著者
大岩 元
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.218-227, 1988-07-15

ソフトウェアの生産性が問題となっているが,必ず実効の上がる改善策としてキーボード教育がある.まず英文タイプのブラインド技術はわずか2〜3時間の初期訓練によって獲得できるものであることを示し,続いてタイピング作業の認知モデルを,タイピングCAIプログラムと関連させて述べる.ソフトウェア作成には文書化作業が大きな比重をしめるが,この作業効率を上げるには,下書きせずに技術者が直接ワークステーションで文書作成を実行することが望ましい.これには日本語入力の方法とそれをどのように教育するかが問題となる.そこでまず日本語入力の基本となる,各種カナ入力法について論評を加える.さらに漢字の直接入力法について論じた後,入力法の評価に関する研究をいくつか紹介し,それが非常に困難な問題であることを示す.最後にキーボードと計算機本体の接続を標準化すべきことを指摘する.
著者
塩見 彰睦 喜多 辰臣 河合 和久 大岩 元
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.920-928, 1992-07-15

日本語2ストローク入力との併用に適した仮名漢字変換方式として 漢字混じり仮名漢字変換を提案し その実現について述べる日本語2ストローク入力と従来の仮名漢字変換入力を併用した場合 入力したい熟語を構成する漢字のうち 一つでもその漢字の2ストロークコードを入力できないときには すべての漢字をその読みで入力し 変換しなければならなかったこの欠点を解決するのが 漢字と読みが混じった文字列を熟語に変換する漢字混じり仮名漢字変換である本論文では 漢字混じり仮名漢字変換を行うための方式として 変換用辞谷の見出し語を漢字混じり語に拡張するものと 入力文字列に含まれる漢字をキーに辞書引きを行う漢和辞書を用いるものとを提案するさらに この二つの方式でパーソナル・コンピュータ上に漢字混じり仮名漢字変換システムを実現し その比較を行ったその結果 変換速度ならびにパーソナル・コンピュータ環境での実現性の点で 漢和辞書を用いる方式が優れていることが明らかになったまた 同方式はMSーDOS上のデバイス・ドライバとして実現され いくつかのエディタやデータベース 日本語ワープロなどの市販ソフトウェアに試用され 実用に供しうる日本語入力システムであることが確認された
著者
小野 芳彦 山田 尚男 池田 研二 斎藤 正男 山田 尚勇 大岩 元 小野 芳彦
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

前年度までの研究で、日本文の入力作業を大脳半球の言語作業優位性と操作空間作業優位性の問題としてとらえることの妥当性を実験的に検証した。本年度は最終年度であるため、研究のとりまとめを中心とした。1.操作空間作業であるタイピング作業を操作空間的に学習させるTコード練習システムの有効性を、獲得したコードの打鍵誤りの分析から示した。これは、コードの記憶誤りが記憶の空間的な構造を反映して特異な偏りを示すことを説明できるものである。2.Tコードの練習過程におけるコードの獲得を含めた習得経過のモデル化と、モデルの適用による練習文の評価をおこなった。文字をみてコードを打鍵することの繰り返しがコードの獲得につながる。一般的に、肉体的あるいは認知的作業速度の上達は繰り返しの回数の定数乗に比例するという法則を満たすが、打鍵速度の上達も、個々の文字の打鍵について同じ法則を適用して説明できることを示した。ただし、短期記憶に保持されたコードが再利用されない場合に限られる。初期の練習ではその保持できる文字数が2であることが観測された。ここで、練習文に同じ文字や文字列パターンの繰り返しがあると、それらは短期記憶に貯められ、コード獲得には役立たないことが示唆される。3.上記のモデルから、濃密ではあるが短期記憶に保持できないパターンの練習文を設計した。この新しい練習文による打鍵実験を新たな被験者に対して行ない、モデルの検証を合せて行った。実験データーから、短期記憶の保持文字数が2ないし3であることの確認ができた。さらに、句読点の直後には、短期記憶の消去が伴いがちであること、すなわち、練習文の読み取りのために短期記憶が占有されてしまうことが確認できた。
著者
大岩元 高嶋 孝明 三井 修
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.772-779, 1983-11-15
被引用文献数
4

日本語入力は 日本のオフィスオートメーションにおける最重要課題の一つであるが タイプライタの使用に慣れないために キーボード入力が必要以上に嫌われている.タッチタイプに関する山田らの研究に基づいて 一般人の使用にもたえると同時に 入力専門家の高速入力にも使える 多ストローク直接入力方式の可能性について検討し 30キー鍵盤を用いた一つの入力コード体系TUTコードを提案する.カナのコードは50音表の「行」と「段」の構造を利用して 体系的に設計してあるので 左手で「行」 右手で「段」を指定することにより 全部で16個のキーだけを用いて 濁音 半濁昔 よう音を含むすべてのカナを入力することができる.したがって 3時間の練習でカナをブラインド・タッチで入力することが可能となり カナ漢字変換の入力を一般人が効率的に行うことができる.漢字は残りのキーを用いて 725字を2ストロークで さらに1 800字を3ストロークで入力する.コードの設計にあたっては 連想は排して 文字の出現頻度と指の動きやすさのみを考慮して行った.とくに2ストローク入力については2字続きの文字組の出現頻度まで考慮したので 熟語が打ちやすいという特長が生まれた.これによって 入力専門家による高速入力が可能になると期待される.
著者
辰己 丈夫 大岩 元 斎藤 俊則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.62, pp.57-62, 2005-06-18

筆者らは、放送大学教養学部の授業科目「情報技術と社会('05)」を2004年度1年間をかけて収録した。この授業は2005年度から4年間放送され、数千人の登録学生が放送講義を視聴して、印刷教材を読んで、単位認定試験に取り組む。本発表では、実際の収録の過程を振り返りながら、このような放送講義では何ができるのか、何ができないのかについて述べる。また、入学試験が存在しない放送大学において単位認定が持つ機能と意味について考察を行なう。We produced a subject "Information and Communication technologies and Society" at The University of The Air school. In this report, we describe the process of the production we experienced. We report what we can do and what we cannot do in this broadcasting lecture. We will talk about the function and the meaning of the unit recognition in The University of the Air which does not have the system of entrance exam.
著者
辰己 丈夫 大岩 元 斎藤 俊則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. CE,[コンピュータと教育] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.57-62, 2005-06-18
参考文献数
1

筆者らは、放送大学教養学部の授業科目「情報技術と社会('05)」を2004年度1年間をかけて収録した。この授業は2005年度から4年間放送され、数千人の登録学生が放送講義を視聴して、印刷教材を読んで、単位認定試験に取り組む。本発表では、実際の収録の過程を振り返りながら、このような放送講義では何ができるのか、何ができないのかについて述べる。また、入学試験が存在しない放送大学において単位認定が持つ機能と意味について考察を行なう。
著者
大岩元 高嶋 孝明 三井 修
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.772-779, 1983-11-15

日本語入力は 日本のオフィスオートメーションにおける最重要課題の一つであるが タイプライタの使用に慣れないために キーボード入力が必要以上に嫌われている.タッチタイプに関する山田らの研究に基づいて 一般人の使用にもたえると同時に 入力専門家の高速入力にも使える 多ストローク直接入力方式の可能性について検討し 30キー鍵盤を用いた一つの入力コード体系TUTコードを提案する.カナのコードは50音表の「行」と「段」の構造を利用して 体系的に設計してあるので 左手で「行」 右手で「段」を指定することにより 全部で16個のキーだけを用いて 濁音 半濁昔 よう音を含むすべてのカナを入力することができる.したがって 3時間の練習でカナをブラインド・タッチで入力することが可能となり カナ漢字変換の入力を一般人が効率的に行うことができる.漢字は残りのキーを用いて 725字を2ストロークで さらに1 800字を3ストロークで入力する.コードの設計にあたっては 連想は排して 文字の出現頻度と指の動きやすさのみを考慮して行った.とくに2ストローク入力については2字続きの文字組の出現頻度まで考慮したので 熟語が打ちやすいという特長が生まれた.これによって 入力専門家による高速入力が可能になると期待される.
著者
岡田 健 中鉢 欣秀 鈴木 弘 大岩 元
出版者
FIT(電子情報通信学会・情報処理学会)運営委員会
雑誌
情報科学技術フォーラム一般講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2002, no.1, pp.119-120, 2002-09-13

日本語を用いてJavaバーチャルマシン(以下JavaVM)上で動作するプログラムを記述できる日本語プログラム言語を設計・実装した。JavaVMのアセンブリ言語であるバイトコードを日本語化し、アセンブラレベルの日本語開発環境を開発した。更に日本語バイトコードを改良しながら日本語プログラム言語を設計している。
著者
鈴木 弘 今城 哲二 中鉢欣秀 大岩 元
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.102-102, 2000-11-15

我々は,日本人のためのプログラミング言語として,日本語による文章表現を基にしたプログラミング言語を設計し実装している.普段使用している日本語のほうが従来の英語的なプログラミング言語よりも書きやすく,読みやすいという考えに基づいている.日本語は英語のように単語を空白で区切ることなく,続けて書くのが一般的である.我々が設計しているプログラミング言語も一般的な日本語に合わせ,空白で区切ることをしない言語を前提にしている.これを分かち書きしないという意味で,非分かち書き日本語プログラミング言語とする.本論文では,非分かち書き日本語プログラミング言語,すなわちセパレータのないプログラミング言語に対しての字句解析について述べる.We design new programming language for Japanese. We think Japanese-based programming language is better than English-based programming language for Japanese. The feature of this language is that grammar are based on Japanese and tokens are not separated by space character like a sentence in Japanese. This paper discusses a lexical analysis method for non-separated Japanese-based programming language.
著者
大岩 元
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.1-6, 2015-03-16

21世紀の市民社会を形成するための基礎としての識字教育として,プログラミング教育を行う必要があることを主張する.コンピュータの安易な教育利用が日本の教育に弊害を与えた例として,大学入試センター試験を示す.識字教育として行うプログラミング教育の内容は,市民が共有すべき知識/スキルであることから,目的/手段展開という一般性のある視点から行い,母語としての日本語を使うことで,プログラミング「言語」教育から決別すべきことを提案する.
著者
大岩 元
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2009-CE-100, no.6, pp.1-3, 2009-06-27

「絶対情報学」は、音楽家としての経験から来る身体知をベースにした画期的な一般情報教育の教育法を論じた本である。伊東の指摘する「情報教育の非対称性」、即ち、情報システム側の原理や使い方は教えられるが、それを利用するユーザー側の問題について殆どあつかわれていないことについて、議論する。
著者
斎藤 俊則 大岩 元
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.2856-2868, 2004-12-15

情報メディアとしてのインターネットの普及によって人々の情報受容のあり方が変化し,「情報内容を自分の力で批判的に吟味する力」すなわち,メディア・リテラシーの育成が教育の重要な部分を占めるようになってきた.情報教育という観点から,メディア・リテラシー教育を行う場合の「教育目標」,「教育内容」,「教育実践のモデル」を検討し,大学生への情報教育の一環として,記号学に基づくテキスト読解を行わせることを試みた.その結果,「情報の価値や信頼性」を吟味するためには,(1)メディアと自己との関係を中心に日常生活を再発見すること,(2) 社会的なコンテクストに注意を払わなければならないこと,(3) 無意識に設定している自分の視点を顕在化させること,が有効であることが分かった.
著者
大岩 元 Hajime Ohiwa 豊橋技術科学大学情報工学系
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.218-227, 1988-07-15

ソフトウェアの生産性が問題となっているが,必ず実効の上がる改善策としてキーボード教育がある.まず英文タイプのブラインド技術はわずか2~3時間の初期訓練によって獲得できるものであることを示し,続いてタイピング作業の認知モデルを,タイピングCAIプログラムと関連させて述べる.ソフトウェア作成には文書化作業が大きな比重をしめるが,この作業効率を上げるには,下書きせずに技術者が直接ワークステーションで文書作成を実行することが望ましい.これには日本語入力の方法とそれをどのように教育するかが問題となる.そこでまず日本語入力の基本となる,各種カナ入力法について論評を加える.さらに漢字の直接入力法について論じた後,入力法の評価に関する研究をいくつか紹介し,それが非常に困難な問題であることを示す.最後にキーボードと計算機本体の接続を標準化すべきことを指摘する.
著者
大岩 元
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, pp.814-815, 2017-10-28

一般講演要旨
著者
大岩 元
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, pp.633-634, 2017-10-28

一般講演要旨
著者
大岩 元
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, pp.572-573, 2017-10-28

一般講演要旨
著者
大岩 元
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
年次学術大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, pp.340-343, 2017-10-28

一般講演要旨
著者
大岩 元
雑誌
情報処理学会論文誌教育とコンピュータ(TCE) (ISSN:21884234)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.1-6, 2015-03-16 (Released:2015-03-11)

21世紀の市民社会を形成するための基礎としての識字教育として,プログラミング教育を行う必要があることを主張する.コンピュータの安易な教育利用が日本の教育に弊害を与えた例として,大学入試センター試験を示す.識字教育として行うプログラミング教育の内容は,市民が共有すべき知識/スキルであることから,目的/手段展開という一般性のある視点から行い,母語としての日本語を使うことで,プログラミング「言語」教育から決別すべきことを提案する. We propose the programming education should be regarded as a literacy education for 21st century citizens. Development method from purpose to means is introduced as a design methodology for programming together with mother language programming.
著者
岡田健 杉浦学 松澤芳昭 大岩元
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.123(2007-CE-092), pp.123-128, 2007-12-08

日本語プログラミング言語「ことだま on Squeak」を用いて、プログラミング入門教育を行なうことにより、論理的に考える訓練を行った後、Java で同じ内容を行ない、更にそれを発展させる「論理思考とプログラミング」という新しい授業科目を実施した。その設計思想と実施結果について報告する。
著者
高橋 延匡 SHAPIRO Stua RALSTON Anth KERSHNER Hel SELMAN Alan 中森 眞理雄 大岩 元 都倉 信樹 牛島 和夫 野口 正一
出版者
東京農工大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

わが国の大学の情報処理教育のカリキュラムは米国に比べると著しく遅れているというのが通説であった。本研究代表者および分担者は情報処理学会の「大学等における情報処理教育の改善のための調査研究」で中心的な役割を果たし,コンピュータサイエンスのモデルカリキュラムJ90の作成に貢献した。しかし,J90を各大学で具体化して実現するには,授業時間配分や担当教員の割り振りなど多くの問題を解決しなければならないことが明らかになった。そこで,本年度は,米国で,過去にコンピュータサイエンスのモデルカリキュラムを各大学で具体化して実現する際にどのようにしたかを調査することにした。まず,予備調査として,ACM(米国計算機学会)が1988年に発表したコンピュータサイエンスの見取図である9行3列のマトリクス(以下では「デニング図」と呼)をカリキュラムの評価に使うことが可能かどうかを検討した。デニング図の各行は1アルゴリズムとデータ構造,2計算機アーキテクチャ,3人工知能とロボティックス,4データベースと情報検索,5人間と計算機のコミュニケーション,6数値的計算と記号的計算,7オペレーティングシステム,8プログラミング言語,9ソフトウェアの方法論とソフトウェア工学に対応する。デニング図の各列は(1)理論,(2)抽象化,(3)設計に対応する。個々の大学のコンピュータサイエンスのカリキュラムについて,その各授業科目をデニング図の27(=9×3)の枠にあてはめてみることにより,そのカリキュラムの特徴が明らかとなる。さらに,もう一つの予備調査として,ACMが1991年に発表したコンピュータサイエンスの頻出概念について,カリキュラム評価の手法として使うことが可能かどうかを検討した。ACMの頻出概念は(A)バインディング,(B)大規模問題の複雑,(C)概念的および形式的モデル,(D)一貫性と完全性,(E)効率,(F)進化とその影響,(G)抽象化の諸レベル,(H)空間における順序,(I)時間における順序,(J)再利用,(K)安全性,(L)トレードオフとその結果,の12から成る。検討した結果,ACMの頻出概念はきわめて重要なものを含んでいるが,(a)これら12個の概念は互いに独立であるか,(b)これら12個の概念はコンピューサイエンスを完全に覆っているか,についてさらに詳しく検討する必要があることがわかった。以上の予備調査を行った上で,米国ニューヨーク州立大学バッファロー大学計算機科学科を訪問し,共同研究を行った。研究の方法は,デニング図を含むカリキュラム評価方法やコンピュータサイエンスの頻出概念について,日米双方の研究代表者・分担者が見解を述べ,互いに賛否の意見を出し合う,という形で行った。この過程で,バッファロー大学ではデニング図を用いて自己点検・評価を行っていることが示された。ACMの1991年報告書では「広がり優先方式」(以下,「BF方式」と呼ぶ)によるカリキュラム編成方式が紹介され,それを実現するために多数の「知識ユニット」が提案されている(もちろん,それらの知識ユニットを組み合わせて,学問体系に沿って教える伝統的なカリキュラムを編成することも可能である)。このBF方式カリキュラムについても議論した。米国分担者達はBF方式カリキュラムを試みたが,現在は伝統的なカリキュラムに復帰しつつあるという見解であった。ACMのSIGCSE研究会の研究発表の内容を調べた結果,非BF方式カリキュラムに対する支持が強いことが確かめられた。もっとも,教育は必然的にBF的面を有するものであり,BF方式カリキュラムが妥当であるか否かという問題は,知識ユニットをどの程度の大きさにするのが適切であるかという問題に帰着され,今後の検討課題となった。本研究の期間中に,ACMのSIGCHI研究会から人間と計算機のコミュニケーションを主題とするカリキュラム案が発表された。このカリキュラム案に伴って紹介されている演習課題についても検討した。この分野は日本が大きな貢献をすることが可能な分野であり,今後の研究課題とすることにした。