著者
相田 美喜 伊藤 一幸 池田 浩明 原田 直國 石井 康雄 臼井 健二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.42, pp.46-47, 2003-04-19

水田除草剤のベンスルフロンメチル(BSM)が、絶滅危惧種とされる水生シダのサンショウモ、オオアカウキクサ、デンジソウおよびミズニラの生育に及ぼす影響を野外試験により検討した。また、サンショウモとオオアカウキクサの現生育地における出現状況とBSM濃度の消長を調査するとともに、現生育地において想定される低濃度域のBSMに対するサンショウモとオオアカウキクサの感受性を室内試験により検討した。
著者
芝山 秀次郎 小川 明子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.207-213, 2000-10-30

佐賀県北部の台地畑作で不斉一発生するナズナの種子の形態や土壌からの発生と環境要因について調査した。結実個体から採取したナズナの1果実内の種子粒数は, 種子の成熟あるいは採取時期により異なったが, 果実の着生位置間で差異は見られなかった。また1果実の左右の莢間についても, 種子粒数の差異は見られなかった。種子の大きさは, 異なる採取時期の種子ともに花茎の下部に形成された果実のものほど大であった。室内におけるナズナの発芽実験では, 採取直後の休眠状態の種子を戸外畑土中に1〜3ヵ月間貯蔵することで休眠が覚醒され, 低温湿潤土中に貯蔵した種子よりも高い発芽率が見られた。しかし種子の採取時期によって, 休眠覚醒の時期が異なった。温度条件については25℃(昼温)-10℃(夜温)が最も高い発芽率となった。屋外におけるナズナの発生実験では, 低温貯蔵した種子は種子採取時期間で出芽様相に差異は見られなかった。採取直後の種子は採取時期間で出芽様相が異なり, それらは降水量の多い時期に出芽率は高くなる傾向が見られたが, 気温の暑い時期あるいは寒い時期の発生は見られなかった。さらにナズナを播種後に人為的な土壌攪乱処理をすると, その後の出芽率はやや高くなった。
著者
春原 由香里 臼井 健二 松本 宏 小林 勝一郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.95-103, 1995-08-31
被引用文献数
3

著者らはすでに, クロメプロップ自身はオーキシン活性を示さず, 植物体内でその加水分解物であるDMPAに分解された後に初めてオーキシン結合蛋白質に認識され, オーキシン活性を示している可能性が高いことを報告した。本論文では, クロメプロップの更は詳しい作用機構を調べることを目的とし, ダイコン幼植物を材料としてクロメプロップの茎葉処理後に生成されるエチレンが形態変化に関与しているかどうかの検討を行った。(1) クロメプロップ, DMPA処理後に現れる葉のカーリングや葉の葉柄間角度の増大はエチレン生成阻害剤(AOA)を前処理することにより軽減された(Fig. 1, Table 1)。 (2) クロメプロップ, DMPA処理後の上記の作用は, エチレン作用阻害剤(NBD)を後処理することにより軽減された(Fig. 2)。(3) エチレン生成量は, クロメプロップの場合, 茎葉処理12時間後までは殆ど生成されず対照区と同程度であったが, 24時間後からはエチレン量の増加が見られた。DMPAの場合は茎葉処理3時間後から徐々に増加し始め, 12時間後から生成速度が増加した(Fig. 3)。(4) エチレン生成促進剤(ETH)処理により, 著しく第1葉の伸長が阻害された(Fig. 4)。(5) クロメプロップ, DMPA処理により, ACC合成酵素が誘導され, AOAの前処理によりその誘導が抑制されることが確認された(Fig. 6)。(6) クロメプロップ, DMPA処理では, ACCからエチレンへの反応を触媒する酵素(ACC 酸化酵素)の誘導は起こらなかった(Table 2)。以上の結果より, クロメプロップは植物体内でDMPAへと変化し, DMPAがACC合成酵素を誘導することによってエチレン生成量を増加させ, そこで生成されたエチレンが, ダイコンの形態的変化を引き起こしているものと推察された。
著者
松尾 喜義 片岡 孝義
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.122-128, 1983-08-05
被引用文献数
3 1

The effect of variations in the light and temperature on the germination of Leptochloa chinensis Nees seeds stored under different conditions was investigated. 1. The dormancy of seeds stored under air-dried conditions was readily broken when seeds placed on a moist filter paper were subjected to a regime of 12 hours light at 40 ℃ and 30 ℃ and 12 hours dark at 40℃ and 15℃, respectively. 2. Light played a major role in the breaking of dormancy. The effect of light on seeds stored under air-dried conditions was more conspicuous 6〜12 hours after water absorption than at the onset. 3. The degree of breaking of dormancy varied with the conditions of storage, and it was higher in the following order, moist conditions at 5℃ < air-dried conditions at 5℃ < air-dried condidtions at room temperature < upland field conditions. However the breaking of dormancy under these conditions of storage did not result in seed germination when seeds were continuously exposed to darkness at 30℃.
著者
浅井 元朗 伊藤 操子 草薙 得一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.194-202, 1995-10-31
被引用文献数
1

値被を利用した害車制御は樹園地など粗放的な植生管理が求められる場面で有用であり, シロクローバ(Trifolium repens L.)はその有望な材料と考えられる。本研究はクローバ定着後の刈取体系がクローバの生育と植生動態に及ぼす影響を調査し, 望ましい刈取体系について検討した。実験は大阪府高槻市で行い, シロクローバ2品種(コモン型: グラスランドフィア, ラジノ型: カリフォルニアラジノ)を1991年秋期に播種した。その後2年間, 春期(4月中旬または5月初旬), 6月, 8月, 10月の4時期の組合わせによる16種の刈取体系(Table 1)を実施し, クローバと雑草の植生調査を継続した。1年目(1992年)の刈取はクローバ生育に与える影響が少なく, 次の刈取までにクローバは再生した。しかし2年目 0993年)の刈取によってクローバ被度ならびにその植生は大きく変化した。6月, 10月の刈取は影響が大きく, 春期, 8月の刈取は影響が少なかった(Table 2)。特に1993年6月の刈取後に大型のイネ科夏雑草(アキノエノコログサ, メヒシバなど)が繁茂し, クローバ被度は著しく減少した(Fig.1, Fig.3)。6月無刈取区では刈取区に比べて夏期のクローバ被度の低下は小さく, 冬期の被度は刈取区より高かった(Fig.1, Fig. 3)。夏期に雑草を除去した場合もクローバ被度の低下は小さかった(Fig. 2)。しかし, 刈取の有無にかかわらず, クローバの生育は前年より衰退した。クローバ品種間ではラジノ型がコモン型に比べて高い被度を維持し(Fig. 1), その雑草抑制効果も優れていた(Fig. 3)。刈取ならびにその後のクローバ被度の低下により生じた裸地には雑草が侵入した。6月の刈取後に夏雑草の発生が増加し, 8, 10月の刈取後に冬雑草の発生が増加した(Table 3)。冬雑草がクローバに与える影響は少なかったが, イネ科夏雑草の庇陰によってクローバは著しく衰退した。多年生のアレチギシギシ, ネズミムギは刈取にかかわらず増加した。以上の結果から, 本地方ではラジノ型がその雑草制圧力, 被覆の持続性において被覆資材として適すること, その優占植生を維持するための管理法としてはスプリングフラッシュ期以外の刈取を避けるべきであることが示唆された。
著者
臼井 健二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.17-23, 2003-05-31

近年,雑草防除・管理への除草剤の使用は,効率性と省力化をもたらし作物の安定生産に寄与してきている。戦後間もなく導入された2,4-D以来,対象とする作物に安全で雑草を有効に防除する除草剤が多く用いられてきている。この作物-雑草間の除草剤の選択作用性は,高活性,低毒性,非残留性,環境負荷が少ないことなどと共に除草剤に求められる大きな特性の1つとなっている。選択性の主な要因として,土壌・生態的要因および植物の生理生化学的要因があるが,後者の主なものは除草剤の植物体内への吸収,作用部位への移行,作用点の除草剤感受性およびその間の除草剤の代謝があげられている^<10)>。植物体内に吸収された除草剤は様々な反応・代謝を受ける。反応は化学的にも進行するが,多くの場合酵素により触媒される^<21,22,25)>。一般に,脂溶性化合物は,主としてエステラーゼなどによる加水分解,チトクロームP-450などによる酸化,あるいは還元などの反応を受けて極性基が導入され,その極性基を介してグルコースなどの生体成分と抱合される。一方,親電子化合物はグルタチオン転移酵素(GST)により直接グルタチオン(あるいはホモグルタチオン)抱合される。更に抱合化合物は液胞に運搬されたり,細胞壁に取込まれたりし,いわゆる隔離される。一連のこれらの反応は解毒(不活性化)反応であるが,加水分解・酸化等により活性化される場合もある。これらの除草剤解毒代謝酵素は,本来,体内に取り入れた様々な化学物質を生体成分として合成・代謝し利用する一方,侵入した異物。毒物を代謝・解毒し防御するために発達してきたと言われるが,それらが除草剤にも反応していると考えられる。除草剤の代謝は,除草活性に関係するばかりでなく,代謝物を含めた残留性,安全性およびその試験においても重要である。代謝物の同定,経時的および定量的分析に基づく代謝経路の推定により,それらの代謝に関与する酵素も推定される。それ故,植物体内での除草剤の代謝活性の測定には,代謝物を分析する他,酵素活性の測定も有効である。除草剤の選択性が除草剤の種類と植物の解毒代謝活性に依存する場合,除草剤の主要代謝に関与する酵素活性の測定によりその程度を推測できるであろう。本研究では,植物(作物と雑草)における水田用の酸アミド(α-クロロアセトアミド)系除草剤のグルタチオン抱合に関与するGSTおよびスルホニルウレア系除草剤の酸化代謝(O-脱メチル反応)に大きく関与しているP-450を中心に数種除草剤の解毒代謝酵素活性の測定およびアイソザイムの分離等を通じて,選択性および薬害軽減作用への関わり,植物の外界の異物に対する防御の機能・役割を追究した。
著者
岩瀬 徹
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.202-205, 2004-09-30

「自然に根ざした生物教育」を実践するには,身近なフィールドを活用し,普遍的な観察方法を開発する必要がある。学校においては校庭は足元のフィールドであり,そこの主役は雑草である。雑草の種や生育には共通性が高く,教材としての効果が期待できる。かつては,専ら除去の対象であった雑草に対して教材としての市民権を与えようとした。長年の経験はいくつか発表してきたが,1987年に野外観察ハンドブック「校庭の雑草」を作成し,校庭をフィールドとする観察法の普及と定着を図った。また,授業展開の事例として,形やくらしから雑草の名前に近づく方法,校庭の雑草の分布を調べ環境との関係を考える方法,雑草群落の測定を通じて遷移を理解する方法などの概略を紹介した。さらに,近年の理科教育や生涯教育の一面と雑草との関わりなどに触れた。
著者
大隈 光善 福島 裕助 田中 浩平
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.109-113, 1994-08-05
被引用文献数
6

スクミリンゴガイは、水稲の移植直後の苗やレンコン等の水生作物を食害する有害小動物として知られている。ここでは貝による除草効果と水稲の移植苗に対する被害防止法等を検討し、生物的防除用素材としての可能性を明らかにした。1.貝は水田雑草全般をよく摂食し、1日当たりの摂食量は殻高3cmの貝で生草重約3gであった。2.貝が摂食できる雑草の大きさとしては、タイヌビエ3〜4葉期(草丈15cm程度)以下までであった。3.田植15日後(タイヌビエ3葉期頃)まで落水ないし浅水管理とし、貝の活動を抑えることにより、苗の被害を軽減できた。
著者
佐藤 姚子
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.213-219, 1992-10-31

畑地用除草剤、トリフルラリン(ジニトロアニリン系)の土壌細菌による分解について調べ,以下の結果を得た。1)トリフルラリン粒剤を処理した畑地圃場の土壌から,4種類の土壌細菌を分離し,これらの細菌のトリフルラリンに対する分解を調査した。その結果,T-a菌に若干の,T-b菌に顕著な分解能が認められた。無機塩の液体培地中における,この2菌の細菌によるトリフルラリンの分解を28℃の恒温槽で弱振とう培養を行って経時的に調査した(Table1)。経過日数毎にn-ヘキサンで抽出後,トリフルラリンの残存量をGCで測定した。その結果,28日後に最大の分解率,T-a菌で約20%,T-b菌で約95%を示した。2)T-b菌添加区のGC測定で,クロマトグラム上にはトリフルラリンのほか,3種の主要分解代謝物と考えられる,新しいピークがみられた(Fig.1)。それらは,トリフルラリンのRT(保持時間)が1.9分のとき、それぞれ2.5分,2.8分そして3.4分であった。それらをRT順に,代謝物1, 2, 3とし,これらの生成もトリフルラリンの検量線を用いて計算し,その経時変化をトリフルラリンの減衰とともに図示した(Fig.2)。3)上記の主要分解代謝物3種のGCおよびGC-MS測定結果は,先にジニトロアニリン系除草剤ペンディメタリンを分解する細菌(P-1, P-3, P-3菌)を用いて,トリフルラリンの分解について調査し,既に明らかにした,トリフルラリンの主要分解代謝物3種のGCおよびGC-MS測定結果と一致した。すなわち,代謝物1は,α,α,α-trifluoro-N^4,N^4^-dipropyltoluene-3,4,5-triamine,代謝物2は,α,α,α-trifluoro-5-nitor-N^4, N^4-dipropyltoluene-3,4-diamine, そして代謝物3は,2-ethyl-7-nitro-1-propyl-5-(trifluoromethyl)-benzimidazoleであった。4)GC-MS測定では,上記主要代謝物のほか,3種の新たな微量分解代謝物(4,5,6)が得られた。それらのマススペクトル,分子量,文献などから推定された構造式をFig.3に示した。代謝物4(M=263)は,α, α, α-trifluoro-5-nitro-N^4-propyltoluene-3, 4-diamineで代謝物2の脱プロピル化物であろうと推定した。代謝物5(M=269)は,3, 5-dinitro-4-(propylamino)-benzoic acid, 代謝物6(M=271)は7-amino-2-ethyl-1-propyl-5-(trifluoromethyl)benzimidazoleと推定した。5)T-a菌,T-b菌の主要な細菌学的調査を行い(Table2),それらの結果から,T-a菌はAlcaligenes属の,T-b菌はMoraxella属の細菌と推定した。
著者
根本 正之 村山 英亮
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.20-21, 2004-04-16

一般に都市的環境下にある道路の植えます、公園、寺社の境内、校庭、グラウンドなどに侵入して<る雑草(侵入植物群)は程度の差こそあれ、踏み付けや刈り取りという人間による物理的な攪乱を受けている。これとは対照的に都市空地は上述のような攪乱がみられなくなった都市の空間として位置づけることができる。人間による攪乱が取り除かれたり、管理が放棄された場合、他からの侵入や埋土種子に由来する雑草の定着によって当該立地の二次遷移が進行、しばしば都市にふさわしくない景観が形成される。本研究では空地発生雑草を省力管理するための基礎的知見を得る目的で、人間によるさまざまな干渉が停止する直前の立地環境の違いが、その後の二次遷移系列にどのような影響を及ぼしているのか調査した。
著者
佐合 隆一 高橋 宏和 高柳 繁
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.267-272, 2002-01-30
被引用文献数
1

雑草防除の適正化とコストの低減をはかるためには,雑草個体群の動態や埋土種子量・発生量などを把握することにより,雑草防除手段を選択するプログラムを作成することが重要となってきている。本研究は茨城県南地域で小型の一年生雑草が優占している水稲栽培水田で埋土種子数と雑草発生量を調査し,雑草の水稲に対する害が認められない埋土種子数のレベルを推定することを試みた。本調査方法では埋土種子数が深さ1.5cmあたりアゼナ類で1,500粒/m^2,カヤツリグサ類で200粒/m^2,一年生雑草全体では3,000粒/m^2を越えた場合には雑草の発生量を推定することができ,埋土種子からの本田での発生率は,アゼナ類で2.5%,カヤツリグサ類で4.9%,コナギで16.4%,一年生雑草全体では5.2%であった。また,雑草害が明確とならない雑草の発生量は埋土種子数が3,000粒/m^2以下であることを推定した。
著者
小浦 誠吾 小笠原 致道 上田 成次 高橋 康子 関 由美子 鴨居 道明 田中 十城 則武 晃二 片岡 孝義
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.96-101, 1994-08-05
被引用文献数
3

前報で水田用除草剤の処理方法としてACN発泡性大型錠剤(以下通称のACNジャンボ剤とする)の畦畔からの投げ込み方法を検討し、活性成分の水中拡散性が良く、その後の水中成分濃度の低下も早く、環境安全性にも優れていて実用性が高いことが明らかにされた。本報では、表層剥離と藻類に対するACNジャンボ剤の効果を検討し、実用性を考察した。1.50m^2規模の圃場試験によると、表層剥離に対しては、発生前〜発生盛期の処理において、速効的に高い防止効果が認められ、その後の発生も認められなかった。浮上程度60%の時期(発生率100%)の処理では、十分な効果はなく、薬量を増やす必要があると思われた。一方藻類に対しては、発生盛期の2時期の処理ともに処理1日後には効果が顕著に現れ、それ以降3週間以上にわたって抑制していた。2. 10a規模の水田試験でも、50m^2圃場での試験と同様に高い効果が認められた。3.2倍量試験でも、薬剤投入地点を含めて水稲に対する薬害は認められなかった。従って、表層剥離と藻類がすでに発生している水田でも、それらの発生盛期までの間に他のジャンボ剤との組み合わせ処理をすれば水中拡散性が妨げられることがなくなるため、そのジャンボ剤が十分にその効果を発揮することができるものと考えられた。
著者
須藤 裕子 小笠原 勝 西尾 孝佳 一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.1-9, 2005-03-18
被引用文献数
2

舗装道路の路面間隙に形成される雑草植生と道路周辺の土地利用形態および人間活動との関係を明らかにすることを目的に, 栃木県宇都宮市を例に挙げて, 土地利用と人口密度において対照的な住宅地域と水田地域の路面間隙の雑草植生を比較した。植生調査は2003年7月9日から8月13日にかけて, 無作為に抽出したそれぞれ50地点の住宅地域および水田地域で行い, 路面間隙に出現した雑草の総種数, 別の出現頻度, 生活型組成および帰化雑草率を求めた。その結果, 住宅地域の路面間隙で54科185種の雑草が, 水田地域で31科119種の雑草が観察された。さらに, 住宅地域の路面間隙でツメクサ(Sagina japonica (Sw.) Ohwi)やオオバコ(Plantago asiatica L.)などの踏圧に強い小型の雑草が高い頻度で出現し, 草本性の雑草の他にもタラノキ(Aralia elata (Miq.) Seemann)やムクノキ(Aphananthe aspera (Thunb.) Planch.)などの木本類と, 園芸植物のハーブ類が数ヶ所で観察された。また, 水田地域では草高が1m以上に成長したシロザ(Chenopodium album L.)やヨモギ(Artemisia princeps Pampan.)などが高い頻度で出現した。以上のように, 住宅地域の路面間隙に形成される雑草植生は水田地域に比べて種数に富むだけでなく, 種組成の点で著しく異なり, 両地域の植生の違いには, 鳥による種子伝播を含めた雑草種子の供給, 刈り込みや抜き取りなどの雑草管理や踏圧などの人為的な要素が関与していると考えられた。
著者
ポーンプロム トッサポン 松本 宏 臼井 健二 石塚 皓三
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.180-182, 1994-10-28
被引用文献数
3

The absorption and metabolism of oxyfluorfen were determined in oxyfluorfen-tolerant and non-tolerant (normal) soybean cell lines. The tolerant cells absorbed considerably less of the herbicide than the normal cells. Metabolism of oxyfluorfen did not differ between the two cell lines. These data suggest that lower absorption in the tolerant cells may contribute to the observed tolerance but that the tolerance is not metabolism-based.
著者
スワンウォン スィーソム 臼井 健二 石塚 皓造
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.315-321, 1989-12-25
被引用文献数
3

除草剤耐性機構の解明および耐性植物作出の検討を目的として,植物における分岐鎖アミノ酸生合成,芳香族アミノ酸生合成あるいはグルタミン合成酵素のような窒素代謝の掻乱活性が強いベンスルフロンメチル(BSM),グリホサ-ド(GLY),およびグルボシネ-ト(GLU)を用いて各々の耐性細胞をニンジン懸濁細胞より選抜した.ニンジン(Daucus carota L. cv. Harumakigosun)はこれらの除草剤に感受性である. ニンジンの胚軸より誘導した細胞をLS培地で懸濁培養した.この細胞の生育は10^<-8> M BSM,10^<-3> M GLYあるいは10^<-5> M GLU処理で著しく阻害された(Fig.1).それぞれ10^<-9> M,10^<-4> Mあるいは10^<-6> M処理では50%程度の阻害を示したが,これら除草剤を含む培地で数回継代培養すると無処理細胞と同程度の生育となった.その状態の細胞を更に,それぞれ,10^<-8> M,10^<-3> Mあるいは10^<-5> Mを含む培地に移し継代培養を続けることにより,耐畦細胞が選抜された(Fig. 3, 4, 6, 7).選抜された耐性細胞は上記濃度の除草剤を含む培地中で無処理細胞と同程度に生育した.耐性細胞の選抜に要した継代培養回数即ち期間は,GLYはBSMよりやや長いが3〜4ヵ月と比較的短かったが,GLUはほぽその倍の期間であった.このことは除草剤の物理化学性あるいは作用,耐畦機構と関連があると推察された.これら耐畦細胞は,ある期間上記濃度の除草剤中で培養した後,更に高濃度の10^<-7> M BSM,10^<-2> M GLYあるいは10^<-4> M GLU中に移しても生育可能であった(Fig. 2, 5, 8).また,除草剤を含まない培地に移しても耐畦は保持され(Fig.9),耐性適応は少なくとも一年間は安定であることが認められた.
著者
太田 孝 西郷 昭三郎 鈴木 金苗 村越 一彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.10-14, 1971-03-25

除草剤空中散布の実用性を検討するため,散布適期幅の広いベンチオカーブ・シメトリン粒剤を使用して,6haの水田(埴壌土)において試験を行なった。供試水田の田植時期は8日間の幅があり,優占雑草はヒエ,コナギ,マツバイであった。 薬剤の落下状況は,量としては平均3.07kg/10aで月標に近かったが,変異係数50%近くのかなりの散布むらが生じた。薬害はほとんどみられなく,平均雑草重が無散布に対し約3%と高い殺草効果が認められた。相対的に雑草の多かった場所は,薬剤落下量が少なかった場所や,しろかきや田植時期から散布までの日数の長い場所であったが,それでも実用的には十分な殺草効果が認められた。これらの主因は供試薬剤が散布適期幅が広いこと,殺草力が大であること,拡散性が大であることなどの作用特性によるところが大きい。ほ場条件,栽培条件が異なり,散布むらがかなりあっても,除草剤の空中散布の実用性が認められた。