline and an anticline in normal sedimentary strata. “Synform” and “antiform” are terms for the folds that are out of this distinction; they should be used when the stratigraphic relationship or the facing is unknown. This terminology should be followed also in accretionary complexes, and “syncline” and “anticline” should be defined not with a chronological relationship between the strata in the core and the limbs, as in many glossaries and encyclopedias, but with a facing direction of the both limbs, namely, as a fold whose limbs are facing syn-axisward or anti-axisward, respectively.
著者
天野 一男 松原 典孝 及川 敦美 滝本 春南 細井 淳
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.Supplement, pp.S69-S87, 2011-09-01 (Released:2013-02-20)
参考文献数
46
被引用文献数
6

棚倉断層は新第三紀に日本列島形成に大きく関わって活動した大規模な横ずれ断層であり,断層沿いに多くの横ずれ堆積盆が発達する.その堆積盆内では断層の活動と海水準変動により堆積環境は,湖沼→河川→浅海→深海へと変化した.また,日本海の拡大と関連して活動したデイサイト質水中火山も存在する.本地域は日本列島の新生代テクトニクスを考える上での要の地域の一つである.本見学旅行では,横ずれ断層の運動に伴って形成された堆積盆内の堆積環境の変遷と火成活動を中心に観察する.
著者
千葉 達朗 林 信太郎 小野田 敏 栗原 和弘 藤田 浩司 星野 実 浅井 健一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.XXI-XXII, 1997-06-15
被引用文献数
4 1

5月11日午前8時, 秋田県鹿角市の澄川温泉で, 地すべりと石流が発生, 澄川温泉と赤川温泉の16棟が全壊, 国道341号も寸断された. 5月4日頃から水の濁りや道路の変状等が察知され, 適切な警戒避難が行われたため, この災害による死者・負傷者はなかった. なお, 地すべりの最中に末端付近で水蒸気爆発が発生した. ここでは, 5月12日にアジア航測(株)が撮影した空中写真, その後の現地の他, 秋田航空(株)が撮影した水蒸気爆発の瞬間の写真を紹介する.
著者
前杢 英明
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.Supplement, pp.S17-S26, 2006 (Released:2007-06-06)
参考文献数
45
被引用文献数
2 4

高知から室戸岬にかけての土佐湾北東部の海岸に沿って,標高数百m以下に海成段丘がよく発達している.特に室戸岬に近い半島南部では,段丘面の幅が広くなり,発達高度がより高いことから,切り立った海食崖と平坦な段丘面のコントラストが印象的であり,海成段丘地形の模式地として地理や地学の教科書等に頻繁に取り上げられてきた.本コースの見どころは,室戸沖で発生する地震性地殻変動と海成段丘形成史とのかかわりについて,これまでの研究成果をふまえて,傾動隆起などを実際に観察できることにある.さらに,ここ数千年間の地震隆起様式について,地形・地質学的証拠と測地・地球物理学的な見解に相違点があることを,現地を見ながら確認できる.