著者
李 在鎬
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.84-98, 2011 (Released:2017-02-17)
参考文献数
22
被引用文献数
1

本稿では,大規模テストの問題作成におけるコーパスの利用可能性を考察した。考察においては言語テスト分野におけるコーパス利用の現状を紹介した後,試験問題の作成過程でコーパスを用いる利点について述べた。そして,読解の問題作成での利用を想定し,日本語能力試験の級区分に基づくコーパスデータの分析を試みた。分析においては,日本語能力試験の読解テキストを学習データ,『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の収録データを評価データにし,判別分析を行った。この分析から『現代日本語書き言葉均衡コーパス』の収録データが1級から4級のどの級に相当するかを明らかにし,問題作成における利用範囲を示した。最後に,日本語教育におけるコーパス分析の視点としては,定量的アプローチだけでなく,具体的な用例を確認しながら質的に分析していくアプローチも必要かつ重要であることを指摘した。
著者
柴崎 秀子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.158, pp.49-65, 2014 (Released:2017-02-17)
参考文献数
20

本稿では,まず,リーダビリティー研究が始まった背景とその定義について紹介し,次に,リーダビリティーを測定するツールの使い方と内容を説明した。さらに,リーダビリティー研究成果の国内外における応用例を挙げ,日本語教育においては日本語能力試験を土台にしたリーダビリティー研究の可能性があることを論じた。同時に,リーダビリティー研究はテキスト要因のみを対象とするものであり,守備範囲には限界があることも加えた。最後に,今後の可能性として,新たなリーダビリティー判定式の構築よりも,社会的応用に着目すべきであることを述べた。
著者
庵 功雄
出版者
日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
no.86, pp.p52-64, 1995-07

願望文の目的語の格標示には「水が飲みたい/水を飲みたい」のように2つの可能性がある(この現象を「ガ―ヲ交替」と呼ぶ)。しかし,実例における分布やその他の考察を行うと,実際にはガは極めて限られた語嚢・構文上の環境にしか現れないことが分かる。本稿ではこの構文における無標の格標示をヲと考え,有標であるガが現れることができない環境を記述した。その結果,この現象には「典型性」と「他動性」という2つの要因が関与していろことが分かった。この2つの概念を導入することで,単純形だけでなく,複合形におけるガとヲの分布も説明できるのである。There are two possibilities in the case-marking of desirative sentences; as in "Mizu ga nomitai." or "Mizu o nomotai." (I call this phenomenon "Ga-O conversion.") However, it is found out, from the data I gathered and some other considerations, that GA can appear only in the very restricted lexicogrammatical cirumstances.In this paper, I regard O as the unmarked form, GA as the marked one,and describe the contexts where GA cannot be used.As the result of the investigation, it is showed that two factors - "typicality" and "transitivity" - are involved in the possibility of the conversion.These two concepts can be used to explain the phenomenon for simplex as well as complex verb forms.
著者
行木 瑛子 岩﨑 典子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.71-85, 2019-12-25 (Released:2021-12-26)
参考文献数
22

本稿はジャンル準拠の初級日本語クラスでのオノマトペ指導の実践報告である。オノマトペが特定のジャンルで特に有用なことに注目し,広告 (CM) というジャンルを取り上げ,翻訳活動を使った複言語教育 (学生の母語を含む全ての言語資源の動員を促す) アプローチで実践を行った。主眼においた指導目的は,オノマトペが特定のジャンルで効果が発揮される語彙であるという意識と,その効果がどのようなものであるかについての感覚を培うことである。本実践では,多様な母語や文化背景の初級レベルの19名の学生が参加し,それぞれが言語間の比較や翻訳を通して自分の有する既存の言語・文化資源を活用した。授業の録音データ,学生の振り返り,学生のCM翻訳の第三者による評価を分析した。その結果,CMで使われたオノマトペの意味や用法のみならず,CMにおけるオノマトペの効果や有用性についても初級の段階から考えることができ,オノマトペの意識向上につながったことがわかった。
著者
トンプソン 美恵子 木下 直子 尹 智鉉 寅丸 真澄 毛利 貴美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.16-30, 2019-12-25 (Released:2021-12-26)
参考文献数
14

本研究は,日本語教育副専攻科目における日本語学習アドバイザー育成を目的とした授業の可能性と課題を明らかにするため,受講生たちが何を学び,彼らの認識がどのように変容していったのかをインタビュー調査し,M-GTAの手法で分析した。分析の結果,受講生は自律学習,傾聴,ラポール形成などの日本語学習アドバイジングの理論を意義付けていたが,留学生を助けることと自律学習を促すことの間でジレンマを感じる,留学生の相談に実際に応じる場面で理論の応用に困難を覚え,一定の正しい解決方法を求めるなど,理論に見る日本語学習支援の理想と留学生と向き合う実践の場での現実に葛藤していた。一方,授業で自らの自律学習を内省したり,ピアで議論したりすることを通じて,受講生は自身の自律学習を意識化し,長期的な視点で日本語学習支援を捉えるようになり,さらには授業で学んだことを日常生活と有機的に結び付け,応用への意欲を醸成していた。
著者
嶋田 和子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.172, pp.33-47, 2019 (Released:2021-04-26)
参考文献数
15

日本語学校における教師研修は,かつては各学校任せとなっており,横のつながりは薄いものであった。しかし,学校および教師自身の意識改革などにより,日本語教師の質の向上への関心の高まり,日本語学校間のネットワーキング構築等が進み,教師研修の在り方・実態も大きく変わってきた。とはいえ,ここ数年学習者数の急増などにより,日本語学校における教師研修の在り方にも問題が生じている。 そこで,本稿では日本語学校の持つ特殊性を述べ,教師教育という観点からこれまでの流れを概観し,さらに,現在の課題を明確にする。その上で,文化庁が2018年3月に出した「日本語教育人材の養成・研修の在り方について」をもとに,日本語学校における教師研修について考察する。また,教師研修をより効果的に行うには,対話による実践の共有,他機関・他領域等との連携・協働のシステム作りが求められるが,本稿では連携を軸に4つの提言を記す。
著者
西郡 仁朗
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.172, pp.18-32, 2019 (Released:2021-04-26)
参考文献数
15
被引用文献数
1

高齢化社会が進む日本において,介護福祉分野の人材が不足していると言われて久しい。このため日本政府は様々な形態で介護福祉の分野への外国人の受け入れを進めている。しかし,これは日本だけの問題ではなく,アジア各国での社会経済・医療福祉の発達,人口動態の変化などにより,国際的な問題となりつつあり,日本が人材の受け入れを進める際にも国際的な施策や配慮が必要である。また,介護福祉の分野は,介護する側と利用者との日本語でのコミュニケーションが非常に重要である。 本稿ではここ十年,著者を含む日本語教育者が学会・研究会活動や公学連携活動などを通じて取り組んできた外国人介護福祉士受け入れの改善に関わる運動や,介護福祉分野で必要な日本語能力の分析,特に「介護のCan-doステートメント」などについて概説する。また,2019年4月から開始される「特定技能」制度での介護の日本語教育の問題についても触れる。
著者
深江 新太郎
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.122-129, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
10

本研究の目的は「生活者としての外国人」を対象にした日本語教育の目的を再提案することである。方法は教室活動の目的を実践者自身が問い直す実践研究の立場から,「生活者としての外国人」事業における筆者自身の実践を基に「標準的なカリキュラム案」の目的を批判的に考察することを採用した。結果として,「標準的なカリキュラム案」の目的である日本語で意思疎通を図り生活ができるようになることには日常生活における自己実現という視座が欠けていることが分かった。考察では「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目的に関し,生涯における自己実現について指摘した先行研究に対し,日々の日常生活における自己実現という視座があることを論じた。まとめにおいて,生涯における自己実現と日常生活における自己実現を組み込んだ「生活者としての外国人」に対する日本語教育の目的の再提案を行い,今後の課題を明示した。
著者
CHAUHAN Anubhuti
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.47-61, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
20

本研究では,ヒンディー語を母語とする日本語学習者に見られる対のある自動詞・他動詞 (以下,自他動詞) の誤用傾向・使用実態を学習期間別,自動詞・他動詞別に調査した。その結果,下位群では,述語選択の誤用が最も多く,中位群では,格助詞選択の誤用が比較的多かった。そして,上位群ではヴォイスに関する誤用が占める割合と述語・格助詞の選択に関わる誤用の割合にはあまり差が見られなくなった。つまり,先行研究で指摘されている通り,自他動詞の習得段階が「語彙を選択する→格助詞を選択する→文法的で意味が通じる文を作れる」のように展開していくことが窺えた。しかし,自動詞・他動詞別に考察すると,自動詞では,3群ともに述語選択の誤用が最も多く,他動詞の習得段階と異なり,語彙習得が助詞習得に必ずしも先立つわけではないことが示唆された。対のある自動詞の過剰使用による誤用の原因として,ヒンディー語が自動詞表現を好む言語であることが考えられた。
著者
佐々木 香織
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.170, pp.1-16, 2018 (Released:2020-08-26)
参考文献数
20

本稿では,外国人散在地域である新潟県において外国につながる子どもの学習支援がどのような状況であるかを記述した。自治体が支援を行ってはいるが,外国につながる子どもが抱える問題は深刻で,十分とは言い難い。外国につながる子どもは,日本語の問題があるだけではなく,学校や家庭に居場所がないことがある。文化の違いから学校生活への適応が難しく,家庭でも教育に関する認識の違いから親と衝突することも多い。「りてらこや新潟」は,そのような子どもたちを支援するため,日本語指導に加え,教科補習を行う勉強会や入試対策の個人指導を行っている。勉強会は,子どもたち同士の交流の場ともなり,子どもたちの学習面だけではなく精神面を支える場ともなっている。しかし,外国人散在地域であるという点からも,新潟ではボランティアによる地域日本語教室だけでは担いきれない課題が山積している。行政からの支援等,さまざまなサポートが必要である。
著者
小玉 安恵
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.93-108, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
8

近年のグローバル化に伴い,国を越え就職する学生が増えている中,カルフォニア州立大学サンノゼ校では学生の異文化間能力を育成するため,二つの国のクラスを毎週70分間オンラインでつなぎ,日米の学生達が協働で学習するCOILという新しい教授法に基づいた実践型の日本文化の授業を実施している。本稿ではまずCOILという新しい教授法を紹介し,次に本稿の理論的枠組みであり,授業内容や活動の決定の際参考にしたBennett (2004) のDevelopmental Model of Intercultural Sensitivity, Vulpe et.al (2001) による異文化間で効果的に働ける人物像のプロファイル研究,及びWillingham (2007) の批判的思考を紹介する。そして,最後に学生の気づきや批判的思考の促進,相対的視点の育成及び世界観の変容を目的とした異文化間協働型のクラス活動やリサーチプロジェクトの実践報告を行う。
著者
許 晴
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.169, pp.46-61, 2018 (Released:2020-04-26)
参考文献数
15

本研究では,中国の日本語専攻学習者を日本語志望群と非志望群に分類し,「日本語志望群は非志望群より動機減退の比率が低い」という仮説を検証することと,両群の動機減退因子および,専攻の振り分けと動機減退の関連を明らかにすることを目的とした。質問紙調査を行った結果,仮説は棄却された。日本語志望群・非志望群とも,5 つの動機減退因子が抽出されたが,両群の動機減退の因子構造には相違が見られた。日本語志望群であっても,必ずしも動機が減退しないとは限らず,成績と運用能力への落差感,自信と興味の喪失,専攻選択上の問題などが動機減退と関連があった。一方,日本語非志望群は教師に依存する傾向があり,日本語に取り組む姿勢が窺えるが,言語学習のレディネスができていない中で,学習成果が伴わず,動機が減退していることが窺える。
著者
張 麗
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.167, pp.31-45, 2017 (Released:2019-08-26)
参考文献数
20

本研究は,1)慣習性が学習者の間接発話行為の理解に与える影響,2)慣習的間接発話行為と非慣習的間接発話行為とに分けて,理解に困難が生じる原因を検討した。本研究では,JFL中国人上級日本語学習者24名を対象に,語用論聴解テストを用いて慣習性が理解の正確さと速さに与える影響を調査した。その結果,慣習的間接不同意発話行為は非慣習的間接不同意発話行為より理解されやすく,また反応時間が短いことがわかった。また,学習者の理解に困難が生じる原因を明らかにするため,語用論聴解テスト後に刺激再生法を用いて,学習者の理解プロセスを調べた。その結果,慣習的間接不同意発話行為が理解困難な原因は,「キーワード」が利用できないことであるが,非慣習的間接不同意発話行為が理解困難な原因は,「パラ言語情報」,「談話状況」,「背景知識」,「話者の意図」といった文脈情報が把握できていないことが推察された。
著者
磯野 英治 西郡 仁朗
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.108-114, 2017 (Released:2019-04-26)
参考文献数
9

言語景観が日本語を学ぶ学習者のための教育・学習リソースとして注目され,実際の授業での活用も始まっている。本稿では,2020年オリンピック・パラリンピック東京大会という社会的なトピックと言語景観を関連付けた新しいコンセプトを有する日本語教育用ビデオ教材『東京の言語景観-現在・未来-』について制作における目的と内容,および公開方法と授業実践を報告した。授業実践では,ビデオ教材を使用した教育実践によって,日本語学習者が身近に存在する言語景観の様々な特徴に気付くだけではなく,社会を構成する要素として言語景観を意識できるようになったと考えられる。
著者
劉 瑞利
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.62-76, 2017 (Released:2019-04-26)
参考文献数
35

本研究は,日本語学習者の「名詞+動詞」コロケーションの使用と日本語能力との関係を明らかにすることを目的としたものである。扱うデータは,「YNU書き言葉コーパス」において下位群,中位群,上位群に分けられた中国語母語話者及び韓国語母語話者の日本語作文データであり,学習者全員が一般的に上級と称されるレベルである。3つのグループにおける「名詞+動詞」コロケーションの使用について調査した結果,以下の2点が明らかになった。①コロケーションの使用頻度は,学習者の日本語能力が上がるにつれ高くなり,日本語能力と正の相関関係がある。②コロケーションの誤用数は,中位群が有意に多いこと,上位群が有意に少ないことが確認された。日本語学習者の「名詞+動詞」コロケーションの習得は,学習者の日本語能力が上がるにつれ,誤用が一時的に増えるが,その後習得が進み,誤用が減っていくという過程を経ることが示された。
著者
松下 光宏
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.166, pp.31-46, 2017 (Released:2019-04-26)
参考文献数
12

接続辞「ものの」はこれまで「PもののQ」のPとQの事態の特徴や両者の関係でとらえた意味や用法の説明が中心であった。本稿では,「PもののQ」文より1つ前の文・節との連接という観点から,「PもののQ」の使用文脈の特徴と「Pものの」の役割を論じる。さらに,「PもののQ」を用いる際の文法上の必要条件についても述べる。その特徴は次のとおりである。 ・「PもののQ」は直前の文・節がPとは連接せずQと連接し,Qが直前の文・節と同じ主題について事態を述べるという文脈でよく用いられる。「Pものの」は直前の文・節とQが表す事態について,その文脈の流れには沿わないPという事態も存在することを注釈として表す。 ・「PもののQ」はPの主題がQの主題と同じものか,Qの主題に従属するもの(Qの主題の部分,Qの主題の行為,Qの主題の程度や方法など)という条件を持つ。
著者
165号特集ワーキンググループ
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.50-56, 2016 (Released:2018-12-26)
参考文献数
6

当報告は,1998年の長野オリンピックで行われた「一校一国運動」について,長野市教育委員会事務局の職員にインタビューを行ったものである。インタビューの結果,「一校一国運動」は現在も10校程度継続しており,継続の要因として,明確なテーマがあること,相互交流や組織的な位置づけができていることが挙げられた。また,活動を通して,言語間での相違点や共通点に気づきが見られたこと,多言語への意識が高まったことが挙げられた。
著者
井上 史雄
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.165, pp.3-17, 2016 (Released:2018-12-26)
参考文献数
10

ここでは,オリンピックの言語問題を論じる。経済言語学的観点から2種の資料を提示する。第1として,グーグル検索を利用し,オリンピックと言語への言及の変化を見る。言語の市場価値は,かつては戦争に左右されたが,現代は経済に影響を受ける。オリンピックへの関心は短期間で,言語への関心や習得が長期にわたるのと,タイムスパンが違う。スポーツ大会は言語に限定的な作用しか与えない。 第2として,開催都市の言語景観を考察する。オリンピックはじめスポーツ関係の国際的行事で多言語景観が出現する。しかるに2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは,日英+ピクトグラムを基本にするそうで,公的言語サービスとしては後退を示す。ただ私的企業としては,多言語化によって客を呼び込む可能性があるわけで,ビジネスチャンスととらえることができる。