著者
川崎 健吾 桑田 英悟 石橋 秀則 矢尾 知博 前田 和弘 柴田 博信 石田 清 津留 正臣 中溝 英之 森 一富 下沢 充弘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.10, pp.308-318, 2021-10-01

マイクロ波の送信モジュールには小型化と低コスト化が求められる.提案する送信モジュールは,高集積に適するSiデバイス上に制御回路を構成し,最終段の1W級の増幅器にSi-GaNスタック型増幅器を採用したことで,送信モジュールで使用するデバイスプロセスの数を減らし電源電圧の数を最少化することで電源回路を簡易化することが可能である.試作では,GaNチップを基板に内蔵し,Siチップと電源回路素子のチップインダクタを基板上に表面実装した3次元実装構造とすることで,モジュール面積7 mm x 7 mmの小型な実装構造を実現した.試作した送信モジュールは,L~C帯において広帯域な動作が可能であり,出力電力はL帯で34.8 dBm,S帯で32.0 dBm,C帯で25.8 dBmが得られ,0.6 dB-rms以下の振幅誤差と1.8 deg.-rms以下の移相量誤差の特性が得られた.
著者
矢崎 晴子 関川 純哉
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.7, pp.218-226, 2022-07-01

直流電源電圧48V,接点接触時の回路電流I0=50A-300Aの抵抗性負荷回路において,2種類の異なる開離装置を用いて開離時アークを発生させた.開離装置としては,実際の電磁リレー等と同様の開離機構であるばね式開離装置と,開離速度ごとの開離時アークの特性を把握しやすい等速開離装置を用いた.はじめに,ばね式開離装置による実験結果について,消弧直前のアーク長さLの電流I0依存性を解析した結果を示す.次に,等速開離装置を用いた実験結果について,LのI0依存性を示す.その後に両者の結果を比較する.開離装置によらない結果としては,I0の増大に伴いLが長くなる傾向があること,及びI0が200A以上の場合にはI0に対するLの増大は飽和傾向にあることが明らかとなった.各実験条件において,アーク形状の特徴についても説明し,アーク形状の電流依存性に関して考察する.
著者
井口 亜希人 辻 寧英
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.6, pp.193-199, 2022-06-01

光通信システムの基本要素である光回路デバイスの極限までの高性能化を達成する手段として,形状・トポロジーまで含めた自由度の高い設計手法の活用が盛んに検討されている.本論文では,数値計算手法として,近似的手法であるが計算効率の飛躍して高いビーム伝搬法を活用した,特性感度に基づく形状・トポロジー最適設計技術とその適用例を示す.本設計アプローチでは,離散セルごとに割り当てられた正規化密度を媒介(設計)変数として導波路の材料分布を表現し,設計変数に対する特性感度計算を行う.ビーム伝搬法による特性解析,感度計算,及び勾配法による材料分布の更新を繰り返し,所望の特性の最大化を行う.パワー分岐素子や交差導波路のような基本的な回路要素の設計を行い,本設計手法の有効性を確認する.
著者
桑村 有司 日端 恭佑
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.6, pp.207-217, 2022-06-01

本論文では,電気光学ポリマーを利用したプラズモニック位相変調器をアレー状に並べた新型のプラズモニック光フェーズドアレーを提案する.提案素子では,波長1.55 μmにおいて,素子からの光出力ピークは1本のみでかつ,電圧制御で出力光が100度以上の範囲で偏向走査可能な素子を設計できることを2次元FDTD法による数値計算で確認したので報告する.ポッケルス係数r33=200 pm/Vの電気光学ポリマーを利用すれば,各位相変調素子へ印加する電圧は|9.5|V以下であり,長さL=20 μm程度の位相変調器アレー列を用いて70×26 μm2以下のサイズで小型で,高速かつ低消費電力の光フェーズドアレーが構成できる.
著者
毛塚 敦 齊藤 真二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.5, pp.139-148, 2022-05-01

航空機のナビゲーションにはGNSSが主に利用されているが,GNSS信号は微弱であり,脆弱性を有する.GNSSに障害が発生した際にも航空機の安全と効率を維持できるように代替測位システム(APNT)を構築することがICAO(国際民間航空機関)での課題となっている.そこで,現在配置・運用されている航空用距離測定装置(DME)を2局用いたDME/DME測位の機能・性能を向上させて短期的なAPNTとすることが検討されており,欧州で標準化が開始された.GNSSのみ航法装置として認められる経路にDME/DME測位を適用するためには新たにインテグリティの保証が必要となるが,山岳地形が多い日本国内では特にマルチパスによる誤差がインテグリティの脅威となる.現在運用中のDME/DMEのインテグリティ保証のためには,飛行検査において発生するマルチパス誤差を抽出し,その原因を特定するとともにインテグリティへのインパクトを評価することが有効である.そこで本論文では,シミュレーションによりマルチパス発生位置を推定する手法を提案し,更にその誤差量のインテグリティへのインパクトを定量的に評価する一連の手法を示す.
著者
日高 卓海 坂本 高秀
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.4, pp.115-116, 2022-04-01

光コムの光周波数成分の光強度を精密かつ簡易的に計測する技術の確立が求められるが,従来の分光技術では精度に限界があり難しい.本研究では従来のエタロンに逆行列を用いたデータ処理を加えることで高精度かつ簡易的に分光する技術の可能性を検討する.
著者
井之上 瑞紀 齊藤 一幸 高橋 応明 伊藤 公一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J97-C, no.5, pp.218-224, 2014-05-01

近年の手術に広く用いられている止血方法の一つに,組織凝固デバイスを用いた手法がある.現在臨床で多く用いられている組織凝固デバイスには,MF帯からHF帯の比較的低い周波数帯の電流を用いた電気メスと,超音波を用いた超音波凝固切開装置がある.これらのデバイスは迅速かつ簡便に止血を行うことができるといった利点があるものの,幾つかの問題点も抱えている.そこで筆者らは,2.45 GHzのマイクロ波を用いた新しい組織凝固デバイスの開発を行った.本論文では,提案するマイクロ波アンテナが組織凝固デバイスとして有用であることを示すため,FDTD法を用いた数値解析による加温特性の評価を行った.更に,実際の使用状況に近い条件下での検討を行うため,ブタを用いた動物実験を行い,提案アンテナが組織凝固及び止血に有効であるかを検討した.その結果,提案するマイクロ波アンテナは組織凝固デバイスとしての機能を十分に果たすことを確認した.
著者
熊崎 祐介 多木 俊裕 小谷 淳二 尾崎 史朗 新井田 佳孝 美濃浦 優一 西森 理人 岡本 直哉 佐藤 優 中村 哲一 渡部 慶二
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.12, pp.352-359, 2021-12-01

本論文では,高効率なGaN基板上GaN HEMTのデバイス開発と動作実証を行った.GaN基板の利用により結晶欠陥を大幅に低減し,電流コラプス現象が抑制できることを確認した.また,結晶成長前にウェットケミカル処理を施すことで,基板表面のコンタミを除去し,結晶成長後の基板/エピ界面のSi不純物を低減することに成功した.Si不純物の低減により寄生損失を抑制し,2.45 GHzにおいて効率82.8%と極めて高い値を達成した.これは,同周波数帯にて報告されている異種基板上GaN HEMTの効率と比較して高い値であり,GaN基板上GaN HEMTの優れたポテンシャルを示す結果であるといえる.
著者
太田 泰友 岩本 敏 荒川 泰彦
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.12, pp.326-334, 2021-12-01

ハイブリッド光集積は光回路の性能や機能の大幅な向上を目指す上で重要な技術である.一方,シリコンフォトニクスなどの高度に完成された光集積技術においてハイブリッド集積のために新たなプロセス技術を導入することは,プロセス開発及びコストの観点から非常に難しい.とりわけ,量子光回路のような多種多様な材料を混載集積することが必要となる系においては,その難しさは格段に増す.そこで,進展を続ける既存の光集積回路技術をそのまま活用しつつ,多種多様な光素子を光回路上へ自在にハイブリッド集積することが可能な集積技術の開発が望まれる.そのような技術の一つとして粘弾性材料を用いたピックアンドプレース動作に基づく転写プリント法が注目されている.本論文では,転写プリント法を用いた光源集積について我々の研究成果を中心に報告する.
著者
後藤 隼人 辰村 光介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J104-C, no.4, pp.110-117, 2021-04-01

組合せ最適化は社会や産業の様々な場面で頻繁に現れる重要課題である.組合せ最適化問題に特化した量子コンピュータである量子アニーラが商用化されて以来,量子コンピュータに限らず,組合せ最適化問題に特化した計算機ハードウェアの研究開発が活発化している.本論文では,著者らが考案した量子インスパイアドの組合せ最適化アルゴリズムであるシミュレーテッド分岐アルゴリズムと,それを並列計算機で高速実装した組合せ最適化マシンについて解説し,シミュレーテッド分岐アルゴリズムを用いた大規模組合せ最適化の将来を展望する.
著者
堀田 昌志 鶴成 哲也 三宅 芳昭 小野 和雄
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.83, no.1, pp.98-100, 2000-01-25
参考文献数
9

2段階拡散法によりガラス製チャネル光導波路を作製する際に、使用する基板ガラスの組成や特性によっては埋込み型チャネル光導波路を作製することが困難な場合がある。このような場合でも、あらかじめガラス基板表面にナトリウムイオンを拡散させ、組成の異なる領域を形成(前処理)しておけば、チャネル光導波路が作製できることを示している。
著者
Malhan Rajesh Kumar
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.376-385, 2003-04-01
参考文献数
38

新しいインバータシステムと内燃機関とで構成されたハイブリッド電気自動車(HEV)の市場が拡大しており,パワーデバイスのビジネスチャンスが広がっている.SiCは優れた電気的及び物理的性質をもち,ハードエレクトロニクスにとって非常に魅力的な材料である.本論文では超低損失SiCパワーデバイスの現状とHEV用のパワーモジュールへの応用展開を概観する.SiCの特徴を最大限に引き出すデバイス構造コンセプトを考察した.SiCのユニポーラ,バイポーラのダイオードとトランジスタの性能をSiパワーデバイスと比較し,SiCの優位性を議論した.SiC半導体デバイスは自動車用インバータを開発するためのキーデバイスである.
著者
田中 和樹 キム ビョンゴン 小林 嵩 ベッカリ アブデルモウラ 難波 忍 西村 公佐 キム フーン チャン ユン 鈴木 正敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J101-C, no.2, pp.107-118, 2018-02-01

現在の1000倍以上のトラヒックが見込まれる5G以降の無線通信システムでは,ミリ波等の高い周波数帯の小セル局を多数設置して大容量トラヒックを収容する必要がある.小セル一局あたりの通信速度は数十Gbpsと想定され,光アクセス回線の大容量化は喫緊の課題である.更に,既に商用展開が進んでいるC-RAN構成は5G以降も有望なアーキテクチャーと考えられるものの,従来の光アクセス回線の伝送方式は通信速度の十数倍の伝送容量を必要とするため,代替技術が望まれる.光を搬送波として無線信号をアナログ波形のまま伝送するアナログRoF (A-RoF)伝送方式は,伝送帯域を大幅に低減可能で,有望な技術の一つである.本論文では,最初にA-RoF技術の既存適用例として,CATV伝送システムに用いられているIF-over-Fiber (IFoF)伝送方式を紹介する.更に,IFoF・A-RoF方式を無線基地局収容光回線へ適用した場合のシステム構成例を示す.続いて,数値シミュレーションによりIFoF伝送方式が適用可能な伝送条件の範囲を明らかにする.商用のLTE無線基地局及び実フィールドに設置された光ファイバを用いた実験を行い,数値シミュレーション結果との比較を行うとともに,IFoF伝送方式の商用システムへの適用可能性を示す.
著者
邊見 均 五味 隆志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.84, no.7, pp.543-551, 2001-07-01
被引用文献数
4

電子回路の構成・機能を自律進化的に変化させる「進化するハードウェア」(Evolvable Hardware:EHW)という研究分野について紹介する。この研究分野は1990年代のはじめに日本, スイス, 英国で独自に開拓され, 現在アメリカ, 北欧, 韓国などへと世界的に広がる様相を見せている。進化ハードウェアという概念がいかにして生まれたかから始め, いくつかのパイオニア的研究例について主に進化を可能とするようなハードウェアのコーディング方法を軸に解説する。また, この分野の最近の動向について主要な研究拠点ごとに概説する。
著者
園田 潤 丹治 紀彦 海野 啓明 佐藤 源之
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J102-C, no.5, pp.146-152, 2019-05-01

近年,フラクタル構造中の電磁波伝搬散乱解析が行われており,フラクタル構造は周期構造に比べ透過・共振特性がマルチバンドになり,Q値も大きくなることが理論的に明らかにされている.しかしながら,3次元構造は製作や測定が困難になる問題があった.そこで我々は,製作が比較的容易な一次元のフラクタルであるカントール構造に着目し,分割幅を変えることによる最小透過係数・最大共振係数やQ値の制御方法を提案している.本論文では,分割幅可変カントール構造を石膏ボードを用いた多層板構造により実現し,GHz帯マイクロ波実験で透過特性を測定しFDTD法による理論計算と比較することで,カントール構造の分割幅を可変することにより最小透過係数や最大共振係数及びQ値を制御できることを明らかにする.
著者
大倉 鉄郎 大倉 俊介 松岡 俊匡 谷口 研二
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.95, no.10, pp.235-239, 2012-10-01
参考文献数
4

マージド・キャパシタ・スイッチング法を用いたパイプラインA-DコンバータについてMDACセグメント内のキャパシタミスマッチに関する解析を行った.MDAC回路に用いるキャパシタのセグメント内差動ミスマッチによってDNLが悪化し,また差動間グラウンド電圧にコード欠け発生確率が依存することを明らかにした.A pipelined ADC with merged capacitor switching technique is analyzed taking account of differential capacitor mismatch in a segment of MDAC. Our analysis revealed that the differential non-linearity (DNL) degrades as the differential capacitor mismatch increases. It is also revealed that the probability of missing code is reduced by setting the common reference voltage to the center of refference voltages.
著者
清水 新策 松岡 俊匡 谷口 研二
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.86, no.8, pp.878-885, 2003-08-01
参考文献数
5
被引用文献数
1

VLSI システムにおけるパラレルバスに Code-Division Multiple Access (CDMA) 技術を用い,低消費電力の Parallel-CDMA (P-CDMA) インタフェースを提案した.P-CDMA はデータを複数の信号線に拡散させるため,局所的なノイズに強い.また論理"H","L",そして"M"の 3 値で伝送するため高速転送が可能であり,パワー遅延積は従来の小振幅及びフルスイングインタフェースに比べてそれぞれ 22%,70% 削減できた.また 0.35 μm CMOS ルールで 15 bit 3.9Gbit/s の Parallel-CDMA インタフェースを設計し,回路シミュレーションにより正常動作を確認した.
著者
池田 博明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J96-C, no.11, pp.311-318, 2013-11-01

平成20年度から平成24年度に至る5年間,ASETに於いてNEDO委託事業「立体構造新機能集積回路(ドリームチップ)技術開発」が実施された.このプロジェクトは,半導体製品の更なる性能向上を図るため,TSVを活用した三次元集積化技術の開発により配線遅延,消費電力問題・高性能化の限界に対する有望な解決策を提供するとともに,新たな多機能デバイスの実用化を促進し,電子・情報技術の競争力を強化することを狙った.また異機能をもつチップの積層技術など,これまでにない立体構造新機能集積回路を実現することを目的としている.今回機会を頂いて,ASETにおける三次元積層技術開発の成果を報告する.本論文で紹介するテーマ別の成果を示す図表は,2013年3月8日に行われたASET最終成果報告会で各ワーキンググループの主査によって発表され,ASETホームページに掲載された資料から引用している(http://www.aset.or.jp/kenkyu/kenkyu_sanjigen_index.html).
著者
園田 潤 昆 太一 佐藤 源之 阿部 幸雄
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.8, pp.302-309, 2017-08-01

現在,トンネルや道路などインフラの劣化が社会問題化しており,異常箇所を効果的に早期発見することが必要とされている.このような社会インフラの検査センシングには地中レーダが有効である.しかしながら,例えば,鉄筋コンクリート下の空洞検出のような電磁波が多重散乱しレーダ画像が複雑になるような場合では,信号処理をしても空洞の判定が困難で熟練技術者による判読が必要になる問題があり,得られたレーダ画像の検証や検出可能な物体サイズなどの理論的検討が必要であった.そこで本研究では,地中レーダを用いた鉄筋コンクリート下の空洞を客観的・定量的に検証するために,GPUを用いたFDTD法による高速地中レーダシミュレーションにより空洞検出特性を明らかにする.
著者
金 成主 成瀬 誠 青野 真士
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J100-C, no.6, pp.261-268, 2017-06-01

我々は先行研究において,意思決定問題を物理的に解く新しい計算原理である「綱引き原理」を提案した.本研究では,無線通信におけるチャネル割当ての全体最適解の計算を,「ユーザ内意思決定」と「ユーザ間相互作用」を表現する綱引き原理の導入により物理的に実現できることを示す.そこでは,複数のシリンダ内の二種類の流体のダイナミックスが利用される.この「全体最適意思決定装置」を使うことにより,膨大な計算コストが要求される評価値の計算を流体の物理プロセスに委ねることができ,高々ユーザ数に比例したコストを要する操作(シリンダ内の流体界面の上下運動)を繰り返すだけで,全体最適解を得ることができる.これは,自然現象の揺らぎ,保存則,アナログ性から,知的能力を引き出す新しい試みである.