著者
片桐 恭弘 石崎 雅人 伝 康晴 高梨 克也 榎本 美香 岡田 将吾
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.97-109, 2015-03-01 (Released:2015-09-15)
参考文献数
20
被引用文献数
3

Conversational interactions contribute not only to the sharing of information and establishment of consensus but also to the construction and sustenance of mutual trustamong conversational participants in our daily lives. The interrelationship betweentrust and conversational interactions has not been studied extensively in cognitive sci-ence. One reason for this lack of research is the fact that a study of social emotions suchas trust requires real fields, since social emotions in their natural, non-artificial formsare not readily observable in laboratory settings. We introduce a notion of concernalignment to describe the surface conversational processes toward mutual trust forma-tion. Focusing on medical communications as our research field, we collected healthguidance conversations between nurses and patients who were diagnosed as havingmetabolic syndrome, and we provide a qualitative analysis of the structure of conver-sations in terms of a set of dialogue acts we propose for the description of concernalignment processes. We demonstrate that the idea of concern alignment enables us tocapture and elucidate both the local and the global structures of mutual trust formationin conversational consensus-building processes. We also discuss underlying mechanismsconnecting concern alignment and mutual trust.
著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15
被引用文献数
5 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする<オープンコミュニケーション>構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才帥の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.
著者
飯田 仁 岡本 雅史 大庭 真人 石本 祐一 阪田 真己子 細馬 宏通 榎本 美香
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

計2回の漫才収録を通じ,漫才師および観客のデータを収集した.ツッコミ役が聞き手は,ツッコミ・同意のどちらを行うのかにより,ボケ役への顔を向ける潜時に違いがあることが分かった.また,モーションキャプチャによりツッコミを行う際に顔の向きとともに,近づくということが確認された.最後に,「身体ノリ」は観客の有無にかかわらず行われる一方で,観客のいる方が発生しやすく,また,同じネタでも観客の有無によってその表現は異なることがわかった.
著者
榎本 美香 伝 康晴
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会 98回 (2023/9) (ISSN:09185682)
巻号頁・発行日
pp.43-48, 2023-08-25 (Released:2023-08-25)

我々は、野沢温泉で行われている道祖神祭り(1月)、湯澤神社例祭(9月)の準備作業を、11年間に渡って調査し続けてきた。年々、過疎化や少子化により祭りの執行者の人数が減る傾向にあり、それに伴い作業の簡略化や業者への委託など、慣習的な祭りの執行形式が変遷してきている。従来は、長時間に及ぶ力作業を要する非常につらい作業を共に行うことで、大きな達成感が得られ、執行者たちの間に強い結束感が生じていた。仲間と過ごすそれらの時間が徐々に失われつつあることが、この祭りを通した執行者たちの地域コミュニティの絆へどのように影響するのかについて考察する。
著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする〈オープンコミュニケーション〉構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才師の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.
著者
榎本 美香 寺岡 丈博 坊農 真弓 傳 康晴 細馬 宏通 高梨 克也 高梨 克也
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

祭りの支度を通じて以下に示す共同体固有の〈心体知〉を後継者世代が仲間内や現役世代と多対多の相互作用から集団学習するメカニズムを解明した。 (1) 心: 成員たちがもつ価値観や見識、信頼感といったエートス (e.g. 他者への気配り, 自己犠牲の精神) (2) 体: 成員間で力や身体位置の配分が必要な協働活動技法 (e.g. 唄のリズムと木や縄の操作との同調) (3) 知: 祭具の名称や用法、祭りのしきたりといった共有知識 (e.g. 社各部位の木材や縄結びの呼称)共同体〈心体知〉を学習する成員たち自身のやり方を相互行為分析から炙り出し、その学習のメカニズムを解明した。
著者
片桐 恭弘 石崎 雅人 伝 康晴 高梨 克也 榎本 美香 岡田 将吾
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.97-109, 2015

Conversational interactions contribute not only to the sharing of information and <br>establishment of consensus but also to the construction and sustenance of mutual trust<br>among conversational participants in our daily lives. The interrelationship between<br>trust and conversational interactions has not been studied extensively in cognitive sci-<br>ence. One reason for this lack of research is the fact that a study of social emotions such<br>as trust requires real fields, since social emotions in their natural, non-artificial forms<br>are not readily observable in laboratory settings. We introduce a notion of concern<br>alignment to describe the surface conversational processes toward mutual trust forma-<br>tion. Focusing on medical communications as our research field, we collected health<br>guidance conversations between nurses and patients who were diagnosed as having<br>metabolic syndrome, and we provide a qualitative analysis of the structure of conver-<br>sations in terms of a set of dialogue acts we propose for the description of concern<br>alignment processes. We demonstrate that the idea of concern alignment enables us to<br>capture and elucidate both the local and the global structures of mutual trust formation<br>in conversational consensus-building processes. We also discuss underlying mechanisms<br>connecting concern alignment and mutual trust.
著者
土肥 健太 寺岡 丈博 榎本 美香 Dohi Kenta Teraoka Takehiro Enomoto Mika
雑誌
SIG-SLUD = SIG-SLUD
巻号頁・発行日
vol.B4, no.03, pp.41-46, 2015-03-05

To reveal methods of making effective pauses and communicating as a character in a comedy skit, we have analyzed strategies for creating a histrionic, i.e., exaggerated and overly theatrical, comic performance that is often observed in comedy skits. We compared a manzai performance, which is considered to be a realistic comedy skit, with a comedy skit that had a histrionic performance by the comedy duo ``Sandwich Man'' doing the same material, in order to investigate the differences in the inter-utterance structure and posture-configuration structure of the two comedy styles. The results for the inter-utterance structure indicated that there were differences in the pauses between utterances, but there were no differences in the speech rates (sec/mora) between the comedy styles. Additionally, we found that in the posture-configuration structure, one of the performers turned his face toward his partner's face for a longer time in the histrionic comedy skit than that in the manzai skit. Also, in the histrionic comedy skit, the sum of the performers' shoulder-widths was shorter as seen by the audience than that in the manzai performance. Therefore, we concluded that utterance pauses and the performers' shoulder-widths are important factors in creating a histrionic comic show.
著者
榎本 美香 石崎 雅人 小磯 花絵 伝 康晴 水上 悦雄 矢野 博之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HCS, ヒューマンコミュニケーション基礎 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.445, pp.45-50, 2004-11-11
参考文献数
10
被引用文献数
1

本稿では,会話相互行為の実証的な分析にふさわしい単位について考察するために,これまでに提案されているいくつかの単位間の比較を行う.比較する分析単位として間休止単位・韻律単位・節単位・スラッシュ単位・ターン構成単位を取り上げる.まず,各単位の判定基準に基づき,共通データ(3人会話)の単位区切りを行う.次に,ターン構成単位を軸としてその他の単位との境界の一致傾向を調べる.また,数量化II類を用いてターン構成単位の境界の有無をその他の単位から予測するモデルを構成し,ターン構成単位へのそれぞれの単位の影響について検討する.分析の結果,ターン構成単位との一致が強いのは節単位・スラッシュ単位であり,予測モデルに大きな影響を与えるのは節単位と一部の韻律単位であることを示す.
著者
榎本 美香 中野 有紀子
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.540-556, 2008-08-15
被引用文献数
1

本研究では,エージェントを相手にした時のインタラクション方略に人相手のときとの異同があることを示し,人間の行動モデルをベースにヒューマンエージェントを実装するとき,考慮すべき人間のインタラクション方略のあることを提案する.ここでは,パソコン操作課題における人と人,人とエージェントの対話を素材として,どのように言語・非言語行為がインタラクションの中で配置されるのかを分析することで,エージェントに対したときに選択される方略を明らかにする.まず,人対人と人対エージェント対話の基礎的特徴を観察し,人対エージェントの対話では人の発話量が少なく,相づちや応答が稀にしか差し挟まれないことを示す.次に,非言語行為を含めた人対人の行為の配置規則を定式化し,人対エージェントのインタラクションにおいてこの規則がどのように破られるかを示す.そして,この違反が,相づちや応答の変わりに,相手発話への理解を示すためになされた補償的行為であることを明らかにする.
著者
榎本 美香
雑誌
情報処理学会研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.64(1999-SLP-027), pp.17-24, 1999-07-23

2人以上の対話において、1人の話し手が話し終わる前に次の話し手が話し出す、ということはよく起こる。しかし、従来のターンテイキング理論では、現在の話し手が話し終わってがら次の話し手が話すという枠組みしか設けられておらず、これでは現実に生じている現象を説明しきれない。そこで、日本語対話コーパスで2人以上の話者が同時に存在する箇所を調べ、その特徴ごとに以下3つの分類を行った。(1)現在の話し手が次の話し手に話すよう誘引しているもの(2)あいづちのように挿入句的なもの(3)次の話し手が現在の話し手を遮るもの、である。これらの分類を基に、ターンテイキング理論の補足理論としての介入発話モデルを構築した。
著者
榎本 美香 石本 祐一
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP)
巻号頁・発行日
vol.2009-SLP-77, no.23, pp.1-6, 2009-07-10

本研究の目的は,「うん」 という発話の音響特性から応答・承認・相槌という発話機能を弁別することにある.自然対話 (8 対話) の中に出現した 「うん」 (N=239) の発話機能を弁別するため,一般化線形モデルの当てはめと主成分分析を行った結果,F₀ レンジ,F₀ 最大値,F₀ 平均値,パワー最大値という音響パラメータを用いれば,相槌のうんが 88% 弁別可能であった.このことは,特に相槌の 「うん」 の音響的推定が有効であることを示す.
著者
榎本 美香 岡本 雅史 串田 秀也 山川 百合子 松嶋 健 高梨 克也 松岡 恵子 小谷 泉
出版者
東京工科大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、統合失調症や高次脳機能障害という病名が与えられた人々(the Communication Handicapped; CH)が個々に持つ社会的・個人的属性や会話の個々の構成物(発話や身振り)の相互作用が作り出すコミュニケーションシステムにおいて、コミュニケーションギャップが検出され、排除/吸収されていく過程のメカニズムを解明した。
著者
村田 和義 中野 有紀子 榎本 美香 有本 泰子 朝 康博 佐川 浩彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.610, pp.25-30, 2007-03-16

マルチモーダルコミュニケーションでは,音声,ジェスチャ,オブジェクト操作など異なるモダリティーの振る舞いが同時にかつ適切なタイミングで生じている.本研究では特にテレビパソコン操作時におけるマルチモーダル対話型ヘルプエージェントに注目する.まずWizard-of-Oz法を用いて利用者-ヘルプエージェント間の対話例を収集し,対話的なヘルプエージェントでは利用者の状態の確認とそれに伴う補助的な説明が行われることを示す.さらに利用者-エージェント間の対話状態を予測するための確率モデルをベイジアンネットワークにより構築し,ヘルプエージェントが補助的な説明を行う最適なタイミングの予測を行う.