著者
大堀 淳 纓坂 智
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.2_113-2_132, 2007 (Released:2007-05-31)

本論文では,パターンマッチングとそのコンパイルを系統的に理解するための表示的意味論を提示し,それを基に,パターンマッチング構文を効率よいコードにコンパイルする系統的なアルゴリズムを提案する.まず,パターンを値の部分集合と見なし,パターンマッチング構文を,マッチングの対象項が含まれる部分集合を決定する機構と見なすことにより,パターンマッチングの集合論的意味論を与える.次に,各パターンの表示的意味を表現する木構造を定義し,それに基づきパターンマッチングのコンパイルアルゴリズムを導出し,このアルゴリズムの正しさを証明する.導出されたアルゴリズムは,分岐の選択に関して正しいばかりでなく,実行時の値のテスト回数に関して最適であり,かつ,冗長なパターンや網羅的でないパターン集合を常に正確に検出することが保証されている.以上構築したアルゴリズムは,Standard MLの拡張言語であるSML#言語に対して実装され,SML#コンパイラのパターンマッチングコンパイルモジュールとしての使用を通じてその実用性が確認されている.
著者
木下 佳樹
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_30-1_46, 2012-01-26 (Released:2012-03-26)

ごく基本的な数学的リテラシーだけを前提として,集合の帰納的定義,函数の再帰的定義を説明する数学的構造を,会話形式で説明する.
著者
辻田 眸 塚田 浩二 椎尾 一郎 Hitomi Tsujita Koji Tsukada Itiro Siio お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 お茶の水女子大学アカデミックプロダクション お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科 Graduate School of Humanities and Sciences Ochanomizu University Academic Production Ochanomizu University Graduate School of Humanities and Sciences Ochanomizu University
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.25-37, 2009-01-27
参考文献数
17
被引用文献数
5

携帯電話やメールなどさまざまな通信手段が普及したにもかかわらず,いまなお遠距離恋愛で悩んでいる人たちは多い.遠距離恋愛中のカップルは,個人差はあるにせよ,相手とつながり感を保ちたいという強いモチベーションをお互いに持っていると考えられる.こうした状況では,従来のアウェアネス共有システムのように弱いつながり感を共有するだけでなく,両者の生活空間での行為自体が相互に影響を与えあうような,比較的強いつながり感を提供する,いわば仮想的に同居しているような感覚を与えるシステムが有効になるのではないかと考えた.そこで,本研究では,プライバシーが守られる形で,遠隔地に設置されたランプ/ゴミ箱などの日用品の状態を相互に同期させることで,こうした仮想的な同居感覚を提供するシステム"SyncDecor"を提案,試作する.そして遠距離恋愛カップル間での遠隔実験の結果を示し,今後の展望を述べる.Despite the fact that various means of communication such as mobile phones, instant messenger and e-mail are now widespread; many romantic couples separated by long distances worry about the health of their relationships. Likewise, these couples have a greater desire to feel a sense of connection, synchronization or "oneness" with their partners than traditional inter-family bonds. This paper concentrates on the use of common, day-to-day items and modifying them to communicate everyday actions while maintaining a sustained and natural usage pattern for strongly paired romantic couples. For this purpose, we propose the "SyncDecor" system, which pairs traditional appliances and allow them to remotely synchronize and provide awareness or cognizance about their partners - thereby creating a virtual "living together" feeling. We present evidence, from a 3-month long field study, where traditional appliances provided a significantly more natural, varied and sustained usage patterns which ultimately enhanced communications between the couples.
著者
暦本 純一
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.196-210, 1996-05-15
被引用文献数
24

本稿では,ヒューマンインタフェース研究の新しい流れとして注目される,人間の実世界における活動を支援するインタフェース(実世界指向インタフェース)について解説する.まず1節で,実世界指向インタフェースの特徴を解説し,従来型のヒューマンインタフェースとの違いを明らかにする.2節では,現在までに研究開発されているシステムのサーベイを行なう.3節では,実世界指向インタフェースを構成するために必要な要素技術について解説し,最後に4節で,今後の研究課題について議論する.
著者
大和田 茂
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.47-50, 2006-10-26
被引用文献数
3

我々は,形状をゼリーの内部にプリントするゼリープリンターを提案する.このプリンターでは,出力形状が柔らかいゼリーであるために,加工が非常に容易であることが大きな利点としてあげられる.これにより,コンピュータの内部の情報を実世界に取り出し,変形したり加工したり食用にすることが可能となる.さらに,三次元の標高データを出力することもできるので,自由に切ってその断面をみることも可能である.
著者
権藤 克彦 新山 祐介 荒堀 喜貴
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.4_97-4_128, 2022-10-25 (Released:2022-11-22)

本論文ではSwift言語のARC機能により発生する強い循環参照やメモリリークを自動的に検知する新しいツールUCDetectorを提案する.Swift言語の「静的型付けで安全な言語でありながら低レベルなプログラミングが可能」という特徴,SwiftリフレクションAPI,デバッガ lldb Pyton APIを用いることで,簡易かつコンパクトな実装が可能だったこと,その際に自明ではない様々な障壁があったことを知見として本論文では報告する.また,実装した循環参照検知器の精度と効率に対する予備評価の結果も報告する.
著者
古澤 仁 高井 利憲
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.3_14-3_34, 2006 (Released:2006-09-30)

クリーニ代数は正規言語を公理的に取り扱うための代数的枠組みである.正規表現が計算機科学のいたるところに現れることを考えると,クリーニ代数が計算機科学に現れる構造の自然なクラスの性質を公理的にとらえ得るであろうことが容易に推測されるであろう.クリーニ代数の定義は,等式とホーン節で与えられるため,ある現象をクリーニ代数においてモデル化すると,その現象が簡単な式変形によって検証できるという特徴をもつ.本稿ではクリーニ代数の基本的な性質とそのプログラム理論への応用例について紹介する.
著者
梅村 晃広
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.3_24-3_35, 2010-07-27 (Released:2010-09-27)
被引用文献数
1

本解説記事では,各種フォーマルメソッドの背後で動作する証明(補助)エンジンとしても注目を集めている,SATソルバ,SMTソルバについて,その背景,基本的な概念,技術動向および応用についての動向を解説する.SATソルバは近年飛躍的な技術革新があり,これに伴ない,いろいろな分野から応用への注目が集まるようになった.また,これに合わせるようにSMTソルバという発展的な概念も発生してきた.本稿は,これらについて,特にフォーマルメソッドとの関係における位置付けを概説するものである.
著者
藤田 憲悦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.285-291, 2003-05-23 (Released:2012-08-20)

カリー・ハワード同型を古典論理にまで拡張することにより,M.Parigotは古典論理の証明項を表現する体系としてλμ計算を導入した.本論文では,万能的な計算モデルの観点から,タイプフリーのλμ計算でもD. Scott流の外延的モデルが存在することを示す.そのために,(η)規則も妥当とするCPS変換を導入する.そして,D × D ≅ D ≅ [D → D]を満たす任意の領域Dから外延的λμモデルを構成する.さらに,合流性やC-monoidsとの興味深い関係についても論じる.
著者
大岩 元
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.218-227, 1988-07-15

ソフトウェアの生産性が問題となっているが,必ず実効の上がる改善策としてキーボード教育がある.まず英文タイプのブラインド技術はわずか2〜3時間の初期訓練によって獲得できるものであることを示し,続いてタイピング作業の認知モデルを,タイピングCAIプログラムと関連させて述べる.ソフトウェア作成には文書化作業が大きな比重をしめるが,この作業効率を上げるには,下書きせずに技術者が直接ワークステーションで文書作成を実行することが望ましい.これには日本語入力の方法とそれをどのように教育するかが問題となる.そこでまず日本語入力の基本となる,各種カナ入力法について論評を加える.さらに漢字の直接入力法について論じた後,入力法の評価に関する研究をいくつか紹介し,それが非常に困難な問題であることを示す.最後にキーボードと計算機本体の接続を標準化すべきことを指摘する.
著者
松原 正樹 深山 覚 奥村 健太 寺村 佳子 大村 英史 橋田 光代 北原 鉄朗
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1_101-1_118, 2013-01-25 (Released:2013-03-05)

本論文では創作過程の視点に基づいて自動音楽生成に関するサーベイを行う.Shneidermanの創作過程の枠組みによれば,創作過程はCollect, Relate, Create, Donateの4つのフェーズからなる.計算機システム,ユーザ,システム設計者の3者全体を1つのトータルシステムと捉えると,創作においてそれぞれの要素が4つのフェーズをどう分担するか考えることができる.我々は既存の自動作曲・自動編曲・演奏表情付けシステムに対してこの観点から分析を行った.分類結果より各システムにおける4つのフェーズの共通項や差異を比較することができるようになり,音楽生成研究の進むべき方向性を示すことができた.
著者
川島 英之
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.3_44-3_49, 2016-07-25 (Released:2016-09-25)

データ基盤システムを役割で大別すると,SQL問合せ処理システムとトランザクション処理システムという2つのサブシステムに分けられる.従来型のデータベース管理システム(DBMS)はこれらを兼ね備えている.一方,性能向上のために,近年はサブシステム毎の高度化が行われている.本論文ではこれらに関する近年の動向を解説する.

11 0 0 0 OA 型理論IV

著者
龍田 真
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.360-372, 1991-07-15
被引用文献数
2
著者
森畑 明昌
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_147-1_158, 2012-01-26 (Released:2012-02-26)
被引用文献数
1

正規表現はスクリプト言語などで広く使われているが,既存の処理系の多くはバックトラックを用いてこのマッチング処理を実装しており,最悪時の効率が悪い.実用的な様々な拡張を加えた正規表現に対するマッチングアルゴリズム,特に,文字列置換等の用途で用いられる「部分マッチの取り出し」を行えるアルゴリズムが望まれる.本論文では多くの処理系で利用可能な「先読み・否定先読み」をもつ正規表現の有限状態オートマトンへの変換を示す.まず,先読み・否定先読みを持つ大きさmの正規表現を状態数O(22m)の決定的有限オートマトンに変換する手法を示す.次に,部分マッチの取り出しを扱うため,重み付き正規表現を議論する.そして先読み・否定先読みを持つ大きさmの重み付き正規表現を状態数O(22m)の重み付き非決定的有限オートマトンに変換する手法を示す.これらのオートマトンにより効率の良いマッチングを達成できる.