著者
鈴木 仁一
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.451-458, 1982-10-01 (Released:2017-08-01)
被引用文献数
1

From time immemorial, it has been well known that fasting has an excellent effect on various diseases and has been practiced in world-wide areas as a religious asceticism. However, nowadays, it has being practiced as a proper medical therapy for psychosomatic disorders. Our scientific study of fasting started from 1967,and has been carried out in 576 cases with an efficacy rate of 87%.The following diseases were considered as suitable indications for the therapy; irritable colon, abnormal eating behavior, functional disorders of the digestive organ, neurocirculatory asthenia, borderline hypertension, variable psychosomatic symptoms of puberty, hyperventilation syndrome, bronchial asthma, various kinds of neurosis especially conversion hysteria, reactive depression and many others of psychosomatic diseases.The patient is put on 10-day fasting allowing to have only drinking water and 5% pentose solution by I.V., after that a 5-day recovery dieting period with settled menu is programed. During the fasting period, NAIKAN therapy is performed which is a special self-examination that method based on Buddhism. With regard to the mechanism of effectiveness, our conclusion is the regulating of the peripheral and central autonomic nervous system and of the endocrine system may change psychophysiological functions. At the result, a spontaneous deconditioning of maladaptive bodily and mental behavior might be induced and led to a homeostatic adjustment of the human body.
著者
梅本 丈二 安田 弘之 市来 利香 築山 能大 古谷野 潔 都 温彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.457-463, 2001-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2

過食症患者は嘔吐を繰り返すため, 口腔内が頻繁に食渣や胃酸にさらされることになり, 歯の脱灰, 実質欠損をきたすことが報告されている.本研究では嘔吐と歯の実質欠損に関する予備的調査を行った.嘔吐歴が4年以上の対象者は4年未満の者に比べてう蝕の既往が多かったが, 対象患者に歯牙酸蝕の所見は認められなかった.う蝕増加の既往と嘔吐との関連性はさらに今後の検討問題として残された.また歯科治療の際, 摂食障害について話すことに抵抗感があるとの質問紙に対する回答から, 摂食障害患者の自分の症状を知られたくないという心理面も窺えた.いずれにせよ, 医師・歯科医師双方が本件に留意して, 臨床にあたることが重要である.
著者
吉田 さちね 黒田 公美
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.958-966, 2015-08-01 (Released:2017-08-01)

目的:母親が母乳で子を育てる養育(子育て)は哺乳類に共通する特徴である.効率よく養育を受けるため,子どもの側も親を覚え,後を追い,シグナルを送るなどの愛着行動を積極的に行っている.このような母子関係の維持に貢献する子からの行動はあまり研究されておらず,その脳内基盤については未知の部分が多い.そこで親が子を運ぶ際に子が示す協調的反応「輸送反応」についてヒトとマウスで検討した。方法・結果:母親が生後1〜6カ月の乳児を抱きながら歩くと,抱いたまま座っているときに比べて,乳児の自発運動の量が約1/5(Fig.1B),泣く量が約1/10(Fig.1C)に低下し,心拍数も母親が歩き始めて3秒程度で顕著に低下した.一方で母親が口でくわえて運ぶのを模して仔マウスを指でつまみ上げると,仔マウスはヒトと同様に不動化(自発運動の減少),超音波発声の減少,心拍数の低下を示した.さらに仔マウスの輸送反応を詳細に検討した結果,痛覚閾値の低下,四肢の収縮,体幹の弛緩など複数の要素が同時に惹起される複雑な反応であり,それぞれの反応は独立な発達曲線および制御機構をもつことが明らかになった.さらに感覚遮断により仔マウスの輸送反応を阻害すると運ばれているときに暴れてしまうが,そのような仔マウスを母親が運ぶのにはより多くの時間を要した.結論・考察:以上から,マウスとヒトの乳幼児において,親が運ぶ際に鎮静化によって協調する輸送反応が進化的に保存されていると考えられた.抱いて運ばれる際の子どもの協調的反応が定量・可視化されれば,育児の効率に対する養育者の自信や意欲を高めたり,またバイオフィードバック学習を行ったりすることが可能になる.また,発達障害児において,親に抱かれる際の反応に特徴がある可能性についても検討の余地があると考えられた.
著者
土屋 裕睦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.159-165, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
4
被引用文献数
6

本稿の目的は, わが国におけるスポーツ心理学の成り立ち, 研究領域の特徴から現状を整理し, 今後の課題を明確化することである. はじめに, スポーツ心理学の成り立ちに関して, 日本スポーツ心理学会 (JSSP) の発足は1973年であるが, 日本体育学会が1950年の設立以来, すでに体育心理学に関係する研究のプラットフォームになっており, 少なくとも65年以上の歴史があると指摘した. 次に, JSSP編によるスポーツ心理学事典などの目次をもとに, 研究領域を整理すると, 運動学習と制御, スポーツ社会心理研究 (スポーツ参加の動機づけ研究を含む), 健康スポーツの心理, 競技スポーツの心理 (メンタルトレーニングと臨床スポーツ心理を含む) の4領域が中心的な領域であると考えられた. 特に, JSSPによる2000年の 「スポーツメンタルトレーニング指導士」 資格認定が開始されて以降, 競技スポーツ分野への関心が高く, JSSP大会では, さまざまなシンポジウムが開催されている. 一方, イップスに代表される心因性の動作失調への対処などにおいて解決すべき課題も多く, 今後は心身医学との協働によるブレイクスルーが期待されている.
著者
川村 智行
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.39-45, 2023 (Released:2023-01-01)
参考文献数
5

1型糖尿病は,注射によるインスリン療法が唯一の治療である.近年の1型糖尿病診療は,新しい薬剤や血糖測定のデバイスの進歩が著しい.それでも,インスリン療法に加えて日々の生活の中で最も重要な食生活と運動の管理を生涯継続しなければならない.血糖管理が不十分な場合,糖尿病合併症の発生頻度は非常に高く,生命予後を悪化させる.小児思春期に多く発症する1型糖尿病では,血糖管理が不十分になりやすく,患者指導に難渋することが少なくない.筆者は,そのような患者の対応で困っていたときに動機づけ面接(motivational interviewing:MI)に出会った.MIは,アルコール依存症患者の面談から始まった面接法であり,今ではあらゆる医療面接,教育,司法,矯正などの幅広い分野でその有用性が認知されている.MIでは患者の発言の中の,チェンジトーク(よい発言)に注目し,チェンジトークを引き出して,変化へ向かうチェンジトークへと育てていくことを目的とする.思いやりを含んだ精神をもってクライアントとダンスを踊るように変化の方向へ導いていくのがMIである.筆者は,MIを学ぶことで患者のよい変化を多く経験するようになった.現在ではMIのトレーナーとしてMIの普及活動を行っている.
著者
飯田 俊穂 熊谷 一宏 細萱 房枝 栗林 春奈 松澤 淑美
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.945-954, 2008-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
19

動物とのふれあいが人によい効果をもたらすことは知られている.特に子ども・障害者・高齢者などによい効果をもたらすことが新聞,雑誌などで取り上げられており,不安やストレスの軽減効果が示されたとの報告や,ペットといるだけで精神状態が安定し自然治癒力が高まるなどの報告もある.そこで今回われわれは,学校不適応傾向の児童・生徒に対するアニマルセラピーの心理的効果についての分析を試みた.結果として3回以上のアニマルセラピーで,Profile of Mood States(POMS)(緊張-不安,活気,疲労,混乱),AN-EGOGRAM(NP,FC,AC)に有意な変化を認めた.POMS(抑うつ-落ち込み,怒り・敵意)の値は低下,AN-EGOGRAM(CP,A)の値は上昇したものの有意差は認めなかった.以上のことより,アニマルセラピーを3回以上施行した症例に対し,心理状態(緊張-不安,活気,疲労,混乱)の改善,自我状態の安定傾向を認めた.
著者
永田 頒史 廣 尚典 真船 浩介
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.109-121, 2009-02-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12

職場のメンタルヘルス対策の有効性を調べるために,1次予防(疾病の発生予防),2次予防(早期発見・早期対処),3次予防(疾病管理,復職支援)のアプローチ事例を対象として比較検討を行った.1次予防に関しては,2004年にメンタルヘルス改善意識調査票(MIRROR)を開発し,2005年度に15事業場9,800名を対象として,職場環境改善のための介入的アプローチを行い,2006年度に効果評価を行った.改善が行われた部署では,ストレスの軽減がみられた.費用便益の評価では,6社中4社で疾病休業は減少していたが,今回用いた計算法では2社のみが黒字であった.また,継続的な管理職研修を含めた総合的対策により,休職事例数が半減した.2次,3予防に関しては,3事業場の相談事例162名および臨床事例113例に対する比較調査を行った.事業場の事例に関しては55.6%,臨床事例に対しては20.4%に対して職場調整を行ったが,前者のほうが有意に有効事例が多かった.転帰に関しては,事業場事例のほうが治癒率は有意に高かった.
著者
貝谷 久宣
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.361-367, 2004-05-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
5
被引用文献数
1

100名のパニック障害患者に大うつ病が34名みられ,その62 5%は非定型うつ病であったことを示す筆者らの最近の報告を紹介したこのようなパニック障害にみられるうつ病-パニック性不安うつ病の特徴について示した最後に,パニック性不安うつ病を示した広場恐怖を伴うパニック障害の母親と,軽い広場恐怖と不全パニック発作を示した2人の娘の家族症例を示し,一部の広場恐怖を伴うパニック障害と非定型うつ病との間に病因的に関係があることを述べた
著者
一條 智康
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.1143-1150, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
20

ユマニチュード®はジネストとマレスコッティの2人によって創案された認知症ケアの技法である. 本稿では, ユマニチュードの語源をネグリチュードの歴史的意義にまで遡って解説し, 「ユマニチュード®」 の概略を紹介した. さらに, 治療的自己, マルチモダール, オキシトシンなどの観点から文献的考察を加えた.超高齢社会を迎えた日本にとって, ユマニチュード®の有用性は今後ますます広く受け入れられると思われる. その哲学を学び実践できれば, 人と人の 「絆」 という最も根本的に重要でありながら, 現代社会において希薄となっている大事な視点にわれわれが立ち返るきっかけをつかめるかもしれない. 「われわれがお互いに『人間としての尊厳』が保たれていることを再認識できる」 ユートピアが実現できることが期待される.
著者
薗田 将樹 若林 邦江 田村 奈穂 石川 俊男
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.453-459, 2016 (Released:2016-05-01)
参考文献数
15

目的 : 摂食障害は慢性難治性の疾患で, さまざまな身体合併症がみられる. その中でも腎機能障害がしばしば認められる. 今回, 当院の入院摂食障害患者の腎機能障害についてretrospectiveに調査検討を行った. 方法 : 対象は2010年4月~2013年11月までに当科に入院した摂食障害患者で, 書面で研究の同意を得た198例 (ANbp 93名, ANr 52名, BNp 32名, EDnos11名) であった. 対象の病型, 入院時年齢, 入院時BMI, 罹病期間, 生化学所見を診療録より調査し, 欠損値のある症例を除いた計149例に対して, 統計学的手法を用いて病型別に検討した. 結果 : 149例のうち, 慢性腎臓病 (chronic kidney disease : CKD) を合併していた入院摂食障害患者数を調べたところ, 38.3% (57/149名) であり, 病型別の割合はANbp : 58.4% (45/77名), ANr : 18.4% (7/38名), BNp : 19.2% (5/26名), EDnos : 0% (0/8名) であった. 各病型のeGFR (estimated glomerular filtration rate) はANbp : 中央値 ; 54.3, 四分位範囲 (39.4~74.8), ANr : 中央値 ; 76.8, 四分位範囲 (62.2~92.0), BNp : 中央値 ; 77.7, 四分位範囲 (61.7~89.8), EDnos : 中央値 ; 78.7, 四分位範囲 (74.2~92.9) であった. ANbpはANr, BNp, EDnosに比較してeGFRの有意な低下がみられた (p≦0.05). ANbpで, eGFRとBMI, eGFRと罹病期間の項目間で有意な相関がみられた (eGFRとBMI : r=0.38, p<0.01, eGFRと罹病期間 : r=0.44, p<0.01). また, BNpでeGFRと罹病期間の間に有意な相関がみられた (eGFRと罹病期間 : r=−0.60, p<0.05). 各病型のeGFRにおいて, 低カリウム (K) 血症 (K<3.5mEq/l) の有無の群間でMann-WhitneyのU検定を行ったところ, ANBpとBNpで群間に有意差がみられた. 考察 : ANbpでは摂食障害の他の病型と比較して, eGFRの統計学的に有意な低下がみられた. また, ED患者においてBMI低値, 長期間の罹病期間, 低K血症がCKDのリスクとなるという結果であった. 結論 : ED患者の腎機能障害は頻回に遭遇する病態と考えられ, 腎機能保護を考慮した治療が必要である. 特にANBpにおいては高度の腎機能障害のリスクが高いため, 早期よりの評価・介入が望ましい.
著者
笠原 麻里
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.712-717, 2016 (Released:2016-07-01)
参考文献数
2

生殖補助医療に伴う育児における母体のさまざまな負担について, 実際の症例を通して述べた. 問題は多岐にわたり, 身体的問題, 生殖医療ゆえの挙児をめぐる葛藤, 母体の精神的問題などを示した. 生殖医療においても, 産後の育児を見通した支援の必要性があり, 特に男性不妊をめぐる女性の気持ちや, 周囲に話しにくい事情など特有の心理的配慮の必要性を論じた.
著者
端詰 勝敬
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.172-176, 2021 (Released:2021-03-01)
参考文献数
10

医学的に説明のつかない症状をもつ患者は多い. これらは, medically unexplained symptomsと呼ばれ, 身体的な症状はfunctional somatic syndromesとされている. 近年, functional somatic syndromesと似た概念として, 中枢感作性症候群が提唱されている. 中枢性感作は, 疼痛, 頭痛, 腹痛, 倦怠感, 不眠などと関連している. われわれが行った調査でも, 過敏性腸症候群と片頭痛では, 中枢性感作の程度が高いことが示された.
著者
村上 正人 松野 俊夫 金 外淑 三浦 勝浩
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.1157-1163, 2010-12-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

線維筋痛症(fibromyalgia:FM)は長期にわたる筋骨格系の広汎性疼痛を特徴とする慢性疼痛のモデルともいえる疾患である.FMの発症と臨床経過には多くの心理社会的要因が関与しており,しばしばその症状は天候,環境,社会的出来事,心理社会的ストレス,身体的状況によって悪化する.時にFM患者の痛みや多彩な症状は怒り,恨み,不安,破滅的で抑うつ的な気分に敏感に影響を受ける.そのような情動形成には強い強迫性,熱中性,完全性,神経質さなどのパーソナリティ特性や,いわゆる偏った「人生脚本」に基づいた過剰適応や自己禁止令などのライフスタイルも関与する.否定的感情,それに引き続いて生じる心身の疲弊は全身の筋骨格系や内臓の筋攣縮や虚血,過敏性などを惹起し,痛みを増強させ遷延化させる.これらの情動的ストレスやパーソナリティ上の問題の解決と治療のためには,薬物療法に加え,認知行動療法,交流分析,ブリーフセラピー,その他の専門的心理療法の組み合わせの有効性が期待できる.このようにFMの病態評価や治療のためには心身医学的な視点からの配慮が重要である.
著者
北原 糺
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.504-510, 2018 (Released:2018-09-01)
参考文献数
13

メニエール病はストレスによって引き起こされることが古くからいわれているが, いまだ原因不明の疾患である. メニエール病とストレスという, 両者とも非常に曖昧な事象の因果関係を科学的に検証するためには, それぞれを具体的な標的に置き換える必要がある. そこでメニエール病を 「内耳」 に, ストレスを 「ストレス・ホルモン」 に置き換えると, 以前から 「内耳」 と 「ストレス・ホルモン」 との関連が基礎医学的, 臨床医学的に指摘されていることに気づく. 視床下部において産生され下垂体後葉より分泌される抗利尿ホルモンは, ストレス負荷により血中濃度が上昇する 「ストレス・ホルモン」 の一つであり, 腎臓と同様に 「内耳」 における水の出入, 液性恒常性に関与していると考えられている. 本稿では, 水を介した 「内耳」 と 「ストレス・ホルモン」 の相互関連を明らかにすることで, メニエール病の内耳心身症的側面を検証し, 治療についても考察したい.
著者
中井 義勝
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.120-126, 2016 (Released:2016-02-29)
被引用文献数
1

日本摂食障害学会は, 摂食障害の診断・治療の向上を目的に治療ガイドライン作成委員会を設置し, 「摂食障害治療ガイドライン」を「診療ガイドライン作成の手引き」にしたがって策定した. 精神科医, 心療内科医, 心理士, 看護師, 養護教諭など摂食障害治療に携わる人たちを読者対象としている. 「診断から治療への流れ」を中心とし, 初診時の見立て, ケースフォーミュレーション, 治療選択の手順を詳しく記述した. 各治療法については, エビデンスに基づく日本での治療の実情がわかるよう工夫した. また, 治癒判定基準と転帰調査について日本におけるエビデンスを中心に記述した. 本ガイドラインは2012年2月に医学書院より刊行された.
著者
町田 貴胤 町田 知美 佐藤 康弘 田村 太作 庄司 知隆 遠藤 由香 福土 審
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1134-1139, 2016 (Released:2016-11-01)
参考文献数
9

副腎皮質機能低下症は食欲不振, 悪心・嘔吐, 易疲労感など非特異的症状を呈することが多く, うつ病との鑑別が難しい. うつ病を疑われ心療内科に紹介され, 下垂体性副腎皮質機能低下症と判明した3例を報告する. 症例1 : 59歳男性 : 特に誘因なく悪心嘔吐が出現し体重が6カ月で18kg減少, 抑うつ気分や倦怠感がみられた. 一般血液検査, 内視鏡検査, 腹部CTにて異常なしとして紹介された. 低血糖・低ナトリウム血症のほか, cortisol 1.03μg/dl, ACTH<5.0pg/mlと低値, ACTH単独欠損症と判明した. 症例2 : 77歳男性 : 愛犬の死後に抑うつ気分や腰下肢痛が出現, 一般血液検査や腰部X線で異常なく紹介された. cortisol 4.21μg/dl, ACTH 5.7pg/mlと低値, 脳MRIでRathke囊胞を認め, 続発性副腎皮質機能低下症と診断した. 症例3 : 47歳男性 : 東日本大震災で被害を受け悪心嘔吐や倦怠感が出現, 抑うつ気分がみられ一般血液検査で異常なしとして紹介された. cortisol<0.8μg/dl, ACTH<2.0pg/mlと低値, 部分的下垂体機能低下症と甲状腺機能亢進症の合併と判明した. 心療内科において非特異的な身体症状や抑うつ気分を呈する患者には, 一般検査で異常がなくとも副腎皮質機能低下症とうつ病を早期に鑑別すべく副腎皮質機能検査が推奨される.
著者
福永 幹彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1104-1111, 2013-12-01 (Released:2017-08-01)

近年,確認できる機能性の異常に比して,強い身体症状を訴える患者を総称して「機能性身体症候群」と呼ぶことがある.これに含まれる患者は,一般外来患者の中にかなりの比率でいる.過敏性腸症候群,機能性ディスペプシア,線維筋痛症,慢性疲労症候群がその代表的なものだ.しかし,すでに機能性疾患として確立したものが多く含まれており,統合的な概念の必要性については疑問も多い.本稿では統合的な概念の意義につき,患者が重なり合う概念の,medically unexplained symptom,身体表現性障害,心身症などとの概念の違いを明らかにすることから検討した.統合的に考えることで,治療に関係するプライマリ・ケア医,各科専門医,精神科医,心療内科医に対して,症候群に共通する治療法を検討するため共通の土台を提供するということが最も大きいのではと考える.
著者
西山 順滋
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.119-124, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
16

プライマリ医療には心身医学的な問題が数多くあり, 心身両面からのケアが必要とされている. プライマリ・ケア領域において心身医学の知識やスキルを活かすことができるが, 残念ながら心身医学が浸透しているとはいえない.総合診療部門に来院される初診患者の25〜35%は専門診療科が定まらない機能的疾患で, 心身症に該当する割合が高い. 従来の診療では対応に難渋されることも多いが, 当科では心身医学的な視点で関わることで, 早期に診断・治療が行われ, 終結に至る症例も少なくない. 「不定愁訴群」 といわれてきたこのような疾患群は, 近年, 医学的に説明困難な身体症状 (medically unexplained symptoms : MUS), 機能性身体症候群 (functional somatic syndromes : FSS) と表現されるようになっている. 本稿ではFSSを中心に心身医学との関連を述べる.