著者
山本 浩史
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.123-132, 2015

本稿では我が国の戦前期における社会事業施設運営管理論を探る手がかりとして、中島千枝の「社会事業の経営組織観」を考察した。その内容は、当時の社会事業施設の経営において、中島が参考になると考えた事項や理論を列挙したものであり、深く考究がなされたものとは言い難い。しかし、経営管理が重要視されてこなかった当時の社会事業に一石を投じたものであり、科学的視点の導入(経営学的視点)を提案したものとして評価される。
著者
合田 衣里 谷口 敏代
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.153-160, 2015

[目的]通所介護事業所における生活相談員の業務と困難度を明確にする。[研究方法]通所介護事業所の生活相談員を対象に自記式質問紙による郵送調査を実施した。回答のあった341 票の内、欠損値のない174 票を対象とした。[結果] 「送迎」、「介護業務との兼務」、「記録」「介護支援専門員との連携」「利用者への相談援助」の順に業務割合が高かった。困難度の高い業務は「苦情解決」、「会計経理」、「地域連携」、「事業計画管理」「研修企画」であった。「介護業務との兼務」は男性より女性の方が、また介護経験のある者の方が有意に高く従事していた。「介護支援専門員との連携」「苦情解決」は福祉系大学の卒業者が有意に高く困難感を感じていた。年齢が高い程「苦情解決」「事業計画管理」「会計経理」の困難度は有意に低かった。[結論]生活相談員の本来の業務である「連絡調整・相談業務」よりもその他の業務の頻度が高いことが明らかになった。 [Purpose]We aimed to study content of the workload and the various difficulty encountered by social workers at day service centres.[Methods]We surveyed 174 social workers using a self-administered questionnaire that addressed various items including the content of the operations and the degree of difficulty of social workers.[Results]In terms of the ratio of the duties, from highest to the lowest, the order is as follows: pick-ups, additional post with care, recording, cooperation with the care manager, and consultation and assistance. In terms of the degree of the various difficulties, the order form the highest to the lowest is as follows: processing of complaints, accounting, regional liaison, business plan management, and creation of a training plan. A lot of women engage in the additional post with care than a man. The person with the care experience engages a lot in comparison with a few people. A welfare university graduate compared the 'processing of complaints' with 'cooperation with the care manager' but found it difficult to come up with a conclusion. 'Cooperation with the care manager,' 'business plan management,' and 'accounting' were not difficulty for old social workers.[Conclusion]The present study showed the more other work than the consultation that was the original work of the social workers.
著者
坂野 純子 菊澤 佐江子 的場 智子 山崎 喜比古 杉山 克己 八巻 知香子 望月 美栄子 笠原 麻美
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.19-25, 2010

本研究では、大学生の精神障害者への否定的な態度をスティグマ的反応尺度により把握し、その因子構造と関連要因を明らかにすることを目的とする。青森県、大阪府、岡山県、東京都、奈良県の大学生を対象にビニエット方式で質問紙調査を実施した。ビニエットの事例疾患はうつ病、統合失調症、ぜんそくの3種類を用意し、それらを無作為に対象者に振り分けた。分析項目はビニエットの人物に対するスティグマ的反応、疾患事例、回答者の性別、専攻分野とした。大学生のスティグマ的反応を検討するために最尤法を用いたプロマックス回転による探索的因子分析を行った。その結果、「精神障害者と接することへの不安」「精神障害者の責任能力への不信」「精神科医療を受けていることへの抵抗感」「精神障害者の知的能力や生産性への期待」「精神疾患への恥辱」の5因子が抽出された。一元配置分散分析と多重比較の結果、「精神障害者の責任能力への不信」「精神障害者への恥意識」因子は、ぜんそく群よりもうつ病群および統合失調症群にスティグマ的反応が強い傾向がみられたが、両者の間には差はみられなかった。専攻分野別では「精神障害者の責任能力への不信」「精神障害者の知的能力や生産性への期待」「精神疾患への恥意識」3因子では、看護系が社会福祉系、人文社会系理工系に比べてスティグマ的反応が小さい傾向がみられた。そのうち「精神疾患への意識」因子は社会福祉系が理工系に比べてスティグマ的反応が小さい傾向がみられた。
著者
近藤 理恵 黒木 保博 朴 志先 桐野 匡史
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.87-94, 2015-03-12

本研究は、2013 年12 月に韓国において行った面接調査をもとに、近年の韓国の養子縁組政策の動向について明らかにすることを目的とした。面接対象は、「中央養子縁組センター」、「ホルト児童福祉会」、「東方社会福祉会」、「未婚母子家族福祉施設」であった。韓国では、民間団体による養子斡旋が活発であるが、2011年の養子縁組特例法の全面改正以降、①裁判所が養子縁組に関与したり、②子どもが自らの出自を知ることができるシステムがより一層整備されたり、③養子縁組に関わるケース・マネジメントが確立されたことにより、以前よりも養子縁組をされる子どもの権利が擁護されるようになったことが明らかとなった。また、韓国では、非婚の母親と子どもへの差別が強いため、彼女たちが生きにくい状況があるが、今後、養子縁組政策と並行して、非婚の母親と子どもが安心して暮らせるシステムづくりを推進していく必要があることが明らかとなった。
著者
井上 里加子 久保田 恵 阿部 淳二 二宮 一枝 名越 恵美 谷口 敏代 原野 かおり
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.195-202, 2015

「外国語の習得や専門分野に関連した施設見学や研修体験を通じて異文化への理解や多文化共存の重要性について学ぶとともに、修了後は自国での専門職教育における学びのモチベーションの向上につなげる。」ことを目的として、約1 週間、南オーストラリア州(SA)にあるアデレイドへ学生10 名と引率大学教職員2名とで専門的かつ実践的な研修を実施した。そこで今回、本研修が国際交流として本学の学生に与えた影響と教育効果を明らかにし、今後の保健福祉研修への示唆を得ることを目的としてアンケート調査を行った。結果、現地で様々な触れ合いを通して言語は多様なコミュニケーションツールの一つであることに気づき、また文化の違いによる価値観の異なりを実感し異文化理解へとつながった。そして専門職としての理解を深めるきっかけを得、修了後のモチベーション向上を期待できる学生の反応であった。これらのことより、本研修は目的を達成するものであるといえる。
著者
二宮 一枝 名越 恵美
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.163-168, 2014

南オーストラリア州の看護師教育は大学(3 年間)で、准看護師はTAFE(18 ヶ月)で行われている。免許は毎年20 時間の継続学修をうけて更新する。 看護師は侵襲性の高い処置を行い、開業助産師は薬剤の処方権を有し、高度実践看護師(専門看護師CNSとナースプラクテショナー)も活躍している。保健師免許はないが、コミュニティではCNSが、州政府の看護行政担当にはコミュニティや看護管理経験等が必要である。小学校では教職員が州のマニュアルに基づき、輪番でファーストエイドを行っている。 州政府は"Nursing and Midwifery Strategic Framework 2013-2015" に基づき、看護の質向上に努めている。アデレイド大学の看護基礎教育はロイヤルアデレイド病院等と連携して Nursing and Midwifery Board of Australia の規定に基づくカリキュラムに沿って行われている。
著者
原野 かおり 出井 涼介 桐野 匡史 谷口 敏代 中嶋 和夫
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.101-107, 2016-03-12

本研究は介護技術に関する測定尺度を開発し、その妥当性と信頼性を検討することを目的とした。 X 県内の介護保険施設に従事する主任および管理者を対象にインタビューを行い尺度の原案を作成した。その後X県内すべての特別養護老人ホームおよび老人保健施設に勤務する介護福祉士を対象に郵送法による自記式質問紙調査を行った。統計解析では「介護技術評価尺度」を構成する10 領域を第一次因子、介護技術を第二次因子とする10 因子二次因子モデルを仮定し、因子構造の側面から見た構成概念妥当性を確認的因子分析により検討した。分析には各項目に欠損値を有さない750 人分のデータを使用した。「介護技術評価尺度」の10 因子二次因子モデルのデータに対する適合性及びCronbach のα信頼性係数は統計学的に支持された。「介護技術評価尺度」は、介護関連施設等に従事する介護労働者の介護技術を測定可能な尺度であることが示唆された。
著者
石村 久美子
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.41-51, 2007

健康増進法第2条によって自らの健康増進が国民の責務となった今、人々の生命・健康を守るとは、どのようなことだろうか。健康に価値を置く一方、不健康には不利益を容認することは健康を強いることであって、主体的な健康を涵養することにはつながらない。ところが、医療費抑制を主眼とする昨今の医療制度改革によって、所得による生活格差が生命・健康の領域にまで格差を及ぼしている。無保険者の増加やいのちの経済化は、根源的な平等感の喪失と将来の懸念を増すばかりである。今、多くの国民が望んでいることは、だれもが必要なときによりよい医療を受けられる安心である。そのためには、貧富の差による「健康の不平等」を容認せず、健康阻害を招くような医療費抑制ではなく、平等・公正・質の高い医療を提供するために、公的責任に値する財源の投入をしなければ解決できない問題であると考える。
著者
國司 悠莉子 浅井 美穂
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.99-104, 2019-03-12

近年、植物質の発酵に関わる「植物性乳酸菌」が注目されており、その中でも甘酒は人工甘味料の代替品としても注目されている。今回の研究では、女性が続けることが出来る健康習慣の1つを提案する事を目的とし、A大学の学生(21~22歳)に甘酒水を摂取する事をライフスタイルの中に取り入れ4週間継続してもらった。結果として、排便については日本語版便秘評価尺度(CAS)の合計得点の平均値に有意差は見られなかったが、ブリストルスケールによる便の形状では、甘酒摂取群10名中4名の便は軟化し、4名が普通便の状態を維持していた。疲労については、青年用疲労自覚尺度の合計得点に有意差は見られなかったが、項目ごとに見ると集中力と身体的違和感の2項目において得点の有意な差が見られた。考察として、甘酒摂取後の便秘尺度の平均得点は低下しており、ブリストルスケールにより評価した便の形状は軟化を示しており、甘酒による便秘改善効果を可能性として否定できず、疲労に関しては、甘酒に含まれるアミノ酸が脂質代謝を亢進し、ビタミン類は脂質や糖質の代謝を高め、疲労改善効果を引き起こした可能性がある。また、疲労を改善することは腸内環境の改善にもつながるため、疲労改善が結果的に便秘改善へとつながる可能性が示唆された。
著者
市村 美香 松村 裕子 佐々木 新介 村上 尚己 森 將晏
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.55-63, 2011

本研究では、前腕で静脈穿刺をする際に、静脈怒張を得るために実際に臨床で行われている方法を明らかにする目的で、質問紙を作成して実態調査を行った。回収率は70.5%であり、このうち309名の回答(有効回答率99.4%)を分析対象とした。静脈怒張を得るために最もよく行う方法として、割合が高い順にマッサージ(20.7%)、温める(20.1%)、クレンチング(18.4%)、叩く(15.9%)、手をしっかり握らせる(13.3%)の5つの方法に1割以上の支持が集まり、マッサージ、温める、叩く方法は、標準採血法ガイドラインが推奨する方法と一致していた。この他には、駆血帯をきつく締め直す方法(4.5%)と腕を下してから駆血する方法(3.6%)を提示したが、支持する人は少数であった。一方、これらの方法を行ったことがある人が感じる主観的効果が最も高かったのは、もっともよく行われるマッサージではなく、温める方法であった。このことから、多忙な臨床現場においては、すぐに実施できる方法を優先する傾向があり、それを試してみてから、手間や時間はかかるが効果のある方法を行っているのではないかと考えられる。また、それぞれの方法における手技は、回答者により様々であることが分かり、今後は、静脈怒張の効果を検証した上で、簡便で確実な手技を示すことが必要と考えられた。
著者
田淵 真愉美 久保木 真 水道 裕久 河原 和枝 冨岡 加代子 川上 貴代 平松 智子 塚本 幾代
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.27-37, 2015

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、外来診療や健診で高頻度に認められる疾患である。近年、NAFLD における抗酸化療法が試みられているが、ビタミンC 摂取の効果に関する報告はほとんどない。本研究では、外来受診したNAFLD 患者を対象に、通常の食事に加えて緑色野菜ジュースを8 週間飲用させ、身体状況、臨床検査値、栄養素等摂取状況、血中脂肪酸組成、血漿α−トコフェロール濃度の分析を行い、緑色野菜ジュースの飲用が血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)値および血漿α−トコフェロール濃度に及ぼす影響について検討した。緑色野菜ジュースの飲用により、9 例中6 例にALT の低下が認められた。緑色野菜ジュースの飲用は、ビタミンC の摂取量を増大させ、特に肥満度が軽度(BMI < 30)のNAFLD 患者では血漿α−トコフェロール濃度の上昇によって脂肪酸代謝を改善させ、肝機能を改善させる可能性が示唆された。Nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD) is a disease to be found in ambulatory care andhealth check-up frequently. In late years antioxidant therapy in NAFLD is tried, but there are few reports about the effect of vitamin C intake. In this study, NAFLD outpatients were given green vegetable juice in addition to a daily diet to be drunk for eight weeks, and we analyzed anthropometric measurements, clinical data, dietary intakes, fatty acid composition in erythrocyte membrane phospholipid and plasma α-tocopherol concentration to examine the effect of supplementation of green vegetable juice on serum ALT level and plasma α-tocopherol concentration. After the supplementation of green vegetable juice, serum ALT level was decreased in six of nine patients. It is suggested that green vegetable juice supplementation increases intake of vitamin C, and particularly in NAFLD patients that an obesity index is mild( BMI<30), fatty acid metabolism may be improved by the increase in plasma α-tocopherol concentration and liver function may be also improved.
著者
荻 あや子 玉谷 奈都美 岡山 加奈
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.131-141, 2015-03-12

本研究は大学生が入院患者であると想定し、看護師のどのような化粧が、患者に好印象を与えるのかを明らかにすることを目的に、A 大学3 学科の学生126 名に質問紙調査を実施した。その結果、濃い・派手な化粧の印象は「話しかけにくい・近づきにくい」「怖い」が多く、薄い・地味な化粧の印象は「話しかけやすい・近づきやすい」「清潔」が多かった。看護師の化粧A(薄)~ E(濃)の評価では、化粧B が最も高く、化粧A、C、D、E の順に低くなった。5 項目の平均評価得点は化粧A ~ C までが3 点以上であった。項目ごとでは、化粧A は真面目さの評価が高く、化粧C、D では明るさの評価が高かった。看護師の化粧では、化粧A のファンデーションと眉ずみに化粧B のチークと口紅を加え、顔色を健康的で明るい印象にすることで患者に好印象を与え、評価が高まることが示唆された。
著者
中嶋 和夫 種子田 綾
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.31-36, 2004

本研究は障害児の母親の育児負担感と精神医学的障害の関係を明らかにすることを目的に行った。調査対象は、S県とW県内の障害児通園施設を利用するすべての母親とした。調査内容は児の特性(性、年齢、障害手帳)、母親の基本属性(年齢、児の数、家族構成)、育児負担感、精神医学的障害で構成した。育児負担感は「障害児育児ストレス認知尺度」で、また精神医学的障害は精神健康調査票「GHQ-12」で測定した。育児負担感を独立変数、精神的健康を従属変数とする因果モデルのデータヘの適合度を構造方程式モデリングで解析した。前記の因果モデルのデータヘの適合度は統計学的許容水準を満たしていた。育児負担感の精神医学的障害に対する寄与率は43.9%であった。以上の結果から、障害児の母親の育児負担感を軽減するために有効な介入方法を積極的に導入することの必要性が示唆された。
著者
松村 裕子 市村 美香 佐々木 新介 村上 尚己 森 將晏 荻野 哲也
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.31-38, 2012

静脈穿刺時に有効な静脈怒張を得るための適切な駆血圧を検討すると共に、静脈怒張度の客観的指標を得ることを目的に、種々の駆血圧における触知静脈怒張度(怒張度)、および静脈断面積等の変化について検討した。対象者は健常成人46名、マンシェットを上腕に装着し、20〜100mmHgで1分間駆血した。駆血圧は順不同とした。駆血後の怒張度は駆血圧80mmHgまでは増加したが、100mmHgではやや減少した。駆血圧60mmHgと80mmHgの間には怒張度に有意な差がみられなかったが、他の駆血圧間では有意な差がみられた。怒張度は圧迫にて静脈が潰れ始める圧力(静脈触知した時の血管抵抗の指標)、静脈拡張比、静脈断面積の順で相関が高く、皮膚表面から静脈までの距離との間にはやや負の相関がみられた。以上より、駆血圧は60mmHgが適切であり、怒張度の客観的指標としては圧迫にて静脈が潰れ始める圧力が最も適切と考えられた。
著者
中島 伸佳 桑木 信輔 石原 浩二 田中 英彦
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.39-48, 2012

植物性食品を中心とした食生活は、生活習慣病の予防や治療に効果があるとされている。乳酸菌や酵母により発酵熟成させた植物発酵エキスは、多種多様な植物性原料を用いて、発酵と糖蔵という伝統的な食品保存技術を応用した発酵食品である。本研究では、植物発酵エキスの有効性(栄養的特性や保健機能)に関する研究を行った。植物発酵エキスには、58.5%の炭水化物、3.7%のタンパク質、1.3%の脂質をはじめ、18種類のタンパク質構成アミノ酸や種々のビタミン類、食物繊維、ファイトケミカル(ポリフェノール、テルペノイド等)が含まれていた。さらに、植物発酵エキスは抗酸化作用、血圧上昇抑制作用、抗菌作用、抗アレルギー作用、抗炎症作用、チロシナーゼ阻害作用を有していることを「in vitro 試験」により明らかにした。
著者
佐藤 成美 山内 さつき 高林 範子 石井 裕
出版者
岡山県立大学保健福祉学部
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 = BULLETIN OF FACULTY OF HEALTH AND WELFARE SCIENCE, OKAYAMA PREFECTURAL UNIVERSITY (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.45-55, 2015-03-12

本研究の目的は、マスク着用による音声への影響と話し手の音声の特徴が聞き手の聞き易さにどう影響しているかを、音声分析により明らかにすることである。音声実験では、被験者6 名に日常生活会話と同程度に話す「標準音声」、大きく・はっきり・ゆっくりと、を意識して話す「明確音声」をマスク非着用時と着用時で録音した。次に聴取実験では、別の被験者10 名に録音した音声を聞かせ、どちらが聞き易いか【声の大きさ・声の高さ・話す速度・間隔・アクセント】を基準に評価させた。その結果、マスク着用時の「標準音声」と「明確音声」の声の大きさには、有意な差は認められなかった。これは、マスク着用により発声が妨げられたことによるものと考えられた。また、聞き易い音声とは声の大きさだけではなく、抑揚をつけ話す速度も遅くすることが聞き易い音声にとって必要な項目であり、マスク着用時の円滑なコミュニケーションに繋がるという示唆が得られた。
著者
福 知栄子
出版者
岡山県立大学
雑誌
岡山県立大学保健福祉学部紀要 (ISSN:13412531)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.67-77, 1996

不登校やいじめ等学校生活をめぐって子どもたちの悩みはますます深まってきている。また、学校には生活保護家庭の子どもやひとり親家族の子ども、さらに虐待を受けている子どもなど様々な福祉問題を抱えている子どもたちがいる。こうした子どもたちの教育と福祉の問題に適切に対応して、豊かな子ども時代を確保し、その発達を保障していく必要がある。わが国においても学齢期の子どもたちへの教育と福祉の協働のサービス体系を作り上げる必要性が高まってきている。本稿では、学校をコアとした福祉ネットワークの存在する英国をとりあげ、子どもと家族のための援助サービスである教育ソーシャルワーカーの専門職としての役割を分析する。学校と家庭の中間にあって子どもと家族が抱える諸問題への援助を提供しつつ、子どもの教育保障において独自の役割を果たしている姿を明らかにし、わが国における教育と福祉の協働のあり方を考える上での示唆を得たい。