著者
石川 正美 太田 宏 高原 信敏 大野 昭二 三浦 則正 稲垣 嘉胤 渋沢 三喜 石井 淳一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.331-336, 1984-03-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
19

1982年1月から10月までの10ヵ月間に, 6例の大腸穿孔による,汎発性糞便性腹膜炎を経験したので報告する.同期間における当病院の大腸手術例は68例で,大腸穿孔が占める割合は8.8%であった. 手術はexteriorizationおよびHartmann法を症例によって使いわけ,腹腔ドレナージの他に,術中に腹膜潅流用チェーブを挿入して,術後間歇的腹腔内洗浄を行った.術後合併症のうち,創〓開に対して縫合創に全層マットレス減張縫合を加えて良好な結果を得,未然に防止可能と考えられた.術後endotoxin shockから離脱した後に,心筋梗塞を合併して死亡した症例を経験し,初期shockから回復した後も,発生し得る2次的合併症に対する厳重な観察が必要と考えられた. 汎発性糞便性腹膜炎において,白血球数は比較的早期から低下することが示唆され,発症より14時間を経た症例は全例がshockを発生し, 16時間を経た症例の転帰は極めて不良であった.全体の死亡率は50%であったが, shock合併例の死亡率は75%と高値を示し,発症から手術までの時間に大きく左右されることが示唆された.
著者
中川 辰郎 下田 忠和 大野 直人 桜井 健司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2976-2980, 1992-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17

胃癌の疑いで手術し組織学的に胃のサルコイドーシス合併と診断した症例と胃の所属リンパ節および胃壁内にサルコイド結節を伴ったpm胃癌の症例を経験したので報告する.症例1は68歳男性.主訴は食欲不振.透視で胃体中下部の大小彎に壁の硬化像を認め,胃内視鏡で同部にびらん,不正潰瘍を認めたが,生検では陰性であった.胃びまん性癌および胃悪性リンパ腫を否定できず胃全摘を施行した.組織学的には,胃全体の粘膜から固有筋層にラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫と所属リンパ節にもサルコイド結節を認め,胃サルコイドーシスと診断した.症例2, 52歳男性.心窩部痛の精査目的で入院.透視,胃内視鏡で胃体下部前壁にIIc病変を同定した.組織学的には印環細胞癌で深達度はpmであった.癌病巣とは別に幽門部の粘膜内に微小類上皮肉芽腫を認めた.サルコイドーシスは全身性疾患として注目されてきたが,消化管,とくに胃のサルコイドーシスについての報告は少なく,その臨床的意義について検討した.
著者
田中 信孝 登 政和 針原 康 進藤 俊哉 青柳 信嘉 今中 和人 出口 順夫 上野 貴史
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.319-325, 1991-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

昭和53年より平成元年までの12年間に手術施行した938例の良性胆道疾患中, 4.8%にあたる45例の壁肥厚著明な長径5cm未満の萎縮胆嚢症例45例の外科治療につき検討した.胆石の合併を44例に認めたが萎縮胆嚢の特殊背景病変として内胆汁瘻,合流部結石,内視鏡的乳頭切開術後などがあげられた. CTでは86%で描出可能であったが, USでは診断は必ずしも容易でなく, 61%は高エコー,音響陰影像で推定された.外科治療として基本的に胆摘ないし胆摘+T-ドレナージが施行されたが,標準的胆摘は5例のみに行われ,胆摘困難例では胆嚢部分切除後粘膜破壊を加えた.主たる合併症である胆管損傷を1例に認めた.胆嚢癌の合併は2例4.4%であった.萎縮胆嚢の手術は安全性を優先しつつ可及的に胆嚢切除を意図すべきで,その際癌併存の有無の術前診断が困難であるため術中迅速病理診断は不可欠と考えられた.
著者
平口 悦郎 三宅 毅 須永 道明 新里 順勝 小沢 達吉 加藤 紘之 田辺 達三
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.209-214, 1992-01-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13

消化管の手術後,縫合不全により形成された瘻孔が難治化し,その対策に苦慮することがある.当科ではフィブリン糊注入による瘻孔閉鎖を試み,良好な結果を得たので報告する.昭和63年5月から平成元年10月までの期間に321例の消化管手術を施行し,術後縫合不全,瘻孔の形成を認めた27例中12例を対象とした.年齢は28歳から80歳,性別は男性6例,女性6例で,胃全摘術後5例,膵頭十二指腸切除術後3例,直腸切断術後3例,ほか1例であった.それぞれ2週間から5カ月,平均8週間の保存的治療を行い,瘻孔の縮小は認めたものの治癒には至らず,フィブリン糊注入を施行した結果, 9例で瘻孔閉鎖,治癒した.本法によれば浸出液が持続的かつ多量にあるもの,感染の急性期にあるもの,瘻孔部に腫瘍が浸潤しているものなどを除いた多くの症例で,手術的治療をすることなく,短期間で瘻孔を治癒させることが可能であり,きわめて有効な治療法である.
著者
田中 聰 佐藤 源 曽田 益弘 小松原 正吉 河本 知二
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.521-527, 1978

肝海綿状血管腫の3症例を経験し,それぞれ異なる摘除術式によって治癒せしめた.症例はすべて女性で,年齢は47歳, 47歳, 42歳であり,第1例は胆嚢水腫の診断のもとに手術されたが,第2例は腹腔鏡検査での腫瘤表面の性状から,第3例は肝動脈造影での造影剤のボタン雪状のpoolingから,術前に本症と診断されたものであった.その肉眼的増殖型はそれぞれ限局性被包型,多発性びまん型,部分的被包型で,第1例では腫瘤摘出術,第2例では左葉外側区域切除術,第3例では拡大右葉切除術(右葉および左葉内側区域切除術)をおこない, 270g, 890g, 3450gの腫瘤を摘除した.第1, 2例は腫瘤の圧迫によると思われる右季肋部痛,心窩部痛を主訴としたが,第3例の腫瘤は成熟胎児大であって.術前には下大静脈狭窄による両下肢浮腫,腹水の貯留,蛋白尿があり,ネフローゼとして加療されていた.また腫瘤内血液凝固に起因すると思われる血中FDP値の上昇があった.しかし腫瘤はほぼ被包化され,その約1/4周のみで肝実質に移行しており,結果的にはこの部での肝部分切除によって充分に摘除し得るものであった.肝海綿状血管腫は血管奇型とされているが,圧迫症状以外にも破裂による腹腔内出血, Kasabach-Merritt症候群,腫瘤内血液凝固にもとづくconsumption coagulopathy,貧血,うっ血性心不全,門脈圧亢進症状などを合併することが報告されているので,原則として外科的摘除を必要とするが,本症には有茎性肝外増殖型,限局被包型,不完全被包型,びまん性増殖型等,増殖形態に多様性があることが報告されている点を考慮し,必要最小限の侵襲にとどめるべく,術式の選択に慎重でなければならない.なお,ビリグラフィンによるcontrast enhancementを応用したCTスキャンは,肝嚢腫との鑑別上有用であった.
著者
佐藤 達夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.2253-2272, 1995-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
著者
渡辺 正純 長岡 秀郎 印南 隆一 広岡 一信 船越 尚哉 藤原 明 淀縄 武雄
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1528-1531, 1993-06-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

腹部大動脈瘤の破裂でも比較的稀とされている動静脈瘻を経験したので報告する.症例は67歳男性で突然血尿が出現し他院受診,腹部大動脈瘤の診断にて当科紹介となった.入院後,心臓カテーテル検査にて高心拍出量と左総腸骨静脈での酸素飽和度の上昇,また,動脈造影検査にて左総腸骨動静脈痩が認められた.手術は左側よりのretroperitoneal approachにて行い,左大腿動脈よりForgaty balloon catheterを挿入,左総腸骨静脈を遮断した.瘻孔は径約0.5cm程度と小さかったが静脈遮断前には多量の出血を認めた.瘻孔を直接閉鎖し,瘤をY graft人工血管にて置換した.術後経過は良好で溶血も改善し元気に退院となった.本疾患の予後向上のためには早期診断,早期治療が重要であると思われた.
著者
大村 健二 金平 永二 佐々木 正寿 疋島 寛 橋爪 泰夫 林 外史英 山田 哲司 北川 晋 中川 正昭 瀬川 安雄 林 守源
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.266-271, 1988-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
8

肝動脈塞栓術(TAE)施行例を, TAE施行前にあらかじめ胆摘を行った群(A群, 8例)と,胆摘を行わなかった群(B群, 50例)に分け, TAE後の生化学検査値の変動および不快な臨床症状と胆嚢梗塞の関係を検討した. TAE後のGOT, GPT, LDHの変動は両群間に差を認めなかった. B群においてTAE後γ-GTP, Al-pはそれぞれ16例(32%), 9例(18%)で上昇したが, A群では1例も上昇しなかった.また,両群ともTAE後高頻度に発熱を認めたが,腹痛はB群で38例(76%)と高率であるのに対し, A群ではわずかに1例に認めたのみであった. B群の8例に対しTAE後に胆摘を行ったが,そのうち6例に胆嚢梗塞の所見をみた. TAE後の血中の胆道系酵素上昇には, TAEによる胆嚢梗塞が関与していることが推測された. TAE後の不快な臨床症状を予防するために,初回手術時に胆嚢摘出術を施行することが有用と思われた.
著者
内田 数海 高崎 健 次田 正 山本 雅一 大坪 毅人 秋山 和宏 片桐 聡
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.58, no.7, pp.1445-1448, 1997-07-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
21

電解酸性水による手洗い消毒の有効性を判定する目的で,電解酸性水,手洗い用ポビドンヨード液,滅菌蒸留水でそれぞれ手洗いを施行し,手洗い前,手洗い直後,手術終了時について経時的に手指上の細菌を比較検討した.その結果,電解酸性水には手洗い用ポビドンヨード液とほぼ同程度の消毒効果が認められ,術前手洗いに十分利用可能であると考えられた.
著者
庭本 博文 大橋 秀一 柏谷 充克 柴原 浩章 大門 美智子 伊熊 健一郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.49, no.8, pp.1457-1461, 1988-08-25 (Released:2009-09-30)
参考文献数
15

症例は18歳未婚女性.無月経を主訴に婦人科受診し,処女膜閉鎖を認めた.腟開口術と腹腟鏡検査にて,腟欠損,卵巣卵管正常形態,双角痕跡子宮を確認し,さらに内分泌細胞遺伝的には正常で, Rokitansky-Küster-Hauser症候群と確定診断を得た.本症例にS状結腸を用い人工造腟術を施行し成功した.先天性腟欠損症に対して種々の人工造腔術が行われているが,それぞれ長所短所がある.最も重要なことは,永久性があり,できるだけ自然に近い腟を形成することであり,この点からS状結腸を用いた造腟術が理想的であると思われる.
著者
大矢 裕庸
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.555-564, 1972-11-01 (Released:2009-03-31)
参考文献数
13

最近では小児腸重積症による死亡率は極く低いものであろう.適確な診断のもとにおいては非観血的に整復されたものでも,また手術的に解除された場合でも,一般に予後に不安はない.しかし死亡例は今日でも皆無ではない.また幸い救命し得たとしても重篤な経過を辿つた症例も散見している.死亡例,重篤例はイレウス状態の増悪したものであるが,臨床経過をみると発症から来院までに時間を費したものと,仮性整復によるものとに2大別できるようである.発症から初診までの経過時間の長短は家族の観察力にたよる以外にないが,初診時の本症の診断は一般に容易である.初診時に腹痛,腫瘤触知,嘔吐,粘血便などについて本症の疑診を抱けば重大な誤りを招く事は先ずないと考えられる.問題はむしろ治療方法の選択にある.非観血的に高圧注腸法によつて解除しうるものを確実に予測し得れば治療はさらに安全なものとなろう.若し選択を誤つて,高圧注腸法により解除し難いような症例に敢て注腸法を行えば, X線曝射線量の増大,壊死腸管の穿破など患児を危険にさらすことになる.筆者はいかにして治療方法を適確に選択しうるか自験例について調査を重ねた結果,来院時の腹部単純X線像を一読するのみで,極めて容易に適応を決定しうることを知つたのでこれについて詳細を述べたいと思う.また重積解除後,短時間の単純撮影所見から仮性整復-重積遺残の有無も明瞭に確診し得たのでこれについても言及する.治療方法の選択について 小児腸重積150自験例の来院時の腹部単純X線像を調査した結果,腸管内ガスの増減によつて症例を(1) 腸管ガス像欠除群(2) 減少群(3) 膨満腸像のない群(4) 膨満腸のある群(5) イレウス像をみる群の5群に分けて臨床経過を比較した.これらの5群について発症-来院までの経過時間を精査すると,第1群, 8.3時間,第2群9.3時間,第3群15.6時間,第4群, 23.5時間,第5群43.5時間である.すなわち第1,第2,第3群は発症後早期例とみてよい.つぎにこの5群について高圧注腸法による整復率をみると,第1群, 88.9%,第2群89.7%,第3群86.7%,第4群57.1%,第5群16.0%であつた.すなわち第1,第2,第3群は,ともに高率に非観血的整復が成功していることになる.他方第4,第5群では整復率は低く,とくにイレウス像をみる第5群では僅か整復成功率は16.0%に過ぎない.以上の結果から小児腸重積症では来院時の腹部単純X線像の腸管内ガス像の状態から非観血的療法の適応を明確に識別しうると思われる.すなわち第1,第2,第3群に属するものは早期例でかつ高圧注腸による整復率も高い.これに対し第4,第5群は発症後の経過も長く,とくに第5群の非観血的整復はまず困難とみてよい.またこれに従えば高圧注腸法の欠点とされてきた壊死腸管穿破, X線曝射量の過大などは容易に回避されうるであろう.仮性整復について 仮性整復-重積遺残の看過も重篤な経過を辿らせる原因となり易い.重積腸管整復の診断は,回盲弁周辺の浮腫などによつて,ときには明確でないこともあろう.疑問が残れば慎重な吟味を必要とする.腸重積は腸管攣縮を前提とした疾病であるため腸管内容の移動は迅速である.これに注目して筆者は重積解除後約30分の腹部単純撮影像から得た腸管内容の移動状況を重積解除前のものと比較して確診を得ている.重積腸管が整復されたものでは腸管内容の移動は短時間であつても著しく, X線所見には大きな差異が認められ,仮性整復は明らかに識別しうると考えられる.
著者
宮内 隆行 松村 長生 江川 善康 大塩 猛人 石橋 広樹 堀家 一哉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.77-82, 1994-01-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
15

最近,われわれはプール消毒剤誤飲による頸部食道穿孔から縦隔炎を併発した1小児例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は12歳,女児.主訴は呼吸困難. 1992年7月24日水泳中,プール消毒剤(次亜塩素酸カルシウム錠剤)を誤飲し,呼吸困難が出現したため,当科紹介となった.食道造影で頸部食道穿孔から気縦隔および縦隔炎を併発したと診断され手術を施行した.頸部食道に径1.5cmの穿孔を認めた.穿孔部の一期的修復と左後縦隔ドレナージ,両側傍食道ドレナージを施行した.術後,右縦隔炎が増悪し,受傷後17日目に再手術を施行したがドレナージは不十分であった.受傷後27日目に食道内Tチューブドレナージ,デューブルドレーンによる右後縦隔,傍食道ドレナージを施行し,イソジン持続洗浄により炎症は消退した.
著者
江端 俊彰 小林 謙二 長内 宏之 川山 照雄 戸塚 守夫 早坂 滉
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.948-952, 1978-11-01 (Released:2009-09-30)
参考文献数
13

1975年より1977年までの3年間で当科におけるエンドトキシン血症は34例で,良性疾患14例,悪性腫瘍20例であった.エンドトキシン血症を呈した8例と,エンドトキシン血症を示さなかった15例についてchemical mediatorのうち,血漿ヒスタミン,血漿セロトニン濃度について比較検討すると, Limulus test陽性例では血漿ヒスタミン,血漿セロトニン濃度ともLimulus test陰性例と比較し,有意な上昇を示した.また,実験的エンドトキシンショックにおいても, chemical mediatorのうち血漿ヒスタミン,血漿セロトニン,血中ブラディキニン濃度の上昇を確認している.エンドトキシンショックの病態生理については種々の意見があるが,エンドトキシンショック時にchemical mediatorが放出され,末梢循環不全より血液のpoolingが起きショックになると考えられている.したがって,エンドトキシンショック時にはchemical mediatorの放出が,エンドトキシンショックのtriggerとなることが示唆され,エンドトキシン血症とchemical mediatorの関係は重要なものと考えられた.
著者
齋藤 盛夫 御供 陽二
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.887-891, 1992-04-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

比較的稀な疾患である多発性小腸憩室による穿孔性腹膜炎を生じた1例を経験した.症例は51歳男性,上腹部痛・嘔吐を訴え来院.腹部全体に圧痛を認め,上腹部は板状硬を呈しており,緊急手術を施行した.開腹するにTreitz靱帯より2mの空腸より3mにわたり多発性憩室を認めTreitz靱帯から3m50cmの部位で隣接する憩室がそれぞれ穿孔していた.憩室のある3mを切除し,腸管吻合を施行した.小腸憩室について,本邦報告例を集計し文献的考察を加えて報告する.
著者
与儀 喜邦 佐藤 新五 立野 進 東 秀史 郡山 和夫 長田 幸夫 瀬戸口 敏明
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.2928-2932, 1994-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

エタノール注入療法が有効であった巨大腎嚢胞の1例を報告する. 症例は71歳,男性.腹部膨満感を主訴として来院した.腹部超音波検査にて右上腹部に嚢胞性腫瘤を認めた.腹部CT検査では右腎実質を左方に圧排する巨大な嚢胞がみられ,腎孟造影で右腎孟は左方へ強く偏位していた.腎動脈造影では右腎動脈は左前方へ圧排されていた.以上から巨大な右腎嚢胞と診断した.超音波ガイド下に右腎嚢胞を穿刺し3,250mlの内容液を吸引した後,嚢胞造影を行い嚢胞外への漏出がないことを確認した.造影剤回収後に95%エタノール500mlを20分間注入した.同時に内容液330mlの左腎嚢胞に対しても95%エタノール100mlを注入し治療した.この患者は他に両腎に計2個の小嚢胞があった. 術後,両側腎嚢胞は縮小した.特に右腎の巨大嚢胞は径5cmと著明に縮小し, 3年間の経過観察でも再発は認められなかったが他病死した.
著者
熊本 吉一 小泉 博義 黒沢 輝司 山本 裕司 呉 吉煥 鈴木 章 松本 昭彦 近藤 治郎 清水 哲 梶原 博一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.1429-1434, 1984-11-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
10

急性腸間膜血管閉塞症は,絞扼性イレウスと共に腸管の血行障害をきたす代表的な疾患である.最近我々は塞栓摘除術のみで救命せしめた上腸間膜動脈塞栓症の1例を経験したが発症より手術による血流再開に至るまで3時間40分と短時間であったため腸切除を免れた.また横浜市立大学第1外科のイレウス症例中,術前に動脈血ガス分析をおこなった33例を検討したところ,腸切除を免れた.すなわち腸管が壊死に陥らなかった症例ではbase excessはすべて-2.8mEq/l以上であった.このことより絞扼性イレウスの手術適応決定の指標としてbase excess測定が有用であるとの結論を得たが,本来イレウスにおける手術適応の決定は遅くとも腸管の可逆的な血行障害の時点でなければならず,この点よりbase excessのみでの適応決定は慎重でなければならないと考えられた. これらの経験をもとに,腸管の血行障害における有用な補助診断法としての的確な指標を検討するために犬を用いて上腸間膜動脈を結紮する実験をおこなった.その結果,早期診断の一助として, total CPK, base excessが有用であるとの結論を得た.
著者
吉田 節朗 原田 忠 上坂 佳敬 浅沼 義博 鈴木 克彦 丹羽 誠 伊藤 正直 小山 研二 櫻田 徹 阿部 忠昭 宮形 滋
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.882-890, 1989

術後肝不全9例に対する血漿交換療法を検討した.血漿交換奏効例に共通する特徴としては,1) T. Bilが血漿交換開始時15mg/dl以下で7日目7mg/dl以下,2)アンモニアが血漿交換開始時200mg/dl以下で7日目正常域,3) BCAA/AAAの改善,4)プロトロンビン時間14秒以内,5)臓器不全は2臓器以下,6)昏睡度改善,7)血漿交換回数5回以内の7点が挙げられた. <BR>本法の施行にあたっては,T. Bil,昏睡度を指標とし,できるだけ早期に開始することが重要であるが,効果の判定については,T. Bil,アンモニア,BCAA/AAA, PT,不全臓器数,昏睡度,血漿交換施行回数,術前肝障害などの因子を総合的に判断する必要がある.著者は施行開始後7~10日目に上記パラメーターの改善が得られなければ血漿交換はいたずらに継続すべきではないと考える.