著者
小柳 敏郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.217-222, 1983-11-30

1981年1月23日北海道日高支庁西部でマグニチュード7.1の地震が発生した。帯広における震度はIVであった。この地震後に詳細な震度調査を目的としたアンケートを帯広市内の住民に配布し,約1,100枚の回答を得た。アンケートの内容は,地震時に居た場所とその揺れ方などの項目から構成されている。解析の結果,帯広の震度は3.86であった。また,市街地の震度分布図が作成され,この地震に対する震度の地域的な特徴がわかった。1973年の「根室半島沖地震」に対する同様の調査の結果と比較したところ,両者の間には共通した特徴をもつ地域があることがわかった。
著者
大原 久友
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.372-384, 1968-05

馴鹿は北極圏周辺に飼養されている反芻動物であり,これらの地方では原住民,ラプランド人などによって飼われている。その用途は乳・肉・輸送用など広範である。この地帯における主な飼料は乾燥したツンドラ地帯に広く分布しているハナゴケである。そのほか,エイランタイ,バイダイキノリおよびミズゴケ類も採食される。著者は馴鹿の飼養について科学的な興味をもって若干の研究を行なったが,今回報告するのは主飼料であるハナゴケの消化率と,ハナゴケ以外の北海道産の飼料で人工飼養を行なったものについてである。すなわち昭和18年4頭の馴鹿を樺太から北海道の帯広畜産大学に輸入されたものについて実施したものである。その結果を要約するとつぎのごとくである。1.ハナゴケの飼料組成,消化率および可消化成分はつぎのごとくである。[table]このようにハナゴケは蛋白質,脂肪含量ともに少なく,粗繊維に富む飼料であるが,前者の消化率は低く,炭水化物の消化率は概して高い。性別,年齢別に若干の差異が認められる。澱粉価は7.65,可消化養分総量は20.36である。2.ハナゴケ飼養時における石灰・燐酸の出納についてみると,前者の出納は負であり,後者は正であって46.5%の吸収率を示している。これらは造骨,角質の成分であるから,馴鹿飼料としてはカルシウム剤の補給が必要である。3.ハナゴケの摂取状況は概して良好であったが,ハナゴケ飼料のみの給与では若干生体重が減少する傾向が認められた。4.馴鹿の常飼料であるハナゴケから人工飼料に切替えした飼養試験によると,飼料を切替えした第1回目の摂取には長時間を要し,かつ嗜好性も低かったが,2日目にいたってようやく人工切替え飼料に馴致し,3日目にいたって完全に摂取するようになった。このように飼料の切替えは馴鹿の生理的状態を良好にし,飼養管理に注意するときは急変しても大きな影響がないようである。5.豆類の多給は下痢および鼓脹症を起こす危険性も大きいので200g位を限度とする。切替えに供用した燕麦,ビートパルプ,豆類,ビート茎葉のほか,乾草とくに2番牧草,ヨモギの葉部を好食し,カシワ葉,カラマツの枝なども摘食した。以上のように馴鹿にはじゅうぶんな適正な運動と飼養法によって人工飼料による増体あるいは栄養の向上が可能であることを認めた。
著者
中野 良三 美濃 羊輔 丸山 純孝
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告 第1部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.p611-622, 1975-10

同伸性と相似生長性の有無を検討するために,オーチャードグラス(Dactylis glomerata L.)の3品種,早生(チヌーク),中生(フロード)および晩生(ペンレート)を用い,1974年6月中旬から7月中旬まで,野外条件下で出葉位の調査および葉身長と葉幅の測定を行った。1)3品種ともに子葉鞘からの分げつは認められなかった。また前出葉からの分げつは生育の旺盛な個体の低節位分げつに認められた。2)3品種ともに主稈と第1次分げつの間に同伸性は認められたが,第2次分げつは対応する主稈葉位より遅れる傾向がみられた。3)3品種ともに第1次分げつ延葉長と主稈相対延葉長との間に相関が認められたが,生長時期を通じて両者の延葉長の割合は一定でなく,相似生長性のないことが明らかになった。
著者
三浦 弘之 泉本 勝利 塩見 雅志
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.389-401, 1979-11-20

1.硫安分画およびリン酸塩分画により,ヤギミオグロビンを分離,精製した。その結果,409nmに対する280nmの吸光比で示される純度は,もっとも精製された場合で5.25であった。2.純度4.80のヤギミオグロビン画分は,セファデックスG-100およびSDS-PAG電気泳動において単一であり,7.5%ゲルPAG電気泳動において,結晶標品のブタおよびウシミオグロビンと同様に3本のバンドが認められた。これらのことから,純度5.25まで高められたヤギミオグロビンの精製純度は非常に高いと言える。3.ミオグロビンの自動酸化は一次反応であった。4.添加する還元剤(ハイドロサルファイトナトリウム)の濃度を増加させると,自動酸化の速度定数は高くなった。また還元剤を添加して還元型ミオグロビンを調製したあと10分間放置した場合でも同様であった。還元剤濃度0.04%以下で速度定数をほぼ一定にすることが出来るが,0.02%以下では確実に酸素型ミオグロビンを調製出来なかった。したがって,本研究における使用濃度は0.02%とした。5.高純度のミオグロビン(純度5.25)を用いた場合,ミオグロビンの濃度を変化させても速度定数は一定であった。6.調製時の酸素型ミオグロビンの割合を低下させると,速度定数は増加の傾向を示すが,酸素型ミオグロビンの割合が60%以上の場合は,速度定数の変動は無視できる程度であった。高割合の酸素型ミオグロビンに一定の割合で酸化型ミオグロビンを添加した場合,酸素型ミオグロビンの割合の変化に対して速度定数は一定であった。7.ミオグロビンの精製純度を高めるに従って速度定数も上昇した。これは,精製過程において,夾雑タンパク質が除去されたためと考えられる。8.純度5.25のヤギミオグロビンの自動酸化の速度定数は,0.103hr^<-1>であった(24±0.5℃,pH6.0)。これを他の研究報告と比較すると,家畜間では,ウシおよびブタより大きくウマより小さい。9.ミオグロビンの自動酸化速度の測定の際は,添加する還元剤の量,調製時の酸素型ミオグロビンの割合およびミオグロビンの精製純度を正確におさえる必要がある。
著者
根岸 孝 林 広 伊藤 精亮 藤野 安彦
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.97-101, 1967-03-31

1.「大豆レシチン」に含まれる主なリン脂質は多い順にホスファチジルコリン,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルイノシトールおよびホスファチジルセリンであった。2.「大豆レシチン」のリン脂質を構成する主な脂肪酸はリノール酸で,次いでパルミチン酸,オレイン酸,リノレン酸,ステアリン酸等であった。
著者
梅津 一孝 高畑 英彦 干場 秀雄 竹山 一郎
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.177-184, 1989-11-30
被引用文献数
1

高能率家畜計量作業の技術的指針を明らかにすることを目的に,信号処理アルゴリズム,信号検出ハードウエァー並びに秤本体とクランク型ワーキングシュートの試作を試み,ホル雄子牛肥育牧場と公共育成牧場で実際の牛群を用い計量精度と作業能率の調査を行った。計量精度は,検定用標準分銅での調査の他に,静止体重については,実際の牛群を用い,従来の機械式計量器と供試計量器の精度比較並びに供試計量器の自動計量値(動態体重)と安定時再計量指示値(静止体重)の比較を行った。10頭の4反復調査では,各牛についての平均誤差,確率誤差の大きさはいずれも供試器静止体重<供試器動態体重<機械式静止体重の関係となり供試器は従来の機械式よりも計量値の変動は小さかった。作業能率は作業状況をビデオテープに録画し,再生解析した。計量器本体の性能向上により個体が計量台に脚を掛け計量が開始され演算を終了し計量値が表示されるまでの所要時間は平均4.23秒と正味計量時間が大幅に短縮された。またワーキングシュートの改良により牛の計量台への誘導が円滑に行われ,平均338kgfの牛群において毎時271頭の高い作業能率を得た。
著者
堀 浩二 倉持 勝久 中林 成広
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.239-246, 1985-11-20
被引用文献数
1

エゾアオカメムシの幼虫生育にとって,インゲンマメの種子莢,エンドウマメの種子莢,小麦の穂,オオハナウドの種実およびライラックの種実が好適な食餌植物であった。アスパラガスとナナカマドの実はすくなくとも比較的若い幼虫(野外では多分幼虫の全生育期間に対して)にとって,非常に良い食物であった。若い多汁なナタネの種子莢はまた幼虫生育にとって適した食物であろう。種実をつけていないアブラナ科植物,馬鈴薯,アルファルファおよびてん菜茎葉で幼虫を成虫まで生育せしめることはできなかった。
著者
小野山 敬一 熊谷 幸民
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.115-129, 1989-06-30

有害鳥獣駆除におけるエゾシカの捕獲状況についてのアンケート調査を7支庁管内(胆振,日高,上川,網走,十勝,釧路,根室)について行ない,捕獲時に目撃された群れ構成と大きさ,捕獲された時期,時刻,捕獲地の植生,捕獲地周辺での生息状況を調べた。群れ構成としては,雄と雌の混成群が約半数を占め,ほとんどの場合雌の方が多かった。雄の単独個体は,10月と6月に多かった。雌の単独個体の場合は非常に少なかった。群れは1〜5頭の場合が多く,平均頭数は,4月に7.5頭と大きく,3,5〜8,10月は3.9〜4.8頭で,9,11,12月は3頭以下であった。群れの大きさと構成の変化に関係する要因として,エゾシカの繁殖期の行動,採食集団の形成が考えられた。性比(雌/雄)はエゾシカの自然個体群よりも少し高いと推定された。捕獲個体が目撃総個体数に占める比率からみると,雄は雌の約5倍選択的に捕獲されていた。雌雄とも,捕獲数は4〜7月と10月に多く,時刻別には5〜7時台と14〜18時台に多かった。草地における捕獲が最も多くて64.8%を占め,ついでビート畑(15.4%)とマメ類畑(8.6%)が多かった。日高,釧路,根室のように草地の作付け面積比率が特に高いところでは,草地での捕獲が多かった。胆振,上川,網走では草地での捕獲比率は作付け面積比率よりかなり低く,胆振ではマメ類畑,上川と網走ではビート畑での捕獲比率が,作付け面積比率に対してかなり高かった。捕獲地域一円には,エゾシカが繁殖地を持って1年中生息するという回答がほとんどだった。捕獲は森林に隣接した草地や畑で行なわれることが多いと思われる。捕獲者による推定生息密度の各支庁管内での平均値は,日高と釧路でかなり高く,ついで上川,網走,十勝,根室でほぼ同じで,胆振はやや低かった。全7支庁管内での平均は51.8頭/km^2であった。農耕地周辺では採食集団の形成あるいは高い環境収容力によって生息密度が高くなっていると考えられる。
著者
和田 和子
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.505-547, 1967-03-31

8種類の織物の低温における損傷について実験的に調査検討した。その要約,結論は次のごとくである。1)試料の処理及び測定試料の処理法: 冷却試料としては-75℃の魔法びん中に20時間投入,繰返し5回処理を行なった。各処理布の損傷度測定: 原布と処理布の強伸度・剛軟度・防皺度・収縮度をそれぞれ測定し,次式により各試料の各変化率を算出し損傷の状況を調査した。[humerical formula]2)低温による織物の損傷低温による織物の損傷としては,低温処理変化率と室温処理変化率との比較で表わした。第12表は繰返し5回処理の総合平均値をもとに表わしたものであるが,この結果次のごとき結論を得た。A)全試料は各性能測定項目別にみても,冷却処理によって変化を受けないもののほうが多い。しかしその内訳を見ると,銘柄別に冷却処理で比較的変化の少ないものを挙げれば,MCR樹脂加工綿布・レーヨンスフ未加工布・レーヨンスフ樹脂加工布・ビニロンで,逆に変化の多いものは,サンホライズ加工綿布・羊毛・ボンネル・アロンとなった。性能項目別では,全測定項目を通じ,概して冷却処理による変化が少なく,特に収縮度においてその傾向が著しい。しかし反面,羊毛・ボンネル・アロンなどの銘柄では,冷却処理で強力・伸度・剛軟度・防皺度にかなりの変化が見られた。B)低温処理による変化の度合は,一般に含水試料の方に多く表われ,石けん分含有試料についてはその表われ方の度合が少なくなっている。しかし,これはあくまで,冷却処理布と室温処理布との比較においてのことであるから,石けんが低温下で各種性能変化の抑制に影響したのではなく,逆に室温下で影響を与えた結果である。C)低温処理による変化の表われ方としては,概して強力変化が大であれば伸度変化が小さく,強力変化が小なら伸度変化が大となるように,その間ではほぼ負数的変化の傾向を表わす。剛軟度変化と防皺度変化との間には,一方の変化が大となれば他方もまた大となり,ほぼ平行的変化の傾向を表わす。今回の測定項目間では,このように強力変化と伸度変化,剛軟度変化と防皺度変化との間では,それぞれ関連的変化の傾向を示すが,収縮度変化は,他の性能と関連なしに表われた。3)日常衣生活への提言[table]羊毛の強力・ボンネル・アロン両試料の剛軟度・防皺度に低温による変化が大きく表われるから,これらが,感触・手触りを尊ぶ衣料だけに,特に注意が望まれる。したがって,感触・手触りなど感覚的性能が要求される衣料の場合には,低温にさらすことは回避しなければならないであろう。しかし,全般的には冷却による損傷は少なく,特に収縮度においては衣料の寸法安定性の上から,低温にさらすことを回避する必要はない。
著者
堀 浩二
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.666-675, 1971-05-30

マキバメクラガメの腸インバーターゼの性質を研究し,今まで研究された昆虫インバーターゼのあるものと比較した。またそれを同じ昆虫の他の消化酵素と比較してその消化生理に関する役割を論じた。1.pH 5.5における24時間インキュベーションの場合,腸インバ'ーターゼの最適反応温度は約37℃であった。2.pH 5.5,37℃において,腸インバーターゼは48時間のインキュベーションの間中アクティブであり,その際生産される還元糖の量はインキュベーションの時間に伴って直線的に増加した。3.反応混合液中のシュークロース濃度が10%以上であった時,腸インバーターゼは最もアクティブであった。4.腸インバーターゼはpH 3.0と8.0の間でアクティブであり,4.0と6.5の間で,そのより高い活性が認められた。その最適pHは5.5であった。5.どのpHにおいても,NaClとKNO_3はインバーターゼの作用になんらの影響も与えなかった。6.腸のpHと腸インバーターゼの作用に対する最適pHとの一致は本カメムシのシュークロース消化にとって有利であろう。
著者
小野 泱
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.893-909, 1978-06-20
被引用文献数
1

著者は1975〜1977年の2〜5月に帯広市東郊依田台地の下を流れる小沢でブユの採集を行い,C. subcostatumオタルツノマユブユとC. uchidaiウチダツノマユブユにそれぞれ極めて類似した2種類のブユの多数の幼虫,蛹を得た。これらの室内飼育で得た2種の成虫はsubcostatumおよびuchidaiとはそれぞれ別種であり,かつ新種と認めたので本文においてCnetha boldstemta n. sp.オビヒロツノマユブユおよびC. acmeria n. sp. サツナイツノマユブユとして記載した。C. boldstemtaはC. subcostatumに類似しているが,雌雄のgenitalia構造に差がありboldstemtaの雌の胸背に3条の淡色条が認められるがsubcostatumには淡色条がなく,雌の額板の幅,雌雄の脚の形態,色彩,蛹の呼吸糸の幅,繭の形態,幼虫の頭部額板の斑紋,頭部腹面の割目の形態,肛鰓にも明瞭な差異が認められる。C. acmeriaはC. uchidaiに類似しているが,雌雄のgenitalia構造に差があり,繭のdorsal projectionは特異的に極めて長くなっている。また雌の額板の幅,雌雄の脚の形態,色彩,幼虫の頭部額板の斑紋,肛鰓にも差が認められる。C. subcostatumとC. uchidaiの成虫は5月から11月まで見られ,幼虫,踊も道内各地の平野部から山地の林内の小沢からかなり幅広い川で普通に見られるが,C. boldstemtaとC. acmeriaの成虫は平野部の台地下に4〜6月だけ見られる。両新種の幼虫と蛹は融雪期とその前後に,湧水からの小沢にのみ生息しており,この小沢は夏期,秋期には消滅する。両種の雌成虫は吸血するかどうか不明である。
著者
谷口 哲司 小野 哲也 大友 功一 安田 裕隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.203-210, 1983-11-30

一般産業用エンジンに採用され発達したターボチャージャは,わが国においても一部の農業用トラクタに使用されている。同型で同一排気量でターボ過給されたトラクタ(TCトラクタ)と,されないトラクタ(NAトラクタ)の2台を供試して性能試験をおこない,農業用トラクタに対するターボ過給の適応性を検討し,次の結果を得た。1)PTO軸性能試験において,ターボ過給されたトラクタは最大軸出力が19.6%増大し,その最大値は低回転域にずれた。最大軸トルクは定格回転より急激な上昇を示し,その最大値はNAトラクタに較べて27.6%増大し,エンジンにねばりをもたせている。燃料消費率は全回転域にわたり約4%の改善を成した。2)けん引性能試験において,ターボ過給されたトラクタは滑り率20%時のけん引出力が14.2%の増大を示し,より高速作業のできることを示した。さらに消費燃料を考慮したけん引仕事効率では2.4%の向上を示し,このときけん引力が29.5%大きく,けん引出力が19.8%増大していた。以上のことを総合して,ターボ過給されたトラクタは同型同排気量のトラクタと比較して,機関出力に余裕があり,燃料消費率が低減され,高いけん引仕事効率が得られる結果となった。したがってより重作業・高速作業に適応できると考察された。
著者
鍋田 憲助 松尾 敏正 杉沢 博
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.293-299, 1988-06-30

オリーブ(Olea europea Linn.)2品種(Lucca種およびMission種)の葉,花および中果皮+外果皮の揮発成分の構成並びに量をガスクロマトグラフィーおよびガスクロマトグラフ-マススペクトロメトリーで研究した。2つの品種の揮発成分中に,既にオリーブ中で検出された27成分を含め56成分を同定した。3-ビニルピリジン,メチルビニルピリジン並びにcis-jasmoneを含めた29成分はオリーブより初めて同定された。2つの品種の定性的,定量的差異を検討した。Lucca種中果皮+外果皮でヘキサナールとtrans-2-ヘキサナールが高濃度に存在することが特徴であった。また,Lucca種,Mission種とも花に多種の直鎖状炭化水素が特徴的に存在した。
著者
赤堀 誠 光本 孝次
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.683-695, 1977-11-25
被引用文献数
1

本報告では,モデル実験を通して,乳牛集団の遺伝的改良に影響を及ぼす要因の評価によって,乳量の遺伝的改良を効率的に為し遂げる育種システムの検討を試みた。モデル実験の変数として,次の7つの育種仮説値を用いた。a)種雄牛頭数,b)種雄牛年間更新率,c)更新種雄牛当たりの候補種雄牛頭数,d)候補種雄牛当たりの娘牛頭数,e)雌牛集団内の能力検定比率,f)雌牛集団の年間更新率,g)候補種雄牛を生産する種雄牛頭数それらの育種仮説値によって,4,608個の育種システムが推定された。結果は次のようであった。1)種雄牛更新率の増加は,候補種雄牛総頭数の増加をもたらし,ΔG_Y(年間遺伝的改良量)を増加させた。検定容量が小さい時,種雄牛更新率は,20%と25%でΔG_Yを最大にした。2)候補種雄牛頭数が,10頭から20頭に増加される時,ΔG_Yの増加は,最大となった。候補種雄牛頭数の増加は,娘牛頭数が減少される時,必ずしもΔG_Yを増加させなかった。3)娘牛頭数が,20頭から30頭に増加される時,ΔG_Yの増加は,最大となった。各種雄牛頭数の育種システムにおいて,娘牛頭数の増加はΔG_Yを増加させた。4)候補種雄牛父牛頭数の増加は,ΔG_Yを減少させた。5)雌牛集団の一世代当たりの近交退化率は1%以下であった。6)各育種システムにおいて,世代間隔は大差なく,ΔG_Yの差に殆んど影響を与えなかった。7)種雄牛頭数の増加はΔG_Yを著しく減少させた。8)ΔG_Yのおおよそ80%が種雄牛の選抜からもたらされた。9)交配率の減少はΔG_Yを減少させた。10)検定率の増加は著しいΔG_Yの増加をもたらした。育種仮説値は,相互に関連し,ΔG_Yの決定に関与している。それゆえ,それらの関連を考慮し,乳牛集団内の遺伝的資源を有効に利用しうる育種システムを検出することが乳牛集団の遺伝的改良を促進するであろう。
著者
藤野 安彦 伊藤 精亮 正井 博之 藤森 正宏
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.917-925, 1978-06-20
被引用文献数
5

1.Acetobacter Mから脂質成分を抽出し,ケイ酸カラムクロマトグラフィーとケイ酸薄層クロマトグラフィーで各脂質クラスを分離した。これらを薄層クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィー,マススペクトロメトリーに供し,構造解析を行った。2.全脂質の構成脂肪酸は,約90%がシス-バクセン酸から成っていた。3.全脂質を薄層クロマトグラフィーに供すると,少なくとも15個のスポットが検出された。この主成分はリン脂質で,ホスファチジルコリンが最も多く,ついでホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルグリセロールであった。4.この菌体脂質の著しい特徴として,比較的多量のテルペノイドおよびアミノ脂質が検出されたほか,少量のセラミドが検出された。5.テルペノイドの主成分は,ホーパン-22-オールとC_<35>-ペンタサイクリックテルペンアルコールであった。6.アミノ脂質の主要タイプは,オルニチルタウリン脂質3-(パルミトイル)-オキシパルミトイル-オルニチル-タウリン,オルニチン脂質3-(パルミトイル)-オキシパルミトイル-オルニチンおよびリゾオルニチン脂質3-オキシパルミトイル-オルニチンであった。7.遊離セラミドは単一の分子種N-2-オキシヘキサデカノイル-スフィンガニンから成っていた。
著者
三宅 勝 小野 斉 大塚 信明 中川 忠昭 千葉 一夫 渡辺 順一 加納 隆
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.394-414, 1967-03-31

著者等は牛舎施設,乳牛管理,牛舎内気象状況と繁殖成績ならびに疾病発生との関連性を究明するため,十勝地方において多頭数飼育を実施している上芽室生産組合共同牛舎,中札内村新生共同畜舎および帯広畜産大学付属第1農場牛舎において実態調査を行なった。調査期間は昭和39年3月から40年2月までの1年間で,これを第I期(春,4月),第II期(夏,7月),第III期(秋,10月),第IV期(冬,1月)に分け,それぞれの期間中1週間ずつ牛舎にとまりこみで上述の調査を行なった結果,次のような成績を得た。1.牛舎施設,乳牛管理,飼養および飲料水について換気施設の不完全,手入れの不充分および運動場の狭隘のほか,上芽室にあっては搾乳前2,3搾りを捨てないこと,ミルカーのかけ過ぎ,および飲料水はアンモニア性窒素が多く飲料不適であったこと,中札内にあっては敷わらの不足,削蹄の不完全,運動場に汚水の潴溜等の欠陥が指摘された。2.牛舎内気象状況(1)気温……すべての地区とも最高は7月,午後0〜6時のもので上芽室では22.7±4.1℃,中札内では22.2±4.0℃,畜大では26.3±3.1℃であった。また最低は1月で,上芽室では午前6〜12時の2.2±4.0℃,中札内では午後0〜6時の4.7±3.0℃,畜大では午後6〜12時の1.0±3.2℃であった。3地区とも牛舎内温度の多くは至適温度内にあった。(2)湿度……最高は上芽室,中札内では1月,午前0〜6時で,それぞれ94.2±2.6%,94.0±6.0%であったが,畜大では4月,午前6〜12時の90.0±7.4%であった。なお前2者では冬期間夕方より翌朝にかけ湿度は95%を越える日が多かった。最低は上芽室,中札内では4月,午後0〜6時で,それぞれ55.4±1.4%,61.0±13.9%であり,畜大では10月,午後0〜6時の62±12.9%であった。(3)乾カタ度……最高は上芽室では4月,午前9時の11.71±2.84,中札内,畜大では1月で,それぞれ午前9時の11.77±2.69,午前3時の12.9±1.40であり,最低は上芽室では7月,午後9時の7.31±1.60,中札内,畜大では10月で,それぞれ午後9時の7.07±1.85,午前9時の9.4±0.36であった。(4)炭酸ガス量……最高は上芽室では4月,午前3時の0.16±0.024%,中札内,畜大では1月で,それぞれ午後9時の0.26±0.106%,午前3時の0.12±0.095%であり,最低は上芽室,中札内では7月,午後9時で,それぞれ0.06±0.001%,0.05±0.017%で,畜大では10月,午前3時の0.03±0.004%であった。3.繁殖成績について1〜4ヵ年間の上芽室,中札内および畜大における平均受胎率はそれぞれ96.4,88.3,90.3%,受胎効果は1.55,207,1.71回,受胎牛の平均空胎期間は3.69,4.33,6.12ヵ月であった。4.疾病について上芽室,中札内では趾間腐爛,乳房炎の発生が多かった,このほか上芽室では二等乳の発生が多く,12月には全産乳量の30%におよんだ。なお7月行なった分房別異常乳調査では,上芽室で,13.9%,中札内では11.9%に発生が見られた。以上のことから上芽室,中札内の多頭数飼育牛舎にあっては,繁殖成績は良好で仔積の生産は順調であるが,乳房炎,異常乳,二等乳および趾間腐爛の発生が多く経営を困難にさせている。これらの疾病発生は牛舎内の換気不良,高温度,乳房管理あるいは削蹄不良等に原因しているように思われる。
著者
小野山 敬一
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.173-178, 1987-06-30

北海道大雪山系然別地域の東と西ヌプカウシヌプリ山において1979年5月,6月,7月,9月と1981年9月に各々標高900〜1250mと720〜1210mの間で捕殺わなと一部シャーマン型トラップ(900-910m)によって小哺乳類を採集し,垂直分布を調べた。3科4属7種が捕獲された。エゾトガリネズミとオオアシトガリネズミは標高900m付近で殆どが得られた。ミカドネズミは720〜1020m,ヒメネズミは780mから山頂,エゾアカネズミは720mから山頂のあいだで捕獲され,カラフトアカネズミは東ヌプカウシヌプリ山頂付近(1230m)で1個体だけ得られた。両山の900m付近ではエゾシマリスが捕獲された。ミカドネズミとエゾアカネズミが800mから900mで多かった。エゾヤチネズミは捕獲されず,その理由としてミカドネズミとの種間関係が示唆された。ナキウサギは870mから1250mの間で姿や鳴き声により確認された。
著者
本江 昭夫
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.107-112, 1987-06-30

1)1983年4月にエゾノギシギシとナガバギシギシの稚苗を圃場に移植し,踏圧回数,土壌の締め固め処理,刈取り回数にたいする両種の生育反応を2年間にわたって調査した。2)刈取り処理が個体あたりの総乾物生産量にもっとも大きく影響した。これにたいして,踏圧と土壌の締め固め処理の影響は小さく,また,これら3処理にたいする両種の生育には差をみとめなかった。3)エゾノギシギシは播種当年に花茎を抽出したのにたいして,ナガバギシギシは根生葉のみで推移した。また,刈取りの回数が多くなると,両種において根生葉の割合が増加した。4)刈取り後の再生力はエゾノギシギシの方がナガバギシギシより良好であり,これが,エゾノギシギシの草地雑草としての重要な特性であると推察された。