著者
関根 好文 隅山 正巳 佐伯 勝敏 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.988-994, 2001-10-01
被引用文献数
43

最近, 工学的な応用を目指し, 神経回路網を構成する基本単位であるニューロンをハードウェアにより実現する研究が盛んに行われている.特に, 脳内での情報伝達手段としてのパルス信号を近似的に模倣したパルス形ハードウェアニューロンモデルが注目されているが, パルス形ハードウェアニューロンモデルとしては, 回路が複雑であったり, コイルを含んだりしており, 実用的なモデルは少なかった.本論文は, パルス形ハードウェアニューロンモデルの一つであるΛ形ニューロンモデルを, CMOSプロセスの標準方式に適用できるエンハンスメント型MOSFET(以下, E-MOSFETと略す)とコンデンサのみで構成し, 大規模ニューラルネットワークに向けたハードウェアニューロンモデルとして有用であることを示したものである.まず, 時間的に変化する負性抵抗特性を有するΛ形負性抵抗回路をE-MOSFETにより構成できることを示し, その原理を明らかにしている.次に, この負性抵抗回路を用い, CMOSプロセスの標準方式に適用可能なE-MOSFETによるΛ形ニューロンモデルを構成できることを明らかにしている.
著者
井戸川 貴志 出口 博之 辻 幹男 繁沢 宏 高木 信雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.321-328, 2006-05-01
被引用文献数
17

単純なストリップ導体を二次元周期配列して構成されるオフセット給電のマイクロストリップリフレクトアレーにおいて,広帯域な特性の実現を目指して,長さの異なる線状素子を一方向に密に配列して構成し,その簡易設計法について述べている.本法の妥当性は,モーメント法をもとにした数値解析,及び試作した単層構造のマイクロストリップリフレクトアレーのX帯での放射パターンの測定評価によって検証している.
著者
石田 謙司
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.12, pp.408-414, 2023-12-01

有機材料特有の柔軟性,生体親和性を利用したフレキシブル有機圧電薄膜のインプランタブル生体センサ/発電素子の検討を行った.心臓モデルでの発電出力計測に加え,アレーセンサによる心臓の動きを3次元的に測定するデバイスを開発した.
著者
渡辺 重佳
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.11, pp.403-404, 2023-11-01

複数入力可能な複数入力積層型Gate-All-Around (GAA)トランジスタ構造を新たに提案した.8F2(Fはデザインルール)の微細なパターン面積の中に高速低電力なCMOS NAND,NOR回路が実現できることを初めて示した.ロジックLSIで良く使用される入力数4の場合,過去最少のパターン面積を実現した積層型SGTと比較して高速性能を保持しつつ平面パターン面積を40%に縮小できる.
著者
王 晨旭 川口 秀樹 渡邊 浩太
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.10, pp.366-372, 2023-10-01

リコンフィギュラブルコンピューティング技術に基づくハイパフォーマンスコンピューティングの試みとして,データフローアーキテクチャ専用計算機の方法を提案し,電磁界シミュレーション,とりわけ,マイクロ波シミュレーションへの応用を検討してきた.このとりくみの次の段階として,より広範囲の電磁界をとり扱うためには,大型疎行列計算のハードウェア化が重要な課題となる.本研究では,典型的な疎行列計算スキームBiCG-Stabのハードウェア回路化に際して必須のタスクとなる倍精度浮動小数点相当の精度を有する多倍長整数型除算回路の検討を行ったので報告する.
著者
宮崎 龍一 須賀 良介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.8, pp.334-335, 2023-08-01

電子レンジのグリル機能ではグリル皿に貼付したフェライトをマイクロ波により加熱することで食品を下面から焼くが,そのフェライトに生じる定在波による食品の焼成ムラが懸念される.本研究では,1/4波長共振器を用いてフェライト内部の磁界分布を均一化する手法について電磁界解析により検討した.
著者
久保田 繁 有馬 ボシールアハンマド 廣瀬 文彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.7, pp.267-276, 2023-07-01

有機薄膜太陽電池は低コスト,高デザイン性,軽量,フレキシブル,無毒性といった優れた特徴を併せもつ次世代の太陽電池であるが,薄い(~100 nm)発電層に光を十分に吸収するのが困難であるという技術的な課題が存在する.このため,波長と同程度の空間スケールを有するナノ構造を用いて光の流れを制御することで,発電層内の電界を局所的に強化することにより光吸収を促進する光閉じ込め技術の開発が,今後特に重要になると考えられる.本論文では,筆者等がこれまで行ってきた,表面ナノ構造による有機薄膜太陽電池の光閉じ込めに関する研究について,薄膜太陽電池特有の光制御技術に関する知見と合わせて紹介する.
著者
岩城 江津子 河西 秀典 木村 睦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.4, pp.129-136, 2023-04-01

微細化・積層化が容易な酸化物半導体を用いることで,高集積化を目標としたハードウェアによる大規模な多層ニューロモルフィックデバイスの研究,開発を行った.酸化物半導体にはアモルファスIn-Ga-Zn-O(IGZO)を用い,IGZO薄膜が2層となる3次元構造デバイスの作製を行った.IGZOの電気的特性を,生物のシナプス素子の学習則であるヘブの学習則を応用させた修正ヘブの学習則の,重み付け原理で利用した.また,作製したデバイスでパターン認識学習を行った場合をシミュレーションすることでデバイスが知的学習が可能であるかの確認を行った後,実験を行い,シミュレーションと同様に学習が可能であることを実証した.結果として2文字の文字パターンである0と1の学習に成功し.ニューロモルフィックデバイスとして作製したデバイスが有用であることを示した.
著者
岩名 紘基 重宗 宏毅 澤田 秀之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.2, pp.79-85, 2023-02-01

形状記憶合金(Shape-Memory Alloy: SMA)は,温度変化により相変態を起こすことで,記憶した形状に回復する合金である.この合金は,人工筋肉やばねのように様々な形で応用されている.従来のSMAアクチュエータは時間に対して緩やかに変形するものに応用されてきた.我々はこれまでに,SMAワイヤにパルス電圧を流すことによる数百Hzまでの振動現象を発見し,これを応用した微小振動アクチュエータを提案してきた.しかし,この現象の特性や原理については,未だ解明されていない点が多い.本研究ではSMAワイヤの振動現象の解明及び特性の理解のために,有限要素法を用いたシミュレーションと実際の振動現象の測定を行った.振動現象において,その振幅は幾つかの物理パラメータが寄与しており,これらを変化させると振幅のピークが変化することがわかった.この特性を応用することにより,SMAアクチュエータの効果的な利用が可能となる.
著者
本多 亮也 阿部 晋士 大平 孝
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J106-C, no.1, pp.20-29, 2023-01-01

入力電力が異なる二つの高周波整流回路の合成動作において片方の高周波整流回路が動作しなくなるカットオフ現象について定量的に考察する.合成動作を解析する準備として,単体動作において高周波整流回路がカットオフする条件を導出する.カットオフ条件となる特定の出力電圧と流通角の値を導出する.この二つの特定の値を用いて,合成動作におけるカットオフ現象の理論解析を行う.結果,入力電力が小さい方の高周波整流回路がカットオフする入力電力比を発見し,定式化した.カットオフが起きる入力電力比は,入力電力が小さい方の高周波整流回路に関係なく,入力電力が大きい方の流通角のみで決まることを発見した.導出した理論を数値解析(ハーモニックバランスシミュレーション)と実機実験(6.78 MHz, 100 W)の両方で検証し,理論とよく一致していることを示した.
著者
阪本 卓也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J103-C, no.7, pp.321-330, 2020-07-01

本論文では,超広帯域レーダを用いて人体の歩行及び着座運動を測定し,時間周波数解析により得られたスペクトログラム画像及び機械学習を用いて個人識別をおこなう.被験者6人の歩行及び着座運動を超広帯域レーダにより測定する.レーダ受信信号を時間周波数解析し,四肢の運動に伴うマイクロドップラー成分の含まれるスペクトログラムに変換し,画像を生成する.個人ラベルを付与されたスペクトログラム画像を2層畳み込みニューラルネットワークに入力して学習を行い,レーダによる個人識別を実現する.
著者
寳迫 巌 石津 健太郎 東 充宏 加藤 明人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.12, pp.342-350, 2022-12-01

2030年以降の未来社会は,高齢化や労働人口の他,感染症などの突発的な社会課題にも対応していくことが求められる.情報通信ネットワークは,その社会課題を解決するための基盤として高度化が期待されている.特にBeyond 5Gは,超高速・超低遅延・超多数接続などの特徴をもつほか,上空や海洋への通信エリア拡張,現実世界と仮想世界の融合など,もはや単なる移動通信のためのシステムではなく,移動通信分野以外のシステムとの積極的な連携を図ることにより,これまで困難と考えられてきた社会課題の解決や社会全体の最適化を期待されている.そのため,Beyond 5Gは異分野のシステムが連携できる柔軟な構成となる必要があり,オープンプラットホームとしてのBeyond 5Gを実現する観点からアーキテクチャ技術を確立する必要がある.一方で,テラヘルツ波通信は超高速通信や稠密なエリア展開などBeyond 5Gに最も特徴を与える技術の一つであり,周波数帯の特定など国際標準化における議論も進んでいる.そこで本論文では,多様な機能をオープンに取り込み,サービスに合わせて適材適所に組み合わせたシステム構成を可能にするBeyond 5Gアーキテクチャを提案し,Beyond 5Gにおけるテラヘルツ波通信の利用ケースに着目してケーススタディを行うことにより,アーキテクチャ技術の検証を行う.
著者
久保田 悟 雨車 和憲 田中 勇帆 古川 利博 八嶋 弘幸
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.12, pp.376-383, 2022-12-01

核磁気共鳴分光法(Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy:NMRS)は有機化合物の分析をはじめとする化学的及び生理学的な基礎研究において非常に有用である.しかし,観測信号の信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio:SNR)が低いという問題をもつことから,効果的なデノイジング手法によって,測定の高効率化や経時変化の大きな試料への幅広い対応が可能となることが期待される.本論文では,NMRSによる観測信号は周波数域上においてスパース性をもっており,更にこれのN階差分をとった場合でもスパース性が失われないことに着目したデノイジング手法を提案する.シミュレーションによる数値実験から,スペクトル形状やノイズ強度に依らない安定したデノイジング性能を示したためこれを報告する.
著者
金澤 慈 進藤 隆彦 陳 明晨 中西 泰彦 中村 浩崇
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.11, pp.308-314, 2022-11-01

近年の急激な高速化の流れに対応すべく,1波長あたりの速度が100 Gbit/sを越える動作が可能な光送信器が求められてきた.100 Gbit/sを越える動作を実現するためには従来のワイヤ実装ではワイヤのもつ寄生インダクタンスによる帯域劣化が課題であった.そこで,ワイヤ不要となるフリップチップ接続技術と光デバイスと実装部材を一体で設計する技術を組み合わせた実装技術(Hi-FIT)を開発し,本技術を電界吸収型光変調器集積DFBレーザ(EADFBレーザ)モジュールに適用することで,214 Gbit/s動作を実現した.また,高速化に伴って10km超級伝送を実現するためには光出力パワーの向上も併せて求められてきたが,高速動作が可能な光アクティブデバイスとして従来用いられてきたEADFBレーザでは光出力の不足が課題であった.そこで我々は半導体光増幅器(SOA)をEADFBレーザチップに集積したデバイス(AXEL)を開発し,受信器としてアバランシェフォトダイオード(APD)を用いることで,106 Gbit/s信号の60km伝送を実現した.Hi-FITとAXELは100 Gbit/s超級動作高出力光送信器のキー技術として期待される.
著者
中沢 正隆 葛西 恵介 吉田 真人 廣岡 俊彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.11, pp.315-328, 2022-11-01

本論文では次世代RAN (Radio Access Network)の実現に向けて我々が提案してきているフルコヒーレントアクセスシステムについて述べる.最初に2010年代の4Gから2020年代の5G更に2030年代の6Gに向けての大きな変革としてD-RAN (Distributed RAN)からC-RAN (Centralized RAN)への進化について述べた後,それとともに今まで開発されてきた各種モバイルフロントホール(MFH: Mobile Fronthaul)について説明する.その中で将来に向けてのフルコヒーレント伝送の重要性を浮かび上がらせ,我々が実験を行ってきている無線・光融合型フルコヒーレント伝送方式について述べている.この方式は光信号と無線信号をIF (Intermediate Frequency)が異なる一つの電磁波伝送として捉えるものであり,構成が簡単でありかつ高性能を実現できる興味深い手法である.光と無線を一体として捉えることにより,光伝送部分で発生する誤りを無線のFEC (Forward Error Correction)で補正できるなど今まで考えられなかった特徴がある.更に,その実現のために重要な技術として,注入同期による信号光とLO (Local Oscillator)光との高精度位相同期技術について詳細に述べる.この高精度な位相同期はLD (Laser Diode)が1台という簡単な構成で実現できるため,256 QAMのような高い多値度の光伝送にも応用可能であることを示した.最後に,フルコヒーレントアクセスシステムの高度化のために重要な光・電子デバイス更にはその集積化技術について述べている.
著者
三島 拓馬 上村 凌平 岸本 誠也 大貫 進一郎
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.10, pp.270-277, 2022-10-01

円柱状微小共振器の円周上を周回するWhispering Gallery Mode(WGM)を利用したレーザの放射指向性は特有の回転対称となる.本文では,共振器の形状変化を伴わない放射指向性の可変制御を検討し,ビームステアリングデバイスやスイッチング素子等への応用に向けた基本原理を確立する.WGMレーザの放射指向性は,電磁界解析に広く用いられるADE-FDTD法によりシミュレーション検証し,共振器に励起するWGM,複数レーザ間の位相差,レーザに与えるポンピング等の観点から,指向性の制御を明らかにする.
著者
濵口 浩規 結城 直彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.10, pp.302-307, 2022-10-01

高精度なFM変調器の構成として,ΔΣ変調器を組み込んだFM変調器(以後,ΔΣFM変調器と呼ぶ)を提案する.本回路の構成は周波数変調器としてのVCOとノイズシェーピング特性を示すΔΣ変調器の組み合わせからなるFM変調器である.本回路における復調後の信号の雑音は一般的なFM信号を復調したとき生じる三角雑音より,急しゅんな傾きを得ることができ,高精度なSNRを得ることが可能になる.本論文は提案するΔΣFM変復調器について回路構成を示す.示した回路構成において,急しゅんなノイズシェーピング特性が得られることをS関数を用いた理論式より示した.また,MATLAB & Simlinkを用いた解析により理論式の結果が正しいことを確認した.
著者
小山 雅紀 篠原 誠 金 貞我 池 受玲 崔 大徹
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.9, pp.263-269, 2022-09-01

実装基板配線の多層化と微細化が進む中で,その不良解析技術は非破壊・高精度・高速解析が求められている.配線不良の位置特定技術には,電気-光サンプリング技術を用いた高分解能TDR(Time Domain Reflectometry)法がある.この手法は,立ち上がり時間の短い電気パルス波を不良配線に伝搬させ,不良箇所からの反射波形を高精度で測定する非破壊解析技術である.本実験では,この手法を用いて更に精度の高い位置特定解析を実現させるため,不良配線を構成するビアと複数の異なる層配線の波形伝搬速度を個別に導出した.導出した各部位ごとの伝搬速度と,不良箇所からの反射波の時間を解析することで,数十μmレンジでの非破壊不良箇所特定が可能となった.
著者
松枝 洋二郎 森 茂
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.8, pp.235-243, 2022-08-01

プラスチック基板上にTFT (Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)アレーを形成したFLX-OLED (Flexible Organic LED:フレキシブル有機EL)ディスプレイは,3D曲面を駆使した質感の高いデザインを採用し,各種センサーを内蔵したモバイル市場の頂点に立つ最先端の電子デバイスである.積極的な製造ラインへの投資が続く中国のFLX-OLED市場では,世界初の新技術も次々に登場し,韓国と熾烈な技術開発競争を繰り広げている.FLX-OLEDのバックプレーンには,従来のLTPS (Low Temperature Polycrystalline Silicon:低温多結晶シリコン) TFTだけでなく,低消費電力を特徴とするLTPO (Low Temperature Polycrystalline Oxide) TFTも登場し,酸化物TFTも含めた次世代バックプレーンの三つ巴の戦いの様相を呈している.本論文ではモバイル用有機ELディスプレイの最新技術開発動向をレビューするとともに,最大の課題であるコスト削減のためのTFTの要求性能について議論する.
著者
雨宮 智宏 各務 響 岡田 祥 西山 伸彦 胡 暁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.9, pp.244-262, 2022-09-01

トポロジカルフォトニクスとは,光工学(フォトニクス)の分野に数学の位相幾何学(トポロジー)の概念を持ち込んだものであり,これにより,円偏光(光のスピン)や光渦(光の軌道角運動量)などの光のトポロジーに起因した情報を体系的に扱うことができるようになる.本論文では,トポロジカルフォトニクスの理論的枠組みに触れつつ,その実証に向けた分析技術・作製技術,及び光回路への応用について言及する.