著者
田中 惣治
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.199-203, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
7

短下肢装具が脳卒中者の歩行にどのような影響があるか,バイメカクスの観点から理解することは,短下肢装具の選定や使用に欠かすことのできない知識である.脳卒中者の歩行を対象とし,矢状面における短下肢装具の効果について解説する.また,足継手の種類,歩行のロッカー機能と短下肢装具の作用,下腿前後傾角度(Shank to Vertical Angle:SVA)に着目した評価のポイントについて述べる.さらに症例を通じて短下肢装具の使用により脳卒中者の歩容や筋活動が変化することを示す.
著者
平野 恵健 西尾 大祐 池田 誠 新田 收 宮崎 泰広 皆川 知也 高橋 秀寿 木川 浩志
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-119, 2015-04-01 (Released:2016-04-15)
参考文献数
23
被引用文献数
3

本研究の目的は,回復期リハビリテーション(リハ)病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者に対して,入院時の身体機能から退院時の歩行能力を予測することの可否を検討することである.対象は,回復期リハ病棟に入院した脳卒中患者のうち,入院時に重度片麻痺を有し,長下肢装具を処方された49名とした.方法は,対象者を退院時の歩行能力から歩行可能群と歩行不能群の2群に分類し,入院時の患者属性,神経症候,高次脳機能障害,運動機能を単変量解析した.さらに,有意差を認めた評価項目を用いて,退院時の歩行能力を従属変数とした判別分析を行った.その結果,単変量解析では,年齢,神経症候,高次脳機能障害,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力において有意差が認められた(p < 0.05).また,判別分析では,年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力が選択された.以上より,回復期リハ病棟に入院した脳卒中重度片麻痺患者の退院時の歩行能力は,入院時の年齢,体幹機能,非麻痺側膝伸展筋力を用いることにより予測することができると考えられた.
著者
清水 新悟
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.88-91, 2020-04-01 (Released:2021-04-15)
参考文献数
2

足底挿板は,痛みの緩和,足底圧配分の改善などの目的で様々なものが存在する.現在の足底挿板は動的アライメントに着目し,骨配列でアライメントを制御するものが主である.知覚連動インサートは従来の足底挿板とは異なり,筋肉·腱でアライメント制御する足底挿板のことである.知覚連動インサートは,エレメントというスポットの作用を通じて筋や筋連鎖を刺激または抑制し,アライメントをコントロールすることで正しい筋肉の使い方を学習させる足底挿板である.今回は,知覚連動インサートの理論から評価方法,臨床効果について報告する.また知覚連動インサートはストレッチングや筋力トレーニングを併用することで効果を高めると考えられる.
著者
池田 和夫
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.204-212, 1999-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2

下肢は「移動」が主目的であるのに対し, 上肢はより高度な「動作」が期待される. 上肢の動作は複雑かつ精巧であり, これを完全に模倣した義肢・装具の開発は現在のところ不可能であろう. しかし, 上肢の機能解剖を理解することは, 理想に近づく1つの手段と思われる. 筆者は, 義手あるいは上肢装具の作製・使用を念頭におき, 健常者の上肢の筋・骨格系の機能解剖について述べた. 上肢を近位から, 肩関節, 肘関節, 手関節, 指関節, 母指と分け, おのおのの主動作筋について起始・停止, 支配神経, 筋力について記載した. あわせて, 疾患や外傷によって喪失する機能および生じる変形についても述べた.
著者
大橋 正洋
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.217-222, 2000-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
3
著者
清水 新悟 清田 信幸 徳田 康彦 佐橋 政次 茶木 正樹
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.159-165, 2006-07-01 (Released:2010-02-25)
参考文献数
13

当院では, 変形性膝関節症内側型 (膝OA内側型) の患者に対し, 足のサイズとウィズが適合した既製品靴の指導を積極的に行っている. 臨床の場では, サイズやウィズの合わないパンプス, ヒールカウンターのない靴, ヒールの高い靴などを履いている膝OA内側型の患者が多数見受けられる. 一方, ジョギングシューズなどのサイズやウィズが比較的合わせやすいスニーカーを履いているものは少数である. そこでわれわれは, 実際に外反母趾角と足のウィズとサイズの調査を行った また適合サイズの靴を履いていない症例に対し, 当院で靴指導に使用しているスニーカーを装着し, 靴サイズ指導の効果を評価した. その結果, 約半数が軽度外反母趾であり, 靴のウィズやサイズの不適合症例が多数であった. また当院での靴指導にて歩行時痛の改善が示唆された. 膝OA内側型の症例に対し, 膝関節だけではなく外反母趾も考慮するべきであり, ウィズやサイズの適合したスニーカーは快適な歩行獲得に必要と思われた.
著者
立花 慶太 北口 拓也 西山 和夫 松代 直樹 平林 伸治
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.47-49, 2012-01-01 (Released:2013-12-15)
参考文献数
9

両側顔面神経麻痺では口輪筋麻痺で下口唇が挙上しないと,飲水・食事摂取・発語に障害をきたす.下口唇を支える Lower lip-lifting brace(LLLB)を作製し,43歳女性の頭部外傷性両側顔面神経麻痺症例に使用した.麻痺が強い期間には LLLB により口唇閉鎖が補助されて食物摂取が容易になり,LLLB は有効であった.
著者
内田 充彦
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.65-69, 2014-04-01 (Released:2015-04-15)
参考文献数
2

質の高い義肢装具サービスには,専門職に対する適切なレベルの教育が必要である.国際義肢装具協会(ISPO)は,WHOと協働し,カテゴリー(CAT) I∼IIIの3つの養成目標レベルを推奨した.この理念は広く受け入れられ,教育プログラムの国際的な基準となっている.ISPOは,さらに世界各国の教育プログラムを評価し,それぞれがCATレベルに達するためのコンサルタントと認定を行っている.神戸医療福祉専門学校三田校が,2012年にCATIとして認定されたが,この過程の中で臨床教育の不足が指摘された.本稿は,国際的な基準からみた日本の義肢装具教育の課題を明らかにすることを目的としている.そこから,まずは世界的な基準に近づくための日本の義肢装具士の卒後教育についての提案を行った.
著者
髙橋 忠志 尾花 正義
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.204-209, 2022-07-01 (Released:2023-07-15)
参考文献数
35

脳卒中歩行障害に対するリハビリテーション(以下,リハ)は脳卒中発症直後から開始し,急性期,回復期,生活期と途切れることなく行うことが必要であり,そのスタートとなる急性期でのリハは歩行再建の源になる.重度運動麻痺を呈する脳卒中患者の積極的な立位,歩行練習には長下肢装具が不可欠である.長下肢装具の仕様としては油圧制動式足継手を使用し,運動麻痺の改善に応じて装具の設定を変更できることが望ましく,また実際の使用には装具に関する知識と技術が求められる.脳卒中急性期からの長下肢装具使用はエビデンスが蓄積されつつあり,脳卒中歩行障害への歩行再建・装具療法はパラダイムシフトを迎えている.
著者
才藤 栄一 横田 元実 平野 明日香 大塚 圭 園田 茂
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.87-92, 2012-04-01 (Released:2014-01-15)
参考文献数
10
被引用文献数
2
著者
溝部 朋文 萩原 章由 松葉 好子 前野 豊 山本 澄子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.123-126, 2017-04-01 (Released:2018-04-15)
参考文献数
2
被引用文献数
1

運動麻痺が重度な片麻痺者の歩行練習の過程で,長下肢装具を使用することが多い.短下肢装具へ移行する際,その時期や歩容の悪化がしばしば問題となる.今回,長下肢装具から短下肢装具へ移行した際に歩容が変化した片麻痺者に対し,三次元動作解析を用いて歩行を計測した.長下肢装具使用時,視覚的には歩容は良好であったが,荷重応答期に股関節伸展モーメントが働いていなかった.短下肢装具へ移行後は,荷重応答期ではなく立脚中期に股関節伸展モーメントが働き,円滑な前方への重心移動が難しくなった.歩行機能再建の過程で長下肢装具を使用する際には,歩容だけでなく筋収縮の有無やタイミングを考慮すべきである.
著者
浅見 豊子
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.116-121, 2022-04-01 (Released:2023-04-15)
参考文献数
8

『関節リウマチ診療ガイドライン2020』が発刊された.バイオ後続品を含むbDMARD, JKA阻害薬等の新規薬剤や手術治療・リハビリテーション治療に対する推奨,薬物治療および非薬物治療・外科的治療のアルゴリズムの作成,医療経済学的評価,患者の価値観・意向の検討など多面的に記載され,RA治療の進歩を感じとれる内容である.しかし一方,『リウマチ白書2020』では「主治医に装具やリハビリについて処方・助言してほしい」という声が18%存在する.RAの治療についてはより一層の進展が期待されるところであるが,患者や家族の声に日頃より耳を傾け,リハビリテーション治療の1つである装具療法の視点からもしっかり支援することが望まれる.
著者
関川 伸哉 昆 恵介
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.202-207, 2020-07-01 (Released:2021-07-15)
参考文献数
18

本研究では,車椅子座位時の不良姿勢が身体に及ぼす影響について主に自律神経活動の指標から分析を行った.10名(男女各5名)の健常者を対象に異なる座位姿勢での計測を行った.評価パラメータには,心拍,心拍変動,アミラーゼ活性値,フリッカー値,NRS, 座面接触面積,座圧を用いた.座位姿勢の違いによる座面接触面積と左右座圧の最大値およびNRS結果から,臨床上考える車椅子座位時の不良姿勢は再現されていた.また,その際の臀部へのリスクおよび痛みに対する精神的負担を定量的に明らかにすることができた.しかし,自律神経活動への影響は,不良姿勢の際に交感神経活動が高まる傾向がみられたが,その他のパラメータからは,明らかな違いはみられなかった.
著者
高橋 功次
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.18-20, 2011-01-01 (Released:2013-08-15)
参考文献数
9
著者
戸田 光紀 陳 隆明 柴田 八衣子 溝部 二十四 高見 響
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.136-141, 2019-04-01 (Released:2020-04-15)
参考文献数
17
被引用文献数
1

先天性上肢欠損児において,筋電義手は両手動作の獲得を可能とし活動,参加の機会を広げる有効な手段である.しかし本邦において小児に対する筋電義手はほとんど普及していない.兵庫県立リハビリテーション中央病院では2002年より小児に対し筋電義手訓練を常時提供できる体制を構築し,これまで15年間で70例以上の児に対して継続的に筋電義手訓練を提供してきた.今回,我々は訓練提供開始から15年間の経過をまとめ,当院における小児筋電義手訓練の現状と今後の課題について検討を行ったので報告する.
著者
髙木 聖 安藤 直樹 中村 優希 今村 康宏
出版者
日本義肢装具学会
雑誌
日本義肢装具学会誌 (ISSN:09104720)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.98-103, 2012-04-01 (Released:2014-01-15)
参考文献数
17
被引用文献数
4

回復期リハビリテーション病棟(リハ病棟)において下肢装具を処方した脳卒中片麻痺患者を当院一般病棟からリハ病棟に転棟した群(A群)と急性期病院から当院リハ病棟に転院した群(B群)の2群に分け,発症から装具作製までの日数ならびに総入院日数について比較・検討した.両日数ともにA群で有意に短く,早期装具作製が総入院日数の短縮につながる一要因であると考えられた.また,転院時期や転院から作製までの日数がそれらに影響をおよぼすことが示唆された.急性期病院とリハ病棟の双方が装具処方に対する認識を共有し,早期処方,スムーズなリハの継続,そして早期の在宅復帰につながるよう地域連携パスが有効に運用されることが望まれる.