著者
明石 諭 童 仁 錦織 直人 松山 武 今西 正巳 川口 正一郎
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.67, no.9, pp.2039-2042, 2006-09-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
13

症例は85歳,女性で, 2005年11月にS状結腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断で穿孔部縫縮術および腹腔ドレナージ術を施行した.ドレーンは左右横隔膜下,ダグラス窩に留置した.左横隔膜下に留置したドレーンより膿汁の排出があったため長期留置していたが,術後24日目に突然の胸痛と呼吸困難感が出現し,ドレーンより多量の排液を認めた.胸部レントゲンにて左気胸を認め,胸腔ドレナージを施行した.ドレーンの胸腔内への突出およびドレーン内排液の呼吸性移動から,気胸の原因は留置ドレーンによる横隔膜穿孔が疑われた.瘻孔造影および胸部CTにて造影剤は胸腔内に流入しているのを確認し,確定診断を得た. ドレーンによる臓器損傷は消化管が多く,横隔膜損傷による気胸の発症は非常に稀である.原因として炎症による組織の脆弱が考えられたが,ドレーン留置による合併症も念頭においてドレーン管理をすべきであると思われた.
著者
渡邊 貴洋 大端 考 佐藤 真輔 高木 正和 伊関 丈治 室 博之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.8, pp.2087-2092, 2012 (Released:2013-02-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1 4

症例は16歳,男性.平成18年頃から腹部膨満感を自覚しており,平成23年6月腹痛にて近医を受診し,腹部エコー検査で腹腔内腫瘤を認め当科へ紹介受診された.造影CT検査で腹腔内正中に最大径13cm大の造影効果のない多房性嚢胞性腫瘤を認め,一部低濃度成分と高濃度成分がfluid-fluid-levelを形成していた.また,腹部MRIではT1・T2強調像でともに低~高信号域が混在していた.以上から出血を反復した腸間膜リンパ管腫と診断し開腹手術を施行した.術中所見では,Treitz靱帯近傍の空腸間膜に10cm大の腫瘍を認め,近接した空腸の部分切除を伴う小腸間膜腫瘍切除術を施行した.術後病理組織学的に腸間膜リンパ管腫の診断を得た.小腸間膜リンパ管腫は比較的稀な疾患であり,自験例を含めた本邦報告30例について文献的検討を加え報告する.
著者
田邉 和孝 武田 啓志 徳家 敦夫 影山 詔一 尾崎 信弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.731-736, 2014 (Released:2014-09-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

症例は61歳の女性で,3日前に発症した腹痛の増悪にて統合失調症で入院中の精神科病院より受診した.血液検査でWBC数とCRPの上昇を認め,腹部造影CTで横行結腸の著明な拡張を認めたため横行結腸軸捻を疑い注腸造影で確診したが,内科的整復は穿孔の危険性が高いと判断し緊急手術を施行した.横行結腸はほぼ全長が壊死状態に陥っており,中等量の血性腹水も認めた.可及的に壊死腸管を切除し機能的端々吻合術で再建を行った結果,術後経過は良好で術後10日目に精神科病院へ転院となった.結腸軸捻は大腸の機械的な閉塞原因の約3%を占める疾患であるが,9割はS状結腸で発生するため横行結腸軸捻はまれである.自験例では複数の向精神薬を服用しており,慢性便秘であったことが発症要因と考えられた.結腸切除と一期的再建術で経過は良好であったが,病因を踏まえての治療法選択が重要な疾患であり若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
佐々木 寛文 内野 基 坂東 俊宏 松岡 宏樹 池内 浩基 冨田 尚裕
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.2902-2906, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
19
被引用文献数
2

症例は28歳,男性.18歳時下血で発症の潰瘍性大腸炎,再燃寛解型,全大腸炎型.ステロイド抵抗性,難治性のために,分割手術として大腸全摘,回腸嚢肛門吻合術,回腸人工肛門造設術を行った.初回手術後は良好に経過し,ステロイドを漸減していたが,術後第40病日に絞扼性イレウスを併発し,イレウス解除術を行った.術後第2病日より,正中創に急速に進行する壊疽性膿皮症,壊疽性筋膜炎を認め,ステロイド全身および局所投与を要し治療に難渋した.壊疽性膿皮症は腸管外合併症として知られ,大腸全摘により軽快することが多い.しかし自己免疫異常に関連し,術後にも出現することがある.診断,治療に難渋することがあり,文献的考察を加え報告する.
著者
白井 順也 井元 清隆 内田 敬二 南 智行 安田 章沢 益田 宗孝
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.12, pp.3086-3090, 2012 (Released:2013-06-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

症例は81歳,男性.弓部大動脈瘤の手術予定であったが急性心不全で入院となった.経過中に連続性雑音を聴取するようになり,胸部造影CT検査にて弓部大動脈瘤の左肺動脈穿破と診断され当院転院となった.転院3日後に弓部置換および穿孔部閉鎖術,CABGを施行したが,人工心肺開始時,大動脈肺動脈瘻により循環の維持が困難であった.術後PCPSによる循環補助を要したが2日目に離脱し49日目に退院した.弓部大動脈瘤に伴う大動脈肺動脈瘻は稀な疾患であるが,破裂死のみならずシャント血流過多により致命的な右心不全をもきたし,救命のためには早期の手術が必要である.
著者
峠 弘治 渡邊 直純 臼井 賢司 榎本 剛彦 濱 勇 林 達彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.1604-1608, 2015 (Released:2016-01-30)
参考文献数
23

症例は42歳,男性.腹痛を主訴に当院救急外来を受診.CTにて限局性の小腸炎の診断で点滴目的に入院となった.診察時,陰嚢浮腫を認めた.弟や姪が非対称性の顔面や口唇の浮腫をきたした家族歴があり,しばしば腹痛を呈していたことから遺伝性血管浮腫を疑い,補体のC4およびC1インヒビター(C1-INH)を検査した.C4,C1インアクチベーターはいずれも低下しており,遺伝性血管浮腫と診断した.遺伝性血管浮腫はC1-INHの量的欠損または機能的な減弱によって起きる遺伝性疾患である.精神的・肉体的ストレスを誘因として顔面や咽頭,腸管浮腫をきたす.稀な疾患ではあるが,急性腹症を呈する疾患として鑑別に挙げるべきである.今回,われわれは当院において遺伝性血管浮腫の1症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
矢野 正雄 後藤 哲宏 北村 陽平 西尾 乾司 三浦 康誠 松井 聡
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.636-639, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
7

肝障害は薬物治療に際して普遍的に認められる副作用の一つである.従来,脂肪肝は良性可逆性肝疾患の病態とみなされ,有害な疾病としての認識に乏しかった.非アルコール性脂肪肝変性(NAFLD)もその一つであり,今回われわれはタモキシフェン(TAM)におけるNAFLDの発現頻度をレトロスペクティブに検討した.結果29.1%と高率にNAFLDが発現していた.そのうちの68%は可逆性であったが,TAMによるNAFLD発症頻度は高く,改善しない症例もあり,医療者はそのことに関して注意しなければならない.
著者
首藤 潔彦 山崎 将人 幸田 圭史 河野 世章 阿久津 泰典 松原 久裕
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.3028-3033, 2013 (Released:2014-05-30)
参考文献数
17
被引用文献数
1 2

症例1は74歳,男性.食道癌Mt,cT1bN0M0,Stage Iの診断で,開胸食道亜全摘・後縦隔胃管再建・高位胸腔内吻合術を施行.術後右肺尖部から大網内に大きく広がる膿瘍腔が認められ縫合不全と診断された.症例2は54歳,男性.食道癌食道癌LtAe,cT3N1M0,Stage IIIの診断で,術前FP化学療法のち胸腔鏡補助下食道亜全摘・後縦隔胃管再建・高位胸腔内吻合術を施行.術後左房背側の大動脈周囲に大きく広がる膿瘍腔が認められ縫合不全と診断された.両症例に対し経鼻経食道的縦隔ドレナージ(NEED)を施行した.胃管減圧を併用しつつ経腸栄養管理に移行することで膿瘍腔は縮小し経口摂取可能で退院となった.経腸栄養を併施したNEED治療によりmajor leakageを発症した場合でも低侵襲的に完全治癒可能であることが示され本治療法は有用な選択肢と考えられた.
著者
小野澤 寿志 持木 彫人 福地 稔 熊谷 洋一 石橋 敬一郎 石田 秀行
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.10, pp.2433-2437, 2015 (Released:2016-04-29)
参考文献数
14

症例は66歳,男性.胃癌U,Post,cType2,cT2,N0,H0,P0,M0,cStage IBの診断にて,腹腔鏡下胃全摘術,D2(-10)郭清術,Roux-en-Y再建術を施行.術後,第3病日より39度台の発熱を認め,第7病日に施行した上部消化管造影検査で,吻合部から腹腔内への造影剤流出を認め,縫合不全の診断となった.第8病日,透視下内視鏡下に経鼻胃管による経鼻経食道的腹腔ドレナージを開始.第22病日(ドレナージ開始後12日目)に膿瘍腔の消失を認めたため,胃管抜去しドレナージ終了した.その後は症状再燃なく,第38病日に退院した.胃癌術後の縫合不全により生じる腹腔内膿瘍に対し,経腹的アプローチが困難な症例でも,本治療法は低侵襲的に治癒可能であり,有用と考えられる.
著者
石田 直子 石榑 清 加藤 公一 林 直美 平井 敦 福山 隆一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.2588-2591, 2010 (Released:2011-04-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1 2

症例は68歳,男性.嘔吐,腹部膨満感を主訴に受診.画像検査で著明な胃拡張を認めた.経鼻胃管で減圧をはかったが,まもなく急激な腹痛を訴え腹膜刺激症状が出現した.再度の画像検査で多量の腹腔内遊離ガス像と腹水が認められ,上部消化管穿孔の診断の下緊急手術を施行した.胃体部に裂創を認め,腹腔内は食物残渣で広範に汚染されていた.裂創部を含む胃部分切除と腹腔洗浄ドレナージを行った.術後ショック状態に陥り集中治療を要した.胃の過膨張に伴い破裂が生じた本症例は,発症直後から腹腔内が広範に汚染され重篤な汎発性腹膜炎に陥ったが早期手術施行により救命することができた.
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.81, no.Supplement, pp.S573-S611, 2021 (Released:2021-05-31)
著者
原田 篤 黒部 仁 大塚 正彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.66-69, 2016 (Released:2016-07-29)
参考文献数
18

症例は2歳6カ月,女児.数回の嘔吐,間欠的腹痛を主訴に来院した.腹部単純X線にて2個の連なる異物と小腸の拡張を認めた.異物誤飲を疑い,両親に詳細な問診を行ったところ,日常的に使っている磁器治療器(ピップエレキバン®)を誤飲した可能性が考えられた.異物が腸閉塞の原因となっていると判断し,緊急開腹手術を施行した.開腹すると2個のピップエレキバン®が結合しバンドを形成,同部位に小腸が嵌まり込む形で絞扼性イレウスをきたしていた.異物誤飲は乳幼児の開腹歴のないイレウスの鑑別疾患に挙げる必要があり,消化管穿孔の症状がなくても,絞扼性イレウスを呈することがあるため,緊急開腹手術をすべきと考えられた.
著者
赤本 伸太郎 石井 正之 間 浩之 富岡 寛行 奥本 龍夫 塩見 明生 絹笠 祐介 齊藤 修治 山口 茂樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.13-18, 2012 (Released:2012-07-25)
参考文献数
12

【目的】一時的回腸人工肛門に対して人工肛門閉鎖術を施行した患者における器械吻合と手縫い吻合との吻合方法により合併症発生率に違いがあるかを検討した.【対象と方法】2002年から2006年までに回腸人工肛門閉鎖が行われた129例を手縫い吻合(以下,手縫い群)57例,器械吻合(以下,器械群)72例に分け,手術時間,在院日数,創感染,イレウスに関して検討した.【結果】手術時間は両群に有意差を認めなかった(手縫い群:63.8±14.4分vs器械群:61.7±19.0分,p=0.225).器械群では有意に術後在院日数が減少した(手縫い群:10.0±6.1日vs器械群7.1±1.2日,p=0.00004).創感染は両群に有意差を認めなかった(p=1.000).イレウスは器械群で有意に減少した(手縫い群:14/57vs器械群:3/72,p=0.001).【結語】器械吻合によるストマ閉鎖術は術後イレウスを減少させると考えられた.
著者
佐伯 吉弘 先本 秀人 福田 三郎 有田 道典 江藤 高陽 高橋 信 西田 俊博
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.1047-1051, 2010 (Released:2010-10-25)
参考文献数
24

38歳,女性.2007年1月,右下腹部痛で当院を受診した.採血で炎症所見なく他に症状もないため,鎮痛剤を処方され帰宅したが,症状が改善せず2日後,再度当院を受診した.来院時,右下腹部痛は増強し,炎症反応もWBC 10,930/μl,CRP 5.9mg/dlと上昇しており,CTで虫垂を中心とした炎症所見を認めたため,卵巣嚢腫を伴う急性虫垂炎との術前診断で緊急手術を施行した.開腹時,虫垂に腫大を認めず右卵巣に隣接して長径60mm大の嚢腫を認めた.嚢腫は卵管と連続性があり,反時計回りに540度捻転しており卵管留水腫の茎捻転と診断した.卵管結紮術後の卵管留水腫茎捻転は術前診断が困難であり,多くは卵巣嚢腫茎捻転との術前診断がなされる.卵管結紮術後の成人女性の下腹部痛においては,卵管留水腫の茎捻転を鑑別診断の一つとして念頭に置くべきであると考えられた.
著者
森山 瑞紀 藤枝 裕倫 古田 美保 渡邊 真哉 會津 恵司 山口 竜三
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.410-414, 2021 (Released:2021-08-31)
参考文献数
18

症例は身長184cm,体重192kg,Body Mass Index(以下BMI)56.7kg/m2と高度肥満の42歳の男性である.4日前からの腹痛で前医を受診した.抗菌薬治療が行われたが,改善しなかったため当院受診となった.血液検査ではWBC 10,800/μl,CRP 20.35mg/dlと高度な炎症所見を認めた.腹部CTでは虫垂の腫大と膿瘍形成を疑う所見が見られた.急性虫垂炎による限局性腹膜炎と診断し,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.ランプ体位をとり,陰圧型体位固定具や固定支持器を使用して体を固定した.第1ポートは臍上10cmの左腹直筋経由にてオプティカル法で挿入した.気腹圧を15mmHgとし,ポートを追加することで視野確保を行った.炎症が波及した脂肪垂と虫垂との区別が困難であったため,術中迅速病理検査を行い,切除組織が虫垂であることを確認した.術後経過は良好で,術後10日目に軽快退院となった.今回,BMI 56.7kg/m2の高度肥満患者の急性虫垂炎に対して,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した1例を経験したため報告する.
著者
矢下 博輝 楠 由希奈 小野田 尚佳 野田 諭 田内 幸枝 三木 祐哉 大澤 政彦 大平 雅一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1239-1243, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
7

症例は28歳,女性.1年間の無月経を主訴に近医を受診,テストステロン高値のため当院内科に紹介.165cm,55.2kg.陰核は軽度肥大,Cushing症候群を示す身体所見はなかった.血液検査では遊離テストステロン,dehydroepiandrosterone sulfateの異常高値を認めた.腹部造影CT検査で9×9×7.5cmの球状で境界明瞭な左副腎腫瘤を確認,内部は不均一な低吸収域を示した.リンパ節腫大や肺,肝転移は認めなかった.テストステロン産生左副腎癌疑いと診断し,開腹手術を行った.腫瘍は境界明瞭,周囲浸潤はなく被膜血流は豊富であった.剥離は容易で,中心静脈を結紮切離し,腫瘍を摘出した.病理組織では,核腫大や多核を伴う異型細胞が索状に増殖し,Weiss分類8/9,副腎皮質癌と診断した.経過良好で術後7日目に退院.退院後は明らかな転移再発はなく経過観察中である.
著者
平原 典幸 西 健 仁尾 義則 樋上 哲哉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.2980-2984, 2003
被引用文献数
1

症例は79歳,男性.主訴は発声困難,呼吸困難. 14時頃バイクの運転中転倒し, 16時より嗄声が出現. 18時発声障害が出現し, 20時頸部腫脹,呼吸困難および発声困難な状態を発見され救急搬送される.来院時,努力様の浅呼吸であり発声障害を認めた.軽度貧血と炎症反応の上昇を認め,動脈血ガス分析はPaO<sub>2</sub> 79.6mmHg, PaCO<sub>2</sub> 36.2mmHgと低酸素状態であった.頸部側面X線にて喉頭,気管は前方に圧排され気道の狭窄を認め咽後間隙は開大していた.頸部CTにて下咽頭から食道の背部の咽後間隙に縦隔まで達する巨大血腫を認め,食道,気管は圧排されていた.来院後,気管挿管し気道を確保. 7病日のCTにて血腫の大きさに著変がないため気管切開施行. 18病日,気管チューブを交換した際,呼吸困難を認めず, 26病日気管チューブを抜去し退院となった.頭頸部外傷患者の診療にあたっては些細な機転でも本症を念頭においた診察が必要である.
著者
知念 徹 金城 達也 宮城 良浩 高槻 光寿
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.972-976, 2021

<p>53歳,女性.3年前から2カ月に一度,右下腹部の間欠的な疼痛を自覚したため近医産婦人科を受診.精査で卵巣腫瘍が疑われ,当院産婦人科へ紹介された.経膣超音波検査で子宮および両側付属器に明らかな病変を認めず,また腹部造影CTでは右骨盤内に小腸と接する造影効果を有する3.5cm大の類縁形腫瘤を認め,骨盤造影MRIではT1強調脂肪抑制像で内部不均一な高信号病変を認めた.PET-CTで同病変に異常集積を伴っていたため,小腸GIST疑いで当科へ紹介となった.腹腔鏡観察では腫瘤は類円形,表面平滑で可動性は良好であり,腫瘍径・腫瘍局在が画像診断と一致していたため,切除の方針とした.腫瘍周囲を剥離すると子宮円靱帯由来の腫瘍と判明し,腹腔鏡下に腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査では紡錘状の平滑筋細胞が錯綜する像を認め,腫瘍細胞はα-SMA陽性,Desmin陽性,DOG-1陰性であったため,子宮円靱帯平滑筋腫の診断であった.子宮円靱帯由来の平滑筋腫は稀であり,文献的考察を含め報告する.</p>