著者
高野 守
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.147-153, 1993
被引用文献数
2

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, BisGMAを用いた2種の二元系レジンのモノマー組成と重合率および粘度との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてBisGMA[2, 2-ビス{4-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル}プロパン], TriEDMA(トリエチレングリコールジメタクリレート)およびBMPEPP[2, 2-ビス(4-メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン]を用い, BisGMAに希釈モノマーをそれぞれ20〜100wt%の範囲で配合して調製した.試作したレジンについて, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射した後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, いずれの系の場合も, 光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, RDBは, BisGMAに配合する希釈モノマーの配合量の増加に伴い減少し, 80wt%で極小を示した.二元系レジンの重合率は, 成分モノマー単独の重合率の相加平均より大きかった.希釈モノマーの配合量が20〜80wt%の範囲の場合, 2種の二元系レジンの重合率はほぼ同じであった.二元系レジンの粘度は, いずれも希釈モノマーの配合量の増加に伴い単調に減少したが, 粘度の低減効果はTriEDMAの方がBMPEPPより大きかった.二元系レジンの重合率は, 成分モノマーの重合率の相加平均およびその粘度の増減に支配されることが示唆された.
著者
友清 直
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.225-232, 1992
被引用文献数
1

本研究は, 可視光線重合型レジンの重合率を改善することを目的とし, 複合増感剤の組成と重合率との関係を検討したものである.可視光線重合型アンフィルドレジンは, モノマーとしてトリエチレングリコールジメタクリレートを用い, これに種々組成を変化させた複合増感剤を配合して調製した.光増感剤としてはカンファーキノン(CQ), ベンズアンスロン(BA), ジベンゾイル(DB), チオキサンテン-9-オン(T9), 8-キノリンスルホニルクロライド(QC)および3-フェニル-5-イソオキサゾロン(PIO)を用いた.還元剤としては, メタクリロキシエチル-p-ジメチルアミノベンゾエート(DMAB-EMA)を用いた.重合禁止剤は, 2, 6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)を用いた, 複合増感剤の基本組成(NON)は, CQ0.30wt%, DMAB-EMA1.40wt%およびBHT0.01wt%とし, これに他の光増感剤を1〜3種配合して用いた.試作したレジンについて, FT-IRを用い, KBr液膜法に準じて吸光度スペクトルを測定した.測定は, 光照射前および90秒間光照射後の所定時間に経時的に行った.硬化させたレジン中の残存二重結合量(RDB)は, BA-PIO系のレジンの場合を除いて, いずれの場合も, 光照射開始5分以降経過時間(対数表示)と直線関係で減少した.BA-PIO系のレジンは, 重合反応の誘導期を示した.NONに光増感剤1種を配合した複合増感剤を用いた場合の重合率は, 光照射開始5分後でQC>DB>T9>NON>BAの順であった.複合増感剤に用いる補助光増感剤としては, QCが最適で, その配合量は0.30wt%であった.
著者
髙橋 辰政
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.412-419, 1990
被引用文献数
7

重合した可視光線重合型レジン中の残存二重結合量(RDB)の経時的変化を検討した.RDBは, 試作のアンフィルドレジン5種, 市販のコンポジットレジン8種および歯冠用硬質レジン3種について, フーリエ変換赤外分光光度計を用い, 液膜法に準じて測定した.吸光度の測定は, 光照射前および光照射後の所定の時期に行い, RDBは, 光照射前の二重結合量に対する百分率で表示した.5種のアンフィルドレジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, モノマーの種類によって5分でのRDBおよびこの時間以降でのRDBの減少速度に差が認められた.5種のアンフィルドレジンのなかで, 光照射開始5分後のRDBの最も少ない値を示したのは, モノマーとしてBMPEPP(BPE-200)を用いた場合で, 逆に最も多い値を示したのは, モノマーとして4PN-(TF)_2-(EMA)_6を用いた場合であった.Tri-EDMAを用いたアンフィルドレジンの場合, 光照射時間の延長にともない, RDBは減少したが, 1カ月後ではいずれの照射時間のものもほぼ同じ値を示した.市販可視光線重合型コンポジットレジンおよび歯冠用硬質レジンのRDBは, いずれも光照射開始5分以降対数時間と直線関係で減少した.また, いずれのレジンの場合もRDBは, ベースモノマーがBis-GMA系の場合に少なく, UDMA系で多かった.
著者
池村邦夫 紅露 良明 青木 真一郎 鳥居 啓介 立所 久明 寺前 充司
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯材器 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.94-95, 1993
被引用文献数
1

本研究は、新規開発のインパーバデュアル/ボンドシステムを用い、歯質に対するレジンセメント又はCRインレー、陶材、金合金、パラジウム合金、Ni-Cr合金等の各種間接修復材料の接着に関する統括的かつ基礎的検索をすることを目的として行われた。象牙質に対するレジンセメントの剪断接着強さの結果より、インパーバデュアル(インパーバボンド併用)は酸エッチング処理なしの象牙質に強力に接着(20Mpa)し、従来システム[国産品A(2液ボンド併用)=3.9Mpa]の5倍の値を示した。さらに、象牙質と金合金の剪断接着強さは27.0Mpaを示し、デュアルキュアと化学重合の両硬化方式において同等の強力な接着性が明らかとなった。
著者
森田 直久
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.218-239, 1990-03-25 (Released:2018-04-03)
被引用文献数
1

本発明の目的は, 鋳造床程度の大きさの純チタンを電解研磨により鏡面にまで仕上げることである.従来から, チタンの電解研磨は, その強い酸化傾向のために困難とされてきたが, 今回非水系の電解液を用い, 被研磨体の形状や電解条件などに工夫を加えた結果, 30cm2程度の大きさの純チタン板を電解研磨により鏡面仕上げすることができた.まず, 小型試片の電解研磨条件を見いだした.しかし, 大型試片の場合には同じ条件では, 研磨面の中程に顕著な梨地を生じ, 均一な研磨はできなかった.梨地部分は, 表面あらさ値が大きく, このままでは生体材料に適さない.このような梨地は電解液面を貫く被研磨体の面積を小さくすることで阻止できることを見いだした.また, 純チタン鋳造体の電解研磨は, 加工材の場合と同一の研磨条件で可能であった.さらに, アルコールを主成分とする電解液の溶媒成分の配合を変えることによって, より安全で, ふかみのある鏡面研磨が可能で, 疲労しにくく, 使用回数などの制限の比較的緩やかな優れた電解液を開発した. 例 エチルアルコール70ml iso-プロピルアルコール30ml 塩化アルミニウム6g 塩化亜鉛25g 電解条件 電圧30V 通電時間6分 電解液温25℃
著者
日比野 靖 橋本 弘一
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.554-559, 1995
参考文献数
14
被引用文献数
8

本研究の目的は強化型グラスアイオノマーセメントの諸性質を測定し, 従来型のグラスアイオノマーセメントと比較検討を行うことである. 強化型グラスアイオノマーセメント (Fuji DUET) と従来型のグラスアイオノマーセメント (Fuji I) を本研究に使用した. 各セメントの練和はメーカー指定の粉液比にて行った.稠度, 硬化時間, 被膜厚さ, 圧縮強さならびに崩壊率をADA規格No.8に準じて測定を行った. また, 操作時間の測定もあわせて行った. 接着強さならびに接触角の測定は従来から行ってきた方法により測定した. その結果, 強化型グラスアイオノマーセメントの稠度, 硬化時間, 操作時間ならびに圧縮強さは従来型と比較して小さい結果を示した. 被膜厚さならびに崩壊率については従来型と差が認められなかった. 強化型グラスアイオノマーセメントの各被着体に対する接触角はチタンを除いて従来型と比較して有意に大きな結果を示した. 強化型グラスアイオノマーセメントの各被着体に対する接着強さはAu-Ag-Cu合金を除いて従来型と差が認められなかった.<br> 以上のことから, 強化型グラスアイオノマーセメントは稠度, 操作時間ならびに圧縮強さが小さいものの, 従来型と比較してその諸性質に懸念される問題はないことが示唆された.
著者
荒木 吉馬 川上 道夫 菊池 雅彦
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.299-306, 1985
被引用文献数
3

前報において, トレー内の圧力分布は, 用いるトレーの形態に強く依存するものであることを指摘したが, 今回これをさらに具体的に実証するため, 3種の円形トレー, すなわち平板状のFタイプ, 同心円状のV字形溝を付したVタイプおよびVタイプの周縁にふちどりを付したRタイプにおいて内部圧力分布を測定するとともに, そのトレー形態による効果を流体力学的に検討した.<br> 各点の圧力は, Rタイプ, Vタイプ, Fタイプの順に大きかった.VタイプとRタイプのV字形溝より内側の圧力分布はほぼ平坦な形であり, 溝の部分で急激な圧力降下を示した.また, Rタイプのふちどり部分においても著明な圧力降下がみられた.<br> これらの特徴は解析結果とよく対応している.つまり溝およびふちどり部分では, 試料のせん断速度が高くなり, さらに溝の部分では流動路も長くなるので, それぞれの部分において特に圧力降下が著しくあらわれることになる.<br> 以上の結果から, トレー形態や筋圧形成が圧力分布に及ぼす影響はかなり明確に把握できるものと思われる.
著者
長山 克也 橋本 弘一 矢部 慶昭 山中 一郎
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.11, pp.107-108, 1988-03-31

硬質レジン前装冠の臨床応用に際し, リテンションビーズなどの機械的維持装置を付与しないで金属とレジンを接着させることにより, 歯質削除量の減少, 辺縁部の良好な封鎖性, 色調表現の容易さなどを得ることを目的として種々の金属表面処理を行い検討を加えた結果についてはすでに第5, 6回の本学会で報告した^<1, 2)>。今回は新しいレジン前装システムによる金属とレジンとの接着強度について, 種々の試験法を用いてその接着強度を測定し, またサーマルサイクル試験による接着強度の減少傾向について実験を行い, 接着界面の観察を行った結果, 従来の接着システムより良好な結果が得られ, 剪断試験によるNi-Cr合金とセボンドMKVの接着強度は16.4Mpa, Ag-Pd合金とは13.2Mpaの接着強度が得られた。
著者
平野 進 齋藤 仁弘 西山 實 平澤 忠
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.759-764, 1993-11-25 (Released:2018-04-05)
被引用文献数
6

市販光重合型コンポジットレジンの乾燥状態と吸水飽和状態における熱的性質について, 室温条件下で測定した.その結果, コンポジットレジンの熱伝導率は0.3〜0.8Wm-1K-1の範囲であった.また, 水分がその熱的性質に影響を及ぼすと示唆された.さらに, 吸水による影響は単純ではなく, フィラーの種類および混入量によって異なることが判明した.シリカが主たるフィラーでは, 吸水飽和状態での熱拡散率および熱伝導率は, 乾燥状態でのそれらに比較して上昇した.しかし, Zrのような元素を含むフィラーでは, 吸水飽和状態での熱拡散率や熱伝導率は, 乾燥状態のそれらに比較して低下した.
著者
横山 和泰 今井 弘一
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.703-719, 1990-09-25 (Released:2018-04-05)

最近の合着用セメントの細胞毒性をしらべるために, 市販の5種類18製品の市販品について, 細胞回復度試験法を活用してL-929細胞, HEp-2細胞, Gin-1細胞およびHp細胞を用いて実験を行った.その結果, リン酸亜鉛セメントおよびグラスアイオノマーセメントでは, 練和後3時間目および24時間目ともに, 4種類の細胞に対していずれもきわめて低い細胞回復度であった.カルボキシレートセメントでは, Hp細胞を除く3種の細胞に対して練和後の時間経過にかかわらず低い細胞回復度を示した.しかし, Hp細胞では練和後の時間経過でわずかながら細胞回復度の上昇をみた.グラスアイオノマーセメントでは, リン酸亜鉛セメントと同じく練和後の時間経過にかかわらず, きわめて低い細胞回復度であった.接着性レジンセメントでは5製品中の2製品で低い細胞回復度であったものの, 他の3製品は中等度の値を示した.酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントではグラスアイオノマーセメントと同程度の低い細胞回復度であった.また, 各セメントの実験培養液のpH値は, リン酸亜鉛セメント, グラスアイオノマーセメントおよび酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントでは弱酸性に傾き, カルボキシレートセメントではほとんど変化がなかった.一方, 接着性レジンセメンでは, 5製品で酸性傾向からアルカリ性傾向を示す製品まで認められた.さらに血清添加培養液中での溶解度は, グラスアイオノマーセメントで最も高かった.酸化亜鉛ユージノール・EBAセメントならびに接着性レジンセメント1製品がつぎに高く, カルボキシレートセメントでグラスアイオノマーセメントの約1/2の溶解度を示し, ついでリン酸亜鉛セメントと接着性レジンセメント1製品であった.他の接着性レジンセメント3製品ではほとんど溶解性が認められなかった.以上の結果から, 合着材の種類あるいは製品によって4種類の細胞に対する影響は大きく異なることが判明した.それには材料組成, 溶解度ならびに試験法の関与が考えられた.さらに合着材の細胞毒性をしらべる上で細胞回復度試験法の有用性も確認された.
著者
渡辺 和美エリゼッテ 鈴木 一臣 山下 敦 繁田 真人 今井 誠 矢谷 博文 中井 宏之
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.187-191, 1996
参考文献数
16
被引用文献数
5

歯質被着面に一定期間作用した仮着材は, 接着における阻害因子になることが懸念されている.そこで, 仮着材を作用させた象牙質に対する接着性レジンセメントの接着強さを測定し, 残留仮着材が接着に及ぼす影響について検討した.すなわち, ウシの歯象牙質に種々の仮着材を24時間作用させた後, エキスカベーターを用いて仮着材を肉眼的に付着していない状態まで除去し, この被着面と接着材(パナビア21, クラレ)との接着強さの測定および接着界面の形態をSEM観察した.その結果, コントロールの接着強さは6.9MPaであったが, ハイボンドテンポラリーセメント作用面に3.6MPa, フリージノールテンポラリーパック作用面に4.9MPaおよびテンパック作用面に5.3MPaの値を示し, いずれの仮着材においても低い値を示した.一方, 接着界面のSEM像から, コントロール試料においては約0.5μmの樹脂含浸層が確認されたが, 仮着材を作用させた後の接着界面には樹脂含浸層が生成されていなかった.
著者
藤島 昭宏 宮崎 隆 藤島 由香里 芝 [アキ]彦
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.218-226, 1997-05-26 (Released:2018-12-22)
参考文献数
17
被引用文献数
1

レジン前装チタンクラウンを製作する基礎的研究として, ノンリテンションビーズ法を想定した, 被着体としてのチタンの表面性状に及ぼすサンドブラスト処理の影響について, コバルトクロム合金と比較した.実験には平均粒径50, 110, 250μmの3種類のアルミナ粉末を用いて, 金属の板状試験片に対し処理圧力0.25〜0.45 MPaで5〜30秒間サンドブラスト処理を施し, その表面性状の変化を計測した. サンドブラスト処理による試験片の重量損失は, 処理時間の増加とともに単調に増加したが, アルミナ粒径の相違による影響は小さかった. チタンの重量損失は, コバルトクロム合金と比較して顕著に小さかったが, 体積損失に換算するとほぼ同一の値を示した. 反射電子(BSE)像から, 試験片表層にはサンドブラスト処理に用いたアルミナ粒子が明瞭に観察され, BSE像の画像解析から面積比の概算値で54〜61%のアルミナがチタン処理面上に存在していた. X線微小分析の結果, 10秒間のサンドブラスト処理でチタン上には33〜45 wt%, コバルトクロム合金上では22〜42 wt%のアルミナが検出された. また, 処理に用いたアルミナ粒径が小さくなるほど, アルミナの存在量は大きくなったが, 処理時間, 圧力の影響は小さかった. チタンでは処理圧を低下させることにより, 試験片の変形量は顕著に減少したが, 表面粗さの低下は小さかった. これらの結果から, チタンに対するサンドブラスト処理は, 他の非貴金属合金に対するよりも低圧力, 短時間の処理を行うほうが好ましく, またサンドブラスト処理によるアルミナ汚染の影響が避けられないため, サンドブラスト処理面に対する接着は, 金属だけではなくアルミナに対する接着性も考慮する必要性が示唆された.
著者
林 純子 金子 和幸 井上 豊仁 下村 和則 横瀬 勝美 廣瀬 英晴 西山 實 黒田 隆
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.279-286, 2004-07-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
9
被引用文献数
1

市販石膏溶解剤12製品を組成分析(IR, WDX, TG-DTA)して主成分を同定するとともに,石膏浸漬前後での溶解剤のpH変化,浸漬時間による溶解量を測定した.石膏溶解剤の主成分はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N, N', N'-三酢酸三ナトリウムである可能性が高かった.溶解剤の固形分含有率は10.4〜31.8%であった.未使用の石膏溶解剤のpHは,10製品で8〜9を,2製品で13以上を示した.普通石膏硬化物の溶解率は,浸漬時間の増加に件い増大し,pH8〜9の10製品では浸漬2〜3時間で100%を示したが,pH13以上の2製品では浸漬3時間で14.3〜37.4%であった.
著者
斉藤 仁
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
日本歯科理工学会誌 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.241-265, 1991
被引用文献数
5

超微小荷重を用いたビッカース硬さ試験では, 試験荷重の微小化に伴い, 荷重保持時間依存性, 負荷速度依存性, 荷重依存性, 圧痕の計測誤差などに従来よりはるかに厳密な検討が要求されてくる.本研究はこれらの基礎的問題を検討した上で, ヒト歯質における超微小硬さ, 特に従来, 測定が困難であったセメント質を中心に, 歯質の硬さを組織別, 部位別, 方向別に系統的に測定し, 以下の結果を得た.1.超微小荷重を用いた象牙質のビッカース硬さは荷重保持時間依存性, 荷重依存性, 圧入速度依存性を示した.2.3g以下の微小荷重では計測機器による計測値の差が大きくなり, 計測機器の選択は慎重に行われるべき事が示唆された.3.3gの微小荷重を用いた今回の硬さ試験方法により, 従来困難であったセメント質の硬さ分布の測定が困難となった.また象牙質の硬さ分布は従来の報告とほぼ同様であった.4.0.2gの超微小荷重を用いることにより, 管周象牙質と管間象牙質の硬さを測定することができた.
著者
寺岡 文雄 北原 一慶 木村 博
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.21, pp.244-245, 1993-03-15

レーザ変位計を用いた非接触法により、臨床に近い状態での模型材の凝結膨張を測定し、凝結膨張率と模型材の寸法精度との関係について検討した。ニューフジロック、インディックダイストーン、ニュープラストーン、モデルマティリアルの凝結膨張率は、それぞれ0.09%、0.10%、0.29%、0.76%であり、各メーカーの値よりも大きくなったが、こらは非接触法による測定法を用いたためだと思われる。
著者
齊藤 仁弘 升谷 滋行 塩田 陽二 廣瀬 英晴 平野 進 西山 實
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.216-220, 2005-04-25 (Released:2018-04-28)
参考文献数
10
被引用文献数
3

可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料の義歯床用レジンに付着したカレー食品に対する洗浄効果について検討した.試験体は, 可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料を義歯床用レジンにコーティングしたのち, カレー溶液中に8時間浸漬した.浸漬後, 可視光線重合器を用いて試験体に20および60秒間光照射した.試験体の色差は, 光照射前後の色調を測定して算出した.L∗値は, 同様の値であったが, 照射時間の延長にともないa∗値は増加し, b∗値は減少した.また, 光照射前後の色差は, 照射時間の延長にともない増加した.これらのことから, 可視光応答型酸化チタン光触媒含有塗料を用いた義歯洗浄の有用性が示唆された.
著者
根本君也 小松 光一 堀江 港三 ラファエル ボウエン 友常 健一 池見 宅司 並木 勇次
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯材器 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.992-998, 1992
被引用文献数
12

不定形粒子, 球状微粒子, 球状架橋ポリマー, 大きなガラス球粒子それぞれとMFを混合したフィラーを種々の割合で混入したコンポジットレジンを試作し, 上部開放型窩洞に充〓し, 重合時の力を測定して収縮応力を求めた.その結果, フィラーの充〓率が高くなると収縮応力も大きくなり, 従来の考え方と反した.フィラーの種類による影響では, 不定形の高充〓率の場合に収縮応力が最も大きかった.次に硬化後の試験体上部表面の形状を測定したところ, 中心部が陥没した形態で, フィラーの充〓率が低いと収縮が大きく, その大きさはモノマーの体積分率に比例し, フィラーの種類による差はみられなかった.
著者
福井壽男 向井 正視 篠田 了 長谷川 二郎
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯材器 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.685-690, 1992
被引用文献数
8

12%金-パラジウム-銀-銅合金は, 金, パラジウムの量はそれぞれ12%と20%と一定している.しかし, 銀の含有量は45〜55%で銅の含有量は10〜20%とメーカーによって異なる.この合金の銀と銅の組成比と金の添加量の増加の影響を知ることは材質評価だけでなく, 合金開発の指針としても重要である.本研究は銀と銅の比率が異なる12%金-20%パラジウム-銀-銅合金のS-12(石福金属)とCastwell M.C(GC)と20%金-パラジウム-銀合金のAlba 20を用いて, 熱処理の影響と硬化機構との関係を調べた.その結果, 12%金-20%パラジウム-銀-銅合金では銀と銅の組成比の違うS-12とCastwell M.Cの熱処理と機械的性質の特性は類似している.12%金-20%パラジウム-銀-銅合金の硬化機構は時効硬化型と固溶体硬化型の2つである.一方20%金-パラジウム-銀-銅合金の硬化機構は時効硬化型のみであった.