著者
吉田 正典 養父 志乃夫 山田 宏之
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 = / the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.183-186, 2006-08-31
被引用文献数
1 3 1

新潟県上越市,和歌山県かつらぎ町,香川県満濃町において,産卵と幼生生息地の地形と水深,水質,植生条件,ならびに,幼生の成長経過を調査した。その結果,産卵前の1月から変態時期である6月までの期間,少なくとも5~10cmの水位を維持する必要があること,また,水域のpH は,5~7,溶存酸素(mg/l)は, 5.00~5.99,電気伝導度(μs/m)は,7.00~10.00の水準に維持する必要があること,さらに,水域内の植生については,定期的に除草や刈払によって,植被率と群落高を低い状態に抑制する必要のあることが判明した。
著者
小林 恭子 勝野 武彦 藤崎 健一郎
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.197-200, 2001-08-31 (Released:2011-02-09)
参考文献数
6
被引用文献数
2 3

コケシートとは乾燥させたコケ (蘚類) をネットに挟んでシート状こしたもので屋上や壁面へのコケ植栽に使用されている。本研究は, コケシートからコケが良好に生満する条件を明らがこすることを目的とし, コクの種類, 灌水および光条件の違いによる生育の差違を, 緑被率と新芽の数などから比較したものである。灌水頻度を変えた実験ではま無灌水区の生育が良く, 実験地の気候条件においては自然の降雨のみで充分な生育が可能と判断された。寒冷紗等により光条件を変えた実験ではコケの種類による違いが見られ, スナゴケは相対照度 (光量子, 日射もほぼ比例) 50%以上の方が旺盛に生育したのに対し, ハイゴケは50%以下の方が生育良好であり, トヤマシノブコケは20%以下の方が良いという傾向がみられた。
著者
那須 守 大塚 芳嵩 高岡 由紀子 金 侑映 岩崎 寛
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.96-101, 2014
被引用文献数
2

住区基幹公園の環境価値形成における行動の影響を把握するために,東京区部の 6公園に対して住民意識調査を実施し,利用者の環境価値意識に関する構造化(SEMモデル)および心理的指標と経済的指標を用いた価値評価を実施した。その結果,SEM モデルから住区基幹公園に対する環境価値が行動の影響を強く受けることが明らかになり,利用者を分類した行動クラスターの比較から行動の多様化が環境価値を高めることが心理・経済的評価の両面において示唆された。地区公園と近隣公園を比較すると,この効果は公園の大きさに関係なく見られ,公園の価値を高めるためには,行動を多様化する質的配慮が有効であると考えられた。
著者
檜垣 守男
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.518-523, 2005-02-28
被引用文献数
1

キリギリス科昆虫の一種イブキヒメギス(イブキ)は, 本州中部以北, 特に高地に多く生息する。本種は, 胚発育中に初期胚で起こる初期休眠と成熟胚で起こる最終休眠の2つの休眠を経験する。それぞれの休眠期で越冬してから孵化する2年1化の生活史を基本とするが, 初期休眠の長期休眠性により, 孵化までに2∿4年を要する卵が混在する。初期休眠の生態的意義を探るため, 本種と, 最終休眠のみを持ち, 主に低地に生息する年1化のヒメギス(ヒメ)の生活史を比較した。弘前では, ヒメの産卵は7月下旬に始まり, 短期間に集中的に行われた。8月下旬以降に産下された卵は最終休眠期に到達できず, 翌春の孵化が大きく遅れた。一方, イブキの産卵は8月上旬に始まり, 秋遅くまで続いた。産卵期の早晩は2年後の孵化期に影響しなかった。高地のイブキの孵化・羽化期は平地の系統より遅く, 特に羽化期は年によって大きく変動した。ヒメギス類は幼虫発育に高温を必要とするため, 高地のイブキは, 冷夏や日照不足によって深刻な影響を受けると考えられた。以上より, イブキは初期休眠を持つことによって, 発育季節が短く, 不安定な地域での生活を可能にしていると考えられる。
著者
荒瀬 輝夫 内田 泰三
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.119-122, 2009-08-31

郷土種による切土のり面緑化を目的として,陸生スゲ類5種(コジュズスゲ,タガネソウ,ヒゴクサ,ミヤマカンスゲ,アズマナルコ)を植栽して群落を造成し,被度の変化を調査した。試験地は信州大学農学部構内,プロットサイズは1 m×1 m,実験配置は3反復の乱塊法とした。また葉の外部形態(葉幅と葉長)を自生地および試験地で比較した。植栽から4年間で,アズマナルコは大株化し群落内が空洞化した。コジュズスゲとミヤマカンスゲはのり面中下部において密な群落を維持した。ヒゴクサは地下茎により拡大したのち衰退した。タガネソウは植栽時の被度を維持した。葉の形態は植栽後,葉幅はやや広く葉長は伸長する傾向にあったが,タガネソウのみ葉幅が狭くなった。
著者
戎谷 遵 二神 良太 岡 浩平
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.275-278, 2015
被引用文献数
1

摘要:本研究では瀬戸内海中部沿岸域における海浜植物の分布状況と地形との関係から,優先して保全すべき種と海浜を明らかにした。その結果,対象地に出現した21種類のうち,出現地点が少なかった9種を希少種として選定した。海浜植物の分布は香川県の有明浜に集中し,希少種も全種が分布していた。以上より有明浜の海浜植物を保全することが,瀬戸内海中部沿岸域の海浜植物を保全する上で有効であると考えられた。
著者
田端 敬三 橋本 啓史 森本 幸裕
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.97-102, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
43
被引用文献数
1 4

京都下鴨神社の社叢,糺の森全域において2002年と2010年に実施した幹直径10 cm 以上の全樹木対象の毎木調査結果から,アラカシ,シラカシの断面積成長量に対する初期サイズおよび周辺競争個体の影響を検討した。その結果,アラカシ,シラカシのいずれも断面積の初期値と断面積成長量は有意な正の相関を示した。アラカシでは半径6 m,シラカシは半径8 m 範囲内までに位置する競争個体が対象個体の成長に影響していた。アラカシでは初期サイズと周辺の競争個体からの被圧の2要因による成長への影響が強く見られ,これらを説明変数とする成長モデルの説明力は54%であった。一方,シラカシでは41%にとどまり,他の要因の影響も示唆された。
著者
鈴木 武志 坂 文彦 渡辺 郁夫 井汲 芳夫 藤嶽 暢英 大塚 紘雄
出版者
JAPANESE SOCIETY OF REVEGETATION TECHNOLOGY
雑誌
日本緑化工学会誌 = Journal of the Japanese Society of Revegetation Technology (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.325-331, 2009-11-30
被引用文献数
1

石炭灰の発生量が増加傾向にある現在,その有効利用が一層求められている。石炭灰のうちクリンカアッシュ(以下CA と称す)は,フライアッシュと比較して粒径が粗く飛散のおそれもないため,土壌の代替としての大量利用が期待されるが,利用に際してはホウ素過剰障害の可能性が示唆されている。本研究では,CA を主材料とする緑化基盤で緑化樹木のポット試験を行い,CA の緑化基盤としての有効性を検討した。緑化基盤材料には,CA,真砂土,ピートモス(以下PM と称す)を用い,CA 試験区(CA とPM を混合)をCA 95 %区,CA 90 %区,CA 80 %区の3 区,対照として真砂土にPM を10% 混合したものを設定し,樹木は,アラカシ,ウバメガシ,シャリンバイ,トベラ,マテバシイの5 種を用いて,約7 ケ月間のポット試験を行った。<BR>作製した緑化基盤の化学性,物理性は対照区と比較して有意な差はほとんど無かった。また,国内の法律に照らし合わせると,これらの材料の重金属類濃度は安全であった。緑化樹木の生育に関しては,5 樹種とも,樹高(H),幹直径(D)から表されるD<SUP>2</SUP>H の試験期間中の生長率および試験終了時の新鮮重に,試験区間で有意な差はみられなかった。また,CA 試験区の樹木葉中ホウ素含量は,シャリンバイ以外の4 樹種で対照区に対して高い傾向を示したが,生育障害は確認されず,他の金属類に関しても異常な値は認められなかった。これらのことから,本研究に用いたCA を緑化基盤として大量利用することは十分可能であると考えられるが,実際の利用の段階では,CA ごとの性質の違いを検討していく必要がある。
著者
石垣 幸整 堀江 直樹 大嶺 聖
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.171-174, 2014 (Released:2015-09-18)
参考文献数
6

連続繊維補強土は砂質土にポリエステル繊維を均質に混合した補強土である。繊維の混合により,セメントを用いずに疑似的な粘着力が付与されるため,法面保護工として広く適用されている。連続繊維補強土の安定性向上のため,石灰系添加材を混合すると低い垂直応力下でせん断強度が増強され,粘着力が増加することが明らかになっている 3) 。本試験では,石灰系添加材を混合した連続繊維補強土の生育基盤としての適用性を確認した。さらに,石灰系添加材の補強効果について,一面せん断試験を実施し,セメントと比較した。試験の結果,石灰系添加材はセメントよりも植生への影響が軽微でありながら,その補強効果は同程度であることがわかった。
著者
市川 貴美代 稲本 勝彦 土井 元章 今西 英雄
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.141-146, 2003 (Released:2005-09-16)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1 1

温度と期間を変えてクロッカス(Crocus medius Balb.),スイセン(Narcissus cyclamineus DC),ムスカリ(Muscari armeniacum Leithl. ex. Bak)の球根を乾燥で貯蔵し,秋に露地に植付けた。クロッカスにおいては,20°Cでの貯蔵が花芽分化と開花を早めることに,30°Cでの貯蔵がこれらを遅らせることに有効であった。また,スイセンとムスカリでは花茎伸長のための低温要求を9°Cでの貯蔵により満たすことで開花を早めることができた。複数の貯蔵方法を組合わせることにより,クロッカスでは11月から2月まで,スイセンとムスカリでは1月から4月まで,それぞれ連続して花を観賞することができた。冬季に開花した花は,季咲きに比べて観賞価値が長く保たれた。
著者
石田 仁 黒米 皓次 八代田 真人 土井 和也
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.133-138, 2015

山腹斜面に分布拡大したモウソウチク林において,ヤギの放牧が竹林皆伐当年の植生変化に及ぼす影響について調査した。放牧期間中のモウソウチクの積算被度は,放牧区でヤギの採食により低水準に保たれたのに対し,禁牧区で大きく増加した。モウソウチクの積算被度と,モウソウチク以外の出現種の多様度指数との間には高い負の相関が認められた。竹林皆伐後のヤギの放牧によりモウソウチクの再生を抑制し,多様性に富んだ草原植生を創出できる可能性が示唆された。
著者
石田 仁 黒米 皓次 八代田 真人 土井 和也
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.133-138, 2015

山腹斜面に分布拡大したモウソウチク林において,ヤギの放牧が竹林皆伐当年の植生変化に及ぼす影響について調査した。放牧期間中のモウソウチクの積算被度は,放牧区でヤギの採食により低水準に保たれたのに対し,禁牧区で大きく増加した。モウソウチクの積算被度と,モウソウチク以外の出現種の多様度指数との間には高い負の相関が認められた。竹林皆伐後のヤギの放牧によりモウソウチクの再生を抑制し,多様性に富んだ草原植生を創出できる可能性が示唆された。
著者
岩崎 寛 吉川 賢 坂本 圭児 千葉 喬三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.186-191, 1999-05-31
被引用文献数
4 3

マツ材線虫病の病徴の進展に影響を及ぼす要因として土壌水分をとりあげ, 異なる土壌水分下で生育させたアカマツのポット苗を用いて線虫接種試験を行い, 土壌含水率による枯死過程の違いを夜明け前の水ポテンシャル, 葉緑素量(SPAD値), 光合成速度, 蒸散速度から検討した。その結果, 土壌含水率の低い環境で生育した苗では, マツ材線虫病の進展がはやく, 光合成速度, 蒸散速度や葉の水ポテンシャルといった生理特性の変化もはやかった。また, 光合成活性を表す指標とSPAD値との関係を見ると, 接種後2週目では葉緑素の破壊が起こっていないが, すでに光合成活性が低下していたことが示唆された。また接種後2週目には蒸散速度も低下していたことから, この光合成活性の低下は, マツ材線虫病の進展に伴う樹体内の水分欠乏による気孔閉鎖が原因であると考えられた。
著者
近藤 哲也 西沢 美由紀 島田 大史
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.81-86, 2005 (Released:2007-03-03)
参考文献数
29
被引用文献数
1

北海道礼文島の固有種であるマメ科のレブンソウは,環境庁および北海道のレッドデータブックに,それぞれ,「絶滅危惧IA類」,「絶滅危惧種」に指定されている。種子の発芽条件の把握のため温度条件と濃硫酸処理に関する実験を行った。種子は物理的休眠を有しており,無処理種子では10%程度の発芽率であったが,10-40分間の濃硫酸処理によって種皮に亀裂や穴が生じて吸水が可能になり高い発芽率を示すようになった。休眠が打破された種子は,10-30℃の幅広い温度で播種後10日目に71-77%の発芽率を示した。濃硫酸処理を施した種子を5月下旬に播種し,植木鉢に移植してガラス室内で育成したところ,翌年の5月下旬から8月中旬にかけて開花した。
著者
中野 裕司 二見 肇彦
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.383-388, 2004-11-30
被引用文献数
1 1

1998年に噴火し,火山ガスの影響により全島避難している三宅島の切土法面植生に対して見取り調査を行った。三宅島は離島であり,国立公園域であるため外来植物である牧草の使用を控え在来種による法面緑化を進めようとする動きがある。しかしながら,在来種の国内採取種子は市場に流通していないため流通している中国産在来種種子を用いることになり,三宅島自生種の遺伝子撹乱を起こすおそれがある。この点を回避するために,過去の牧草による急速緑化箇所の植生推移状況を目視観察し,植生交代の実体を確認し,牧草使用の可能性について検討を行った。牧草は三宅島に自然分布しないため,遺伝子の撹乱に関する心配が無いため,むしろ外国産在来種よりも三宅島自生種に与えるインパクトは低いものと考えるからである。その結果,5年程度でススキなどの周辺植生との交代が始まり,10年以降は周辺植生から侵入したトベラなどの低本の生長が始まり,20年程度で低木とススキの混在する状態となり自然回復が進むことが明らかになった。また,トベラの若苗吹付工を併用すると,5年程度で同様の景観回復が可能となることが判明した。
著者
サロインソン ファビオラ ベイビ 坂本 圭児 廣部 宗 三木 直子 吉川 賢
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.65-70, 2007-08-31

放棄され拡大しつつあるハチク(Phyllostachys nigra var. henonis)林を対象として,竹林の林内,落葉広葉樹林と接し拡大しつつある竹林の林縁,およびその中間部分に区分し,稈の空間分布を比較検討した。空間分布解析のために, L関数を用い,距離にともなうL関数の変化を検討した。同じコホートの稈で,タケノコから当年生稈,当年生稈から5年生の古い稈へと生育段階が進む過程で,空間分布の変化を検討したところ,竹林の林内では,タケノコと当年生稈で集中分布, 5年生稈ではランダム分布し,林縁や中間部分では,タケノコの段階から5年生の稈まで常にランダム分布を示した。したがって,竹林の林内では,タケノコが稈となって以降に密度依存的な枯死が生じ,拡大しつつある部分では,タケノコの段階からランダムに分布して密度依存的な枯死を避けているものと考えられた。
著者
吉田 寛
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.459-465, 2009-02-28
被引用文献数
6 6

4省庁による「要注意外来生物リスト(緑化植物)」の取り扱いに関する検討の結果,施工対象となる法面が立地する地域特性を考慮して,生物多様性に配慮した緑化工法(播種工の場合は自生種種子の活用)の適用が望ましいとする方向性が示された。しかし,斜面緑化の現場では依然として外来種を用いた緑化が行なわれ続けており,その原因のひとつに緑化工の成績判定方法(検査基準)が影響しているのではないかと考えられた。そこで公表されている自生種の木本植物を使用した自然回復緑化の施工事例の施工3ヵ月後の調査結果に対して現行の検査基準を適用してみたところ,正しく評価できた割合は50%程度だった。この原因として,木本植物群落の形成を初期緑化目標とする場合に,1)30〜70%の植被率を満足しないと検査に合格しない,2)初期緑化目標が達成できるかどうかを評価するスタンスに立っていない,3)導入種によって異なる施工後の密度変化の特徴が考慮されていない,という問題が指摘された。自生種種子を使用した生物多様性に配慮した緑化工法を普及させるためには,外来草本群落やマメ科低木林の形成を目的に作られた現行の検査基準を適用するのではなく,自生種群落を形成させるための新たな成績判定方法の策定が急務といえる。
著者
東海林 あさこ 福永 健司 橘 隆一 太田 猛彦
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.191-194, 2008-08-31
被引用文献数
2 2

下水汚泥炭化物の緑化基盤への適用可能性を検討するため,炭化物の理化学的性質を測定した。また,関東ロームに炭化物を異なる比率で混合した基盤で,コマツナ,ヤマハギ,ヤシャブシの生育実験を行った。その結果,下水汚泥炭化物には孔隙は少ないが,pHやECに問題はなく,無機態窒素や燐酸を多く含むため,土壌化学性の改善に有効と考えられた。生育実験では,炭化物の混合直後の播種や,混合率70%(体積比)でも発芽・生育障害は認められなかった。生育改善効果の高い混合率は植物によって違いが見られたが,コマツナとヤシャブシで10〜30%,ヤマハギで30〜70%であった。ヤマハギでは根粒形成も旺盛になった。以上から,下水汚泥炭化物は緑化基盤材料として適用可能であり,土壌改善効果が高いと考えられた。