著者
吉武 道子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.164-169, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)

データには,数値・表・画像・動画・音・文字列・数式・関係性データなど,見た目の異なる様々な種類のデータがある。従来のレファレンスは,探したい情報(=データ)を記載している情報源を見つけるものであったが,昨今のデジタル化の進展によりデータ量は爆発的に増え,探したい情報そのものを見つけるレファレンスも求められる。データの多様化・量の増加に対し,効率的なデータ検索と利活用が追い付いていないのが現状と思われる。本稿では,主に材料科学分野を例にとって,データの種類ごとにデータの利活用の現状と,利活用するために必要な処理=データキュレーションについて概観する。
著者
立田 慶裕
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.400-405, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)

急激な技術の発展や国際化社会の到来の中,確かな学力に加えて,新たな技術を活用する思考力や知識の探求力,創造力を含む高度な読解力(メタ認知やデジタル読解力)が求められている。本稿は,学校図書館の利用を通じて,学校の段階的な教育課程に対応しながら,新たな読解力を形成するためのプログラムの構成表(ルーブリック)にはどのようなものがあるかを明らかにする研究の成果である。高度な読解力とは何か,そして,実際にどのようなルーブリックが作成されてきているかを,米国学校図書館協議会やコロラド州,ルイジアナ州の資料から明らかにし,司書教諭や学校司書に求められる職務やコンピテンシーを紹介した。
著者
野村 恭彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.500-506, 2004-10-01 (Released:2017-05-25)

ナレッジ・マネジメントは,組織内の知識を共有・活用するレベルから,企業の競争力の源泉として明確に位置づけられるようになってきた。その好例は,プロフェッショナル・サービス・ファームの情報サービス部門で,ライブラリアンの未来の姿をそこに見ることができる。一方で,暗黙知の重要性認識はますます高まっており,図書館の果たす「暗黙知共有の場]としての役割について考えたい。そして最後に,知的競争力やイノベーション能力を可視化するアプローチを示し,知識企業として,組織の持つイノベーション能力に焦点を当て,企業価値の極大化を実現する経営アプローチについて考える。
著者
佐渡島 紗織
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.22-28, 2014-01-01 (Released:2017-04-13)
被引用文献数
1

本稿の目的は,アカデミック・ライティング教育において情報リテラシーに関する問題はどのような点にあるかを検討し,今後,求められる指導の方向を示すことである。国語科教科書や小論文演習教材などをみると,日本の小・中・高・大学と受験塾では,情報を自分の文章にどのように取り込むかの,十分な指導,一貫した指導がなされていないことがわかる。引用・参考文献明記の学習を通して,《情報を再定義させる》学習をさせることが必要である。それによって,多様な立場・意見を検討した上で自身の立場を確立し,明確な意見を発信できる学生を育成したい。
著者
長山 泰介
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, 2007-11-01
著者
篠田 博之
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.94-100, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)

主に光学と心理物理学,測色学の観点から色彩の基礎知識を述べる。はじめに色発現の三要素を取り上げて色とは光を媒介に分光情報を反映した知覚であるとし,照明や観察者によって知覚する色が変化することを確認する。次に色覚の三色性を取り上げて分光分布と三属性の関係や三色性に基づく表色系や測色値を紹介する。さらに条件等色という概念を通して三原色を用いた色再現機器の原理と問題点を指摘する。後半は様々な色覚現象を紹介して,そのメカニズムと機能を述べる。最後に色覚分類を説明し,色覚特性や色覚多様性に関連したいくつかのアイディアや応用技術を紹介する。
著者
及川 光博
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.589-595, 2004-11-01
参考文献数
11

Visualization (視覚化)は,膨大かつ多変量なデータを探索的に分析していく上で効果的な意思決定の手段として活用が進んでいる。ここでは米メリーランド大学のShneidermanとAhlbergらによって提唱されたVisual Information Seekingの概念と創薬研究等への適用事例について紹介していく。Visual Information Seekingは主として次の三つの概念で構成される。(1) Dynamic Queries, (2) Tight-Coupling, (3) Starfield Display。適用例については, Visual Information Seekingのコンセプトを実装したソフトウェアであるSpotfire^[○!R] DecisionSite^<TM> を取り上げる。
著者
渡邊 由紀子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.12-17, 2022-01-01 (Released:2022-01-01)

COVID-19の感染拡大に伴い,日本では多くの大学図書館が来館型サービスを休止・制限せざるを得なくなった。本稿では,そのような特殊状況下において大学図書館がレファレンスサービスを拡充する方法について,九州大学の実践例を基に検討した。九州大学附属図書館は,図書館TA(ティーチング・アシスタント)と協働しながら,既存の質問回答サービス,Web学習ガイド,学部1年生向け講習会,図書館TA企画イベントを非来館型に進化させ,サービスを強化した。それらの実践から得られた知見をまとめ,今後は非来館型サービスを来館型サービスと統合して,ハイブリッドなレファレンスサービスを展開していく必要があることを示した。
著者
渡邊 隆弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.434-440, 2011-11-01

図書館目録の集中機能を保障する典拠コントロールは,書誌コントロールの枠組みの見直しをはかる近年の議論の中でも,今後維持・強化していくべき機能としてとらえられている。また,次世代のウェブとして研究開発が続く「セマンティックウェブ」において,意味情報の共有を実現する「オントロジー」が重要な要素技術となっており,これには目録における典拠コントロールと相通じるところがある。本稿では,典拠コントロールの今日的位置づけ,名称典拠,主題典拠(および統制語彙)それぞれの最近の動向について整理するとともに,オントロジーについて典拠コントロールとの関わりも含めて述べる。
著者
静野 健一
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.284-289, 2015-07-01 (Released:2017-04-13)

特許調査,特に権利調査は,企業の海外展開の加速,世界の特許出願件数の増加,技術の高度化・複雑化を背景に,近年その重要性・困難性を増してきている。権利調査は,概念を調査するという特殊性から出願前調査等とは全く異なる調査アプローチがとられ,完全網羅的な結果を得ることは困難である。また,調査にあたっては,リスク許容度や掛けることのできるコスト等を明らかにし,実施技術,特許文献双方についてリスク評価を行い,合理的・効果的な調査設計を行うことが求められる。本稿では,権利調査の特殊性を説明し,その基本的なアプローチの紹介をするとともに,権利調査に関する現状の課題について取り上げた
著者
菊池 信彦
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.156-163, 2015-04-01 (Released:2017-04-13)

本稿では,西洋史学にとっての「古典籍」の一つ,ヨーロッパにおける中世写本をテーマに,その「最前線」としてのデジタル化と公開の現状を論じた。ここでは,ヨーロッパにおける資料デジタル化等の統計調査プロジェクトであるENUMERATEの成果や,Europeanaをはじめとする各種のオンラインデータベースからデジタル化写本の公開点数を確認した。さらに,デジタル化の「その先」にある,写本画像の利用実態を知るべく,「研究」「教育」「広報」の3つの観点から,様々なデジタルヒューマニティーズのプロジェクトを論じた。
著者
飯田 弘之
出版者
情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.527-532, 2012

本稿では,ゲームの三つの側面(競技性・遊戯性・知的相互作用)に注目し,「ゲーム=知層」の観点からゲーム研究の流れについて概観する。競技性を重視したミニマックス戦略から相手モデル探索への移行,遊戯性の主要因の一つであるスリル感に基づくゲーム洗練度の理論,そして,ゲーム場における知的相互作用として試合中の情報の流れをモデル化するゲーム情報力学を紹介する。ゲームにおける人間とコンピュータの知能の相違に焦点をあてながら,投了に現れる知性の豊かさ,相手モデルにみる人間の知性の賢さ,ゲームのルール変遷に現れるスリル感の変遷,そして,ゲーム情報力学のアプローチによるゲーム場における知的な相互作用の解析例を示す。 : In this article we present an overview of game research based on the model of three masters: the master of winning, the master of playing and the master of understanding. They correspond to each of the three aspects that games possess: competitiveness, entertainment, and interaction between intelligences of players. Then the human intelligence and artificial intelligence are compared with focus on the “resigning” in games, and “opponent modeling”. Moreover, we introduce two innovative approaches: “game-refinement theory” and “game information dynamics” to observe the two aspects of games: entertainment and intellectual interaction, respectively. A man-machine match is shown to analyze the information energy in the field of game.
著者
内田 浩史 郭 チャリ
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.428-433, 2021-10-01 (Released:2021-10-01)

本稿の目的は,日本における創業と創業金融の実態を明らかにすることである。4つの異なるアンケート調査から得られた5つの創業企業サンプルを用いて比較分析を行った結果,創業企業には様々なタイプが存在すること,タイプによって創業金融の実態も異なることが明らかになった。特に,創業企業の多くは創業資金を経営者の自己資金に依存しているが,その程度はサンプルにより異なり,他の資金調達手段の利用にも違いが見られること,資金制約に直面している企業は少数派であるものの,サンプルによりその程度に差があることが示された。本稿ではこうした結果を詳述し,日本における創業の課題に対処するための政策的含意を導く。