著者
外村 中
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.258-271, 1994-02-28
被引用文献数
1

大仙院の庭園を代表とするいわゆる枯山水は,はたして,本当に,日本独自の庭園様式なのであろうか。本稿は,日本において枯山水が成立したと考えられる時代に,日本とほぼ同様の庭園趣味が,韓国にもあったらしいことを紹介し,枯山水の新たな解釈の方向性を示すものである。
著者
飛田 範夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.49-54, 1984-05-31
被引用文献数
1

摘要:作庭に関する江戸時代までの造園古書の書名,著者,成立年代及び内容等について調べた結果,少なくとも30種類程あることが判明した。最古のものはやはり『作庭記』だが,『山水並野形図』に続く『嵯峨流庭古法秘伝之書』には多くの異本があり,江戸時代の作庭書にも強い影響を与えているようである。江戸時代に於いては,それに対抗する説を唱えた『築山根元書』も重要であろう。『築山庭造伝(前 後)』のユ二ークさも見逃せないものである。
著者
冲中 健 山内 啓治 藤井 英二郎
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.102-107, 1988-03-31
被引用文献数
3 6

我が国の主要な壁面登はん性つる植物としてのナツヅタについて,その壁面付着に関する圃場実験を行った。設定した実験因子は,つるの傾斜角度・日照条件,つるの太さとジベレリンの散布である。実験の結果,つるの傾斜角度・日照条件とつるの太さは,ナツヅタのつるの付着性に大かな影響を与えるか,シベレリンの散布はあまり大きく関与をしないことがわかった。
著者
本多 〓
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.19-24, 1968-12-29

公園緑地の存在によつて、大気汚染とくに煤塵に対して、その遮断効果または捕捉効果を把握するために、都心部にある大緑地として皇居内及び皇居外苑について、その外囲より内部に至る樹木の築上に附着する煤塵量の推移と、その附着のの状況について調査測定を行つた。(1)皇居外苑に比べて、坂下門内宮内庁舎前では1/6に減少し、その内部の乾道では1/41に、最も内部の吹上御苑の中では実に1/40に減少し、緑地の存在による煤塵防止効果は顕著であつた。それは緑地のもつ空間のひろがりに由来する効果と、その上に存在する樹木群の防波堤としての機能の相乗的なあらわれであると考えられる。(2)葉面気孔閉塞度よりみれば、外苑のクロマツの葉は、平均80%以上の気孔が閉塞されていたが、それより1km以上内部に位置する吹上御苑の中では、全く閉塞されないかまたは極めて僅少にとどまつた。(3)本年生葉に比べて前年生葉は場所により約3割増より3倍以上多く附着し、気孔閉塞度においても同様の傾向を示した。(4)クロマツの葉面で最も煤塵の附着しやすいのは、葉緑の極めて微細な鋸歯のある部分で、湾曲面、平坦面では粗に附着している。1本の葉上では葉の先端より中央部にかけて多く、基部に行くに従つて粗になる。(5)大雨直後にも葉上の煤塵はかなり残存するので、樹木の生育悪化を防ぐためには、自然の降雨のみによらず、煤塵の固着化の進まないうちに度々洗滌を行うことが望ましい。
著者
小林 昭裕
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.305-310, 1990-03-30
被引用文献数
2

札幌市では,自然のシステムを活用し,人間の生活環境に適した扇状地を市街地に,山地や台地は森林,低地は畑,水出,一部は湿地のままにするという自然条件を配慮した土地利用がなされてきた。しかし,近年,人口の急激な増加により,保水機能をもっていた湿地,水田, 畑などの緑が減少するとともに,大雨や地震等の災害時に危険性の高い低湿地に市街地が拡大し,自然条件に立脚した土地利用計画が必要であることが示された。
著者
柴田 昌三
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.84-89, 1987-03-31
被引用文献数
1 2

植栽された竹笹類の管理方法を考えるために、クマザサとオカメザサを用いて地下茎の季節的な動きを調査した。クマザサは8月の伸長が非常に悪く、6月と9月に盛んな伸長を示した。9月の旺盛な伸長がクマザサにとって非常に重要であることがわかった。オカメザサの地下茎は7月から11月の5ヶ月間しか伸長しない。夏から初秋にかけて活発な伸長を行い、特に7月後半から8月前半の旺盛な伸長が重要であることが示された。
著者
高橋 理喜男 大沢 孝也 赤土 攻 菅原 岩雄
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.14-18, 1968-12-29

1.植物に対する大気汚染の影響を調査する一方法として、1966年に大阪地方の樹木の葉中硫黄音量と大気中のSO_2濃度との関係を調べた。2.調査地点として大阪市内に7ケ所、市外に5ケ所を選定し、各地点でサクラ、イチョウ、サンゴジュ、クス、クロマツの葉を5月、9月の2回(サンゴジュでは12月を加えて3回)にわたつて採集し、葉中硫黄含量を測定した。3.時間の経過につれて、各樹種とも葉中に硫黄が蓄積されたが、そのていどは大阪市内(大気汚染地区)の方が市外よりも著しかつた。4.調査地域を大阪市内、大阪市外とに分けて、それぞれの葉中硫黄含量の平均値を比較すると、どの樹種についても、前者の方が高かつた。5.大阪市内で、とくにSO_2濃度の高いと思われる地点の葉中硫黄含量は著しく高く「津守処理場」ではイチョウ(9月)が1.5%をこえた。しかし汚染度が低い郊外地、たとえば河内長野市では、すべての長種について低い値を記録した。6.以上の結果から、葉中硫黄含量は大気中のSO_2濃度とかなり密接な関連があるものと考えられる。また大気汚染度の高い大阪市内などでは、SO_2を主体とする大気汚染による植物の生育障害に注意する必要があると思われる。
著者
近藤 公夫
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.22-25, 1961-08-31
被引用文献数
1

京都御苑の利用最盛期について利用実態を調査し次の結果を得た。1.京都御苑の休養入苑者は快晴晴平日で1万名程度、同じく休日で1.5万名程度であり、運動遊戯をするものは平日でその25%、休日で40%程度である。2.休養入苑者の平均在苑時間は平日で40分、休日で75分程度である。3.休養入苑者の生活地分布については、平日で80%が御苑各門から1km以内に、休日には同じく1.5km以内に分布する。特に小児は平日で90%が0.6km以内に、休日には同じく1km以内に分布する。
著者
濱野 周泰 麻生 恵 北沢 清
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.137-142, 1987-03-31
被引用文献数
2 2

モデルスコープシステムによって得られるシークエンス景観画像を利用した空間設計の方法や手順について検討を加えるとともに、本システムのこうした機能を活用して街路樹の植栽パターン、特に樹木の大きさ(樹高、枝張り)や植栽間隔といった要素が歩行者にどのような心理的効果を与えるか、またその管理方法について明らかにした。さらに、これらの実験を通して本システムの空間設計の道具としての可能性を明らかにした。
著者
長山 宗美
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.275-280, 1990-03-30
被引用文献数
2 5

冒険遊び場(羽根木プレイパーク)にて聞き取り調査を行ったところ,他の遊び場(よく遊ぶ場所は公園や家の中)との相違点は自然性と独自の手作り遊具であると感じていること,そこでの遊びで好きなことは,めまい感覚を体験できる手作り遊具での遊びであること,距離が近いほど頻繁に訪れやすいこと,自身の意志で頻繁に訪れる人ほど遊具以外のおもしろさに気がつくようになり,特にその傾向は男子,高学年にあること,が明らかになった。
著者
埴生 雅章
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.48-53, 1991-03-30
被引用文献数
1

雪見の対象となる雪景としては,雪のある所とない所の相互関連により生じる『対比』が雪景操作の観点からも重要であり,その視点から,雪の絵で評価の高い『広重』の雪景画を対象とし,雪景における『対比』の効果的な表現手法を分析の上.その特質を考察した。その結果,積雪の大地や物を白く覆い,風景を統一する効果,物を部分的に覆い,風景に変化と統一を与える効果,統一された雪の領域の出現によって,雪に覆われない領域等との明瞭な対比関係が生ずる効果,および降雪の背景との色彩対比等により印象的に見える効果等が多用されている傾向が確認され,雪見対象の構成原則確立のための手掛りが得られた。
著者
丸田 頼一
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.33-55, 1974-05-10
被引用文献数
2 5

1961年から1967年にかけて,夏季を中心に,都内の公園緑地を対象として,公園緑地内の気温,湿度および風に関する観測を行い,特に,公園緑地内の植栽の構成法の差異が,そこの各気象要素のそれぞれの分布に及ぼす影響を把え,次の結果を得た。1) 夏季,一般に,高木・亜高木層の材床が低木層または草本層で覆われている比較的植栽密度の高い樹林内では,最も低い低温域や最も高い多湿域が形成される。2) 夏季,午前10時,午後2時および午後6時には,天侯と公園緑地の周縁植栽の構成法とが関連性を保って市街地内空気は周辺公園緑地内へ移動する。3) 夏季,公園緑地内の芝生上に,樹林内と比較してより低湿性を呈する区域が存在している。4) 冬季の日中,常緑樹林で囲まれた南西斜面および常緑樹林で囲まれ,なおかつ陽光を受ける地形の平坦な芝生地に高温域が認められる。5) 冬季,約3m/sec以上の風が吹く時には,天気および観測時刻に関係なく,比較的植栽密度の低い所を通じて,市街地上の空気の公園緑地内への移動が行われる。6) 樹林内の風速は,芝生上のそれと比較して著しく弱いが,樹林内の園路上のそれは比較的強い。7) 公園緑地内の高木亜高木・層の林床が低木層または草本層で覆われている区域,あるいはこのような植栽構成により囲まれている区域の付近に,付の樹林構成地区と比較して,より低い不快指数の値がみられる。8) 風による影響を含めて,公園緑地内の樹林地の体感温度と芝生上の独立木下のそれとを比較すると一日中,前者よりも後者において快適性が認められる。
著者
北村 文雄 野田坂 伸也
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.32-37, 1975-03-20
被引用文献数
2

イ)造園樹木の生長におよぼす土壌硬度の影響を知るために,イチョウおよびオトメツバキを用いて実験を行った。ロ)供試樹木の地上部の生長は,高硬度区は悪く,年代を経るにしたがってその程度がいちじるしくなる。低硬度はむしろ生長がよい。地下部も同様の傾向を示し,高硬度区で生長は悪いが,予想以上に根は伸長し,また,地下部発達度(地下部/全体(花葉を除く))も大きい。低硬度区は根の状態はよいが,地下部発達速度は小さい。低硬度区が生長がよい原因は,土壌が適度に固いために根がよく土壌を把握し,効率よく働いているためであると考えられる。ハ)イチョウにおいては,高硬度区は落葉が早く,低硬度区は逆に遅くなる現象がみられた。また,オトメツバキにおいては,高硬度区は花蕾が年代が新しいうちはよく生じ,また低硬度区では花蕾が非常によく生ずる。これらは植物体内の栄養条件に関係があるとみられる。ニ)土壌水分については,高硬度区は乾燥しやすく,雨後一時間に水分含量が多くなってもその後の乾燥も早い。低硬度区は比較的よく水分を保持している。
著者
槇村 久子
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.109-114, 1994-03-31
被引用文献数
2 2

地縁血縁の中で成立,維持されてきた墓地が近代化の中で崩壊してきた。これまでの墓地が固定的な地域共同体により支えられていたなら,その崩壊後にはどのような墓地が出現してくるのか。その墓地は何を要素として成立しているのか。近年新たな形で出現している都市型共同墓所を調査することで,地縁血縁を超える墓地の方向を探る。都市型共同墓所とは家族を単位とせず,地縁血縁によらずに同じ墓所に眠る形をそう呼ぶこととする。分析の結果,共同墓所に共通にあるのは個人単位,共同祭祀,死後の平等の3点。今後の方向として墓所の共同化,有期限化,無形化が導き出された。それは近代化の矛盾の課題に対応し,近代を超える萠芽と見られる。
著者
宮城 俊作
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.13-18, 1989
被引用文献数
2

近世都市に起源をもつわが国の歴史的市街地では, 近代以前の宅地割が限定的な土地経営のもとで大きく変動せず,「にわ」としてのオープンスペースと家屋群がコンポジションを形成する空間構成が維持されてきた。土地の高度利用を目指した明治中期から昭和初期の土地経営は, 土地所有単位の変更を伴わずに街区内部のビルトアップをもたらしたが, 昭和20年以後は宅地の分割譲渡を経て個別の更新がすすみ, 伝統的な空間構成が変質した。