著者
山下 忠幸 三須 幹男 山本 志郎 寺田 弘 石井 祥之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.27-"42-2", 1963-12-25

いわゆるホモの不妊の原因を形態学的に明らかにする目的で,東北海道の3ミンク飼育場で蒐集したホモ3種類の合計50個体および対照としての3品種の合計33個体の尿生殖器についてまず肉眼的観察を行ない,次のような成績をえた。1)一側の泌尿器に異常が認められた個体に,同時に同一側の生殖器にも異常が認められたもの(尿生殖器異常群)がNAMRのHomo Sapphire3例中1例(33.3%)およびHomo CCPastel19例中7例(36.9%),またTAMRのHomo Sapphire21例中3例(14.3%)に発見れた。2)一側の生殖器にのみ異常が認められるものがNAMRのHomo CCPastel19例中2例さ(14.3%)に観察された。3)対照としての3品種33例および品種不詳の500剥皮屍体には尿生殖器あるいは生殖器の異常なものは1例も発見できなかった。4)尿生殖器異常群の肉眼的異常所見として,一側の腎臓欠損とこれにともなう腎脈管および尿管の欠如,さらに泌尿器異常側の腹部潜在精巣あるいは精巣上体,精管の欠如が観察され,これら異常の出現様式によって尿生殖器異常群を3型に分類した。5)生殖器異常群の2例中1例は左側の腹部潜在精巣と同側の精巣上体,精管を欠如していたもので,他の1例は右側の鼠径部潜在精巣を示していたものである。6)尿生殖器の異常側の出現頻度には差がみられなかった。7)ミンクの正常腎は左右ほぼ同様の形態を示し,一般に菜豆形を呈する。8)ホモにおける一側腎臓欠損例の他側残存腎は個体によって長径,幅径,厚径それぞれの増加率で異なるために,一律な形態を示さなかったが,形態のいかんにかかわらず残存腎は正常腎のほぼ2倍の重量増加を示すものが多かった。9)ミンクの精巣は採皮時期において蜿豆豆形を呈するが,繁殖期においては長径が短径および厚径に比べその増加率が著しく大である結果,厚い丸味を帯び,あたかもラッキョウ様の形態をとるようになる。10)ホモの精巣は他品種の精巣に比べ極めて発育が悪く,採皮時期,繁殖期ともホモの精巣は他品種の精巣の約1/2の重量を示すに過ぎなかった。11)ミンクの精巣は対照,ホモとも左精巣が右精巣より重いものが多かった。
著者
福井 豊 武藤 浩史 石川 尚人 寺脇 良悟 小野 斉 家倉 博
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.33-41, 1982-11-25

本研究は,黒毛和種未経産牛57頭について,A群26頭は24時間連続観察,B群の31頭は1日30分の2回観察を22日間行った。調査項目は,1日の発情頭数,22日間の全発情頭数,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数,1日の発情頭数による発情行動の変化(Sexually-Active Group),牛群内の社会的順位,天候および気温と発情行動との関係についてである。A群において,26頭中23頭(88.5%),延25例,B群において31頭中23頭(74.2%),延26例の発情が確認された。B群の発情観察時間で,A群の発情発見結果を24時間連続観察と比べると,1例見逃したのみであった。発情開始時刻は乗駕および被乗駕行動とも夜(18:00〜06:00)に開始したものが半数以上であった(乗駕行動:56.5%,被乗駕行動:52.0%)。発情行動は全例において乗駕行動で始まり乗駕または被乗駕行動で終了した。その内,乗駕-被乗駕-乗駕の発情行動パターンが観察されたのは23例中17例(73.9%)であった。乗駕行動から被乗駕行動へ移行する時間差は6時間03分±5時間26分であった。発情持続時間は,被乗駕行動の継続時間では19時間13分±6時間37分であり,全発情行動の継続時間では27時間06分±9時間47分であった。単独で発情を示した牛の発情持続時間は,同時に2頭似上発情を示した牛と比べて短く,乗駕および被乗駕回数も少なかった。牛群内の社会的順位と発情行動および発情持続時間との間には有意差は認められなかった。また,天候や気温についても明らかな関係は見られなかった。本研究から,1日30分の2回観察(06.00と18.00)の発情観察により,ほとんど全頭の発情牛を確認できた。しかし,発情開始時刻,発情持続時間,乗駕および被乗駕回数は個体やSexually-Active Groupの構成により変化すると思われた。
著者
小野 決
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.277-316, 1982-08-25

著者は1970年以来北海道におけるブユの分類学的研究を行なうため各地で多数の材料を採集飼育し,更にその習性特に吸血性について獣医学との関係を検討した。それらを要約すれば下記の通りである。1)北海道で1976年までに12種のブユが知られていたが,著者の調査により更に19種のブユが追加され,現在計31種のブユが北海道に産することが確認された。その19種の内訳は14新種,1新亜種が著者によって記載され,日本未記録2種が再記載され,北海道未記録2種が報告されている。2)分類学上,ハルブユ亜科,ハイイロオオブユ族を新らたに創設した。3)家畜に来襲吸血する種名の確認されたブユは次の通りである(表V参照) : オオブユ,キアシオオブユ,アオキツメトゲブユ,アシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ,クロアシマダラブユ,スズキアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ。この内アシマダラブユはその最盛期(6月上,中旬)に放牧中の牛馬にはげしく来襲吸血つる最も重要な種である。4)ダイセンヤマブユは山羊に来襲吸血することが観察されたが,牛馬,人体に来襲することは観察されてしない。5)人体に来襲吸血する種名の確認されたブユは次の通りである(表V参照) : オオブユ,アオキツメトゲブユ,ニシジマツメトゲブユ-晩春。キアシオオブユ,キンイロオオブユ,アポイキアシオオブユ,アシマダラブユ,ヒメアシマダラブユ-初夏。ホロカアシマダラブユ,スズキアシマダラブユ,アカクラアシマダラブユ-晩夏,初秋。この内アシマダラブユは発生量が多く最もはげしく人体に来襲吸血する。6)キタクロオオブユ,ダイセツハルブユは高山地帯で群飛するが人体から吸血することは稀であり,恐らくこれらは鳥類から吸血するものと思われる。
著者
泉本 勝利 岩原 良晴 三浦 弘之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.187-196, 1983-11-30

食肉の脂質酸化の測定について精度の高い条件を見出すため,2種のマロンアルデヒド(MA)測定法,すなわち抽出法および蒸留法によるチオバルビツール酸(TBA)値測定法を比較検討した。得られた結果は次のとおりである。1)抽出法において,加熱中に著しい脂質酸化が起こり,反復抽出によってもTBA値は減少しなかった。そのため食肉中の真のMA量は測定できなかった。挽肉よりもMAの抽出性を良くするために,試料を均質化したが,黄色い物質の出現によりTBA値を測定する538nmの吸光度は挽肉よりも低くなった。2)蒸留法において,加熱中に脂質酸化が起こり,これはブチルヒドロキシトルエン(BHT)を加えても完全には抑制できなかった。回収試験において,溶液中のMAは肉のMAに較べ,より速く,完全に蒸留された。そこで,食肉からMAが抽出される速度は非常に遅いと考えられた。食肉のMA回収率測定のために,1,1,3,3-テトラエトキシプロパン(TEP)もしくは1,1,3,3-テトラメトキシプロパン(TMP)を肉に混合する方法は,真の回収率が得られないことを示唆した。3)蒸留法は抽出法よりも優れていた。しかし加熱中に脂質酸化が起こった。精度の高いTBA値を得るためには,蒸留法の改良もしくは加熱をしない方法の開発が必要と思われる。
著者
佐藤 孝則 丹後 輝人 芳賀 良一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.149-157, 1981-05-15

繁殖に関する研究のなかで,現在あまり知られていないエゾシカの分娩生態について調査を行った。分娩の徴候として観察された外観の変化と行動は,腹部の下垂,乳房の肥大,外陰部の腫張と弛緩,尾の上げ下げ,速歩行動,呻き声,著しい威嚇であった。また1日あたりの脱糞と排尿の頻度は,分娩が近づくにしたがって増加を示し,特に分娩の前日で一番高い値を示した。分娩の順序は以下のとおりで,娩出陣痛,羊膜の突出と破裂,胎児の前肢と頭頸部の出現,出産,臍帯の摂取,後陣痛,粘液の流出,後産の排出と摂取とつづいた。3頭の雌ジカは林に隣接する牧草地内で出産を完了した。出産するとすぐ母ジカは新生児を絶えまなく,かつ力強くなめ始めた。新生児の最初の動きは頭部を振ることであった。
著者
細川 和久 三宅 勝 小野 斉 佐藤 邦忠 上田 晃 田村 哲 金子 五十男
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.617-635, 1977-11-25
被引用文献数
1

1.北海道根室半島およびその近隣地域で,昭和39から50年度までの間,発毛不全を主徴とする先天性ウシ奇形,59例が観察された。2.奇形は,すべて4〜7月に受胎したウシの中から発生し,かつ,放置すると長期在胎になり,子ウシは分娩後生存不能であった。3.奇形は,肉眼的には発毛不全のほか,矮小肢,球節部の熊脚状,歯肉で被われた歯,下垂体の欠如あるいは形成不全,体格矮小,組織学的には,下垂体腺葉の形成不全,副腎における髄質の欠如と皮質三層の分化不明,および皮膚毛根の発育不全などの異常を呈していた。4.この奇形は放牧地に繁茂しているバイケイソソを妊娠牛が摂取したたために発生したものと疑われたので,4頭の妊娠初期のウシに乾燥したバイケイソウの茎および葉を14日間から74日間給与したが奇形は発生しなかった。
著者
天池 孝子 光本 孝次
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.565-589, 1970-11-25

鶉の免疫遺伝学的研究として,免疫操作の確立と,同種免疫抗体の産生および再生,そして,その性質を明らかにし,遺伝的分析も試みた。1.鶉の血球抗原に対し良質の自然抗体を得ることは困難で,抗体は存在しないか,存在しても,その力価は非常に低いと観察された。2.抗鶉家兎血清を使用して,おおまかに鶉個体を識別することも可能である。3.同種免疫抗体では,抗原量を生理食塩水2%で0.5ccを4〜5回,つづいて5%,0.5〜0.7ccを3〜5回,3日隔で直接静脈内に免疫操作で,力価約64倍の抗血清を得た。4.同種免疫抗体のホールプラスチック板の凝集精度は試験管法のそれに比して,はるかに低いと観察された。5.鶉同種免疫血清は,Coombsテストや酵素処理法で,一価抗体の産生が観察されなかった。6.同種免疫血清の吸着操作には,最適抗原量は5〜10%の範囲,吸着時間は90〜120分で行なわれた。7.AT1血清に対する雛鶉の抗原性は1週齢で発現すると推察される。8.二つの遺伝子座位の存在が推定され,それぞれは複雑な抗原因子を支配していると推察され,.複対立遺伝子の存在が考えられる。9.現在までにAT1,AT2,AT3,AT4,AT5,AT6,AT7,AT8,AT9血清が作出され,AT3血清はAT8血清において完全に再生され,他も同様に,ほぼ再生されうる。
著者
中川 允利
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.221-225, 1991-11-30

潜熱移動を伴わない濃縮法として注目されている逆浸透法を醗酵液中の希薄なイタコン酸カリウムを酸として1(g-H_2IA/dl)より約10まで濃縮するのに適用することを検討した。使用した酢酸セルロース膜は、食塩を99%以上分離するタイトな膜で,窒素ガス加圧下で操作された。(1)イタコン酸として1(g-H_2IA/dl)含有するイタコン酸,イタコン酸水素カリウムおよびイタコン酸カリウムの純溶液を容量で9倍迄濃縮したときの分離率の範囲は,濃縮倍数の増加と共に増し遊離酸で60-70%,酸性塩で90-95%および中性塩で99%以上となった。(2)イタコン酸カリウム純溶液の濃縮の過程で,透過液流束が0になったときの,操作圧(kg/cm^2)と溶液濃度(g-H_2IA/dl)は,それぞれ,50と8.6,75と11.5および100と15であった。(3)純および醗酵液中のイタコン酸カリウムの濃縮過程では,塩の分離率は変わらなかったが,透過液流束は,醗酵液では純溶液の約1/2に低下した。なお,あらかじめ限外濾過した醗酵液でも透過液流束の低下は避けられなかった。
著者
東条 衛 岡村 太成 石橋 憲一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.357-364, 1975-06-10

生あんを球状に成形して寒冷外気により凍結させ,次の実験結果を得た。1)直径30mmと45mmの球状生あんを,風温-6.0〜-25.0℃,風速0〜13.0m/sの条件下で凍結させた結果,-1℃から-5℃までの凍結所要時間は10〜60minであった。2)凍結所要時間から求めた平均熱伝達率h_mは近似計算により次の式で示される。(h_mD)/λ=2+0.89R_e^<1/2>P_r^<1/3>但し1.4×10^3<R_e<4.4×10^4
著者
沢田 壮兵
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.95-101, 1984-12-25

十勝地方に適したサイレージ用トウモロコシ品種の早晩性にっいて,帯広の過去33年間(1951〜1983年)の気温から検討した。サイレージ原料の適正な植物体乾物率は25〜35%とされている。戸沢(1981)が報告した乾物率が30%になるのに必要な播種からの単純積算温度を用いて,早中晩生の各品種を5月10,15および20日に播種した場合に,いつ絹糸を抽出し,乾物率が30%になるかを求めた。その結果,早生種は5月20日までに播種すると約70%の年で,帯広の平年初霜日である10月4日までに乾物率が30%となった。これに対し,晩生種は5月10日に播種しても,乾物率30%となる日は33年間のうちわずかに3年のみであった。中生種を5月10日に播種した場合には,初霜日までに乾物率30%となる年の割合は36%であった。無霜期間が短かくて,初霜の早い十勝地方では,中晩生種は生体収量は高いものの,熟度がすすまないため,栄養収量は低く,良質のサイレージ原料を得ることは困難である。従って,十勝地方でのサイレージ用トウモロコシ品種としては早生種の栽培が望ましいと考えられた。
著者
仲口 勉 西島 浩
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.640-665, 1971-05-30

本文は1966年に行なわれたBombus schrencki (Hymenoptera : Apidae)の1群における外役蜂ポピュレーションの外役飛翔活動に伴う巣からの出入の観察記録をできるだけ量的に分析して得られた諸結果の報告である。1.外役蜂ポピュレーション密度は8月下旬には10個体前後であったが,その後しだいに増加し,9月中旬に45個体前後になってピークを示し,以後はしだいに減少した。2.活動開始時刻と終了時刻については,前者が非常に大きな個体変異を持っていたのに対し,後者のそれは小さかった。8月下旬〜9月初旬では開始時刻の早い遅いに関係なく,終了時刻がほぼ一定であるのに対し,9月中旬では同じく終了時刻の個体変更が小さいながらも開始時刻の早い遅いと終了時刻のそれとの間には逆相関的傾向が見られた。3.日の出時刻と最上位個体の活動開始時刻,および,日の入時刻と平均活動終了時刻の間には,正の相関関係が認められた。4.9月以降においては早朝の巣外気温の低下が外役飛翔活動を妨げた。その臨界点は林床付近においては10℃前後であった。5.活動開始時刻と日齢の関係については次の諸傾向が認められた。1)初認日の出現時刻は遅い。2)やがて順位が上がり,早いものでは数日後に上位を占めるようになる。3)その後しばらくの間(おそらく2週間前後),比較的安定した位置を保持する。4)さらに高齢になると再び順位が下がる。6.外役飛翔活動密度の日周消長は,群の飛翔活動が始まってから9時頃までは密度が比較的ゆるやかに増大し,その後ずっとほぼ一定の活動密度を維持するが,日の入時刻の1時間ぐらい前から急激に減少した。7.花粉採集活動の比率の日周消長は早朝はほとんど0で,7:00〜8:00から急激に上昇し,その後夕方まで高い値を維持した。8.単位外役飛翔時間の分布は採集タイプや観察日にかかわりなく,平均よりモードがかなり左にずれ,右すそが長く伸びた分布型を呈した。9.単位外役飛翔時間は季節の進行につれて,しだいに長くなった。10.単位外役飛翔時間の採集タイプによる差については,9月初旬までは花粉荷を持っていた場合のほうが長かったが,9月中旬には差はなかった。しかし,9月中旬でも風が強い気象条件の日には,花粉採集の能率が低下するため差が現われた。花粉荷を持ち込まない場合の飛翔時間には,このような気象条件の影響はなかった。11.1個体1日当りの平均外役飛翔回数は8月下旬の15回前後から,9月中旬の7回前後まで漸次減少した。12.1個体1日当りの平均外役従事時間は8月下旬から9月中旬まで,ほぼ昼間の時間の変化に平行して,500分から400分前後までのゆるやかな減少カーブを描いた。13.外役蜂の仕事への固執性はかなり強いことが示唆された。14.群全体としての花粉荷を持ち込まない外役の割合は,季節の進行につれて,20%前後から40%前後まで増大した。15.9月中旬に花粉採集能率を低下させた風の強い気象条件は採集タイプに対しては影響を与えなかった。16.外役蜂ポピュレーションにおける,P,PN,Nの組成は季節の進行につれて最初はPが圧倒的に多いが,しだいにPNおよびNの割合が増大した。17.単位巣内滞在時間の分布はモードが左端のほうにあり,右すそが長く伸びた型を呈した。18.単位巣内滞在時間は8月末にピークのある山型の季節的変化を示した。19.8月末を除き,花粉採集蜂のほうが長く滞在するという現象が原則的に認められた。20.働蜂により自巣の幼虫や蛹が巣外に捨てられる現象が数回観察された。
著者
大原 久友 浦上 清 石井 格 瀧ケ平 武昭
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.32-43, 1969-09-30

著者らは,日本のいろいろな環境条件下において適応した搾乳器を選択し,その性能を明らかにするために機械搾乳に関する一連の研究を実施している。今回はスウェーデンアルファラバル会社において製作された旧型のP77と新型のHP87の搾乳に及ぼす影響について比較研究した結果について報告する。この研究は,冬季間においてバケット型とミルキングパーラーにて用いたパイプライン型の搾乳器について実施したものである。その結果を要約するとつぎのごとくである。1. P77とHP87型のものについて比較した結果は表のごとくである。以上のように,HP87で搾乳するときはP77に比してバケット型で乳量が14%,ミルキングパーラーのパイプライン型で10%,それぞれ増加した。特に,HP87を用いた時には後搾りの乳量がかなり低減した。[table] 2. HP87を用いた時には,搾乳に要した時間が極端に短縮された。このようにミルカーの種類と後搾りおよび搾乳のための所要時間とはきわめて関係が深い。ミルキングパーラーにおけるパイプライン型の場合もバケット型の場合と同様である。3. 1分間あたり搾乳に対する産乳量は時間が進むとともに変化するが,一般的にいうと搾乳を始めてから1〜2分後に最高となり,この間に3〜3.4kgの牛乳が流出される。4.比較的大型な酪農場におけるHP87,P77と国産搾乳器による搾乳の所要時間および残乳量を調査すると,HP87の性能はきわめて高く,機械搾乳に要する所要時間も短縮され残乳量もきわめて少なくなった。以上のごとく,新しい型式のHPミルカーはバケット型でもパイプライン型でも産乳量を多くし,機械搾乳に要する時間を短縮せしめ,著しく残乳量を少なくする上に効果があることが確認された。
著者
伊藤 精亮 藤野 安彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.817-824, 1976-06-25

1.アルファルファの遊離ステロールとステロールエステルの主要な構成ステロールは,β-シトステロールであった。ステロールエステルの主要な構成脂肪酸はパルミチン酸,ラウリン酸およびミリスチン酸であった。2.アルファルファのトリグリセリドの脂肪酸は,リノレン酸,リノール酸およびパルミチン酸が主なものであった。トリグリセリドの1位と3位の脂肪酸組成は類似していて,比較的飽和脂肪酸が多く,これに反して2位はほとんど不飽和脂肪酸によって占められていた。
著者
本江 昭夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.253-258, 1985-11-20
被引用文献数
2

1983年に本学のガラス室においてポットを用いた実験を2回行った。5月28日-6月29日には密度を1.1,1.4,1.7とした土壌においてシバムギを播種し生長を調査した。7月9日-9月14日には播種後25日目より20日間接触処理を行い,さらに,土壌密度が0.94,1.2,1.4となるように踏圧処理を行い,播種後66日目に生長を調査した。土壌の締め固め処理により,見かけ上の土壌密度と貫入抵抗との間に高い相関関係を認めた(Fig.1)。締め固めた土壌では対照区に比較して,播種後32日目の草丈,葉数,個体あたり乾物生産量はそれぞれ54-70,82-91,15-33%に減少した(Fig.2)。播種後45日目の草丈,分げつ数,個体あたり乾物生産量は,対照区に比較して接触処理区ではそれぞれ56,239,85%に相当した(Fig.3)。また,踏圧処理後の生長について,草丈の相対値は予め接触処理を加えた区では104%,対照区では95%であった。同様に,分げつ数はそれぞれ148,102%,個体あたり乾物生産量はそれぞれ92,89%であった(Fig.4)。このように,予め接触処理が加えられて形態形成反応を示した個体では踏圧に対する抵抗性が若干高まった。
著者
西島 浩 小野 泱
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.505-511, 1963-07-10

北海道における吸血昆虫に関する研究の1部として,糠平におけるマダラヌカカ類の季節的消長について,1959〜1962年間ライト・トラップにより調査を行ない,次のことを知った。すなわち,1)同地において認めたヌカカは,Culicoides属の9種で,それらのうちC. crassipilosisおよびC. comosioculatusの2種は北海道新記録種である。2)これらのヌカカ群集の優占種はC. sinanoensisである。3)この種の夜間活動性は日没直後から約2時間後までが最も旺盛である。4)季節的消長曲線において単峰型を示す種は,C. kibunensis,C. aterinervisおよびC. dubiusであるが,前2種は8月上旬においてピークを示す。5)同曲線において双峰型を示す種は,C. sinanoensis, C. obsoletus, C. crassipilosisおよびC. pictimargoである。
著者
近藤 錬三 岩佐 安
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.231-239, 1981-11-15
被引用文献数
4

ブラジル,アマゾン地帯に分布する腐植質黄色ラトソルの高腐植量の表層が,どのような土壌生成過程および土壌環境下で形成されたかは明らかでない。この点に関して,多くの仮説が唱えられているが,われわれは植物種の相違も要因の一つであったと推測し,腐植質黄色ラトソルとその隣接地に分布する黄色ラトソルの生物起源ケイ酸体組成およびその量について比較検討した。得られた結果を要約するとつぎのとおりである。1)腐植質黄色ラトソルおよび黄色ラトソル表層の生物起源ケイ酸体量は0.54〜0.91%の範囲にあり,両土壌の間でさほど相違は認められなかった。2)腐植質黄色ラトソルおよび黄色ラトソル中で高頗度に分布するケイ酸体は,ヤシ科植物起源で全生物起源ケイ酸体の約30〜70%を占め最も多く,ついでイネ科草本類起源,樹木起源のケイ酸体の順であった。3)全生物起源ケイ酸体に占めるイネ科草本類由来のケイ酸体の割合は,両土壌の間でかなり相違が認められた。すなわち,腐植質黄色ラトソルは黄色ラトソルの約3〜4倍のイネ科草本類由来のケイ酸体を含有していた。4)腐植質黄色ラトソルA層のヤシ科植物起源の変質ケイ酸体の多くは熔融していたが,黄色ラトソルおよび腐植質黄色ラトソルB層のそれは正常な風化過程によって「あばた状」の表面を有していた。5)腐植質黄色ラトソルのみにmono-axon型の海綿骨針が観察され,それは一時的にせよ湿った環境下にあったことを示している。以上の結果から,腐植質黄色ラトソルは高草木の強い影響,および一時的に湿った土壌状態下で発達してきたものと考えられる。
著者
伊藤 太郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.223-231, 1960-12-25

Homothallic種Sordaria fimicolaの天然分離の集塊胞子培養によって得られた子実体に形成された子のう胞子中に,4種の色調差を有するものが4種の分離型(同質接合体型 異質接合体型(2種)不規則型)に従って配列形成されていた。色調形質因子の発現作用考究のためには,先ず同因子の数及び因子構成が調査されねばならないが,本研究では自家和合系形質発現作用考究の一部として,子のう胞子の分離を四分子分析法によって調査した。その結果として,異質接合体型中,後還元的分離を示したものは50ないし63%で,OLIVE氏の人為然変異型間の交配により現出された濃淡色子のう胞子の分離頻度に略一致することが明ちかになった。これは更に不規則型分離型の子のうにおいても適用されると見なした。これはその第一次から第三次の核分裂で同形質発現因子に異常を来たし,その作用が不活性化されるか遅滞するために形成子のう胞子に淡色のものが生じたと見なした。即ち濃淡色子のう胞子配列により,第一次核分裂において生じた単一核に,第二次又は第三次分裂に際して遅滞がおきたと見なされるもの(第一群分離型),第一次分裂に続いて,第二次分裂及び第三次分裂に遅滞がおきたもの(第二群分離型),更に第二次及び第三次分離に遅滞がおきたもの(第三群分離型)として,その始発分裂時期によって第一群を同質接合体型に,第二群を異質接合体型(I)(前還元分離型),第三群を異質接合体型(II)(後還元分離型)に準ずるものと見なし,三群に群別することによって得られた後還元分離頻度は約50%である。従ってこれらの事実から同菌の胞子色調形質発現は単一遺伝子支配で,その核分裂時に屡々同形質発現の機能的因子が欠失されるか,同因子の作用が不活性化されることがあろうと推察した。
著者
佐瀬 隆 近藤 錬三
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.465-483, 1974-03-20
被引用文献数
2

本研究では,まず現在の東北海道に生育するイネ科植物表皮細胞中の珪酸体の記載分類を行なった。次にこの分類に基づいて,北海道各地域に分布する約1,300B.P.年以降の埋没火山灰土について,そのA層中の植物珪酸体の形態別組成と含量を明らかにした。さらに,各地域で生成年代の明らかな火山灰土A層につき植物珪酸体生産量(g/cm^2/年)を算出し,主としてイネ科植物生産量の側面から,北海道の後氷期の古気候変遷について考察した。その結果は,次のように要約することができる。(1)イネ科植物表皮細胞中の珪酸体は,その形態的特徴と植物分類学グループとの関係から,I)ササ型,II)ヒゲシバ型,III)キビ型,IV)ウシノケグサ型,V)棒状型,VI)ファン型およびVII)ポイント型の7グループに分類することができる。このうちII),III),IV)およびV)の珪酸体グループは,TWISS et al.の分類を暫定的に採用したものである。これらの珪酸体グループのうち,I)はササ属,II)はヒゲシバ族,III)はキビ亜科,そしてIV)はウシノケグサ亜科の表皮細胞中に特徴的に含まれる。V),VI)およびVII)の珪酸体グループは,特定の植物分類学グループとの関係は認められなかった。しかし,ファン型グループの珪酸体は,ウシノケグサ亜科よりキビ亜科に一般的に多く含まれる傾向があり,とくにササに非常に多く含まれている。また,ヨシのファン型珪酸体は著しく粒径の大きいのが特徴である。(2)北海道各地の埋没火山灰土A層には,棒状型,ポイント型およびファン型グループの各植物珪酸体が,全試料に含まれていた。ササ型珪酸体は,5,000〜6,000B.P.年以降の埋没火口灰土A層に普遍的に認められた。ウシノケグサ型グループの珪酸体は,絶対年代に関係なく,道南渡島地域の試料を例外として,すべての地域の試料に含まれていた。キビ型グループの珪酸体は,数種の試料にごく少量認められたが,ヒゲシバ型珪酸体は,すべての試料にまったく含有されていなかった。これらの結果から推定される北海道の後氷期の火山灰地古植生は,5,000〜6,000B.P.年以前はウシノケグサ亜科のイネ科植物が優先し,それ以後はササが優先したものと推定される。5,000〜6,000B.P.年以降ササ植生が優先したという推定は,現在の北海道の火山灰地草地植生とほぼ一致するものである。(3)埋没火山灰土A層の珪酸体含量と,腐植含量の間には,正の相関(γ=0.64)が認められた。珪酸体生産量は,時代や地域の違いによって次のように変動したものと思われる。1)10,000〜7,000B.P.年,0.1〜0.2×10^<-4>g/cm^2/年(胆振,根釧地域)2)7,000〜4,500B.P.年,1.2〜1,9×10^<-4>g/cm^2/年(渡島,胆振地域)3)4,500〜2,500B.P.年,2.7×10^<-4>g/cm^2/年(渡島地域),1.3×10^<-4>g/cm^2/年(十勝地域)4)2,500〜1,500B.P.年,1.4×10^<-4>g/cm^2/年(渡島地域),1.0×10^<-4>g/cm^2/年(胆振地域),0.9×10^<-4>g/cm^2/年(十勝地域)イネ科植物の珪酸体生産量が,主に気候(とくに気温)によって規定されるという見地に立つならば,北海道の後氷期の古気候変遷は,ほぼ上記の珪酸体生産量の変動に対応したものと推定することが可能である。上述したように,埋没火山灰土A層中の植物珪酸体の形態組成および珪酸体生産量についての研究は,古植生のみならず,過去の気候条件を推定する有効な手段となることが明らかである。
著者
後藤 健三 岩野 貞雄
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.4, pp.660-665, 1969-01-30

供試された6種類のブランデー中,池田ブドウブドウ酒研究所で試作されたものはVitislabruscaを原料とするために,他の4種の四Vitis viniferaを原料とする市販品に比較して香気が著しく異なるが,これらは熟成期間中に樽材から溶け込むタンニン系化合物含量の相異によるほか,最も低級なカルホニル化合物の含量が比較的多く,発酵中に果汁アミノ酸から生成すると考えられる各種のカルボニル化合物含量が少ないためと推定される。最後にこの研究の大要は,昭和40年11月12日日本農芸化学会北海道支部会(函館)において発表された後,農化誌40巻3号(昭41)に要旨が収録されたものであり,ジメチルホルムアミドー水系溶媒による2,4-DNPH誘導体の濾紙クロマトグラフィは文献に記載のないものであることを附記する。
著者
伊藤 繁 津久井 寛
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.423-435, 1992-07-31
被引用文献数
1

畑作物共済は1979年から本格実施されたが,当初の引受率は共済組合,農協,役場などの組織的対応や制度運用上の問題点によって規定されていた。また地域によっては,作付け構成や畑作部門の経営にしめる比重が異なるが,これらの要因も共済加入率に影響を及ぼしていたとみられる。さらに1980,81,83年の冷害をきっかけとして加入率は上昇したが,近年では,当初の組織的対応による過剰保険を調整するような動きも出てきている。この動きは長期的にも短期的にもリスク水準に対する反応で,次第に畑作物共済の収益と費用との関係を意識した保険需要行動がとられるようになったとみられる。また,小麦を含めた作物共済の所得補償は被害の大きい地域では広範な農家に及んでいた。ここではこれを支払共済金の分布に注目して,とくに対象期間中最大の被害年でありまた1960年代の大凶作年に匹敵する1983年について,地域レベルの支払共済金の平均値では捉えられない側面を明らかにした。