著者
尾浦 正二 櫻井 武雄 吉村 吾郎 玉置 剛司 梅村 定司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.2340-2344, 1995-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
被引用文献数
1

本邦では比較的まれな乳癌癌性髄膜症の1例を経験した.症例は59歳,女性.再発乳癌に対して化学内分泌療法施行中に頭痛,めまい,舌下神経麻痺が出現. CT, MRIにても中枢神経系の異常を指摘しえず入院のうえ対症療法を行っていた.入院後1カ月目のMRIにて左大脳半球の硬膜および左側テントの肥厚を認め癌性髄膜症と診断した.中枢神経系の症状の増悪が見られたためMethotrexateの髄膜内注入を2回施行したが症状の改善が得られる事なく癌性髄膜症発症から7カ月で死亡した.本邦でも浸潤性小葉癌の増加や術後補助療法の改善により今後本病態が増加することが予想されるため乳腺外科医は本病態の存在を常に念頭におき中枢神経系への転移の検索には積極的にMRI検査を行うべきと考える.
著者
伊藤 浩信 中村 眞一 岡本 和美 旭 博史 斎藤 和好
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.2080-2083, 1997-09-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
18

症例71歳,男性.右下腹部有痛性腫瘤を主訴として当科紹介された.腹部超音波,注腸透視,腹部CT検査より虫垂炎または大腸悪性腫瘍による腹腔内膿瘍が疑われ緊急手術を施行した.虫垂は硬く,棍棒状に腫大しており周囲組織に埋没していた.摘出標本をみると腫瘍性の変化はなく虫垂周囲膿瘍と診断した.病理組織標本において放線菌の菌塊を中心とした膿瘍がみられ,最終的に放線菌症と診断された.
著者
山口 晃弘 蜂須賀 喜多男 堀 明洋 廣瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.455-463, 1985-04-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1 36

過去14年間に手術を行った消化管原発の悪性腫瘍は2,721例で,その内訳は胃癌1,904例,小腸悪性腫瘍34例,大腸癌783例で,このうち穿孔をきたした症例の頻度は胃癌18例(0.95%),小腸悪性腫瘍3例(8.8%),大腸癌36例(4.5%)であった. 胃癌穿孔例はすべて進行癌であり,組織学的には中分化型管状腺癌が多く, ps(+),脈管侵襲も高度な症例が多数を占めた.切除率は100%であったが治癒切除は4例(22.2%)にすぎなかった.手術直接死亡率は22.2%,累積5年生存率0%, 4年生存率6.7%であった. 小腸穿孔は3例にみられ組織学的にはすべて悪性リンパ腫であった. 3例のうち1例は手術死亡し,他の2例も8カ月以内に全身の悪性リンパ腫に進展し死亡した.小腸悪性リンパ腫の穿孔は予後が極めて不良と考えられた. 大腸癌には遊離穿孔と被覆穿孔がみられ,遊離穿孔は左側結腸癌,直腸癌に多く,被覆穿孔は右側結腸癌に多い傾向があった.癌の口側穿孔例が7例(19.4%)にみられ,すべて遊離穿孔であり,主病巣はS字状結腸より肛門側にみられた.大腸癌穿孔例は組織学的には高分化ないし中分化腺癌が大半を占め,深達度ssの症例が半数であった.治癒切除は穿孔例の50%に可能であったが,手術直接死亡率は16.7%ですべて細菌性ショックによるものであった.治癒切除例の累積5年生存率は59.6%であり,胃癌穿孔,小腸悪性リンパ腫穿孔例とくらべはるかに良好な成績が得られた.大腸癌穿孔例では全身状態を考慮し,より積極的に根治手術を行うことが望ましいと考えられた.
著者
杉野 圭三 岡本 英樹 札場 保宏 沖政 盛治 武市 宣雄 土肥 雪彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2673-2676, 1996-11-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

過去20年間に2例の小児甲状腺癌を経験した.これは当科で手術を施行した甲状腺悪性腫瘍553例の0.36%に相当する.症例1は9歳男子で,甲状腺両葉のびまん性腫瘍で頸部リンパ節転移,両肺の多発性転移を認め,甲状腺全摘,気管切開を行った.組織診断は乳頭癌であった.症例2は14歳女子で,甲状腺左葉に約6cmの腫瘍を認め,甲状腺左葉切除を行った.組織診断は濾胞癌であった.
著者
牧野 正人 万木 英一 阿部 重郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1923-1928, 1988
被引用文献数
8 6

マムシ咬傷の治療にセファランチンが有効とされてから,抗血清は必要ないとする報告が多いため,今回,抗血清の使用の効果について検討した.<br>昭和53~62年の10年間に114例のマムシ咬傷症例を経験したが,その約80%は7~9月の期間に発生し,年次別では斬減の傾向であった.死亡例は2例であった.<br>抗血清使用例では腫脹の範囲も狭くかつ霧視などの全身症状合併率も非使用例の65%にくらべ有意に低く13.8%であった.さらに,治療日数をみても使用例で有意に短かった.また, LDH, GOTの異常値は腫脹範囲と相関して認められたが,抗血清使用例の方が異常値を示す割合いも少なくかつ軽度であった.<br>また, 3時間以内にマムシ抗毒素血清による治療がなされれば,全身症状合併率は低く,腫脹範囲も軽度のものが多かった.<br>以上より,マムシ咬傷の治療は抗血清の投与が望ましいと考えられた.
著者
清水 哲 横山 日出太郎 松川 博史 城島 標雄 有田 峯夫 須田 嵩 五島 英迪 松本 昭彦 田中 耕作 萩原 明 井出 研 近藤 庸人
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.923-927, 1985-07-25 (Released:2009-02-20)
参考文献数
6

乳癌集団検診の二次検診において,コンタクトサーモグラフィーを,マンモグラフィー,エコーグラフィーと共に補助診断法として用い,その有用性,限界について検討を行なった.使用したサーモブレートは,イタリアFinpat社製 “Breast Thermo Detector” であり今回は特に,腫瘤部の温度の高低に注目して診断した.その結果,乳癌症例の正診率は全体で68%, T>2cmでは86%, T〓2cmでは38%であった.病理組織学的には,線維腺腫,乳腺のう胞腫との鑑別は容易であったが,乳腺症との鑑別は難しかった.したがって,コンタクトサーモグラフィーは乳癌の精密検査法としての利用価値は低いとおもわれた.しかし,触診の補助診断法として用いることにより,手軽で安価な検査法としての利用価値があるのではないかと考えられた.
著者
小林 哲郎 弥生 恵司 梶 正博 宮内 昭 神前 五郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.127-131, 1983-02-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
13

われわれは最近3年間に4例の男子乳癌症例を経験し,同期間における老年期女性化乳房症52例と比較し,以下の結果をえた. (1) 男子乳癌は,傍中心性に発生することが多く,比較的早期より皮膚および乳頭の変化を来しやすい. (2) 一方,老年期女性化乳房性は,腫瘤が大きくなっても皮膚および乳頭の変化を来すことはまれで,内分泌療法によく反応する.
著者
水間 公一 西尾 昭彦 臼井 朋明 相川 真 後藤 幸夫 中山 豊 渋谷 均 古家 隆司 福井 四郎 戸塚 守夫 早坂 滉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.1037-1041, 1980-12-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
20

甲状腺癌は他臓器の癌に比べ発症年齢のピークは若年者側にある.しかし小児症例は多くはないが著者らは教室における経験例を中心に診断,治療の面について検討を加えた.術前から癌の確診をえた症例は少なく,早期診断と治療が要求される小児例においては甲状腺腫に対して生検を含む積極的手段を構じ癌の確診をうるよう努力すべきであろう.また術式は,高い根治性と最小の合併症が要求されるため慎重に各症例に最適な術式を撰択すべきである.予後は成人とほぼ同様に良好と考えてよいと思われるが,死亡原因の大半を占める肺転移に対する対策は今後さらに検討・改善を加えてゆくべきと思われる.
著者
藤原 郁也 能見 伸八郎 内藤 和世 牧野 弘之 戸田 省吾 中路 啓介 大森 吉弘 岡 隆宏 松田 哲朗 赤木 重典
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.1451-1458, 1992-06-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
37
被引用文献数
1 9

最近9年間に著者らが経験したマムシ咬傷58例の治療について検討した.患者はマムシ咬傷後早期に来院する例が多く,初診の段階では軽症と診断されることが多い.しかし重症例では受傷後3日前後に腫脹の増強,眼症状の出現がみられ臨床検査ではCPK, GOT, GPT, AMLがピークとなり,多くは2週間以内に軽快した.初診時に重傷度を判断することは困難であった.治療は抗血清使用にて5例,非使用にて53例を治療したがそれぞれに1例ずつ重症化症例がみられた.重症例でも抗血清を使用せず治癒し,副作用を考慮すると,抗血清は必ずしも必要とはいえず,厳重な経過観察,全身管理こそが重要であると思われた.
著者
竹末 芳生 横山 隆 児玉 節 山東 敬弘 村上 義昭 宮本 勝也 津村 裕昭 立本 直邦 松浦 雄一郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1921-1925, 1994-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

過去5年間において当科で経験した術後MRSA腸炎24例を対象とし,発症時期によりMRSAを分類し,その病態,発症機序につき検討した.術後6日以内の早期発症は16例, 7日以降の晩期発症は8例認められた.早期発症例は中等,重症例が75.0%を占め,また末梢血中白血球減少例が62.5%であり,晩期発症例の25.0%, 12.5%と比較し高率であった.これは早期発症例では術後腸管運動が回復しておらず, MRSAが産生した毒素が腸管内にとどまり血中に吸収されたためと考えた.晩期発症例の特徴は長期絶食(11.8±3.1日),抗生剤長期投与(13,9±8.2日)であった.これらは常在細菌叢の変化を生じ, MRSAへの菌交代現象をおこし易いが,腸管運動が正常のため毒素血症は稀であり,軽症例が多くを占めたと推察した.晩期発症例は内科領域で経験されるMRSA腸炎と類似の発症機序が考えられ,早期発症例が術後腸炎の特徴を有していると考えた.
著者
西村 好晴 竹中 博昭 岩瀬 和裕 矢倉 明彦 吉留 克英 大西 隆仁 高垣 元秀 石坂 透 別所 俊哉 大畑 俊裕 井上 匡美 大嶋 仙哉 田中 智之 片井 敦雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2569-2573, 1992-11-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
11

術後MRSA腸炎の重症化に影響を及ぼす因子と補助診断法につき検索した.対象症例12例を重症群6例,軽症群6例に分けた.重症群とは腎機能障害を併発した症例, 39℃以上の発熱を認めた症例,あるいは維持輸液以外に1日2,000ml以上の輸液負荷を要した症例とした.術前,術中の諸因子に有意な(p<0.05)差はなかった.腸炎発症までの術後日数は重症群が3.7±1.1日と軽症群の7.1±2.7日に比し有意に短かった.腸炎発症時の白血球数は両群間で有意差はなかったが,核左方移動係数は重症群が72±26%であり,軽症群の6±4%に比し有意に高値であった. Toxic Shock Syndrome Toxin-1 (TSST-1)の最高希釈倍数は重症群が27.4±0.4倍であり,軽症群の26.6±0.5倍に比し有意に高値を示した.腸炎発症までの期間が4日以内であること,腸炎発症時の核左方移動係数が高値であること, TSST-1の最高希釈倍数が高値であることは重症化を示唆すると考えられた.