著者
小林 亮介 山本 宏 貝沼 修 趙 明浩 鍋谷 圭宏 伊丹 真紀子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.743-748, 2015

症例は33歳,男性.労作時のめまい・動悸を自覚し,近医受診しHb 7.3g/dlと貧血を指摘された.十二指腸水平部に2型腫瘍を認め,十二指腸癌の診断で,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織診断では,小円形細胞の増殖を認め,免疫染色では,MIC2,NSE陽性で,筋原性マーカーや上皮性マーカーは陰性であった.さらに,Ewing肉腫と同じ染色体転座も認め,末梢性未分化神経外胚葉性腫瘍peripheral primitive neuroectodermal tumor(pPNET)と診断した.術後は化学療法を行い,現在術後4年無再発生存中である.pPNETは四肢や胸壁などに発生する軟部腫瘍で,近年,Ewing肉腫と共通した染色体転座を有することが判明し,Ewing肉腫ファミリー腫瘍と総称される.腸管原発の発生は非常に稀であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者
小林 弘典 藤本 三喜夫 中井 志郎 宮本 勝也 横山 雄二郎 坂下 吉弘
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.2517-2521, 2013-09-25
参考文献数
16

症例は11歳の男児で,下腹部痛を主訴に受診した.腹部造影CTでSMV rotation signを認め,小腸は右側,結腸は左側に偏在しており,下腹部正中に腫大した虫垂を認めたため,腸回転異常症併存急性虫垂炎と診断し緊急手術を行った.全身麻酔下に臍切開単孔式手術を行い,マルチプルトロカール法にて5mmトロカールを2本穿刺した.腹腔内を観察しnonrotation typeの腸回転異常症であることおよびLadd靱帯やpedicleなどの異常膜状構造物がないことを確認した.虫垂の同定は容易であり,トロカール穿刺間の筋膜を小切開し虫垂を引き出し直視下に虫垂切除を行った.腸回転異常症併存急性虫垂炎に対して腹腔鏡手術を施行した症例の報告はまれであり,腸回転異常症併存急性虫垂炎に対する単孔式腹腔鏡補助下手術の有用性を若干の文献的考察を加え報告する.
著者
神谷 忠宏 寺崎 正起 岡本 好史 鈴村 潔 加藤 健宏 田島 将吾
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.2234-2238, 2013-08-25
参考文献数
19

症例は48歳,女性.血便を主訴に近医を受診し,下部消化管内視鏡検査でS状結腸に2型腫瘍を認めた.生検で高分化型腺癌と診断され,当院に紹介受診となった.腹部CT検査で,肝S4に径3cmの腫瘤を認め,同時性肝転移と診断した.手術はS状結腸切除術および肝左葉切除術を施行した.病理組織学的所見でS状結腸癌の浸潤部にinvasive micropapillary carcinoma(IMPC)成分を認めた.IMPCはSiraunkgulらが1993年に提唱した浸潤性乳癌の新しい組織型であり,近年,他臓器での報告も認められるようになってきた.IMPC成分を有する大腸癌の報告は比較的稀であり,文献的考察を加え報告する.
著者
谷島 義章 尾頭 厚 奈良原 裕 下石 光一郎 村田 升
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.74, no.10, pp.2733-2736, 2013

症例は87歳,女性.意識障害を主訴に救急要請し当院へ救急搬送.来院時,意識レベルE1 V1 M1 GCS3点,収縮期血圧80mmHg,脈拍50回/分,洞調律,体温35.2度,呼吸回数>30回.胸腹部造影CTで,30mm大の腹部大動脈瘤と60mm大の左総腸骨動脈瘤を認めたが,明らかな破裂を疑わせる所見は認められなかった.造影剤の総腸骨静脈への流入を認め,左総腸骨動脈瘤が左総腸骨静脈に穿破した腸骨動静脈瘻と診断.腸骨動静脈瘻による急性心不全と診断し,緊急手術を施行.瘤空置と右外腸骨動脈から左外腸骨動脈へバイパスグラフトを置く下肢動脈血行再建術により良好な術後経過を得た.腹部大動脈瘤や腸骨動脈瘤の破裂では腹腔や後腹膜腔への破裂がほとんどだが,隣接する静脈に穿破する症例もまれに認められ,こうした症例には瘤内からの瘻孔閉鎖例の報告が多いが,症例によっては瘤空置+下肢動脈血行再建術も有効と考えられる.
著者
植竹 正彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.1229-1239, 1998

われわれは,肛門機能検査をa)痔核根治術施行群: 40例(Whitehead法31例, Milligan-Morgan法9例), b) 保存的療法施行群: 43例, c)対照群: 40例に, Whitehead法術後愁訴の検討を69例に実施した.その結果, (1)肛門管最大静止圧(以下MRP)は特に重度の痔核で高値を示した.一方,高齢者では重度の痔核で他群に対して有意に低値を示した. (2)最大随意収縮圧は各群間に有意の差を認めなかった. (3) Whitehead法術後にMRPは当初低下を示したが,その後対照群の値に帰した.肛門管長の短縮は認められなかった. (4) Whitehead法術後の愁訴,術後障害は何れも重度のものは認められなかった.以上より, (1)内肛門括約筋の過緊張(MRPの高値)が内痔核の成因になる事が示唆され,また内肛門括約筋の加齢による脆弱化も一因となる事も考えられた. (2) Whitehead法は術式を十分に理解すれば合併症も少なく,痔静脈を全切除するため重度痔核に対して有用な術式と考えられた.
著者
植田 吉宣 進藤 廣成 安達 登 山根 貴夫 齋藤 元伸 亀岡 信悟
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.2724-2728, 2015 (Released:2016-05-31)
参考文献数
23

症例は13歳,女児.急性の心窩部痛・吐血から意識障害をきたし,ショックの状態で当院へ救急搬送された.腹部CTでは大量の腹水およびfree airを認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断し救命処置を行ったが救命できなかった.剖検したところ,胃底部前壁に約1.5×1.3cmおよび1.3×1.0cmと2箇所の破裂部位を認めた.破裂原因は不明であり,特発性胃破裂による汎発性腹膜炎およびショックによる死亡と診断した.本症例は胃底部の特発性胃破裂と考えられる病態による急激な転帰で死亡に至った例であり,非常に稀な症例と思われるため若干の文献的考察を踏まえ報告する.
著者
星野 伸晃 長谷川 洋 坂本 英至 小松 俊一郎 久留宮 康浩 法水 信治 高山 祐一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.1951-1958, 2010 (Released:2011-02-25)
参考文献数
29
被引用文献数
1

目的:Multidetector-row CT(MDCT)を用いた虫垂炎診断において,単純・造影の診断能を比較しそれらの位置づけを検討した.方法:2008年3月から同年9月の間に当院を受診した全ての虫垂炎疑いの患者104例に単純・造影MDCTを施行し,Multi-planner reformation(MPR)画像を作成した.そのうち蜂窩織炎性,壊疽性または穿孔性虫垂炎と診断された75例の画像をretrospectiveに検討し,虫垂および虫垂壁の描出能,および虫垂周囲脂肪織濃度の上昇,腹水,小腸うっ滞の診断能を単純と造影で比較した.次に造影MDCTをルーチンに行った群(期間A)と最初に単純のみを施行し選択的に造影した群(期間B)でprospectiveに診断精度を比較した.結果:経静脈造影が有意に優れていたのは虫垂壁の描出能だけであり,その他の所見については読影方法により差を認めなかった.期間Aと期間Bで診断精度はほぼ同等であった.結語:MDCTの虫垂炎診断において,単純CTを評価した後に選択的に造影を行う方針が妥当であることが示唆された.
著者
武田 昂樹 中川 朋 山田 晃正 小西 健 奥山 正樹 西嶌 準一
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.1314-1319, 2015 (Released:2015-12-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1 3

症例は40歳台,男性.201X年2月,1週間来の腹痛と嘔吐の増悪を主訴に当院を受診.来院時,腹部全体の圧痛・反跳痛を認めた.腹部X線画像で上行結腸周囲に多数の点状石灰化像を認めた.小腸niveau像を認めたが,free airは認めなかった.腹部造影CT検査では,右結腸静脈の石灰化に加え,上行結腸の腸管壁の造影不良と壁肥厚を認めたため,腸管壊死と診断して,緊急開腹手術を行った.開腹時所見では,上行結腸から横行結腸の中央部に腸管壊死を認め,結腸部分切除を行った.病理検査では,粘膜面の潰瘍形成,静脈血管壁の石灰化と上行結腸粘膜下層の広範な線維化領域を認め,特発性腸間膜静脈硬化症による虚血性大腸炎と診断した.術後経過は良好で,術後16病日に退院となった.本症例は10年以上の漢方薬(梔子柏皮湯®)の服用歴があり,病因との関連性が示唆された.現在,漢方薬内服を中止して経過観察中である.
著者
大河内 治 丹羽 由紀子 小林 大介 坪井 賢治 加藤 伸幸 本田 一郎
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.687-691, 2007-03-25 (Released:2008-08-08)
参考文献数
20

症例は24歳, 女性. 17歳時に両側卵巣成熟奇形腫にて腫瘍摘出術を施行された. 手術時に腫瘍に被膜破綻を認めた. 今回, 右背部痛を認め腹部CT検査で肝腫瘍を指摘され入院となった. 施行された腫瘍マーカーは全て正常値であった. 腹部造影CTおよび腹部MR画像上, 右横隔膜下および肝下面に脂肪成分および石灰化を伴う嚢胞状腫瘍を認めた. 血管造影検査では圧排所見のみであった. 卵巣奇形腫の腹膜播種性転移を疑い開腹術を施行した. 手術所見では腫瘍は肝に付着して圧排性に発育しており腫瘍摘出術を施行した. 病理組織学的に成熟奇形腫と診断された. 成熟奇形腫の播種巣が三胚葉成分全てから構成されることは稀であるうえ, その組織型が成熟型を呈するという極めて興味ある症例を経験した.
著者
佐野 武
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.10, pp.1771-1778, 2019 (Released:2020-04-30)
参考文献数
10

胃癌手術は1881年Billrothによる幽門側胃切除術の成功例に始まり,その弟子のMikuliczによるリンパ節郭清の体系化を受けて,切除・郭清範囲が拡大した.我が国では胃癌研究会による全国胃癌登録の膨大なデータ解析を経てD2郭清手技が確立し,更なる拡大郭清へと進んだが,欧米では乳癌に対するランダム化比較試験(RCT)の結果に基づく腫瘍学的思考が胃癌治療にも及び,リンパ節郭清の役割は治療よりむしろステージ診断であるとの考えが浸透した.1980年代以降,胃癌手術のRCTが欧州と日本で展開され,「経験を積んだ外科医による膵脾合併切除を伴わないD2リンパ節郭清(それ以上でも以下でもない)」が,早期癌を除く胃癌に対して推奨される術式となっている.2000年代に入ってからは化学療法の発展に伴い補助療法のエビデンスが次々と生まれ,外科医は集学的治療における手術の役割を認識しつつ過不足のない胃切除術を安全に行うことが求められるようになっている.
著者
牧野 俊一郎 村田 幸平 岡村 修 中込 奈美 吉田 哲也 玉井 正光
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.2711-2715, 2014 (Released:2015-04-30)
参考文献数
11
被引用文献数
4

乳癌の大腸への転移は非常に珍しいとされている.今回われわれは,乳癌術後19年目に大腸転移を認め切除を行った1例を経験したので報告する.症例は71歳女性.19年前,乳癌に対して他院にて乳房切除術施行.再発なくフォローされていたが,便潜血陽性となり,下部消化管内視鏡検査を施行したところ横行結腸に2型病変を指摘された.生検にてGroup5,tub2の診断となり,原発性大腸癌として当院紹介となり,腹腔鏡下横行結腸切除術を施行した.切除標本の病理組織学的検査所見から乳癌からの大腸転移と判明した.術後8カ月で肝単発再発し,化学療法を行っている.乳癌の既往のある患者では,術後長期間経過していても,転移や再発の可能性があることを念頭に置く必要がある.
著者
榊原 宣
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.955-961, 2009 (Released:2009-10-05)
被引用文献数
1
著者
林 泰寛 谷 卓 清水 康一 高村 博之 萱原 正都 太田 哲生
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.1508-1511, 2009 (Released:2009-11-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

症例は77歳,女性.高血圧にて内服加療中であった.約半年前,近医胸部CTにて右横隔膜下に直径11cm大の嚢胞性病変を指摘されるも肝嚢胞として放置されていた.今回,右側腹部から背部痛を主訴に前医を受診したところ,嚢胞性病変の増大を指摘され当科紹介となった.当院CTにて右副腎原発の嚢胞性腫瘍が強く疑われ,尿中カテコールアミン,Vanillylmandelic acid(VMA)の上昇と,131I-MIBGシンチグラフィーにて腫瘍部への集積を認めたことから褐色細胞腫と診断し,右副腎切除術を施行した.嚢胞内容は陳旧性の出血,凝血塊であった.病理組織学的には偽嚢胞を伴う褐色細胞腫であった.嚢胞性変化を伴う褐色細胞腫の報告例は本邦では自験例も含めて50例に満たず稀であり,特に右副腎原発の場合,肝由来の嚢胞性疾患との鑑別が重要であると考えられた.
著者
水田 誠 上田 毅 木島 寿久 和又 利也 菅沢 章
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.677-680, 2009 (Released:2009-09-05)
参考文献数
11

症例は65歳,女性.2005年5月に直腸癌にて低位前方切除術を受けたが,経過観察中に両側の肺転移が出現し,2006年8月17日に胸腔鏡補助下に左肺部分切除を受けた.その際左乳頭部の色素沈着を指摘され,術後捺印細胞診を行い悪性黒色腫が疑われた.2006年9月6日に左胸筋温存乳房切除術と腋窩郭清を施行した.病理組織診断はHMB-45が陽性で悪性黒色腫と診断された.腋窩リンパ節には転移は認められなかった.術後は直腸癌の再発予防のためUFT/LV内服が行われ,手術から約2年経過した現在いずれも転移再発を認めていない.乳頭部の悪性黒色腫は極めて稀で,文献的には本邦では過去に3例の報告があるのみである.
著者
荒井 智大 藤尾 淳 島岡 理 望月 泉 宮田 剛 臼田 昌広 井上 宰 村上 和重 手島 仁 中村 崇宣 中川 智彦 中西 渉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.12-18, 2018
被引用文献数
1

急性虫垂炎の発症については季節性変化を報告した論文がみられ,特に高気圧時の化膿性疾患の増加を指摘した報告もある.2012年1月1日から2014年12月31日までの3年間に,当院で手術を施行した急性虫垂炎450例について,診療録をもとに後方視的に発症時期を調べその季節性変動を検討した.対象の平均年齢は38.3歳で,男女比は1.5:1であった.手術症例は7-9月が11-12月に比べ有意に多かった(p<0.05).気候要因としては,気温が高いほど発症が多い傾向があるが,気圧には先行研究で示されたような化膿性疾患の増加との関連性は認められなかった.急性虫垂炎の病因は複合的であり更なる検証が必要だが,この季節性変動の情報が急性虫垂炎の発症機序解明に僅かながらも寄与する可能性があると考えられた.
著者
升田 貴仁 椎名 愛優 三階 貴史 長嶋 健 藤本 浩司 髙田 護 池田 純一郎 大塚 将之
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.1060-1066, 2019 (Released:2019-12-30)
参考文献数
30

若年者の乳腺葉状腫瘍はまれであり,線維腺腫,特に若年性線維腺腫との鑑別は困難である.これまでは線維腺腫であれば腫瘤摘出術,葉状腫瘍であればマージンをつけた切除が必要とされてきたが,近年,葉状腫瘍に対する手術においても断端陰性であればマージンは不要であるという報告が増加している.症例は11歳,女児.左乳房に7cm大の腫瘤を自覚し受診.画像検査および針生検では若年性線維腺腫もしくは良性葉状腫瘍が疑われ,腫瘤摘出術を施行した.病理結果は良性葉状腫瘍で断端は陰性であった.自験例では良性葉状腫瘍であったことと,腫瘤摘出術によって断端陰性が得られたことより,追加切除は施行せず,術後6年6カ月無再発で経過している.若年者の葉状腫瘍に対する治療において,根治性とともに整容性や機能温存へ十分配慮した上での方針決定が望まれる.
著者
谷脇 聡 榊原 堅式 山下 年成 横山 智輝 寺下 幸夫 伊藤 寛
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.9, pp.2189-2193, 2005
被引用文献数
2

腸回転異常や器質的な異常を伴わない小児の原発性小腸軸捻転症(以下,本症)は稀であり,術前診断は困難である.今回,われわれは新生児の本症3例を経験した. 3例とも男児で,日齢2以内に発症し,出生体重は1,500から2,286grと全例,低出生体重児であった.症状は全例腹部膨満を認め, 2例で,各々,コーヒー残渣様嘔吐と呼吸障害を伴った.注腸造影で大腸の位置異常は認めなかった.開腹手術時,症例1,2では遠位回腸が時計方向に360&deg;.捻転していたが,整復により腸管の色調が回復し腸切除を行わなかった.症例3では近位空腸が, 720&deg;.反時計方向に絞扼し,一部腸管壊死が認められ,腸切除を行っている. 3例とも,術前に確定診断はできなかったが,著明な小腸拡張を伴い,保存的治療では解除困難なイレウスであることから,早期に開腹手術を行い救命している.
著者
久保田 竜生 川田 康誠 外山 栄一郎 大原 千年
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.75, no.12, pp.3305-3308, 2014

症例は97歳,女性.便秘,下腹部痛などを主訴に紹介受診.腹部CT検査において,横行結腸に広範な腸重積を認め当院消化器科に入院となった.イレウスの所見はないが,先進部の造影効果は微弱であり,腸管虚血を疑われた.空気整復では解除困難であったため外科紹介となり手術を行った.回腸終末~盲腸は上行結腸内に陥入しており,横行結腸正中まで拡張していた.整復は困難であり,右半結腸切除術を行った.切除標本では,盲腸に壁の肥厚を認め脂肪腫などの存在を疑ったが,病理組織学的所見では,盲腸の肥厚像は粘膜下の浮腫と血管の拡張,線維芽細胞の増生像を認め,持続する循環不全による変化のためと考えられた.これより特発性腸重積症と診断した.術後経過は良好であった.成人に発症する特発性腸重積は稀な疾患であり,今回われわれは,97歳と超高齢者に発症した腸重積を経験した.若干の文献的考察を加え報告する.
著者
川崎 健太郎 大澤 正人 大野 伯和 小林 巌 藤野 泰宏 中村 毅
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 = The journal of the Japan Surgical Association (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.2557-2560, 2008-10-25
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は50代男性.食道癌で右開胸胸部食道全摘,胃管による後縦隔経路再建を施行した.手術時Treitz靱帯より20cmの空腸に経腸栄養チューブを20cm挿入し,Stamm法で腸管に固定,刺入部を腹壁に固定した.術後経過良好であったが術後14日目に左下腹部痛が出現したので16日目にチューブを抜去した.その後も腹痛が持続,22日目に腹部CTを撮影し小腸の腸重積を指摘された.経過観察としたが27日目のCTでも腸重積が認められたため手術となった.開腹すると小腸を腹壁に固定していた部分より肛門側20cmの空腸に約10cmの順行性3筒性の腸重積を認めた.癒着で解除困難であったため小腸切除を行った.腸重積発生部は経腸栄養チューブが位置していた部分であり経腸栄養チューブが誘因になったと考えられた.経腸栄養チューブによる腸重積は非常に稀な合併症であるが,注意を要すると思われた.